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1章
4話 異世界での決意
しおりを挟む気がつくと、俺は森の中にいた。
目の前には血だらけになったゴブリンの死体が横たわっている。
「.....はぁー...........やっぱり夢じゃないんだよな、これって......っいっ.........」
改めてこの出来事が夢ではないのだなと再認識してすぐに、全身に激しい痛みが走る。
俺が今までで経験したことのある痛みを遥かにうわまわる痛みが俺を襲う。
痛すぎて気が狂いそうになるが、先程の出来事をしっかりと思い出して、すぐに俺は取得したスキルを使用する。
「キュア!キュア!!!キュア!!!」
俺はあまりの痛みに我を忘れ、無我夢中で一気に治癒魔術を三連発で自分に向けて使用した。
詠唱を終えると、治癒魔法はすぐに発動して俺の体が少しだけ光ると、みるみるうちに先程までの激しい痛みが引いていき、数秒もせずに俺の傷は完治していた。
「.............................キュアハンパねぇ.........。」
思わず、そんなことを呟いきながら改めて魔法の凄さを噛み締めていた。っと、今キュアって言葉に出しちゃったけどまた発動して............ないな?
もしかして、使うことを念頭に置いていなかったから魔法が発動したなかったということだろうか?
ええーい、仕方ない。試すしかねえな。
俺はもう一度、使うことは念頭に置かずに呟いてみることにする。
「キュア!!!キュア!!!
2度程呟いてみたが、どうやらやはり発動しないようだ。
なるほど、魔法は使うという大前提のことを念頭に置いて詠唱しないと発動しないのか......。
これは新しい発見だ。偶然ではあるけど中々に幸先良いことだ。
と、そんな風に魔法について考えていると目の前のゴブリンの死体に変化が訪れる。
ゴブリンの死体から急に黒いモヤのようななにかが出始め、すぐにゴブリンの死体は黒いモヤのようななにかに全体を覆われる。
それから数秒して黒いモヤのようななにかが漸く消えた。
ゴブリンの死体があった場所には、一本の牙と緑の色の小石が残っていた。どういう仕組みかは分からないが、ゴブリンの死体は跡形もなく消え去っていた.........。
俺は、無意識の内にゴブリンの死体が消えた所まで足を運び、残った牙と小石を拾ってみた。
ゴブリン.....所謂魔物を殺したことによるドロップアイテムみたいなものだろうか?
ゴブリンを倒したんだから、普通ならゴブリンの牙と魔石?みたいなものだろうけど、生憎と俺には確認するすべがない。
......................いや、あるじゃないか!!!
俺は、さっきあの謎空間で取ったばかりのスキル、鑑定を思い出し、すぐに使ってみることにした。
もちろん鑑定するアイテムは、手元にある牙と小石だ。
「鑑定っ!!!!!!!!」
まずは、牙の方を注視して、スキルを行使しようと念頭に置いて叫んだ。
【ゴブリンの牙】
.......................えっ?これだけ?そんだけ?
いや、大体そうじゃないかと思ってたけど?
見たまんまゴブリンの牙だってことは大体分かってましたけど?
え?なんかもっと説明ないの?
俺は堪らずもう一度鑑定を行使してみる。
【ゴブリンの牙:ゴブリンを倒して得たドロップアイテム。】
再度鑑定を使用するとアイテムの簡単な説明文が加わって頭の中に結果が流れてきた。
うん。そうそう!こういうのが欲しかったんだよ!
よしよし、良かった良かった。鑑定スキルはしっかりと機能する。
俺は独り満足気に頷いて、続け様に小石の方を鑑定する。今度は二度手間にならないように二連続で発動した。
【緑魔石(小):緑色の小さな魔石。内に潜んでいる魔力は微弱。】
おお!やっぱりこれ魔石だったのか!
小石サイズだし、やっぱり小さい魔石なんだな。
なんだよ!鑑定さんめちゃくちゃ便利じゃないか!レベル1なのに結構な情報量与えてくれるとは中々やるやつだ。うんうん。これからも鑑定さんにはお世話になりそうだ。
うん、でも、この魔石とか牙って何に使えんだ?
