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第二章
戌歴九九八年・初夏(三)
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十三歳のアフィー・サルクは誰もが目を奪われる美しい相貌をしていた。
それは芸術的なまでの美しさだった。
高い背丈も、すらりと伸びた手足も、整った目鼻立ちも、すでに成熟した大人のものだ。
しかしアフィー自身はまだ年相応の子どもであり、容姿に内面が追いついていなかった。
そのため完成されているはずの顔立ちにどこか幼さが浮かび、彼女の相貌は不完全なものとなった。
その不完全性は半透明の衣となって彼女を覆う。
衣は齢も、性別も、感情の起伏をも隠してしまう。
石膏の彫像のように、完全であるはずなのに、なにかが欠落している。
けれど誰もそれを見つけることができない。
そんな謎めいた美しさを、十三歳のアフィー・ライカは持っていた。
二十時過ぎになって、アフィーとカイは同時に、ようやく課題を仕上げ終えた。
「腹減った……」
ラウラから合格を告げられた瞬間、カイは大きく腹を鳴らした。
「遅くまでよくがんばりましたね。アフィーさんも、時間はかかりましたが、素晴らしい出来です」
「うん……」
アフィーはラウラの労わりに小さな声で返事をした。
ラウラはアフィーの皮生地をカイに向けて広げる。
「見てください。差し損じやたわみがないどころか、絵筆で描かれたような出来栄えです。手を使ったって、なかなかここまでの刺繍はできませんよ」
ラウラの言葉はお世辞ではなく、アフィーの刺繍の腕は確かなものだった。
皮生地には桃の花が緻密に描かれている。
カイ含め他の候補生の刺繍は、簡略化された花の記号に過ぎないのに対し、アフィーの刺したものはそれがなんの花であるか一目瞭然で、技術には雲泥の差があった。
カイは感心して、刺繍をそっと指で撫でた。
「ほんだ。すげえなあ。器用なのか不器用なのかわかんないな、アフィーは」
「……」
アフィーはラウラの手から、半ば奪うようにして皮生地を取り上げると、なにも言わずに教室を出て行ってしまった。
その耳はかすかに赤く染まっていたが、ラウラとカイはそれに気づかず、揃って気落ちした声を出した。
「なにか気にさわることを言ってしまいましたかね……」
「いや、ラウラは褒めただけでなにも――――あー、やっぱおれ、嫌われてんのかなあ」
「まさか。閣下を嫌うなんて……」
「でもおれ避けられてるっぽいんだよ。話しかけても無視されるし、席だっていつもおれから一番離れたとこ選ぶしさ。でもそのわりに見られてる気がするんだよな。目は合わせてくんないけど……。――――あれかな、教室で騒いでばっかいるから、目障りだったかな?」
「そんなことありませんよ。アフィー以外のみなさんとは、仲良くされているじゃありませんか」
ラウラは自分の発言で心が重くなった。
「そうです……いまこの教室ではアフィーだけが浮いています。修練は切磋琢磨して、互いに刺激を与えあって行うべきものですから……望ましくない状況です」
アフィーは丙級の輪に入れていなかった。
日中ほとんどの時間を共に過ごしているにも関わらず、アフィーと彼らは挨拶を交わす程度の間柄でしかなかった。
口下手で内向的な彼女自身にも問題はあるが、周囲の候補生もあえて自分から彼女に近づこうとはしなかった。
なぜならアフィーは芸術品のような容姿をしている。
おまけに丙級唯一の女性で、全候補生の中でも最年少である十三歳という若さだ。
丙級の候補生たちは、そんな年下の美しい少女に対し、どう接していいかわからなかった。
彼らはアフィーを嫌っているわけでも、煙たがっているわけでもない。
けれど結果的に、アフィーは孤立してしまっていた。
ラウラはそんな丙級の状況を、指導者として看過できなかった。
またカイもこのままではいけないと考えていた。
