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1章
23話 ワイバーン殺し
しおりを挟む時間にして5秒。それが数キロ先にいた竜の元までたどり着くのにかかった時間だ。何を言ってるんだって? そんなもん俺に言われたってわからない。嘘でしょ? いや、これは嘘じゃないんだ。
「ゲェェアエィエエア!!!!」
俺の後には、片方の翼を貫かれ、激しい痛みに襲われて絶叫している竜がいる。なんで竜の翼が貫かれているかといえば、皆さんご存知の通り、早く走りすぎて止まれなかった俺がそのまま竜の翼に突っ込んで貫通したからだ。ちなみにそんな竜の翼に突っ込んだ俺にダメージは一切ない。さすが肉体改造されているだけはあるよね、うん。
てか、本当にあれって竜なのか? 竜って言えばファンタジーの中でも最強種なはずだよね? それが俺の勢いあまり過ぎた突撃だけであんなほぼ死にかけみたくなるってちょっと考えられないんだけどな..........。って、それなら鑑定.....じゃなくて神眼でステータス見ればいいんだった! 気づいたところで早速見てみる。
ワイバーン レベル35/50
状態 部位欠損:右翼 混乱
HP 250/680
MP 154/154
物攻 590
物防 350
魔攻 280
敏捷 458
魔耐 220
スキル 『飛翔:レベル4』『ブレス:レベル4』『風魔法:レベル3』
『物理耐性:レベル3』『爪攻撃:レベル5』
んん?? うお!? めちゃくちゃ詳しく見れるようになってるぞ? 変わりすぎてびっくりしたわ! ってん? 弱くね? こんなレベル高いわりには肉体改造される前の俺でも充分戦えるくらいの強さしかないぞ。
いや、違うか。俺の方が可笑しいのか。
そりゃそうだ。ソウルポイントとかスキルポイント、それに魔石還元だって、こっちの世界の人には与えられてないシステムなんだからそれは魔物にとっても同じことだ。いくら人種よりも潜在能力が高いといっても所詮は知能のない魔物。異世界出身のチート野郎(俺)と比べるのが間違ってるのか。
なんか拍子抜けしちゃったな。まさか竜...........ってかワイバーン?があんなに弱い......いやでも、下で襲われてた馬車の周りの護衛の人達が今もガクブル状態だから弱くわないのか?
うん、まあいい。とにかく今の俺にとってはあんなの雑魚だ。最初に出会ったゴブリン以下だ。まあ、最初に出会ったゴブリンは今だと毛虫以下レベルなんだけど。
「あ、あなたは一体何者だ!?!?!?」
「今、一体どこから!?!?!?」
「な、なにが起こったんだ!?急にワイバーンが現れたと思ったら.....ど、どうなってるんだ!!」
なんだか俺の後に位置している恐らく馬車の護衛の人達が騒がしい。多分ワイバーンが怖いから混乱しているんだろうな。 そりゃワイバーンだって混乱してるし、俺だって今さっき混乱しかけたからな。後ろの護衛さんたちが混乱するのは仕方ないことだ。とりあえず早くワイバーンを倒してしまおう。
さて、どうやって倒そうか。まあ、て言っても魔法で八つ裂きか殴るかしかないんだけど.........あっ! そうだ。せっかくだから闘神にまでなって得た武技を試してみようかな。
はっはっは!! 待たせたなワイバーン君。
では、いくぞ!!!
俺は、左足と左足を前に、右足と右手を後に構える。
「すぅーーーーーーー、はぁーーーーーーーー.............はっっっ!!!!!!!!!」
一度深呼吸をして、呼吸を整えると構えから一転、右の拳を思いっきり前に突き出し、正拳突きをワイバーンのいる方向に向かって放つ。
俺とワイバーンとの距離は、50メートル程離れていたが、俺の突き出した正拳突きはワイバーンに到達し、ワイバーンの胸から背中にかけて風穴を開けることに成功した。
よし!! 遠当て成功だ!! ふっふっふ。さすがの闘神レベルMAXだ。拳を突き出しただけでその攻撃を遠くに飛ばすことが出来て、威力は落ちない。 チートすぎるとかいうツッコミはいりません受け付けません。
【2340の経験値を取得しました。レベルアップしますか?】
と遠当ての凄さを実感しているうちに、ワイバーンが死んで俺にとっては経験値が入ってくる。うん、まあさすがワイバーン。ゴブリンやオークの数十倍の経験値だ。
レベルアップは.......とりあえず今はいいか。幸い森も抜けてワイバーンも余裕で倒せると分かったし、自己強化は焦らずゆっくり出来るときに一気にやろう。
俺は魔石と素材に成り代わったワイバーンの元にいき、魔石と素材を回収する。
さて、やっとこの異世界に来てから初めての人との対面だけど、そもそもコミュ障の俺にあんな大人数との会話がしっかりと出来るだろうか......。不安だ.........。不安すぎる........。やべえな、逃げたい................。
とか、考えてその場で立ち尽くしていると、少し離れた場所にいる俺の元まで馬車がやって来て、中から、綺麗で高そうな服を着た人達が降りてくる。てか、全員美形でビビった。
「そこの君、命の危機を助けて頂き誠に感謝する。」
「ちょっと!あなた!!命の恩人になに偉そうな態度とってるの!!!ごめんなさいね?」
と、いきなり美形の二人が俺の前にやって来てイチャコラしながら俺に感謝してきた。この人たち夫婦か?いや、てかイチャコラするなら他でやってくれよ........。
「あっええっとそのおー。たた、たまたま近くを通って襲われているのが見えたので助けに入っただけです。そんなお礼を言われる程のことではありませんよ。」
とりあえず謙遜しながらの対応をする。だって明らかにこの人たち偉い人達っぽいもんね。ここで適当に偉そうな態度とったら後ろの護衛さんたちにボコられてしまう。いや、そうなったら全力で逃走するけどさ! え?どもり過ぎだって? うるさいよ!!!
「まあ、ワイバーンをあれだけ余裕で倒せるだけの強さを持ち合わせていながら謙虚さも持ち合わせているなんて!物凄く高貴な御方ですね。ふふふっ。本当に素晴らしいお方ですわ。」
「まあ、そうだな。えっと、その、どうだろうか? 私たちを救ってくれたお礼もしたいし、馬車に同行してもらってもいいだろうか?」
奥さんの方は何やら興奮した様子でブツブツと独り言を言っている。方や旦那の方は、先程奥さんに態度を改めろと言及されたからかぎこちない話し方になっている。てか馬車に同行ってどこに連れていく気だよ? まさかそのまま牢屋にぶち込まれないだろうな?
「えっと、そのお.........わ、わかりました..........。」
俺はコミュ障全開で、誘いを断ることが出来ずに、仕方なく馬車に同行することになった。
「では、命の恩人に歩かせるのも悪いので馬車の中に招待しよう。というか、自己紹介がまだだったね。私はベルート・フォン・ヘイル・デル公爵というものだ。隣のは妻のキャルアだ。改めてよろしく。」
「よ、よ、よろしく!お願いします!!」
公爵かよぉおおぉおぉおぉぉおぉぉおおおおぉぉぉぉおぁぉおおおおおおぉおぉぉお!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?
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