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第一部 転生編
元転移転生魔術師、転生後の秘密基地 後編
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「な、何じゃ?」
『秘密基地入り口付近に、人間を確認。生命反応あり。倒れているようです』
「何じゃと? 人が……?」
そういえば、母が言っておった。モンスターがよく出ると。
人が襲われたのかもしれん。助けてやろう。
ワシは立ち上がり、秘密基地の入り口まで走っていく。
サージャの言うとおり、人が倒れていた。
村人かと思っておったが、そうではない。
鎧を着ておったからじゃ。それも、上等そうな装飾がされておる。
倒れていたのは、銀髪の女性。
剣を握り、傷だらけのまま倒れている。
見た感じ、女騎士といったところか。
こんな田舎で出会うとは思わなかったが。
「おーい、生きとるかー?」
「うう……まあ……な」
どうやら息はあるらしい。
すぐに動こうとしない所を見るに、重症かもしれん。
「一体どうした? 何があったんじゃ?」
「モンスターに……襲われた……。かろうじて逃げてきて……このザマでな」
「この近辺に、そんな強いモンスターがおるのか?」
「オーガと、ゴブリンだ……。私も油断していた……。逃げろ……今ならまだ会わずにすむ……」
オーガとゴブリン?
おかしいのう。ここいらにはおらん、モンスターのはずじゃ。いるとすれば、スライムやウサギといった、村人でも倒せる程度の弱さしかいないというのに……?
ともかく、こヤツは放っておけん。秘密基地まで運ぶとするかの。
「うんしょ、うんしょ」
「おい……何をしている」
案の定、女騎士は重くて運べない。
力を込めたが、一ミリも動いた気配がない。
ダメじゃったか。忘れておった。今のワシは九歳の女の子。とても鎧を身にまとった女騎士を運ぶなんて、不可能じゃないか。
これではいつまでたっても、秘密基地に運ぶ事ができない。しかも女騎士はケガの状態が非常に悪いらしい。よく見ると地面が血で染まっておるのじゃ。
モンスターの件もあるし、一刻の猶予もない。
どうしたものか……。
ここはやはり、転移魔法じゃな。
それしかあるまい。
そう思ったワシは、手を掲げ空を見る。
「おい、何やってるんだ……さっさと逃げないと……」
「転移魔法、発動――!」
「ええ……!」
掲げた手に魔力を込める。
――バチバチ! と音を立て、現れる稲妻。
その刹那、ワシは求める物をイメージする。
「いでよ! ――包み☆ふろしき!」
詠唱であり名称を唱えた瞬間。
稲妻が止み、物質となってワシの手に落ちてきた。
掲げた手でキャッチするそれは、一枚の布。不思議な肌触りで、古風な匂いが心を落ち着かせてくれる。
「な、何だ……? 急に空から布が……?」
「少し黙っておれ。体にさわるぞ」
驚く女騎士を落ち着かせ、ワシは一枚の布――ふろしきと呼ばれる物を広げていく。両手いっぱいまで広がった所で、女騎士の全身に包み込ませた。
倒れた彼女の身体が覆われる。ワシはその端と端をつまみ、結びつけた。
完成。袋状に女騎士の全身を包む。呼吸ができるよう顔は出しておく。
「な……これ……拘束……?」
「そうではない。まあ掴まっておれ……よいしょ」
結んだ箇所を掴み、持ち上げる。
「ええっ! 何……私、浮いてる!?」
そう、持ち上がったのじゃ。さっきまでビクともしなかった女騎士が。ふろしきに包んだだけで。
しかも、何の重さも感じない。さっきまで全力を込めても動かせなかったのに。
「では、運ぼうかの……ふっ」
ふろしきの結びを両手で持つ。地面にこすらないように。
そして秘密基地の奥に向かって歩き始めた。
「ちょ……! 何……私、どうなって!?」
「見て分からんか? 運んどるんじゃよ、お主を」
「え……いや、ちょ、幼女よね? 何で幼女の力で持ち上げられるの? ってか何で洞窟の中……」
「説明は後じゃ! 静かにしておれケガにさわる!」
パニックになった女騎士を、ワシの一喝で静かにさせる。
もちろん、ただ布を巻いただけで重さが変わる訳がない。ワシもそれは分かっておる。
しかしこの【包み☆ふろしき】なら話は別。包むだけで、あらゆる重い物が羽毛のように軽くなる。
「フンフンフンフーン」
鼻歌を歌える程度にはの。
さて、運んでやらんとな。秘密基地のルームまで。
女騎士を治療するために。
************************
【サージャ】≪『第二話をお読みいただき、ありがとうございました』
【サージャ】≪『そうです、第一話でのメッセージは私、サージャです。以後はこの混半妖精であるサージャがお送りします』
【サージャ】≪『また、便宜上デウディーンと呼んでいましたが、これからはマスターと呼び紹介していきますので、よろしくお願いします』
【サージャ】≪『それでは次回を、お楽しみに』
『秘密基地入り口付近に、人間を確認。生命反応あり。倒れているようです』
「何じゃと? 人が……?」
そういえば、母が言っておった。モンスターがよく出ると。
人が襲われたのかもしれん。助けてやろう。
ワシは立ち上がり、秘密基地の入り口まで走っていく。
サージャの言うとおり、人が倒れていた。
村人かと思っておったが、そうではない。
鎧を着ておったからじゃ。それも、上等そうな装飾がされておる。
倒れていたのは、銀髪の女性。
剣を握り、傷だらけのまま倒れている。
見た感じ、女騎士といったところか。
こんな田舎で出会うとは思わなかったが。
「おーい、生きとるかー?」
「うう……まあ……な」
どうやら息はあるらしい。
すぐに動こうとしない所を見るに、重症かもしれん。
「一体どうした? 何があったんじゃ?」
「モンスターに……襲われた……。かろうじて逃げてきて……このザマでな」
「この近辺に、そんな強いモンスターがおるのか?」
「オーガと、ゴブリンだ……。私も油断していた……。逃げろ……今ならまだ会わずにすむ……」
オーガとゴブリン?