カイの場合は、仲間内で誰か一人が浮いている、馴染めていない状況を快く思っていないだけだったが、それでも真剣に悩んでいた。
しかし当のアフィーに自分が嫌われてしまっていては、立つ瀬がない。
「やっぱ十三歳の女の子からしたら、おれみたいのがはしゃいでたらキモイのかな?十三歳から見れば、七つも上の男はもうおっさんだろうしな……」
「そんなことありませんよ」
ラウラは即座に否定したが、カイは真に受けず、苦笑して首を振った。
「同じ十三歳のラウラから見て、アフィーはどうよ?」
「そうですね……同じ年とはいっても、育った環境が違いますし……。それにアフィーさんはとても美しい人です。わたしはあんなにきれいな人が同じ年だなんて今でも信じられないくらいですから、彼女の心境なんて、まるで見当もつきません」
「ラウラだってめちゃくちゃカワイイけどな」
「ありがとうございます」
カイの言葉に、ラウラははにかんだ。
彼女はそれを世辞として受け取り、さほど照れた様子も見せなかった。
しかしカイの言葉は本心からくるものだった。
アフィーの美しさが芸術品であるならば、ラウラの愛くるしさは野に咲く花だった。
甘いかおりを漂わせる、目に優しい色合いの、風にそよぐ柔らかい花弁をもった、人の心を和ませる花だ。
ただ当人は、自身の容姿に不満を抱えていた。
小柄な身体も、大きなたれ目も、高い声も、ラウラは子どもっぽいものだと思っていた。
事実彼女がいかに官吏として威厳をもち、気丈にふるまっても、それは周囲の人々にとって背伸びをした子どもとしてしか映らなかった。
ラウラははやく大人になりたいと、いつも願っていた。
そんな彼女にとって、周囲をよせつけないアフィーの美しさは、たまらなく羨ましいものだった。
「まあたしかにアフィーはきれいすぎるよな。美人の若い女の子って、それこそおれとなんか共通点いっこもなくて、よけいどう絡めばいいかわかんないよ」
二人は行き詰まり、頭を抱えた。
「まだ終わらないの?」
そう言って教室に入ってきたのは、帰りが遅いことを心配したシェルティだった。
「夕食が乾いてしまうよ」
カイとラウラは顔を見合わせ、頷き合った。
二人から相談を受けたシェルティは、事も無げに言った。
「そんなの、ただしつこいくらい構ってあげればいいだけじゃないか」
「いやだから、それやっておれ嫌われたんだって」
「照れているだけさ」
シェルティはカイの仕上げた課題を手に取り、それをしげしげと眺めながら続ける。
「アフィー・サルクはきみに次ぐ有名人だからね、知っているんだ。何度か目にしたことがある。あれは確かに目立つ子だし、周りからも浮くだろう。けど、中身は年相応の、いや実年齢よりむしろ子どもなんじゃないかな」
「そうは思えないけど」
「少なくともラウラ嬢よりはずっと子どもだよ。――――美しいけれど、それをひけらかしていないだろう?あの子は」
「まあお高くとまってるかんじはないな」
「そうですね。指導には素直に従いますし」
二人の意見に、シェルティは確信をもって頷く。
「やっぱりね。容姿に自信があれば、もっと身なりに気を配るものだ。けれどあの子にはそれがない」
シェルティの指摘通り、アフィーは身なりにほとんど気を使っていなかった。
瞳と同じ深い藍色をした頭髪は、白い肌を際立たせるものだったが、少年のように短く切り揃えられてしまっている。
切り口は乱雑で、ろくな手入れを施していないのだろう、髪は毛先から乾燥して痛んでしまっている。
手指も同様で、乾燥してひび割れ、傍目にもわかるマメの跡やあかぎれがあった。
また多くの女子候補生は、制服の上から装飾品や香を身につけ、少しでも個性を出そうと奮闘していたが、アフィーは制定された制服だけを着用し続けていた。
それも仕立てが悪いのか、他の候補生と並び立つとくたびれて見えるような代物だった。
「それに候補生の中で短髪なのはあの子くらいだろう」
シェルティの指摘を受けて、ラウラは自分の長い髪に触れた。
ラウラは腰まで届く長い髪を、固く編んでまとめている。
