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第一部 転生編

元転移転生術師、吹き込む 後編

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 恐る恐るだが、ラスティアが頭を上げていく。
 しかし、アイマスクをつけていても眠っているのが分かる。寝息をたてていたからじゃ。

 今も眠っているラスティア。しかし会話が成り立つのは、アイマスクによる効果のおかげである。

 ワシが転移した遮断☆集中☆アイマスク。
 視界を封じる事によるリラックス効果もあるがもう一つ。
 視界を封じた分、他の感覚が研ぎ澄まされる効果があり、聴覚が覚醒しているために、眠りながらでもワシと会話ができたのじゃ。
 もちろん眠っているので、ラスティアは無意識の状態じゃ。それ故に、ワシをデウディーン(教団が崇拝する方)と思い込みおったという訳。

 今のラスティアは、何でもワシの言う事を聞いてくれる……という状態じゃな。

「ラスティアよ。初めに言っておくが、マリーはデウディーンの転生体ではない」

「な、何と……私の勘違い……でしたか!」

 もちろん、ワシは元デウディーン。
 しかしラスティアにはこの方が都合がよい。

「しかし、マリーを教団に案内せい。入団希望者ではなく、見学希望者としてな」

「は……ははっ! デウディーン様の命令とあらば!」

 再び頭を下げるラスティア。もう一度、ツッコむ気にはなれなかった。

「ラスティアも同行しろ。その間、マリーの言う事を聞け」

「ははーーーーっ! この、デウディーン教団所属騎士がラスティア! この身にかえても必ず、命令を果たしてみせます!」

「よし。ではベッドに戻れ。……あと」

 ラスティアが素直に従っている様子。あとはベッドに戻ろうとする彼女に、釘をさしておくか。

「このワシが話したという事を、絶対に言うな。特に、マリーの両親には内緒にしろ」

「え……でも、せっかくの奇跡なのに……」

「絶対に守れ。万が一知られでもしたら、毎晩子作りに励んでる両親を手伝ってもらう」

「え!? 子作り……ですか?」

 アイマスク越しでも、ラスティアが赤面しているのが分かる。

「そうじゃ、子作りじゃ。両親の間に加わってもらう。もちろん、お主の身体でな。……特に父は激しくて重量感があるらしいから覚悟しておけよ……よいな?」

「わ……わわ、分かりました! デウディーン様の決定に従います!」

 眠りつつも、慌てた様子でラスティアはベッドに戻っていった。
 これで一安心じゃな。明日になれば、大人しくなるじゃろうて。

『見事な手際でしたね、マスター。まるで催眠術のようでした』

「っ……身も蓋もないのぉ……」

『マスターの行動をアプリに記録するのも私の役目。……それにしても、両親の子作りまで脅迫に使うとは、極悪ですね』

「う……まあその……そっちは本気にせんでくれんと助かる……」

 反論しきれなかった。実際、やり方はフェアじゃなかったからの……。
 子作りの件はまぁ……子作りじゃ。
 ワシが夜中目が覚めた時に……目撃してもうてのぉ……。まぁ、実の子供がいない故、頑張るのは分かる……。

『分かってます。ラスティアの勢いを押し負かすのは至難の業。他に方法が無かった事は、理解していますよ』

 まさかのフォローが来るとはの。
 ぐうの音も出ないワシが、よっぽど哀れに見えたと思われる。

「ふぅ……」

 まあ、何にせよ、何にせよじゃ。
 これで一段落ついた訳だ。
 あとは、両親に話を通すのみじゃが……。

「教団……か」

 生前には無かった、ワシの教団。
 心当たりはない。誰が作ったのか、想像もつかない。
 故に、どんな所なのか興味があった。
 そして文句を言ってやりたかった。ワシの事で土下座させたり、デタラメを広めたりしておるらしい。きっとロクでもない教団に違いないわい。

「そう言えば……」

 ふと、ワシは思った。
 たかしの事じゃ。

 千年後、みんなから忘れられてしまった田中たかし。
 最初はざまぁと思っておったが、今となっては少し羨ましく思う。

 女神になると言っておったが、どうしているんじゃろうか。
 人間のまま、あっさり死んでしまったんじゃろうか。

 それとも、本当に女神になれたのか……。



************************

【サージャ】≪『第七話をお読みいただき、ありがとうございます』

【サージャ】≪『マスターの作戦とは、暗示でした』

【サージャ】≪『デウディーン=マリーという認識を外し(実際は正解なのですが)、必要以上に騒がないようにするという狙いがあったのですね』

【サージャ】≪『ラスティアを使って教団へ向かうつもりのマスターですが、果たしてその行く末は……』

【サージャ】≪『それでは、次回をお楽しみに』
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