14 / 75
第一部 転生編
元転移転生術師、吹き込む 後編
しおりを挟む
恐る恐るだが、ラスティアが頭を上げていく。
しかし、アイマスクをつけていても眠っているのが分かる。寝息をたてていたからじゃ。
今も眠っているラスティア。しかし会話が成り立つのは、アイマスクによる効果のおかげである。
ワシが転移した遮断☆集中☆アイマスク。
視界を封じる事によるリラックス効果もあるがもう一つ。
視界を封じた分、他の感覚が研ぎ澄まされる効果があり、聴覚が覚醒しているために、眠りながらでもワシと会話ができたのじゃ。
もちろん眠っているので、ラスティアは無意識の状態じゃ。それ故に、ワシをデウディーン(教団が崇拝する方)と思い込みおったという訳。
今のラスティアは、何でもワシの言う事を聞いてくれる……という状態じゃな。
「ラスティアよ。初めに言っておくが、マリーはデウディーンの転生体ではない」
「な、何と……私の勘違い……でしたか!」
もちろん、ワシは元デウディーン。
しかしラスティアにはこの方が都合がよい。
「しかし、マリーを教団に案内せい。入団希望者ではなく、見学希望者としてな」
「は……ははっ! デウディーン様の命令とあらば!」
再び頭を下げるラスティア。もう一度、ツッコむ気にはなれなかった。
「ラスティアも同行しろ。その間、マリーの言う事を聞け」
「ははーーーーっ! この、デウディーン教団所属騎士がラスティア! この身にかえても必ず、命令を果たしてみせます!」
「よし。ではベッドに戻れ。……あと」
ラスティアが素直に従っている様子。あとはベッドに戻ろうとする彼女に、釘をさしておくか。
「このワシが話したという事を、絶対に言うな。特に、マリーの両親には内緒にしろ」
「え……でも、せっかくの奇跡なのに……」
「絶対に守れ。万が一知られでもしたら、毎晩子作りに励んでる両親を手伝ってもらう」
「え!? 子作り……ですか?」
アイマスク越しでも、ラスティアが赤面しているのが分かる。
「そうじゃ、子作りじゃ。両親の間に加わってもらう。もちろん、お主の身体でな。……特に父は激しくて重量感があるらしいから覚悟しておけよ……よいな?」
「わ……わわ、分かりました! デウディーン様の決定に従います!」
眠りつつも、慌てた様子でラスティアはベッドに戻っていった。
これで一安心じゃな。明日になれば、大人しくなるじゃろうて。
『見事な手際でしたね、マスター。まるで催眠術のようでした』
「っ……身も蓋もないのぉ……」
『マスターの行動をアプリに記録するのも私の役目。……それにしても、両親の子作りまで脅迫に使うとは、極悪ですね』
「う……まあその……そっちは本気にせんでくれんと助かる……」
反論しきれなかった。実際、やり方はフェアじゃなかったからの……。
子作りの件はまぁ……子作りじゃ。
ワシが夜中目が覚めた時に……目撃してもうてのぉ……。まぁ、実の子供がいない故、頑張るのは分かる……。
『分かってます。ラスティアの勢いを押し負かすのは至難の業。他に方法が無かった事は、理解していますよ』
まさかのフォローが来るとはの。
ぐうの音も出ないワシが、よっぽど哀れに見えたと思われる。
「ふぅ……」
まあ、何にせよ、何にせよじゃ。
これで一段落ついた訳だ。
あとは、両親に話を通すのみじゃが……。
「教団……か」
生前には無かった、ワシの教団。
心当たりはない。誰が作ったのか、想像もつかない。
故に、どんな所なのか興味があった。
そして文句を言ってやりたかった。ワシの事で土下座させたり、デタラメを広めたりしておるらしい。きっとロクでもない教団に違いないわい。
「そう言えば……」
ふと、ワシは思った。
たかしの事じゃ。
千年後、みんなから忘れられてしまった田中たかし。
最初はざまぁと思っておったが、今となっては少し羨ましく思う。
女神になると言っておったが、どうしているんじゃろうか。
人間のまま、あっさり死んでしまったんじゃろうか。
それとも、本当に女神になれたのか……。
************************
【サージャ】≪『第七話をお読みいただき、ありがとうございます』
【サージャ】≪『マスターの作戦とは、暗示でした』
【サージャ】≪『デウディーン=マリーという認識を外し(実際は正解なのですが)、必要以上に騒がないようにするという狙いがあったのですね』
【サージャ】≪『ラスティアを使って教団へ向かうつもりのマスターですが、果たしてその行く末は……』
【サージャ】≪『それでは、次回をお楽しみに』
しかし、アイマスクをつけていても眠っているのが分かる。寝息をたてていたからじゃ。
今も眠っているラスティア。しかし会話が成り立つのは、アイマスクによる効果のおかげである。
ワシが転移した遮断☆集中☆アイマスク。
視界を封じる事によるリラックス効果もあるがもう一つ。
視界を封じた分、他の感覚が研ぎ澄まされる効果があり、聴覚が覚醒しているために、眠りながらでもワシと会話ができたのじゃ。
もちろん眠っているので、ラスティアは無意識の状態じゃ。それ故に、ワシをデウディーン(教団が崇拝する方)と思い込みおったという訳。
今のラスティアは、何でもワシの言う事を聞いてくれる……という状態じゃな。
「ラスティアよ。初めに言っておくが、マリーはデウディーンの転生体ではない」
「な、何と……私の勘違い……でしたか!」
もちろん、ワシは元デウディーン。
しかしラスティアにはこの方が都合がよい。
「しかし、マリーを教団に案内せい。入団希望者ではなく、見学希望者としてな」
「は……ははっ! デウディーン様の命令とあらば!」
再び頭を下げるラスティア。もう一度、ツッコむ気にはなれなかった。
「ラスティアも同行しろ。その間、マリーの言う事を聞け」
「ははーーーーっ! この、デウディーン教団所属騎士がラスティア! この身にかえても必ず、命令を果たしてみせます!」