カイとシェルティも、ふだんは結いあげているが、ひとたびほどけばその髪は背中まで落ちていくだろう。
三人が特別長い髪を持っているわけではない。
この世界では、髪が短くしている人間の方が珍しいのだ。
エレヴァンにおいて、髪は故人と生者を繋ぐ糸のようなものだとされている。
そのため人びとはこぞって髪を伸ばし、入念に手入れをした。
先祖からの加護を得るために。
伴侶や子どもと、死後も離れないでいるために。
加えて富裕層では美しい髪は高貴の証ともされ、ことさらに髪を大切にしていた。
髪の短い女性のほとんどは地方農民、あるいは狩猟民で、それは貧しさを表すものだとされていた。
「彼女は農村の出だからああいう髪型なのだろうと思っていました」
「いまどきよほど貧しい農村でもなければ、髪を短くしている人なんていないよ。それに貧しくても、ここにいればいくらか給金が入る。髪を手入れするための香油くらい買えるだろう?」
「すべて故郷に持ち帰るために貯めているのかと……」
ラウラの発言に、カイはなるほど、と手を叩く。
「ああ、他にもそういうやついたな。貧乏で地元じゃ食えないからここきたってやつら。そいつらも節約して貯めてるって言ってたけど……アフィーもその口だったのか」
「いずれにしても、容姿が二の次であるのは確かだろう。家族がそうさせなかったのかもしれないが、あの美しさなら、いくらでも他に稼ぎ方があったろうに、わざわざ危険の多い技師になる道を選んだんだから」
ラウラとカイは表情を曇らせる。
アフィーに対する同情が、二人の中には芽生えていた。
「アフィー・サルクは貧乏な田舎の子どもなんだよ」
シェルティはそんな二人を励ますように言った。
「見た目に騙されず、そう考えて付き合ってごらん。きっと打ち解けられるから」
「貧乏な田舎の子どもって……」
「言い方が悪かったかな?」
シェルティは訂正する。
「世間をあまり知らない、まだ幼い女の子なんだよ」
「よけいどう接していいかわかんないよ」
「カイはこれまでどおり、積極的に話しかけてあげればいいよ。なるべく輪にいれてあげる努力をするんだ。その子からしてみればカイたちは大人の男の集団だからね、最初は距離をとって当然さ。そのうち緊張も警戒も解れるだろうから、大事なのは見限らずに、その子が慣れるまで辛抱強く待ってあげることだよ」
「なんか野良猫を手懐けるみたいだな……」
「あははは。近いかもしれないね。引っ掻かれないよう気をつけて」
「おれ犬派なんだけどなあ」
カイは唐突にシェルティの頭をわしづかみにして、髪の毛をかき乱すようにして撫でた。
「な、なんだい急に?」
戸惑うシェルティに、カイは屈託ない笑顔を向ける。
「いやお前ほんと頼りになるなと思ってさ!」
「……大したことを言ったつもりはないよ」
「いいや、さすが百戦錬磨の言うことはちがうなって、感心しますよ」
「皮肉かい?」
「心からの賛辞だよ。――――ってかお前、髪さらさらすぎ」
カイはいくらかき乱してももとの形に収まるシェルティのやわらかい直毛に驚く。
「毎朝爆発するおれの頭とはえらい違いだ」
「だから毎朝言ってるじゃないか。髪の手入れも寝ぐせの面倒もぼくが見てあげるって」
「それはちょっと、抵抗が……」
「百戦錬磨の腕の見せ所なんだけどな」
「いやおれには披露しなくていいから!」
カイとシェルティのじゃれ合いに、ラウラは遠慮がちに言葉を挟む。
「あの、殿下。私は、なにか彼女にできることがあるでしょうか?」
「そうだなあ。たしかに君たち齢は同じだけど、立場が違うし、贔屓はできないからね」
シェルティは少し考える。
「――――いや、むしろ丙でひとりだけの女の子なんだ、多少の贔屓は大目に見てもらえるだろう。まあ基本はカイと同じでいいんじゃないかな。よく話かけてあげること。あとは、使い古しのものでいいから、軟膏や髪油を渡してあげるといい」
「軟膏と髪油を?」
