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第二章
戌歴九九八年・春(十)
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「ああ、疲れた……」
ノヴァが退席すると、カイは座卓に突っ伏し、脱力した。
「緊張したね」
言葉とは裏腹に、シェルティは涼しい顔をしていた。
「ぜんぜん緊張してるように見えなかったけど」
「そう?」
「人で遊ぶ余裕があっただろ」
「いやあ、君を前にするとどうも、我慢ができなくなっちゃうんだよね。特にああして誰かと一生懸命喋ってる姿を見ると、からかいたくてたまらなくなるんだ」
「お前……そんな顔してドSとかタチ悪いわ……。おかげでおれの株だだ下がりなんだが……」
「そうかな。ノヴァはけっこう、君を信頼しているようだったけど」
「さっきのやりとりのどこでそう思えるんだよ。おれの男としての評価、もう地の底だよ」
「かわいそうに、元気をだして」
「お前のせいだからな!?」
「あははは」
「ふふっ」
堪えきれず、ラウラもつい笑いを漏らしてしまう。
「ラウラまで笑うなよ……ははっ」
つられて、怒っていたはずのカイも笑ってしまい、三人はしばらくとりとめもなく笑い合った。
「でも、うまくいってよかったです」
「皇帝の返事待ちだけどな、一安心、って言ったところか」
「ノヴァの許諾を得られたんだ。ほとんど決定と言っていい」
シェルティは顔をあげ、襟を正し、ラウラに向かって頭を下げる。
「彼に嘘をつくのは心苦しかっただろう。すまなかった。付き合わせてしまって」
ラウラは慌てて首を振る。
「顔をあげてください。殿下が気になさるようなことはなにも――――それに、私はノヴァ様に対して嘘をついたつもりはありません。ちょっとずるいですが、お二人の説得をお手伝いしただけです」
どうにかしてシェルティを朝廷に戻すことはできないか。
それも政治の駒としてではなく、彼の意志がきちんと反映される立場に。
カイがラウラに持ちかけた相談は、簡単な話ではなかった。
ラウラ自身に誰かを取り立てるような権限はない。
ましてや相手は皇太子だ。それこそ皇帝か弟のノヴァでなければ立場の保証などできないだろう。
そこでラウラは閃いた。
そのままカイが嘆願すればいいのだ、と。
カイのこの世界での地位は、皇族に次ぐ特権階級であるとみなされており、朝廷に協力的である限り、基本的にどんな要求も受け入れると、他ならぬ皇帝が宣言していた。
カイの申し出であれば、シェルティはこれまでの職務放棄に対して咎めを受けずに、朝廷に戻ることができるだろう。
さらに、渡来大使という立場上、どんな派閥にも属することのないカイに付けば、争いの火種となることもない。
そう考えたラウラは、はじめノヴァと監督役を交代してはどうか、と提案した。
災嵐対策室の室長は引き続きノヴァが務める。カイの監督役だけをシェルティが引き継ぐ。
カイは災嵐対策における要のような存在だ。その彼のお目付け役となれば、災嵐対策室長と肩を並べる大役といっても過言ではない。
二人の皇子はほとんど対等な立場を持つことになり、すべてが丸く収まる。
しかしこのラウラの案をシェルティは受け入れなかった。
彼は朝廷に戻ることもカイに付くことも承諾したが、ノヴァに代わってカイの監督役になることは固辞した。
対等ではいけないのだ、と。
自分が朝廷に戻るためには、次期継承権を放棄したと周囲に知らしめなければならない。
ノヴァに対する服従を見せなければならない、と。
派閥争いを収めるためとはいえ、そこまでする必要があるのか、ラウラには疑問だった。
「やりすぎるくらいでないと、納得しない連中がいいるからね。僕はカイのお目付け役ではなく、お世話係になるよ」
カイはそれを嫌がった。
