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第三章
南都にて(二)
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エレヴァンには五つの都市がある。
東西南北の地方四都市と、朝廷のある中央都市だ。
各都市はそれぞれ都市の中心に鐘のない鍾塔が建てられている。
鍾塔は守護霊術の発動装置、巨大な霊具だった。
鍾塔は鐘の代りに、霊力を響き渡らせる。
子どもたちの霊力がこめられた斉唱は塔内で増幅され、都市中に霊力もろとも響き渡った。
その歌に反応し、都市を囲う二重の環濠、都市の守護霊術が発動した。
環濠の水はまるで噴水のようにせり上がり、都市を囲う水の壁となる。鐘塔を囲う内環濠、都市全体を囲う外環濠、どちらも高さ六十メートルの水壁となり、内側にいるとまるで、都市そのものが湖の底に落ちたかのように錯覚させられた。
水壁の内側は、災嵐の影響を受けない。
地震も、雷雨も、疫病さえも、水壁は防ぐことができる。
中にいる人間は、どのような形の災嵐からも守られるのだ。
水壁の一歩外に出れば、たちまち災嵐に見舞われるが、中にいる限りは、わずかな影響も受けることがなかった。
エレヴァンの五大都市は、この水壁によって災嵐を免れてきた。
各都市は朝廷と同じ造りで、官庁である鐘塔を中心に、環濠、市街地、環濠、という二重の円環構造をしていた。なお中央都市のみ、朝廷の外の、官舎や名門霊家の豪邸の立ち並ぶ内城を囲う三つ目の環濠が敷かれており、三重の水壁によって守られている。
一度発動すれば七日間は解除されることのないこの霊術は、年に一度、七日式と称し、各都市で発動が試行されていた。
混乱を避けるため、外界から遮断された都市の中では、厳しい戒律が敷かれる。
一切の娯楽が禁じられ、食事から服装、会話に至るまで厳しい制限が設けられる。
変わって都市の外では、七日七晩、盛大な祭りが催される。
郊外に住むのはたいてい都市に仕事を持つ労働者だ。施術中暇を持て余す彼らによって、祭りはおおいな盛り上がりを見せる。
郊外の人間に留まらず、各地の農民や遊牧民、さらには都市内に住居を構える者でさえ、この祭りにはこぞって参加した。
都市の内部で厳しい戒律に耐えるより、お祭り騒ぎを楽しむことを選ぶ者の方が多かったのだ。
守護霊術の予行演習と、過去災嵐で失われた魂の安寧を祈願するためにはじまった七日式であったが、現在では民衆の関心はもっぱら祭りに集められ、多くの人びとはこの七日式を七日祭りと呼び、心待ちにしていた。
しかし今年は災嵐年である。
守護霊術は発動されたが、郊外で祭りは開かれていない。
それでも都市の内部は閑散とし、多くの人びとが郊外に出ていた。
人びとはみな、祈るような面持ちで、空を見上げていた。
そこに輝く星を、その動きを、目で追い続けていた。
彼らは待っていた。
渡来大使、カイ・ミワタリが起こす、奇跡を。
〇
「大変お騒がせいたしました……」
興奮した子どもたちをラウラはひとまず展望楼の階下にある待機場へと移した。
展望楼には南都の上役や技官も多くいたので、騒がせておくわけにもいかなかったのだ。
子どもたちを世話役の技官に預け、再び展望楼へと戻ったラウラは、真っ先にブリアードに謝罪した。
「普段はもう少し聞き分けがいいんですけど……」
「いやいや、むしろ感心していますよ。鍾塔の発動直後で疲れ切ってるはずなのに、ケンカする元気があるんですから」
ブリアードはそこでふっと声を落とした。
「術もこの出来栄えですから、文句のつけようがありませんよ。誰にも」
ラウラは展望楼でともに術式の展開を見守っていた官吏たちに目を向ける。
南都の首長をはじめとした役付きの官吏たちは、毎年の式典で展開されるものと寸分たがわない防壁を前に、なおも不満をこぼし続けていた。
「たしかに壁はできたが、実際災嵐がきてみないことには、わからないだろう。これがちゃんと機能するのかどうか」