「今のままじゃあまりにも田舎者丸出しだからね。あの子が周りから浮いているのは、美貌のせいだけじゃない。身体の手入れを覚えさせて、少しでも田舎者の風体を払拭できれば、もう少し周りに溶け込めるんじゃないかな」
「なるほど……何事も形から、ということですね。ありがとうございます、試してみます」
意気込むラウラを横目に、カイは唸る。
「さすがだよな、ほんと。あんな美人つかまえて田舎者って見抜くなんて、おれにはできないよ」
「……聡いのか鈍いのかよくわからない人だな、君は」
シェルティはふと、思いついたように手を叩き合わせた。
「それもそうか。君は女性慣れしていないんだったね。うん。そう考えると僕への過大評価も得心がいく」
「……は?」
「カイ。みんながみんな自分と同じように、美人を前にするとそれだけで思考停止してしまう、とは思わない方がいいよ」
「煽ってんのか?」
「茶化しているんだよ」
「はっきり言いやがっててめえこの野郎……!」
シェルティは笑顔で受け流し、カイの仕上げた刺繍を指でなぞる。
「――――それにしてもなんだい?これで花のつもり?」
「どっからどう見ても花だろ。……笑うなよ」
「笑わないよ。子どもが地面にする落書きそっくりだ」
「バカにはしてるな?」
カイはくやしそうに口をとがらせる。
「……霊操やっぱ難しいな。全然うまくならないや」
「自分の成長にはなかなか気づけないものさ。日進月歩、きみの努力はきちんと実を結んでいるよ」
「バカにした直後にそう言われてもなあ」
「本心だよ」
「わかってるよ。ありがとう。――――もう戻るか。腹ぺこぺこだよ」
カイは大きく伸びをしながら言った。
「そうしよう。ラウラ君も、もう食堂は閉まっているだろうし、ぼくらのところで一緒に食べよう。用意はしておくから」
「え、もうそんな時間ですか?」
ラウラがそう言うと同時に、二十一時を知らせる鐘が霊堂内に鳴り響いた。
それは候補生の宿舎と、併設された食堂が施錠される合図でもあった。
カイとシェルティはその特殊な立場から他の候補生とは別の、独立した住居が与えられていた。
ラウラは教官用の宿舎で寝起きしているが、炊事場のようなものはなく、食事は食堂か外の夜市まで行かなければとることができない。
遅くまでカイとアフィーに付き合っていたラウラには、まだ残務が残っている。
外食に赴く時間はない。
「……すみません、殿下。いつもお気遣いありがとうございます」
ラウラが夕食を世話になるのはこれが初めてではなかった。
ラウラは手間を顧みず、熱心な指導を行うので、時間が押すことはもはや恒例となっていたのだ。
「気にしないで。いつも遅くまで、カイのためにご苦労様」
「いやお前が礼を言うのはおかしいだろ」
「不出来な息子で、ご面倒をおかけします」
「母親面するな!」
「父親面のつもりだっただけど?母親のほうがよかった?」
「うっ――――」
カイは一瞬言葉に詰まるが、すぐにむきになって言い返す。
「いやどっちも頼んでないからな!?」
「あははは」
軽口を交わし合う二人は、仲の良い友人のようにしか見えなかった。
カイは丙級の候補生たちとすっかり打ち解けた様子だったが、シェルティとはそれ以上に親密な様子だった。
ラウラはそんな二人をぼんやりと眺めながら、いいな、と思った。
(わたしにも、あんなふうに笑い合える友だちがいたら――――)
ラウラの頭に、ノヴァの顔がよぎる。
(……なに考えてるんだろ、私)
けれどすぐに打ち消してしまう。
(もう、ノヴァとは昔みたいにはなれない)
(お兄ちゃんはいなくなっちゃったし、お互い、子どもじゃなくなったから)
(やらなくちゃいけないことがあるんだから)
(友だちと遊んでる暇なんて、ないんだから)
ラウラは手早く荷物をまとめ、おしゃべりを続ける二人に言った。
「夕食、やっぱり遠慮しておきます」
カイとシェルティははたと軽口を止める。
「実はまだ、けっこう仕事が残っているんです。今日中に片付けてしまいたいので、せっかくお誘いいただいたのに申し訳ないのですが、ここで失礼させてください」