ラウラも、皇太子のすることではないと説得したが、シェルティは応じず、最後は二人が丸め込まれてしまった。
残る問題は現状カイの身柄と周囲の人事について一切の責任を持つノヴァを説得させられるかどうか、ということであった。
ノヴァを無視して皇帝に直訴することもできるが、そんな不義理を働くつもりは、カイにもラウラにも毛頭なかった。
しかし頭の堅いノヴァがシェルティの侍従勤めを簡単に容認するとは思えない。
彼の説得には骨が折れるだろうと二人は覚悟していたが、簡単なことさ、とシェルティは一蹴した。
異父兄弟であるシェルティとノヴァは、同じ環境で育っていない。
幼少期から現在に至るまで交流も僅かで、特にノヴァは兄に対して遠慮があった。
シェルティが次期皇帝として育てられたように、ノヴァはいずれ宰相となり兄を助けるのだと教え込まれてきた。
その刷り込みは徹底されており、シェルティに代わって次期皇帝へと引き立てられるている今も、払拭されていない。
兄に対する引け目が、彼にはあった。
人の顔色を読むことをなによりも得意とするシェルティは、そんな弟の心中を見抜いていた。
シェルティはそれを利用した。
「政務中のノヴァはごく冷静で、いかなる状況においても合理的な判断を下す。だからまずノヴァからその平静を奪おう」
ノヴァを政務室から連れ出し、部下のいない、人目のないカイの私室に招く。
次に予告なくシェルティが現れる。
彼の苦手な兄が、カイと束になって屁理屈と駄々をこねる。
「そして最後のひと押しに、君が頭を下げるんだ」
「私が?」
「君の頼みを、ノヴァは絶対に断らない」
シェルティは確信していたが、ラウラは懐疑的だった。
そして結果は、シェルティの予見通りとなった。
「でもノヴァって本当にラウラに弱いんだな。よけいなこと言わないで、最初からラウラにお願いしてもらえばよかったんじゃないか?」
「ラウラ嬢に任せきりというのも悪いだろう。本来であれば僕らだけで解決するべき事案なんだから。確実な保険としての、最後のひと押しだけで、彼女の仕事は十分だよ」
「けっこう渋ってたのに、完全に鶴の一声だったからなあ。ラウラさまさまだよ、ほんと」
「私はなにも……ノヴァ様の優しさにつけこんだだけです」
ラウラの謙遜を、カイは即座に否定する。
「いいや。あいつのラウラ贔屓は相当なもんだよ。幼馴染なんだろ?だからかなあ。ああいうお堅いやつでも身内びいきはするんだなあ」
「ラウラ嬢は実力は確かだがまだ年若い。気にかけるのは当然だろう。それにノヴァは彼女の兄とも親しかったからね」
シェルティが何気なく言った言葉に、ラウラは表情をこわばらせる。
カイはそれに気づかずに話を続ける。
「ラウラの兄貴か……。あのノヴァに尻ぬぐいばっかさせてたんだろ?おもしろいよなあ。おれも会ってみたかったよ」
「……?カイ、君は――――」
「兄も閣下に会いたがっていましたよ」
シェルティの言葉を遮って、ラウラは言った。
そして彼にだけわかるよう、小さく合図を送った。
何も言わないでください、と。
「どんなひとが来るんだろうって、ずっと楽しみにしていました」
「そうだったんだ」
「はい。兄は霊術を用いない異界にとても興味を持っていましたから。文化や技術の違いについて、七日七晩は質問攻めにされたと思いますよ」
「うわ、それは勘弁だわ……。でも気持ちはわかるなあ。みんなに取っちゃ当たり前の霊操、おれには完全に超能力だし、ファンタジーだもん。ようやく角灯つけられるようになった程度だけど、魔法つかってるみたいで、テンションあがるし」
「そうですか。霊操、楽しんでいただけているようでなによりです」
ラウラは立ち上がり、カイの目の前に角灯を置く。
「それでは今日もはりきっていきましょう!」
それまで緩んでいた表情を、カイはひくっと強張らせる。
「……まじ?」