「壊されてからでは遅いのだぞ」
「そうだ。それに施術を終えた途端に騒ぎ立てて……本当にあんな子どもに、我々の、南都の民の命を預けるおつもりか?」
「仕方ないだろう。主査の決定だ。逆らえんよ」
首長の言葉に、一同は表情を曇らせた。
そして話題はあっという間に主査、シェルティへの不満に転じた。
「肩書きをいいことに、勝手が過ぎやしないか」
「庁舎をひっくり返す勢いだぞ」
「仕事を増やされて、たまったもんじゃない」
「山間でなにがあろうと知ったことか」
「我々と山の者との癒着を疑っているんだろう」
「あれらとつるんで我々に一体なんの得がある?むしろ距離を置いているくらいだというのに」
「せめて別の者をよこしてくれれば……」
「皇太子で、おまけにサルクの縁者とあっては、意見一つ挟めんよ」
「サルクだから南都によこしたんだろう」
「陛下はなぜいまさらあのような男を取り立てるんだろうか。公明正大な方だと思っていたが、やはり実の息子は特別か」
「ノヴァ様がいるのだから、色狂いの放蕩者など災嵐に乗じて葬ってしまえば――――」
年かさの官吏はそこまで言ってようやくラウラの視線に気づき、慌てて閉口した。
他の者も素知らぬ顔で口を閉ざした。
望遠鏡を水壁に向け、懐中時計を眺め、まるで自分はいまの不敬極まりない会話に参加していなかったかのような素振りを見せた。
ラウラは音もなくため息をついて、ブリアードに笑いかけた。
「どうやっても文句はでるようです」
「少なくとも子どもたちの腕は認めていましたよ。彼らが難癖をつけたいのは殿下の方であって――――」
「殿下は皆さんが思っているような方ではありません」
ラウラは首長たちにも聞こえるよう、声を大きくした。
「これまでは事情があって放蕩者のようにふるまっておられましたが、本当はとても聡明で、お優しい方です」
真っ向から喧嘩を売るような発言にブリアードはぎょっと目を剥き、慌ててラウラを楼の隅へと引っ張って行った。
「まあまあおしゃべりはこのへんにしましょう。そろそろ時間ですから、ね!」
ブリアードに言われ、ラウラは懐中時計で時刻を確認する。
縮地の発動予定時刻まで、あと十分を切っていた。
ラウラはため息をつき、噴水のように突き上げられ、流れ落ち続ける防壁に目をやった。
「去年の祭りもそうでした。みんなは完璧に術式を発動させたのに、本来それを請け負うはずだった技官たちに難癖をつけられて、七日間、西都の中でとても肩身の狭い思いをしたそうなんです」
昨年の七日式の期間中、ラウラはまだカイの修練のためたて穴にいた。
当時は式典の成功のみを伝え聞いていたが、朝廷に戻った後、子どもたちが受けた扱いを聞き、ラウラは非常に心を痛めていた。
彼らはみな、降魂術の依代として、学舎で厳しい修練を行っている。
命の危険を伴う肉体改造に耐え、その身に瘢痕分身を刻みこんできた。
彼らが南都における守護霊術の執行者に選ばれたのは、その努力が認められた結果だ。
縮地の補助に多くの技官が割かれているという状況を加味しても、この抜擢は異例のことだった。
ラウラほど突出している者はいないが、みな幼いながら、並みの技師以上の霊能力を有している。大規模霊術を扱う技師集団として練度も高く、特にこの一年をかけて磨いた守護霊術は、中央都市で朝廷技師団が築く防壁にもひけをとらない完成度を誇っていた。
ラウラは子どもたちの努力とそれに伴う成果を誰よりも知っていた。
だからこそ、彼らは誰からも賞賛されて然るべきだという思いが強かった。
「ラウラさん、怒らないでほしいんですけど、正直私には、彼らを称賛することのできない技師たちの気持ちがわかります」
ブリアードはそんなラウラに、宥め諭す言葉をかけた。
「私みたいな並みの技師からすればですよ、守護霊術の術者に選ばれることは非常に名誉なことです。災嵐の時代を生きる、全技師の憧れといっても過言ではないでしょう。それを子どもに担われたとあっては、やはりくやしいですよ。貴方たちが特別な存在とわかっていても、やはり容易には受け入れられるものではないんですよ」