おかしいのう。ここいらにはおらん、モンスターのはずじゃ。いるとすれば、スライムやウサギといった、村人でも倒せる程度の弱さしかいないというのに……?
ともかく、こヤツは放っておけん。秘密基地まで運ぶとするかの。
「うんしょ、うんしょ」
「おい……何をしている」
案の定、女騎士は重くて運べない。
力を込めたが、一ミリも動いた気配がない。
ダメじゃったか。忘れておった。今のワシは九歳の女の子。とても鎧を身にまとった女騎士を運ぶなんて、不可能じゃないか。
これではいつまでたっても、秘密基地に運ぶ事ができない。しかも女騎士はケガの状態が非常に悪いらしい。よく見ると地面が血で染まっておるのじゃ。
モンスターの件もあるし、一刻の猶予もない。
どうしたものか……。
ここはやはり、転移魔法じゃな。
それしかあるまい。
そう思ったワシは、手を掲げ空を見る。
「おい、何やってるんだ……さっさと逃げないと……」
「転移魔法、発動――!」
「ええ……!」
掲げた手に魔力を込める。
――バチバチ! と音を立て、現れる稲妻。
その刹那、ワシは求める物をイメージする。
「いでよ! ――包み☆ふろしき!」
詠唱であり名称を唱えた瞬間。
稲妻が止み、物質となってワシの手に落ちてきた。
掲げた手でキャッチするそれは、一枚の布。不思議な肌触りで、古風な匂いが心を落ち着かせてくれる。
「な、何だ……? 急に空から布が……?」
「少し黙っておれ。体にさわるぞ」
驚く女騎士を落ち着かせ、ワシは一枚の布――ふろしきと呼ばれる物を広げていく。両手いっぱいまで広がった所で、女騎士の全身に包み込ませた。
倒れた彼女の身体が覆われる。ワシはその端と端をつまみ、結びつけた。
完成。袋状に女騎士の全身を包む。呼吸ができるよう顔は出しておく。
「な……これ……拘束……?」
「そうではない。まあ掴まっておれ……よいしょ」
結んだ箇所を掴み、持ち上げる。
「ええっ! 何……私、浮いてる!?」
そう、持ち上がったのじゃ。さっきまでビクともしなかった女騎士が。ふろしきに包んだだけで。
しかも、何の重さも感じない。さっきまで全力を込めても動かせなかったのに。
「では、運ぼうかの……ふっ」
ふろしきの結びを両手で持つ。地面にこすらないように。
そして秘密基地の奥に向かって歩き始めた。
「ちょ……! 何……私、どうなって!?」
「見て分からんか? 運んどるんじゃよ、お主を」
「え……いや、ちょ、幼女よね? 何で幼女の力で持ち上げられるの? ってか何で洞窟の中……」
「説明は後じゃ! 静かにしておれケガにさわる!」
パニックになった女騎士を、ワシの一喝で静かにさせる。
もちろん、ただ布を巻いただけで重さが変わる訳がない。ワシもそれは分かっておる。
しかしこの【包み☆ふろしき】なら話は別。包むだけで、あらゆる重い物が羽毛のように軽くなる。
「フンフンフンフーン」
鼻歌を歌える程度にはの。
さて、運んでやらんとな。秘密基地のルームまで。
女騎士を治療するために。
************************
【サージャ】≪『第二話をお読みいただき、ありがとうございました』
【サージャ】≪『そうです、第一話でのメッセージは私、サージャです。以後はこの混半妖精であるサージャがお送りします』
【サージャ】≪『また、便宜上デウディーンと呼んでいましたが、これからはマスターと呼び紹介していきますので、よろしくお願いします』
【サージャ】≪『それでは次回を、お楽しみに』
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