「今日の課題がまだ済んでいませんからね。夕食まで間もなくですが、少しでも進めておきましょう。終わらなかった分は食後にやればいいですから」
「え、いや、今日はほらさすがに、いろいろあったしもうお休みでいいんじゃないですか……?」
「いけません。修練は毎日続けることがなによりも重要なんです。呼吸をすることのように自然なものとして身体に覚えさせなければ」
「呼吸どころかいまのおれにとっちゃ息止めチャレンジするようなもんなのですが……?」
「楽しい気持があれば乗り切れます!がんばってください!」
軽率に楽しいなどというものじゃなかった、とカイは悔やんだが、後の祭りだった。
修練に励むカイを私室に残し、ラウラとシェルティは厨に向かった。
シェルティは侍従として夕餉の支度を整えるために。
ラウラはその付き添いであった。
「僕ひとりで十分なのに」
「いきなり皇太子殿下が食事の催促に現れたら、賄い方のみなさん飛び上がりますよ」
言った傍から、廊下の角から現れた若い侍女が、二人をみてぎょっと目を剥く。
慌てて頭を下げたものの、二人が通り過ぎた後、驚きと好奇の視線を向けてきた。
痛いほどの熱線を背中に感じながら、シェルティはたしかに、と皮肉めいた笑みを浮かべた。
「大鍋ごとひっくり返られたらたまらないね」
ところで、とシェルティは何気ない風を装って話題を転じる。
「――――君、彼にお兄さんのことを話していないのかい?」
予期していた質問だった。
ラウラがシェルティの供をしたのは、これに答えるためでもあった。
「先ほどは大変失礼いたしました。殿下に気を使わせるような真似をしてしまって……」
「かまわないよ」
シェルティは口元に皮肉な笑みを残したまま続ける。
「どうして言わないんだい?彼が気に病むと思っているのかな?」
「閣下は、優しい方ですから。ただでさえ重責を負わせているのに、兄のことまで気にしてほしくないんです」
「そうは言っても、いつまでも隠し通すことはできないだろう。カイ以外にとっては周知の事実だし、君たちは並ぶと兄妹にしか見えないからね」
夕餉が近いため、調理場へと続く廊下は行きかう侍女で混雑している。
すれ違う誰もがシェルティとラウラを見て顔色を変えた。
みな慌てて礼をするものの、通りすぎた後には囁き声が葉擦れの音のように広がった。
衆人環視にも流言飛語にも慣れきった二人は、気にせず足を進めていく。
「変に気を使ってほしくないんです」
ラウラは繰り返した。
それが正しいのだと、そうあるべきなのだと、自分に言い聞かせるように。
「閣下には、修練に集中していただかなくてはなりません。私の個人的な事情など、あえてお耳にかける必要はありません」
それを聞いたシェルティの顔から、ほんの一瞬、笑みが消える。
「なんだ、君は彼のためではなく――――」
シェルティは何ごとかを口にしたが、ちょうどそのとき、厨から大鍋を落としたような大きな音が響いてきた。
シェルティの声はかき消され、ラウラは最後まで聞き取ることができなかった。
「すみません、殿下、いまなんと?」
ラウラは聞き返したが、シェルティは答えなかった。
捉えどころのない笑みを顔に戻し、そうだね、と軽い調子で言った。
「僕も彼に対してその話題は避けよう。彼の置かれた状況はたしかに、尋常なものでないからね」
シェルティの変化に気づかず、ラウラはただほっと肩をなでおろした。
「ありがとうございます。――――でも、これから殿下がおそばにてくださるなら、閣下はきっと大丈夫ですね」
ラウラは掛け値なく言った。
「こんなに心強い味方はいませんから」
「……僕にはなんの力もないよ」
「でも、殿下と話しているときの閣下は、とても楽しそうでした」
カイは朝廷に来てから、ラウラにも侍女にも、周囲の誰に対しても遠慮があった。
気疲れが目に見えることも多々あった。
そのため、シェルティとくだけた調子で接するカイを見たとき、ラウラは安堵したのだった。