「それは――――でも……だからといって、結果には正当な評価を与えるべきです」
「そのとおり。大人気なくて申し訳ない。さきほど私は不用意な発言で怒らせてしまいましたが……ああいうところを見ても、彼らはふつうの子となんら変わりません。彼らは子ども扱いされなければならないんです」
彼ら自身がそれを嫌がったとしてもね、とブリアードは苦笑しながら続けます。
「例えば自分の子が同じことをしたら、私たちは手放しで褒めたでしょう。よくやった、と。それと同じように、彼らのことも褒めてやらなければいけないんです。それが大人として正しい対応でした」
ブリアードはそれまで浮かべていた人のいい笑顔を、ふいに曇らせて、短いため息をついた。
「もし自分の子から守護霊術の術者に選ばれる技師が出たら、褒めるどころか、感涙するでしょうね、私は。いえ、驚きで絶命してもおかしくありません」
「それは……さすがに大げさでは……?」
いいえ、とブリアードは項垂れた。
「ヤクートを見たらわかるでしょう?私には六人も子供がいるのに、うち四人は霊能力がさっぱりで技師になることもできませんでした。ヤクートと、末のサミーだけはどうにか技官になれましたが、それも増員があったからなれたようなもので、災嵐が過ぎた後、資格をはく奪されてしまうんではないかといまからひやひやしていますよ。二人とも私に似てしまって、不器用で容量が悪くて……どちらかに家を継がなせなくてはならないと考えると……はあ……」
ラウラの憤りを収めようとしていたブリアードだったが、いつしか身内話に没入しはじめる。
「いえね?不出来なのは子どもだけじゃないんですよ?私だって、本当は向いてないんです、家督なんて。技官の仕事もありますし、六人の子どもの父親やるだけでも精一杯なのに、なまじ古い家だからってこんな私の下にも弟子が集うんですよ。弟子の面倒まで見なくちゃいけないんですよ。勘弁してほしいです。そんな甲斐性ないんですよ、私には。アフィーみたいに才能のある子ならなおさら……荷が重くてしかたないです。本当はもっといいところに弟子入りするべきなのに……」
「アフィーの才能は十分開花していますよ。それは間違いなくブリアードさんの指導があったからこそですよ」
「そうですか?そう言ってくださいますか?――――ありがたいことです、ほんと。アフィーはそれこそ最初はなし崩し的に預かることになりましたが、とにかく一生懸命でしたから、こちらも教え甲斐がありましたし、実は私、すごく熱を入れて指導にあたったんですよ。彼女は不愛想ですが、とても素直ですから、弟子としては本当にかわいいものでした。……それに比べて、うちの子どもといったら――――」
「ヤクートさん、丙級ではすごくがんばっていましたよ。よくまとめ役になってくれて、みんなからも頼りにされていました。それに、サミーさんの方は、西方霊堂で良級に振り分けられるくらいですから、技師としての実力は申し分ないのでは?」
そんなことありません、とブリアードは満更でもなさそうに謙遜する。
「ヤクートはお調子者で遊んでばかりですし、サミーの方は真面目ですが、小心者で人の顔色ばかり窺っています。いっぱしの技師を名乗るにはあと二皮はむけてもらわないと」
「きっとすぐですよ」
「そうですかねえ、そうですといいんですけどねえ。私はまず今日、ヤクートが何事もなく務めを果たしてくれるかどうかが心配でなりません」
ブリアードの言葉に、ラウラははっとして、懐中時計を再び確かめた。
縮地の予定時刻までもう一分を切っていた。
ラウラは気を引き締めなおす。
ブリアードのぼやきに付き合っているうちに、ラウラはすっかり落ち着きを取り戻していた。
「あと十秒です」
ラウラはそう言って、展望楼から身を乗り出し、夜空の星座の位置を目に焼き付ける。
ブリアードも首長も官吏たちも、みな同じように、瞬きもせずに夜空を凝視する。
ラウラは懐中時計が秒針を刻む音を、頭の中で数えた。
(五、四、三、二、一、……――――)
――――バチッ!