カイとシェルティは引き留めたが、ラウラはそれを振り切って、一人教室をあとにした。
それは芸術的なまでの美しさだった。
高い背丈も、すらりと伸びた手足も、整った目鼻立ちも、すでに成熟した大人のものだ。
しかしアフィー自身はまだ年相応の子どもであり、容姿に内面が追いついていなかった。
そのため完成されているはずの顔立ちにどこか幼さが浮かび、彼女の相貌は不完全なものとなった。
その不完全性は半透明の衣となって彼女を覆う。
衣は齢も、性別も、感情の起伏をも隠してしまう。
石膏の彫像のように、完全であるはずなのに、なにかが欠落している。
けれど誰もそれを見つけることができない。
そんな謎めいた美しさを、十三歳のアフィー・ライカは持っていた。
二十時過ぎになって、アフィーとカイは同時に、ようやく課題を仕上げ終えた。
「腹減った……」
ラウラから合格を告げられた瞬間、カイは大きく腹を鳴らした。
「遅くまでよくがんばりましたね。アフィーさんも、時間はかかりましたが、素晴らしい出来です」
「うん……」
アフィーはラウラの労わりに小さな声で返事をした。
ラウラはアフィーの皮生地をカイに向けて広げる。
「見てください。差し損じやたわみがないどころか、絵筆で描かれたような出来栄えです。手を使ったって、なかなかここまでの刺繍はできませんよ」
ラウラの言葉はお世辞ではなく、アフィーの刺繍の腕は確かなものだった。
皮生地には桃の花が緻密に描かれている。
カイ含め他の候補生の刺繍は、簡略化された花の記号に過ぎないのに対し、アフィーの刺したものはそれがなんの花であるか一目瞭然で、技術には雲泥の差があった。
カイは感心して、刺繍をそっと指で撫でた。
「ほんだ。すげえなあ。器用なのか不器用なのかわかんないな、アフィーは」
「……」
アフィーはラウラの手から、半ば奪うようにして皮生地を取り上げると、なにも言わずに教室を出て行ってしまった。
その耳はかすかに赤く染まっていたが、ラウラとカイはそれに気づかず、揃って気落ちした声を出した。
「なにか気にさわることを言ってしまいましたかね……」
「いや、ラウラは褒めただけでなにも――――あー、やっぱおれ、嫌われてんのかなあ」
「まさか。閣下を嫌うなんて……」
「でもおれ避けられてるっぽいんだよ。話しかけても無視されるし、席だっていつもおれから一番離れたとこ選ぶしさ。でもそのわりに見られてる気がするんだよな。目は合わせてくんないけど……。――――あれかな、教室で騒いでばっかいるから、目障りだったかな?」
「そんなことありませんよ。アフィー以外のみなさんとは、仲良くされているじゃありませんか」
ラウラは自分の発言で心が重くなった。
「そうです……いまこの教室ではアフィーだけが浮いています。修練は切磋琢磨して、互いに刺激を与えあって行うべきものですから……望ましくない状況です」
アフィーは丙級の輪に入れていなかった。
日中ほとんどの時間を共に過ごしているにも関わらず、アフィーと彼らは挨拶を交わす程度の間柄でしかなかった。
口下手で内向的な彼女自身にも問題はあるが、周囲の候補生もあえて自分から彼女に近づこうとはしなかった。
なぜならアフィーは芸術品のような容姿をしている。
おまけに丙級唯一の女性で、全候補生の中でも最年少である十三歳という若さだ。
丙級の候補生たちは、そんな年下の美しい少女に対し、どう接していいかわからなかった。
彼らはアフィーを嫌っているわけでも、煙たがっているわけでもない。
けれど結果的に、アフィーは孤立してしまっていた。
ラウラはそんな丙級の状況を、指導者として看過できなかった。
またカイもこのままではいけないと考えていた。
カイの場合は、仲間内で誰か一人が浮いている、馴染めていない状況を快く思っていないだけだったが、それでも真剣に悩んでいた。
しかし当のアフィーに自分が嫌われてしまっていては、立つ瀬がない。