「お二人はまるで旧知の仲でした。十年来の友人のようでした。出会って間もないはずなのに……なぜでしょう?」
「それはきっと、僕らが似た者同士だからさ」
「同じことを閣下も仰っていました。――――だからこそ放っておけないのだ、とも」
「へえ?」
彼がそんなことをねえ、と呟き、シェルティは視線を落とす。
目元に前髪がかかり、いつものように微笑みを浮かべる口元以外の表情が隠れる。
「ずるいなあ、彼は。僕には『役に立て』としか言わないくせに」
シェルティは顔をあげ、前髪を耳にかける。
顔に張り付いていた笑みが、わずかに剥がれている。
「僕は彼を見てもなんとも思わないけどね。苛立ちも、助けたいとも」
「え?」
「でも僕と彼が似ているのはたしかだ。境遇だけじゃなくて根本が、性根が、僕らはよく似ている」
シェルティは自分のつま先を、その下に落ちる短く濃い影を見つめる。
「だから、もしかしたら僕はいつか彼のようになるのかもしれないね。それが僕にとっていいことなのか悪いことなのかわからないけど――――っ!」
シェルティは突然、弾かれたように両手で頭を抑えた。
「殿下?」
ラウラが驚いて声をかけると、シェルティは片手をあげて答える。
「――――問題ない」
「ですが……」
青ざめたシェルティの頬を、脂汗が伝う。
とても尋常な様子とは思えなかったが、シェルティは両手を降ろし、ごく自然な足取りで歩み出した。
「待ってください」
ラウラは慌ててその後を追う。
「殿下、どこかお身体の具合が悪いのでは?」
「いいや。驚かせてしまって悪かったね。実は僕、片頭痛持ちなんだ」
「片頭痛?」
「ああ。すぐに収まるものだから、気にしなくていいよ」
シェルティは色を失った顔で、微笑んで見せた。
息を飲むような美しい微笑だ。
事実、すれ違いざまにそれを目にした侍女は、礼も忘れて惚けてしまう。
(片頭痛……)
しかしラウラは、シェルティの花のかんばせには目もくれず、幼馴染の顔を思い出していた。
(そういえば、ノヴァも昔、よく頭が痛そうにしてたな)
片頭痛は家系なのだろうか。
ノヴァもまだ頭痛に悩まされているのだろうか。
案じたラウラは、シェルティに症状の詳細を訊ねようと、足を早めて彼の隣に並んだ。
そして息を飲んだ。
彼の微笑の美しさにではない。
半月型に細められた瞳の、爛々とした輝きに、だ。
その金色の瞳は皇家であるラサの一族特有のものだった。
ノヴァで見慣れていたはずだったが、ラウラはこのときはじめて、シェルティの瞳がノヴァとはまったく異なるものであることに気づいた。
煮えたぎった油のように揺れるシェルティの金眼は、飢えた獣のようだった。
あるいはカイに取り入ろうと揉み手をする、欲にかられた者たちの瞳だった。
「どうかしたかい?」
「いえ、なんでもありません」
皇太子らしからぬその瞳にラウラは総毛だち、咄嗟に目を逸らした。
エレヴァンを統べるラサの一族は、社会の泰平と発展のためにその身を捧げている。
彼らが皇家として尊ばれているのは、戌歴以前から続く古い血筋のためではない。
一切の私心を捨て去って公に尽くす、滅私奉公の精神のためだった。
我欲を持たない、清廉な存在とされているからだった。
(ありえない)
だからこそ、ラウラは我が目を疑った。
ラサの一族であるシェルティ垣間見せた、おざましいほどの熱に。
(きっと、見間違いだ)
(なにかの、勘違いだ)
(だってこの人は、ノヴァと同じ、ラサなんだから……)
恐怖を噛み殺し、再びシェルティに目を向けると、彼の瞳はもう先ほどのように揺れてはいなかった。
凪いだ瞳は、真昼の太陽のような薄い金色に落ち着いている。
しかしラウラは恐怖を拭えなかった。
安堵することはできなかった。
鳥肌は収まらず、胸には不安が根を張っていた。
(信頼していいんだよね……?)
ラウラは自問自答した。
(カイさんの味方になってくれたんだよね……?)