全身に静電気を受けたような、軽い衝撃が走った。
そしてその瞬きの間に、夜空に浮かぶ星々は、その位置を大きく変えていた。
おおっ、と驚嘆の声が上がる。
「これは、成功、したのか?」
首長の呟きに、ラウラは胸を張って答えた。
「大成功です!」
ラウラは歓喜に包まれ、今にも飛び跳ねたいほどだったが、周囲はまだ困惑したような様子で、双眼鏡を振り回し、星図と夜空を見比べ、厳めしい顔つきで協議していた。
「確かに七日分動いている」
「本当に時間を飛んだのか?七日先に来たというのか?」
「実感がもてん」
彼らの困惑も無理はなかった。
七日先に世界が飛んだことを示すのは、夜空に瞬く星々の動きだけだった。
星は確かに動いている。
長らく縮地に携わってきたラウラにとって、これほど成功の確たる証明はないが、はじめて縮地を経験する人びとにとって、それはただの星見と変わらない。
あまりにも不確かで、手放しで喜ぶには弱すぎる証明だった。
「これでは、幻を見せられたという方が、まだ納得できるな」
誰が言ったか、その囁きを耳にしたラウラは、またたまらないくやしさを覚え、拳を握った。
「まっ――――まあまあ、みなさん!」
しかし今度は、ブリアードが先回りして間に入った。
「少なくとも星は動いた。いまはそれで十分じゃありませんか?防壁が崩れれば、すぐに事実が明らかになるんですから」
縮地により、エレヴァンのほとんどは七日の時を飛んだが、欄干と呼ばれる山脈の高地だけは縮地の範囲から外され、時をそのままに刻んでいる。
人の住まない山間部、盆地を囲う山脈の中腹から山頂にかけてだ。
全土がたしかに七日先へ飛んだことを証明するために、一部の官吏はこの七日、あえてその範囲外である欄干に身を置いていた。
官吏だけでなく、いまだ縮地を疑う市民もこぞって山に登った。
展望楼で縮地を体験した首長含む南都の顔役たちも、信頼のおける者を山に登らせ、外側から縮地の様子を観察するよう言いつけていた。
首長たちが縮地を認めるためには、彼らの証言が必要だった。
しかし南都はいま、防壁に囲われている。
守護霊術は一度発動すると、七日間は外から都市に入ることも、都市から外に出ることもできなくなる。
つまりいまここでどれだけ協議を重ねたところで、首長たちは答えも納得も得ることはできないのだ。
首長たちにいまできることは、ただ待つことだけだった。
「もどかしいですが、いまは堪えましょう。それより、どうですか、とりあえずひと段落したということで、一杯やるというのは?」
「まあ……そうだな」
ブリアードの提案によってその場は治められたが、ラウラは溜飲を下げることができなかった。
(ひどい)
(カイさんも、マヨルカたちも、すごくがんばったのに)
(結果だってちゃんと出したのに)
(どうして顧みないんだろう)
(なにを疑うことがあるんだろう)
気づけば展望楼に残っているのはラウラ一人だけになっていた。
ラウラは空を見上げた。
空の中心には、変わらず二重の黒円がある。
輝く星々の光も、眩い月光も、なにひとつ反射することなく、泰然と。
月は傾きはじめていたが、そのほんの一部が黒円にかかり、虫に食われたような小さな欠けができていた。
それを見ているうちに、ラウラの胸に不安がよぎった。
縮地は成功したはずだった。
星は確かに七日分位置を変えていた。
(なにも問題ないはずなのに、どうして、こんな気持ちになるんだろう)
ラウラはふと、気がついた。
(そっか)
(ほかの人たちも、同じ気持ちなんだ)
(怖いんだ。不安なんだ)
防壁があっても、縮地があっても、実際に災嵐が過ぎ去るまでは、安心することはできない。
カイの像に群がる人びととて、恐怖を紛らわすために、その場しのぎの信仰にすがっているにすぎないのだ。
ラウラは左手の親指にはまる指輪を握りしめた。
霊力をこめると、ノヴァのいる方向、朝廷へと意識が向いた。
(カイさんは、どうしているかな)
(縮地の成功を、きちんと認めてもらえているかな)
ラウラはまた月を見上げた。
月は動き、黒円による欠けはすでになくなっていた。
(きっと大丈夫だ)