「やっぱ十三歳の女の子からしたら、おれみたいのがはしゃいでたらキモイのかな?十三歳から見れば、七つも上の男はもうおっさんだろうしな……」
「そんなことありませんよ」
ラウラは即座に否定したが、カイは真に受けず、苦笑して首を振った。
「同じ十三歳のラウラから見て、アフィーはどうよ?」
「そうですね……同じ年とはいっても、育った環境が違いますし……。それにアフィーさんはとても美しい人です。わたしはあんなにきれいな人が同じ年だなんて今でも信じられないくらいですから、彼女の心境なんて、まるで見当もつきません」
「ラウラだってめちゃくちゃカワイイけどな」
「ありがとうございます」
カイの言葉に、ラウラははにかんだ。
彼女はそれを世辞として受け取り、さほど照れた様子も見せなかった。
しかしカイの言葉は本心からくるものだった。
アフィーの美しさが芸術品であるならば、ラウラの愛くるしさは野に咲く花だった。
甘いかおりを漂わせる、目に優しい色合いの、風にそよぐ柔らかい花弁をもった、人の心を和ませる花だ。
ただ当人は、自身の容姿に不満を抱えていた。
小柄な身体も、大きなたれ目も、高い声も、ラウラは子どもっぽいものだと思っていた。
事実彼女がいかに官吏として威厳をもち、気丈にふるまっても、それは周囲の人々にとって背伸びをした子どもとしてしか映らなかった。
ラウラははやく大人になりたいと、いつも願っていた。
そんな彼女にとって、周囲をよせつけないアフィーの美しさは、たまらなく羨ましいものだった。
「まあたしかにアフィーはきれいすぎるよな。美人の若い女の子って、それこそおれとなんか共通点いっこもなくて、よけいどう絡めばいいかわかんないよ」
二人は行き詰まり、頭を抱えた。
「まだ終わらないの?」
そう言って教室に入ってきたのは、帰りが遅いことを心配したシェルティだった。
「夕食が乾いてしまうよ」
カイとラウラは顔を見合わせ、頷き合った。
二人から相談を受けたシェルティは、事も無げに言った。
「そんなの、ただしつこいくらい構ってあげればいいだけじゃないか」
「いやだから、それやっておれ嫌われたんだって」
「照れているだけさ」
シェルティはカイの仕上げた課題を手に取り、それをしげしげと眺めながら続ける。
「アフィー・サルクはきみに次ぐ有名人だからね、知っているんだ。何度か目にしたことがある。あれは確かに目立つ子だし、周りからも浮くだろう。けど、中身は年相応の、いや実年齢よりむしろ子どもなんじゃないかな」
「そうは思えないけど」
「少なくともラウラ嬢よりはずっと子どもだよ。――――美しいけれど、それをひけらかしていないだろう?あの子は」
「まあお高くとまってるかんじはないな」
「そうですね。指導には素直に従いますし」
二人の意見に、シェルティは確信をもって頷く。
「やっぱりね。容姿に自信があれば、もっと身なりに気を配るものだ。けれどあの子にはそれがない」
シェルティの指摘通り、アフィーは身なりにほとんど気を使っていなかった。
瞳と同じ深い藍色をした頭髪は、白い肌を際立たせるものだったが、少年のように短く切り揃えられてしまっている。
切り口は乱雑で、ろくな手入れを施していないのだろう、髪は毛先から乾燥して痛んでしまっている。
手指も同様で、乾燥してひび割れ、傍目にもわかるマメの跡やあかぎれがあった。
また多くの女子候補生は、制服の上から装飾品や香を身につけ、少しでも個性を出そうと奮闘していたが、アフィーは制定された制服だけを着用し続けていた。
それも仕立てが悪いのか、他の候補生と並び立つとくたびれて見えるような代物だった。
「それに候補生の中で短髪なのはあの子くらいだろう」
シェルティの指摘を受けて、ラウラは自分の長い髪に触れた。
ラウラは腰まで届く長い髪を、固く編んでまとめている。
カイとシェルティも、ふだんは結いあげているが、ひとたびほどけばその髪は背中まで落ちていくだろう。
三人が特別長い髪を持っているわけではない。
この世界では、髪が短くしている人間の方が珍しいのだ。
エレヴァンにおいて、髪は故人と生者を繋ぐ糸のようなものだとされている。
そのため人びとはこぞって髪を伸ばし、入念に手入れをした。
先祖からの加護を得るために。
伴侶や子どもと、死後も離れないでいるために。
加えて富裕層では美しい髪は高貴の証ともされ、ことさらに髪を大切にしていた。
髪の短い女性のほとんどは地方農民、あるいは狩猟民で、それは貧しさを表すものだとされていた。
「彼女は農村の出だからああいう髪型なのだろうと思っていました」
「いまどきよほど貧しい農村でもなければ、髪を短くしている人なんていないよ。それに貧しくても、ここにいればいくらか給金が入る。髪を手入れするための香油くらい買えるだろう?」
「すべて故郷に持ち帰るために貯めているのかと……」
ラウラの発言に、カイはなるほど、と手を叩く。
「ああ、他にもそういうやついたな。貧乏で地元じゃ食えないからここきたってやつら。そいつらも節約して貯めてるって言ってたけど……アフィーもその口だったのか」
「いずれにしても、容姿が二の次であるのは確かだろう。家族がそうさせなかったのかもしれないが、あの美しさなら、いくらでも他に稼ぎ方があったろうに、わざわざ危険の多い技師になる道を選んだんだから」
ラウラとカイは表情を曇らせる。
アフィーに対する同情が、二人の中には芽生えていた。
「アフィー・サルクは貧乏な田舎の子どもなんだよ」
シェルティはそんな二人を励ますように言った。
「見た目に騙されず、そう考えて付き合ってごらん。きっと打ち解けられるから」
「貧乏な田舎の子どもって……」
「言い方が悪かったかな?」
シェルティは訂正する。
「世間をあまり知らない、まだ幼い女の子なんだよ」
「よけいどう接していいかわかんないよ」
「カイはこれまでどおり、積極的に話しかけてあげればいいよ。なるべく輪にいれてあげる努力をするんだ。その子からしてみればカイたちは大人の男の集団だからね、最初は距離をとって当然さ。そのうち緊張も警戒も解れるだろうから、大事なのは見限らずに、その子が慣れるまで辛抱強く待ってあげることだよ」
「なんか野良猫を手懐けるみたいだな……」
「あははは。近いかもしれないね。引っ掻かれないよう気をつけて」
「おれ犬派なんだけどなあ」
カイは唐突にシェルティの頭をわしづかみにして、髪の毛をかき乱すようにして撫でた。
「な、なんだい急に?」
戸惑うシェルティに、カイは屈託ない笑顔を向ける。
「いやお前ほんと頼りになるなと思ってさ!」
「……大したことを言ったつもりはないよ」
「いいや、さすが百戦錬磨の言うことはちがうなって、感心しますよ」
「皮肉かい?」
「心からの賛辞だよ。――――ってかお前、髪さらさらすぎ」
カイはいくらかき乱してももとの形に収まるシェルティのやわらかい直毛に驚く。
「毎朝爆発するおれの頭とはえらい違いだ」
「だから毎朝言ってるじゃないか。髪の手入れも寝ぐせの面倒もぼくが見てあげるって」
「それはちょっと、抵抗が……」
「百戦錬磨の腕の見せ所なんだけどな」
「いやおれには披露しなくていいから!」
カイとシェルティのじゃれ合いに、ラウラは遠慮がちに言葉を挟む。
「あの、殿下。私は、なにか彼女にできることがあるでしょうか?」
「そうだなあ。たしかに君たち齢は同じだけど、立場が違うし、贔屓はできないからね」
シェルティは少し考える。
「――――いや、むしろ丙でひとりだけの女の子なんだ、多少の贔屓は大目に見てもらえるだろう。まあ基本はカイと同じでいいんじゃないかな。よく話かけてあげること。あとは、使い古しのものでいいから、軟膏や髪油を渡してあげるといい」
「軟膏と髪油を?」
「今のままじゃあまりにも田舎者丸出しだからね。あの子が周りから浮いているのは、美貌のせいだけじゃない。身体の手入れを覚えさせて、少しでも田舎者の風体を払拭できれば、もう少し周りに溶け込めるんじゃないかな」
「なるほど……何事も形から、ということですね。ありがとうございます、試してみます」
意気込むラウラを横目に、カイは唸る。
「さすがだよな、ほんと。あんな美人つかまえて田舎者って見抜くなんて、おれにはできないよ」
「……聡いのか鈍いのかよくわからない人だな、君は」
シェルティはふと、思いついたように手を叩き合わせた。
「それもそうか。君は女性慣れしていないんだったね。うん。そう考えると僕への過大評価も得心がいく」
「……は?」
「カイ。みんながみんな自分と同じように、美人を前にするとそれだけで思考停止してしまう、とは思わない方がいいよ」
「煽ってんのか?」
「茶化しているんだよ」
「はっきり言いやがっててめえこの野郎……!」
シェルティは笑顔で受け流し、カイの仕上げた刺繍を指でなぞる。
「――――それにしてもなんだい?これで花のつもり?」
「どっからどう見ても花だろ。……笑うなよ」
「笑わないよ。子どもが地面にする落書きそっくりだ」
「バカにはしてるな?」
カイはくやしそうに口をとがらせる。
「……霊操やっぱ難しいな。全然うまくならないや」
「自分の成長にはなかなか気づけないものさ。日進月歩、きみの努力はきちんと実を結んでいるよ」
「バカにした直後にそう言われてもなあ」
「本心だよ」
「わかってるよ。ありがとう。――――もう戻るか。腹ぺこぺこだよ」
カイは大きく伸びをしながら言った。
「そうしよう。ラウラ君も、もう食堂は閉まっているだろうし、ぼくらのところで一緒に食べよう。用意はしておくから」
「え、もうそんな時間ですか?」
ラウラがそう言うと同時に、二十一時を知らせる鐘が霊堂内に鳴り響いた。
それは候補生の宿舎と、併設された食堂が施錠される合図でもあった。
カイとシェルティはその特殊な立場から他の候補生とは別の、独立した住居が与えられていた。
ラウラは教官用の宿舎で寝起きしているが、炊事場のようなものはなく、食事は食堂か外の夜市まで行かなければとることができない。
遅くまでカイとアフィーに付き合っていたラウラには、まだ残務が残っている。
外食に赴く時間はない。
「……すみません、殿下。いつもお気遣いありがとうございます」
ラウラが夕食を世話になるのはこれが初めてではなかった。
ラウラは手間を顧みず、熱心な指導を行うので、時間が押すことはもはや恒例となっていたのだ。
「気にしないで。いつも遅くまで、カイのためにご苦労様」
「いやお前が礼を言うのはおかしいだろ」
「不出来な息子で、ご面倒をおかけします」
「母親面するな!」
「父親面のつもりだっただけど?母親のほうがよかった?」
「うっ――――」
カイは一瞬言葉に詰まるが、すぐにむきになって言い返す。
「いやどっちも頼んでないからな!?」
「あははは」
軽口を交わし合う二人は、仲の良い友人のようにしか見えなかった。
カイは丙級の候補生たちとすっかり打ち解けた様子だったが、シェルティとはそれ以上に親密な様子だった。
ラウラはそんな二人をぼんやりと眺めながら、いいな、と思った。
(わたしにも、あんなふうに笑い合える友だちがいたら――――)
ラウラの頭に、ノヴァの顔がよぎる。
(……なに考えてるんだろ、私)
けれどすぐに打ち消してしまう。
(もう、ノヴァとは昔みたいにはなれない)
(お兄ちゃんはいなくなっちゃったし、お互い、子どもじゃなくなったから)
(やらなくちゃいけないことがあるんだから)
(友だちと遊んでる暇なんて、ないんだから)
ラウラは手早く荷物をまとめ、おしゃべりを続ける二人に言った。
「夕食、やっぱり遠慮しておきます」
カイとシェルティははたと軽口を止める。
「実はまだ、けっこう仕事が残っているんです。今日中に片付けてしまいたいので、せっかくお誘いいただいたのに申し訳ないのですが、ここで失礼させてください」
カイとシェルティは引き留めたが、ラウラはそれを振り切って、一人教室をあとにした。
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