答えがどうであれ、もう後に引くことは出来ない。
ラウラはこれから、シェルティと共にカイを支えていかなくてはならないのだ。
どれだけ恐ろしかろうとも、腹の底が読めなかろうとも、付き合っていくしかないのだ。
ざわつく心に蓋をして、ラウラは決意を新たにする。
(信じるしかないんだ)
(きっと大丈夫)
(だって殿下はラサだもん)
(救世の要であるカイさんを貶めることなんて絶対にしない)
(余計な心配してないで、私は、私のやるべきことに集中しよう)
厨の中は騒然としていた。
どうやら誰かが鍋を中身ごとひっくり返したらしく、その始末に厨夫全員が追われていた。
「ほら、やっぱり君がついてくる必要はなかった」
シェルティはおどけて笑った。
「僕が突然現れようとそうでなかろうと、鍋はひっくり返る運命にあったらしい」
ノヴァが退席すると、カイは座卓に突っ伏し、脱力した。
「緊張したね」
言葉とは裏腹に、シェルティは涼しい顔をしていた。
「ぜんぜん緊張してるように見えなかったけど」
「そう?」
「人で遊ぶ余裕があっただろ」
「いやあ、君を前にするとどうも、我慢ができなくなっちゃうんだよね。特にああして誰かと一生懸命喋ってる姿を見ると、からかいたくてたまらなくなるんだ」
「お前……そんな顔してドSとかタチ悪いわ……。おかげでおれの株だだ下がりなんだが……」
「そうかな。ノヴァはけっこう、君を信頼しているようだったけど」
「さっきのやりとりのどこでそう思えるんだよ。おれの男としての評価、もう地の底だよ」
「かわいそうに、元気をだして」
「お前のせいだからな!?」
「あははは」
「ふふっ」
堪えきれず、ラウラもつい笑いを漏らしてしまう。
「ラウラまで笑うなよ……ははっ」
つられて、怒っていたはずのカイも笑ってしまい、三人はしばらくとりとめもなく笑い合った。
「でも、うまくいってよかったです」
「皇帝の返事待ちだけどな、一安心、って言ったところか」
「ノヴァの許諾を得られたんだ。ほとんど決定と言っていい」
シェルティは顔をあげ、襟を正し、ラウラに向かって頭を下げる。
「彼に嘘をつくのは心苦しかっただろう。すまなかった。付き合わせてしまって」
ラウラは慌てて首を振る。
「顔をあげてください。殿下が気になさるようなことはなにも――――それに、私はノヴァ様に対して嘘をついたつもりはありません。ちょっとずるいですが、お二人の説得をお手伝いしただけです」
どうにかしてシェルティを朝廷に戻すことはできないか。
それも政治の駒としてではなく、彼の意志がきちんと反映される立場に。
カイがラウラに持ちかけた相談は、簡単な話ではなかった。
ラウラ自身に誰かを取り立てるような権限はない。
ましてや相手は皇太子だ。それこそ皇帝か弟のノヴァでなければ立場の保証などできないだろう。
そこでラウラは閃いた。
そのままカイが嘆願すればいいのだ、と。
カイのこの世界での地位は、皇族に次ぐ特権階級であるとみなされており、朝廷に協力的である限り、基本的にどんな要求も受け入れると、他ならぬ皇帝が宣言していた。
カイの申し出であれば、シェルティはこれまでの職務放棄に対して咎めを受けずに、朝廷に戻ることができるだろう。
さらに、渡来大使という立場上、どんな派閥にも属することのないカイに付けば、争いの火種となることもない。
そう考えたラウラは、はじめノヴァと監督役を交代してはどうか、と提案した。
災嵐対策室の室長は引き続きノヴァが務める。カイの監督役だけをシェルティが引き継ぐ。
カイは災嵐対策における要のような存在だ。その彼のお目付け役となれば、災嵐対策室長と肩を並べる大役といっても過言ではない。
二人の皇子はほとんど対等な立場を持つことになり、すべてが丸く収まる。
しかしこのラウラの案をシェルティは受け入れなかった。
彼は朝廷に戻ることもカイに付くことも承諾したが、ノヴァに代わってカイの監督役になることは固辞した。
対等ではいけないのだ、と。
自分が朝廷に戻るためには、次期継承権を放棄したと周囲に知らしめなければならない。
ノヴァに対する服従を見せなければならない、と。
派閥争いを収めるためとはいえ、そこまでする必要があるのか、ラウラには疑問だった。
「やりすぎるくらいでないと、納得しない連中がいいるからね。僕はカイのお目付け役ではなく、お世話係になるよ」
カイはそれを嫌がった。
ラウラも、皇太子のすることではないと説得したが、シェルティは応じず、最後は二人が丸め込まれてしまった。
残る問題は現状カイの身柄と周囲の人事について一切の責任を持つノヴァを説得させられるかどうか、ということであった。
ノヴァを無視して皇帝に直訴することもできるが、そんな不義理を働くつもりは、カイにもラウラにも毛頭なかった。
しかし頭の堅いノヴァがシェルティの侍従勤めを簡単に容認するとは思えない。
彼の説得には骨が折れるだろうと二人は覚悟していたが、簡単なことさ、とシェルティは一蹴した。
異父兄弟であるシェルティとノヴァは、同じ環境で育っていない。
幼少期から現在に至るまで交流も僅かで、特にノヴァは兄に対して遠慮があった。
シェルティが次期皇帝として育てられたように、ノヴァはいずれ宰相となり兄を助けるのだと教え込まれてきた。
その刷り込みは徹底されており、シェルティに代わって次期皇帝へと引き立てられるている今も、払拭されていない。
兄に対する引け目が、彼にはあった。
人の顔色を読むことをなによりも得意とするシェルティは、そんな弟の心中を見抜いていた。
シェルティはそれを利用した。
「政務中のノヴァはごく冷静で、いかなる状況においても合理的な判断を下す。だからまずノヴァからその平静を奪おう」
ノヴァを政務室から連れ出し、部下のいない、人目のないカイの私室に招く。
次に予告なくシェルティが現れる。
彼の苦手な兄が、カイと束になって屁理屈と駄々をこねる。
「そして最後のひと押しに、君が頭を下げるんだ」
「私が?」
「君の頼みを、ノヴァは絶対に断らない」
シェルティは確信していたが、ラウラは懐疑的だった。
そして結果は、シェルティの予見通りとなった。
「でもノヴァって本当にラウラに弱いんだな。よけいなこと言わないで、最初からラウラにお願いしてもらえばよかったんじゃないか?」
「ラウラ嬢に任せきりというのも悪いだろう。本来であれば僕らだけで解決するべき事案なんだから。確実な保険としての、最後のひと押しだけで、彼女の仕事は十分だよ」
「けっこう渋ってたのに、完全に鶴の一声だったからなあ。ラウラさまさまだよ、ほんと」
「私はなにも……ノヴァ様の優しさにつけこんだだけです」
ラウラの謙遜を、カイは即座に否定する。
「いいや。あいつのラウラ贔屓は相当なもんだよ。幼馴染なんだろ?だからかなあ。ああいうお堅いやつでも身内びいきはするんだなあ」
「ラウラ嬢は実力は確かだがまだ年若い。気にかけるのは当然だろう。それにノヴァは彼女の兄とも親しかったからね」
シェルティが何気なく言った言葉に、ラウラは表情をこわばらせる。
カイはそれに気づかずに話を続ける。
「ラウラの兄貴か……。あのノヴァに尻ぬぐいばっかさせてたんだろ?おもしろいよなあ。おれも会ってみたかったよ」
「……?カイ、君は――――」
「兄も閣下に会いたがっていましたよ」
シェルティの言葉を遮って、ラウラは言った。
そして彼にだけわかるよう、小さく合図を送った。
何も言わないでください、と。
「どんなひとが来るんだろうって、ずっと楽しみにしていました」
「そうだったんだ」
「はい。兄は霊術を用いない異界にとても興味を持っていましたから。文化や技術の違いについて、七日七晩は質問攻めにされたと思いますよ」
「うわ、それは勘弁だわ……。でも気持ちはわかるなあ。みんなに取っちゃ当たり前の霊操、おれには完全に超能力だし、ファンタジーだもん。ようやく角灯つけられるようになった程度だけど、魔法つかってるみたいで、テンションあがるし」
「そうですか。霊操、楽しんでいただけているようでなによりです」
ラウラは立ち上がり、カイの目の前に角灯を置く。
「それでは今日もはりきっていきましょう!」
それまで緩んでいた表情を、カイはひくっと強張らせる。
「……まじ?」
「今日の課題がまだ済んでいませんからね。夕食まで間もなくですが、少しでも進めておきましょう。終わらなかった分は食後にやればいいですから」
「え、いや、今日はほらさすがに、いろいろあったしもうお休みでいいんじゃないですか……?」
「いけません。修練は毎日続けることがなによりも重要なんです。呼吸をすることのように自然なものとして身体に覚えさせなければ」
「呼吸どころかいまのおれにとっちゃ息止めチャレンジするようなもんなのですが……?」
「楽しい気持があれば乗り切れます!がんばってください!」
軽率に楽しいなどというものじゃなかった、とカイは悔やんだが、後の祭りだった。
修練に励むカイを私室に残し、ラウラとシェルティは厨に向かった。
シェルティは侍従として夕餉の支度を整えるために。
ラウラはその付き添いであった。
「僕ひとりで十分なのに」
「いきなり皇太子殿下が食事の催促に現れたら、賄い方のみなさん飛び上がりますよ」
言った傍から、廊下の角から現れた若い侍女が、二人をみてぎょっと目を剥く。
慌てて頭を下げたものの、二人が通り過ぎた後、驚きと好奇の視線を向けてきた。
痛いほどの熱線を背中に感じながら、シェルティはたしかに、と皮肉めいた笑みを浮かべた。
「大鍋ごとひっくり返られたらたまらないね」
ところで、とシェルティは何気ない風を装って話題を転じる。
「――――君、彼にお兄さんのことを話していないのかい?」
予期していた質問だった。
ラウラがシェルティの供をしたのは、これに答えるためでもあった。
「先ほどは大変失礼いたしました。殿下に気を使わせるような真似をしてしまって……」
「かまわないよ」
シェルティは口元に皮肉な笑みを残したまま続ける。
「どうして言わないんだい?彼が気に病むと思っているのかな?」
「閣下は、優しい方ですから。ただでさえ重責を負わせているのに、兄のことまで気にしてほしくないんです」
「そうは言っても、いつまでも隠し通すことはできないだろう。カイ以外にとっては周知の事実だし、君たちは並ぶと兄妹にしか見えないからね」
夕餉が近いため、調理場へと続く廊下は行きかう侍女で混雑している。
すれ違う誰もがシェルティとラウラを見て顔色を変えた。
みな慌てて礼をするものの、通りすぎた後には囁き声が葉擦れの音のように広がった。
衆人環視にも流言飛語にも慣れきった二人は、気にせず足を進めていく。
「変に気を使ってほしくないんです」
ラウラは繰り返した。
それが正しいのだと、そうあるべきなのだと、自分に言い聞かせるように。
「閣下には、修練に集中していただかなくてはなりません。私の個人的な事情など、あえてお耳にかける必要はありません」
それを聞いたシェルティの顔から、ほんの一瞬、笑みが消える。
「なんだ、君は彼のためではなく――――」
シェルティは何ごとかを口にしたが、ちょうどそのとき、厨から大鍋を落としたような大きな音が響いてきた。
シェルティの声はかき消され、ラウラは最後まで聞き取ることができなかった。
「すみません、殿下、いまなんと?」
ラウラは聞き返したが、シェルティは答えなかった。
捉えどころのない笑みを顔に戻し、そうだね、と軽い調子で言った。
「僕も彼に対してその話題は避けよう。彼の置かれた状況はたしかに、尋常なものでないからね」
シェルティの変化に気づかず、ラウラはただほっと肩をなでおろした。
「ありがとうございます。――――でも、これから殿下がおそばにてくださるなら、閣下はきっと大丈夫ですね」
ラウラは掛け値なく言った。
「こんなに心強い味方はいませんから」
「……僕にはなんの力もないよ」
「でも、殿下と話しているときの閣下は、とても楽しそうでした」
カイは朝廷に来てから、ラウラにも侍女にも、周囲の誰に対しても遠慮があった。
気疲れが目に見えることも多々あった。
そのため、シェルティとくだけた調子で接するカイを見たとき、ラウラは安堵したのだった。
「お二人はまるで旧知の仲でした。十年来の友人のようでした。出会って間もないはずなのに……なぜでしょう?」
「それはきっと、僕らが似た者同士だからさ」
「同じことを閣下も仰っていました。――――だからこそ放っておけないのだ、とも」
「へえ?」
彼がそんなことをねえ、と呟き、シェルティは視線を落とす。
目元に前髪がかかり、いつものように微笑みを浮かべる口元以外の表情が隠れる。
「ずるいなあ、彼は。僕には『役に立て』としか言わないくせに」
シェルティは顔をあげ、前髪を耳にかける。
顔に張り付いていた笑みが、わずかに剥がれている。
「僕は彼を見てもなんとも思わないけどね。苛立ちも、助けたいとも」
「え?」
「でも僕と彼が似ているのはたしかだ。境遇だけじゃなくて根本が、性根が、僕らはよく似ている」
シェルティは自分のつま先を、その下に落ちる短く濃い影を見つめる。
「だから、もしかしたら僕はいつか彼のようになるのかもしれないね。それが僕にとっていいことなのか悪いことなのかわからないけど――――っ!」
シェルティは突然、弾かれたように両手で頭を抑えた。
「殿下?」
ラウラが驚いて声をかけると、シェルティは片手をあげて答える。
「――――問題ない」
「ですが……」
青ざめたシェルティの頬を、脂汗が伝う。
とても尋常な様子とは思えなかったが、シェルティは両手を降ろし、ごく自然な足取りで歩み出した。
「待ってください」
ラウラは慌ててその後を追う。
「殿下、どこかお身体の具合が悪いのでは?」
「いいや。驚かせてしまって悪かったね。実は僕、片頭痛持ちなんだ」
「片頭痛?」
「ああ。すぐに収まるものだから、気にしなくていいよ」
シェルティは色を失った顔で、微笑んで見せた。
息を飲むような美しい微笑だ。
事実、すれ違いざまにそれを目にした侍女は、礼も忘れて惚けてしまう。
(片頭痛……)
しかしラウラは、シェルティの花のかんばせには目もくれず、幼馴染の顔を思い出していた。
(そういえば、ノヴァも昔、よく頭が痛そうにしてたな)
片頭痛は家系なのだろうか。
ノヴァもまだ頭痛に悩まされているのだろうか。
案じたラウラは、シェルティに症状の詳細を訊ねようと、足を早めて彼の隣に並んだ。
そして息を飲んだ。
彼の微笑の美しさにではない。
半月型に細められた瞳の、爛々とした輝きに、だ。
その金色の瞳は皇家であるラサの一族特有のものだった。
ノヴァで見慣れていたはずだったが、ラウラはこのときはじめて、シェルティの瞳がノヴァとはまったく異なるものであることに気づいた。
煮えたぎった油のように揺れるシェルティの金眼は、飢えた獣のようだった。
あるいはカイに取り入ろうと揉み手をする、欲にかられた者たちの瞳だった。
「どうかしたかい?」
「いえ、なんでもありません」
皇太子らしからぬその瞳にラウラは総毛だち、咄嗟に目を逸らした。
エレヴァンを統べるラサの一族は、社会の泰平と発展のためにその身を捧げている。
彼らが皇家として尊ばれているのは、戌歴以前から続く古い血筋のためではない。
一切の私心を捨て去って公に尽くす、滅私奉公の精神のためだった。
我欲を持たない、清廉な存在とされているからだった。
(ありえない)
だからこそ、ラウラは我が目を疑った。
ラサの一族であるシェルティ垣間見せた、おざましいほどの熱に。
(きっと、見間違いだ)
(なにかの、勘違いだ)
(だってこの人は、ノヴァと同じ、ラサなんだから……)
恐怖を噛み殺し、再びシェルティに目を向けると、彼の瞳はもう先ほどのように揺れてはいなかった。
凪いだ瞳は、真昼の太陽のような薄い金色に落ち着いている。
しかしラウラは恐怖を拭えなかった。
安堵することはできなかった。
鳥肌は収まらず、胸には不安が根を張っていた。
(信頼していいんだよね……?)
ラウラは自問自答した。
(カイさんの味方になってくれたんだよね……?)
答えがどうであれ、もう後に引くことは出来ない。
ラウラはこれから、シェルティと共にカイを支えていかなくてはならないのだ。
どれだけ恐ろしかろうとも、腹の底が読めなかろうとも、付き合っていくしかないのだ。
ざわつく心に蓋をして、ラウラは決意を新たにする。
(信じるしかないんだ)
(きっと大丈夫)
(だって殿下はラサだもん)
(救世の要であるカイさんを貶めることなんて絶対にしない)
(余計な心配してないで、私は、私のやるべきことに集中しよう)
厨の中は騒然としていた。
どうやら誰かが鍋を中身ごとひっくり返したらしく、その始末に厨夫全員が追われていた。
「ほら、やっぱり君がついてくる必要はなかった」
シェルティはおどけて笑った。
「僕が突然現れようとそうでなかろうと、鍋はひっくり返る運命にあったらしい」
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