白く輝く上弦の月と、その横に並ぶ黒円を見て、ラウラは思った。
(陛下はなによりも公正公明な方だ。今回の縮地の成功だって、きっと認めてくれるはず)
(それに、ノヴァがいるから)
(カイさんが蔑ろになんて、絶対しない)
「おねえちゃーん、どこー?」
ラウラを探す子どもたちの声が、階下から響いてきた。
ラウラはそれに、大きな声で返事をした。
「はーい、今行くよー!」
(カイさんきっと、手厚く労われているはずだ)
(カイさんを認めている人たちに)
(それならマヨルカたちを労うのは、私だ)
ラウラは指輪から手を離し、子どもたちのもとへ向かった。
エレヴァンには五つの都市がある。
東西南北の地方四都市と、朝廷のある中央都市だ。
各都市はそれぞれ都市の中心に鐘のない鍾塔が建てられている。
鍾塔は守護霊術の発動装置、巨大な霊具だった。
鍾塔は鐘の代りに、霊力を響き渡らせる。
子どもたちの霊力がこめられた斉唱は塔内で増幅され、都市中に霊力もろとも響き渡った。
その歌に反応し、都市を囲う二重の環濠、都市の守護霊術が発動した。
環濠の水はまるで噴水のようにせり上がり、都市を囲う水の壁となる。鐘塔を囲う内環濠、都市全体を囲う外環濠、どちらも高さ六十メートルの水壁となり、内側にいるとまるで、都市そのものが湖の底に落ちたかのように錯覚させられた。
水壁の内側は、災嵐の影響を受けない。
地震も、雷雨も、疫病さえも、水壁は防ぐことができる。
中にいる人間は、どのような形の災嵐からも守られるのだ。
水壁の一歩外に出れば、たちまち災嵐に見舞われるが、中にいる限りは、わずかな影響も受けることがなかった。
エレヴァンの五大都市は、この水壁によって災嵐を免れてきた。
各都市は朝廷と同じ造りで、官庁である鐘塔を中心に、環濠、市街地、環濠、という二重の円環構造をしていた。なお中央都市のみ、朝廷の外の、官舎や名門霊家の豪邸の立ち並ぶ内城を囲う三つ目の環濠が敷かれており、三重の水壁によって守られている。
一度発動すれば七日間は解除されることのないこの霊術は、年に一度、七日式と称し、各都市で発動が試行されていた。
混乱を避けるため、外界から遮断された都市の中では、厳しい戒律が敷かれる。
一切の娯楽が禁じられ、食事から服装、会話に至るまで厳しい制限が設けられる。
変わって都市の外では、七日七晩、盛大な祭りが催される。
郊外に住むのはたいてい都市に仕事を持つ労働者だ。施術中暇を持て余す彼らによって、祭りはおおいな盛り上がりを見せる。
郊外の人間に留まらず、各地の農民や遊牧民、さらには都市内に住居を構える者でさえ、この祭りにはこぞって参加した。
都市の内部で厳しい戒律に耐えるより、お祭り騒ぎを楽しむことを選ぶ者の方が多かったのだ。
守護霊術の予行演習と、過去災嵐で失われた魂の安寧を祈願するためにはじまった七日式であったが、現在では民衆の関心はもっぱら祭りに集められ、多くの人びとはこの七日式を七日祭りと呼び、心待ちにしていた。
しかし今年は災嵐年である。
守護霊術は発動されたが、郊外で祭りは開かれていない。
それでも都市の内部は閑散とし、多くの人びとが郊外に出ていた。
人びとはみな、祈るような面持ちで、空を見上げていた。
そこに輝く星を、その動きを、目で追い続けていた。
彼らは待っていた。
渡来大使、カイ・ミワタリが起こす、奇跡を。
〇
「大変お騒がせいたしました……」
興奮した子どもたちをラウラはひとまず展望楼の階下にある待機場へと移した。
展望楼には南都の上役や技官も多くいたので、騒がせておくわけにもいかなかったのだ。
子どもたちを世話役の技官に預け、再び展望楼へと戻ったラウラは、真っ先にブリアードに謝罪した。
「普段はもう少し聞き分けがいいんですけど……」
「いやいや、むしろ感心していますよ。鍾塔の発動直後で疲れ切ってるはずなのに、ケンカする元気があるんですから」
ブリアードはそこでふっと声を落とした。
「術もこの出来栄えですから、文句のつけようがありませんよ。誰にも」
ラウラは展望楼でともに術式の展開を見守っていた官吏たちに目を向ける。
南都の首長をはじめとした役付きの官吏たちは、毎年の式典で展開されるものと寸分たがわない防壁を前に、なおも不満をこぼし続けていた。
「たしかに壁はできたが、実際災嵐がきてみないことには、わからないだろう。これがちゃんと機能するのかどうか」
「壊されてからでは遅いのだぞ」
「そうだ。それに施術を終えた途端に騒ぎ立てて……本当にあんな子どもに、我々の、南都の民の命を預けるおつもりか?」
「仕方ないだろう。主査の決定だ。逆らえんよ」
首長の言葉に、一同は表情を曇らせた。
そして話題はあっという間に主査、シェルティへの不満に転じた。
「肩書きをいいことに、勝手が過ぎやしないか」
「庁舎をひっくり返す勢いだぞ」
「仕事を増やされて、たまったもんじゃない」
「山間でなにがあろうと知ったことか」
「我々と山の者との癒着を疑っているんだろう」
「あれらとつるんで我々に一体なんの得がある?むしろ距離を置いているくらいだというのに」
「せめて別の者をよこしてくれれば……」
「皇太子で、おまけにサルクの縁者とあっては、意見一つ挟めんよ」
「サルクだから南都によこしたんだろう」
「陛下はなぜいまさらあのような男を取り立てるんだろうか。公明正大な方だと思っていたが、やはり実の息子は特別か」
「ノヴァ様がいるのだから、色狂いの放蕩者など災嵐に乗じて葬ってしまえば――――」
年かさの官吏はそこまで言ってようやくラウラの視線に気づき、慌てて閉口した。
他の者も素知らぬ顔で口を閉ざした。
望遠鏡を水壁に向け、懐中時計を眺め、まるで自分はいまの不敬極まりない会話に参加していなかったかのような素振りを見せた。
ラウラは音もなくため息をついて、ブリアードに笑いかけた。
「どうやっても文句はでるようです」
「少なくとも子どもたちの腕は認めていましたよ。彼らが難癖をつけたいのは殿下の方であって――――」
「殿下は皆さんが思っているような方ではありません」
ラウラは首長たちにも聞こえるよう、声を大きくした。
「これまでは事情があって放蕩者のようにふるまっておられましたが、本当はとても聡明で、お優しい方です」
真っ向から喧嘩を売るような発言にブリアードはぎょっと目を剥き、慌ててラウラを楼の隅へと引っ張って行った。
「まあまあおしゃべりはこのへんにしましょう。そろそろ時間ですから、ね!」
ブリアードに言われ、ラウラは懐中時計で時刻を確認する。
縮地の発動予定時刻まで、あと十分を切っていた。
ラウラはため息をつき、噴水のように突き上げられ、流れ落ち続ける防壁に目をやった。
「去年の祭りもそうでした。みんなは完璧に術式を発動させたのに、本来それを請け負うはずだった技官たちに難癖をつけられて、七日間、西都の中でとても肩身の狭い思いをしたそうなんです」
昨年の七日式の期間中、ラウラはまだカイの修練のためたて穴にいた。
当時は式典の成功のみを伝え聞いていたが、朝廷に戻った後、子どもたちが受けた扱いを聞き、ラウラは非常に心を痛めていた。
彼らはみな、降魂術の依代として、学舎で厳しい修練を行っている。
命の危険を伴う肉体改造に耐え、その身に瘢痕分身を刻みこんできた。
彼らが南都における守護霊術の執行者に選ばれたのは、その努力が認められた結果だ。
縮地の補助に多くの技官が割かれているという状況を加味しても、この抜擢は異例のことだった。
ラウラほど突出している者はいないが、みな幼いながら、並みの技師以上の霊能力を有している。大規模霊術を扱う技師集団として練度も高く、特にこの一年をかけて磨いた守護霊術は、中央都市で朝廷技師団が築く防壁にもひけをとらない完成度を誇っていた。
ラウラは子どもたちの努力とそれに伴う成果を誰よりも知っていた。
だからこそ、彼らは誰からも賞賛されて然るべきだという思いが強かった。
「ラウラさん、怒らないでほしいんですけど、正直私には、彼らを称賛することのできない技師たちの気持ちがわかります」
ブリアードはそんなラウラに、宥め諭す言葉をかけた。
「私みたいな並みの技師からすればですよ、守護霊術の術者に選ばれることは非常に名誉なことです。災嵐の時代を生きる、全技師の憧れといっても過言ではないでしょう。それを子どもに担われたとあっては、やはりくやしいですよ。貴方たちが特別な存在とわかっていても、やはり容易には受け入れられるものではないんですよ」
「それは――――でも……だからといって、結果には正当な評価を与えるべきです」
「そのとおり。大人気なくて申し訳ない。さきほど私は不用意な発言で怒らせてしまいましたが……ああいうところを見ても、彼らはふつうの子となんら変わりません。彼らは子ども扱いされなければならないんです」
彼ら自身がそれを嫌がったとしてもね、とブリアードは苦笑しながら続けます。
「例えば自分の子が同じことをしたら、私たちは手放しで褒めたでしょう。よくやった、と。それと同じように、彼らのことも褒めてやらなければいけないんです。それが大人として正しい対応でした」
ブリアードはそれまで浮かべていた人のいい笑顔を、ふいに曇らせて、短いため息をついた。
「もし自分の子から守護霊術の術者に選ばれる技師が出たら、褒めるどころか、感涙するでしょうね、私は。いえ、驚きで絶命してもおかしくありません」
「それは……さすがに大げさでは……?」
いいえ、とブリアードは項垂れた。
「ヤクートを見たらわかるでしょう?私には六人も子供がいるのに、うち四人は霊能力がさっぱりで技師になることもできませんでした。ヤクートと、末のサミーだけはどうにか技官になれましたが、それも増員があったからなれたようなもので、災嵐が過ぎた後、資格をはく奪されてしまうんではないかといまからひやひやしていますよ。二人とも私に似てしまって、不器用で容量が悪くて……どちらかに家を継がなせなくてはならないと考えると……はあ……」
ラウラの憤りを収めようとしていたブリアードだったが、いつしか身内話に没入しはじめる。
「いえね?不出来なのは子どもだけじゃないんですよ?私だって、本当は向いてないんです、家督なんて。技官の仕事もありますし、六人の子どもの父親やるだけでも精一杯なのに、なまじ古い家だからってこんな私の下にも弟子が集うんですよ。弟子の面倒まで見なくちゃいけないんですよ。勘弁してほしいです。そんな甲斐性ないんですよ、私には。アフィーみたいに才能のある子ならなおさら……荷が重くてしかたないです。本当はもっといいところに弟子入りするべきなのに……」
「アフィーの才能は十分開花していますよ。それは間違いなくブリアードさんの指導があったからこそですよ」
「そうですか?そう言ってくださいますか?――――ありがたいことです、ほんと。アフィーはそれこそ最初はなし崩し的に預かることになりましたが、とにかく一生懸命でしたから、こちらも教え甲斐がありましたし、実は私、すごく熱を入れて指導にあたったんですよ。彼女は不愛想ですが、とても素直ですから、弟子としては本当にかわいいものでした。……それに比べて、うちの子どもといったら――――」
「ヤクートさん、丙級ではすごくがんばっていましたよ。よくまとめ役になってくれて、みんなからも頼りにされていました。それに、サミーさんの方は、西方霊堂で良級に振り分けられるくらいですから、技師としての実力は申し分ないのでは?」
そんなことありません、とブリアードは満更でもなさそうに謙遜する。
「ヤクートはお調子者で遊んでばかりですし、サミーの方は真面目ですが、小心者で人の顔色ばかり窺っています。いっぱしの技師を名乗るにはあと二皮はむけてもらわないと」
「きっとすぐですよ」
「そうですかねえ、そうですといいんですけどねえ。私はまず今日、ヤクートが何事もなく務めを果たしてくれるかどうかが心配でなりません」
ブリアードの言葉に、ラウラははっとして、懐中時計を再び確かめた。
縮地の予定時刻までもう一分を切っていた。
ラウラは気を引き締めなおす。
ブリアードのぼやきに付き合っているうちに、ラウラはすっかり落ち着きを取り戻していた。
「あと十秒です」
ラウラはそう言って、展望楼から身を乗り出し、夜空の星座の位置を目に焼き付ける。
ブリアードも首長も官吏たちも、みな同じように、瞬きもせずに夜空を凝視する。
ラウラは懐中時計が秒針を刻む音を、頭の中で数えた。
(五、四、三、二、一、……――――)
――――バチッ!
全身に静電気を受けたような、軽い衝撃が走った。
そしてその瞬きの間に、夜空に浮かぶ星々は、その位置を大きく変えていた。
おおっ、と驚嘆の声が上がる。
「これは、成功、したのか?」
首長の呟きに、ラウラは胸を張って答えた。
「大成功です!」
ラウラは歓喜に包まれ、今にも飛び跳ねたいほどだったが、周囲はまだ困惑したような様子で、双眼鏡を振り回し、星図と夜空を見比べ、厳めしい顔つきで協議していた。
「確かに七日分動いている」
「本当に時間を飛んだのか?七日先に来たというのか?」
「実感がもてん」
彼らの困惑も無理はなかった。
七日先に世界が飛んだことを示すのは、夜空に瞬く星々の動きだけだった。
星は確かに動いている。
長らく縮地に携わってきたラウラにとって、これほど成功の確たる証明はないが、はじめて縮地を経験する人びとにとって、それはただの星見と変わらない。
あまりにも不確かで、手放しで喜ぶには弱すぎる証明だった。
「これでは、幻を見せられたという方が、まだ納得できるな」
誰が言ったか、その囁きを耳にしたラウラは、またたまらないくやしさを覚え、拳を握った。
「まっ――――まあまあ、みなさん!」
しかし今度は、ブリアードが先回りして間に入った。
「少なくとも星は動いた。いまはそれで十分じゃありませんか?防壁が崩れれば、すぐに事実が明らかになるんですから」
縮地により、エレヴァンのほとんどは七日の時を飛んだが、欄干と呼ばれる山脈の高地だけは縮地の範囲から外され、時をそのままに刻んでいる。
人の住まない山間部、盆地を囲う山脈の中腹から山頂にかけてだ。
全土がたしかに七日先へ飛んだことを証明するために、一部の官吏はこの七日、あえてその範囲外である欄干に身を置いていた。
官吏だけでなく、いまだ縮地を疑う市民もこぞって山に登った。
展望楼で縮地を体験した首長含む南都の顔役たちも、信頼のおける者を山に登らせ、外側から縮地の様子を観察するよう言いつけていた。
首長たちが縮地を認めるためには、彼らの証言が必要だった。
しかし南都はいま、防壁に囲われている。
守護霊術は一度発動すると、七日間は外から都市に入ることも、都市から外に出ることもできなくなる。
つまりいまここでどれだけ協議を重ねたところで、首長たちは答えも納得も得ることはできないのだ。
首長たちにいまできることは、ただ待つことだけだった。
「もどかしいですが、いまは堪えましょう。それより、どうですか、とりあえずひと段落したということで、一杯やるというのは?」
「まあ……そうだな」
ブリアードの提案によってその場は治められたが、ラウラは溜飲を下げることができなかった。
(ひどい)
(カイさんも、マヨルカたちも、すごくがんばったのに)
(結果だってちゃんと出したのに)
(どうして顧みないんだろう)
(なにを疑うことがあるんだろう)
気づけば展望楼に残っているのはラウラ一人だけになっていた。
ラウラは空を見上げた。
空の中心には、変わらず二重の黒円がある。
輝く星々の光も、眩い月光も、なにひとつ反射することなく、泰然と。
月は傾きはじめていたが、そのほんの一部が黒円にかかり、虫に食われたような小さな欠けができていた。
それを見ているうちに、ラウラの胸に不安がよぎった。
縮地は成功したはずだった。
星は確かに七日分位置を変えていた。
(なにも問題ないはずなのに、どうして、こんな気持ちになるんだろう)
ラウラはふと、気がついた。
(そっか)
(ほかの人たちも、同じ気持ちなんだ)
(怖いんだ。不安なんだ)
防壁があっても、縮地があっても、実際に災嵐が過ぎ去るまでは、安心することはできない。
カイの像に群がる人びととて、恐怖を紛らわすために、その場しのぎの信仰にすがっているにすぎないのだ。
ラウラは左手の親指にはまる指輪を握りしめた。
霊力をこめると、ノヴァのいる方向、朝廷へと意識が向いた。
(カイさんは、どうしているかな)
(縮地の成功を、きちんと認めてもらえているかな)
ラウラはまた月を見上げた。
月は動き、黒円による欠けはすでになくなっていた。
(きっと大丈夫だ)
白く輝く上弦の月と、その横に並ぶ黒円を見て、ラウラは思った。
(陛下はなによりも公正公明な方だ。今回の縮地の成功だって、きっと認めてくれるはず)
(それに、ノヴァがいるから)
(カイさんが蔑ろになんて、絶対しない)
「おねえちゃーん、どこー?」
ラウラを探す子どもたちの声が、階下から響いてきた。
ラウラはそれに、大きな声で返事をした。
「はーい、今行くよー!」
(カイさんきっと、手厚く労われているはずだ)
(カイさんを認めている人たちに)
(それならマヨルカたちを労うのは、私だ)
ラウラは指輪から手を離し、子どもたちのもとへ向かった。
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