「よし。ではベッドに戻れ。……あと」
ラスティアが素直に従っている様子。あとはベッドに戻ろうとする彼女に、釘をさしておくか。
「このワシが話したという事を、絶対に言うな。特に、マリーの両親には内緒にしろ」
「え……でも、せっかくの奇跡なのに……」
「絶対に守れ。万が一知られでもしたら、毎晩子作りに励んでる両親を手伝ってもらう」
「え!? 子作り……ですか?」
アイマスク越しでも、ラスティアが赤面しているのが分かる。
「そうじゃ、子作りじゃ。両親の間に加わってもらう。もちろん、お主の身体でな。……特に父は激しくて重量感があるらしいから覚悟しておけよ……よいな?」
「わ……わわ、分かりました! デウディーン様の決定に従います!」
眠りつつも、慌てた様子でラスティアはベッドに戻っていった。
これで一安心じゃな。明日になれば、大人しくなるじゃろうて。
『見事な手際でしたね、マスター。まるで催眠術のようでした』
「っ……身も蓋もないのぉ……」
『マスターの行動をアプリに記録するのも私の役目。……それにしても、両親の子作りまで脅迫に使うとは、極悪ですね』
「う……まあその……そっちは本気にせんでくれんと助かる……」
反論しきれなかった。実際、やり方はフェアじゃなかったからの……。
子作りの件はまぁ……子作りじゃ。
ワシが夜中目が覚めた時に……目撃してもうてのぉ……。まぁ、実の子供がいない故、頑張るのは分かる……。
『分かってます。ラスティアの勢いを押し負かすのは至難の業。他に方法が無かった事は、理解していますよ』
まさかのフォローが来るとはの。
ぐうの音も出ないワシが、よっぽど哀れに見えたと思われる。
「ふぅ……」
まあ、何にせよ、何にせよじゃ。
これで一段落ついた訳だ。
あとは、両親に話を通すのみじゃが……。
「教団……か」
生前には無かった、ワシの教団。
心当たりはない。誰が作ったのか、想像もつかない。
故に、どんな所なのか興味があった。
そして文句を言ってやりたかった。ワシの事で土下座させたり、デタラメを広めたりしておるらしい。きっとロクでもない教団に違いないわい。
「そう言えば……」
ふと、ワシは思った。
たかしの事じゃ。
千年後、みんなから忘れられてしまった田中たかし。
最初はざまぁと思っておったが、今となっては少し羨ましく思う。
女神になると言っておったが、どうしているんじゃろうか。
人間のまま、あっさり死んでしまったんじゃろうか。
それとも、本当に女神になれたのか……。
************************
【サージャ】≪『第七話をお読みいただき、ありがとうございます』
【サージャ】≪『マスターの作戦とは、暗示でした』
【サージャ】≪『デウディーン=マリーという認識を外し(実際は正解なのですが)、必要以上に騒がないようにするという狙いがあったのですね』
【サージャ】≪『ラスティアを使って教団へ向かうつもりのマスターですが、果たしてその行く末は……』
【サージャ】≪『それでは、次回をお楽しみに』
80
お気に入りに追加
479
あなたにおすすめの小説
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる
兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。
「お姉様の赤ちゃん、私にちょうだい?」
サイコちゃん
恋愛
実家に妊娠を知らせた途端、妹からお腹の子をくれと言われた。姉であるイヴェットは自分の持ち物や恋人をいつも妹に奪われてきた。しかし赤ん坊をくれというのはあまりに酷過ぎる。そのことを夫に相談すると、彼は「良かったね! 家族ぐるみで育ててもらえるんだね!」と言い放った。妹と両親が異常であることを伝えても、夫は理解を示してくれない。やがて夫婦は離婚してイヴェットはひとり苦境へ立ち向かうことになったが、“医術と魔術の天才”である治療人アランが彼女に味方して――
婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが
マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって?
まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ?
※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。
※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。
婚約者すらいない私に、離縁状が届いたのですが・・・・・・。
夢草 蝶
恋愛
侯爵家の末姫で、人付き合いが好きではないシェーラは、邸の敷地から出ることなく過ごしていた。
そのため、当然婚約者もいない。
なのにある日、何故かシェーラ宛に離縁状が届く。
差出人の名前に覚えのなかったシェーラは、間違いだろうとその離縁状を燃やしてしまう。
すると後日、見知らぬ男が怒りの形相で邸に押し掛けてきて──?
「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ
音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。
だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。
相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。
どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる