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1章
29話 感動の場面は突然に
しおりを挟む迷った。完全に迷った.......。
されるがままに連れてこられたせいか、ここまで辿り着くまでに至った道が分からない。
だが、まだ焦る時間ではない。
いや、まだあわてるような時間じゃない......。
一度冷静になって考えてみる。
客間からさっきまでいた部屋まで来るのに要した時間は大体一分くらいなはずだ。そして、その部屋までに1回階段を登った....。
そうだ、階段を登ったんだ!!
客間は確か、屋敷の中では二階にある場所だったから.....ここは三階ということか!!
ははっ。なんだ簡単なことだったじゃないか。
ふっ、流石俺。推理力がメガネのガキ並だ。
さて、現在地が分かったことだし、さっさと二階に降りよう。客間までの道は分からないけど、二階にいるメイドさんに聞けば分かることだ........ていうか、最初から適当に歩いてメイドさんを探せば.........。
いや、考えるのはよそう。
考えてしまったら残酷な未来が待っている気がする。
ドタドタドタッ!!
ドッドッドッ!!
いざ、俺が二階に降りようと動き出すと下の方から何やら激しい勢いで誰かが階段を駆け上がってくる音が聞こえてきた。この音からしてそうとう急いでいる様子が感じられる。
ここで俺がゆっくり降りていると邪魔になるかもしれない。そう思った俺は、一旦降りようとするのをやめて端っこにずれる。
ドッドッドッ!ドッドッドッ!
段々と音が近づいてくる。
さて、こんだけ急いで駆け上がってくるのは誰だ......って、べルート公爵?? それに後には執事のヘパと奥さんのキャルアさん、更には何人かのメイドさんもいる。 なんだ? 何かあったのか?
俺は、駆け上がってくる面々の必死の形相を見て、何があったのかが気になった。
階段を上がりきった面々は、廊下の端っこ寄っている俺には目もくれることなく気付かずに更に三階の廊下をダッシュしていく。
おいおい、いよいよなんかやばいことがあったんじゃないのか?
そう思った俺は、その集団を追うことにした。が、すぐにその集団はある部屋の前で立ち止まった。
なんだ、結構近かったな.......ん? あれってさっきまでいた部屋だよな?
ああ、なるほど。さっきの美人さんにみんなで会いに来ただけか! 病気とかいってたし、毎日お見舞いというか容態をみんなで確認しているのだろう。
って待てよ。 それなら態々あんなに急いでなりふり構わず上がってくる必要なんてないよな?
なんであんなに焦っていたんだ?
全くさっぱり1ミリもわかんないな.....と思っていると、べルート公爵たちは、部屋のドアをノックして一言告げて、中に入っていく。
「エリシャ、入るよ?」
未だ誰も俺には気づいていないが、俺も入っていいのかな?
さっきは長居するのは良くないと思って速攻で逃げ....退室したけど、これだけいっぱい人がいるなら別に緊張.....怖っ......うん、大丈夫ってことだ!!
俺は、その場で入るのを躊躇ったが、何かその場を覗き見することの方がそれはそれでまずい気がしたので、意を決してそろそろと中に忍び....堂々と中に入る。
そして、中に入った瞬間、目にしたのは、べルート公爵とキャルアさんがベッド上から降り、部屋の中で立ち上がっていた先程の美女を抱きしめて号泣している光景が広がっていた。
ああ、うん。まあ薄々ってかほとんどそうだと確信してたけど、やっぱりさっきの美女、てかエリシャって呼ばれてた娘、公爵令嬢さんでしたか...........。
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