ゲームとかの定番だと、素材屋に売ったり、自分で加工したりして武器やら便利アイテムやらにすることもあるけど........これは俺にとっては現実なんだよな.........。
鑑定では使い道なんかは教えてくれないようだしな..........。
まあ、とりあえず捨てておくのもなんだか勿体無い気もするし拾っとくか.....。
俺はそう思うと、羽織っている学生服の右ポケットに牙と魔石をしまっておいた。
ん?待てよ.......。
さっきの謎空間では試さなかったけど、もしかして鑑定を自分にかければ自分のステータス見れたりするんじゃないか?
あの謎空間のモニターには映らなかったけど、これだけ使える鑑定さんなら見れるかもしれない。
「ふはっ!ははははは!!!漸く、俺のチートステータスが拝めるというわけか!待っていたよこの時を!!!!!!!」
俺は堪えきれずに独り言を零しながら、愉悦に浸った状態で自分自身に鑑定を行使する。
さあ、どれだけ凄いステータスなんだ?
異世界転移した俺のチートステータス、いでよ!!!!!!!!
如月零 レベル 1
HP 45/45
MP 13/13
物攻 30
物防 18
魔攻 24
敏捷 21
魔耐 8
スキル
『闘術:レベル1』『火魔法:レベル1』『召喚魔法:レベル1』『治癒魔法:レベル1』『鑑定:レベル1』『周辺地形図把握:レベル1』
「...........................................................................................................................................................................................びみょー....................」
俺は思わず絶句して本音が漏れてしまった。
いや、うん。なんだか、うん。ぱっとしないステータスだったんだものね.........。
魔法とかない世界からきたわりには魔法系が高い気はするけど、うん。やっぱびみょー........ってか弱いよな?いや、この世界の平均は知らないけどこれ、絶対低い数値だよな.........。
まあ、薄々気づいていたけどね。
さっきのゴブリンとの死闘の時に分かってたよ。俺が異世界転移したことでパワーアップとか覚醒とかしてないことくらい分かってたよ。
そしてレベルアップしても対して能力が上がってないんだろうなとも思ってたさ。
だって、別段身体に変化とか起きてないしな。
身体の内側から力が漲ってくるような気も全くしないしな。
うん、別にそこら辺のことについては本当は対して期待もしてなかったから気にはなっていないんだよ実際。これから鍛えていけばいいんだからね。うん。
問題はもっと別の所だ。
察しのいいやつなら分かるはずだ。
うん、そう。体力と物攻が低すぎる!!!!!!!!
いや、一年半もせっせと筋トレと色んな武術(通信)の型で鍛えたはずなのにおかしいだろ!
なんのための一年半だったんだよ!?!?
あれほとんど無駄だった感じ?えっ!?嘘でしょ!?
いや、落ち着け俺。
もしや、これは別に低い数値ではないんじゃないのか?
もしかしたら、一般的にはレベル1の段階ではもっとステータスは低いんじゃないか?
いや、ていうかそもそもレベルが上がって筋肉が成長するわけでもないんじゃないか?
冷静に考えればレベルが上がるだけで筋肉量が増えたり筋肉が成長するわけないだろ、多分だけど。
要するに、このステータスの値と俺の鍛えた筋肉の強さは、必ずしもイコールではないということだ。
いや、そうだ!きっとそういうことだ!!
良かった......。俺の一年半は無駄ではなかったんだ!!
だいたい身体を触ってみればわかるじゃないか。
綺麗にシックスパックに割れた屈強な腹筋。
太いということはないがしっかりと引き締まりカッチカッチになった上腕二頭筋。
厚く。男らしさを全面に醸し出さん雰囲気を纏う胸筋。
そうだ!これがオレの努力の成果だ!!
疑ってごめんよ.......我が筋肉よ........。
っと話がそれた。うん、なるほど。そういうことなら別に数値が低いのもわかる。俺にはそもそも何かの才能がある訳でもないからな、うん。至って平凡。ただの凡人で一般人だ。ちょっと筋肉がついた普通の中学生。それが俺だ。
そう考えるとこれくらいの数値でも納得出来る。
むしろ、チート能力を最初に持ってたら慢心が生まれて肝心な時に命の危険に晒されてしまうかもしれないじゃないか!
自分の強さをしっかりと分からないまま神様の力で簡単に強くなったって、それは自分の力とは言えない。
それじゃあ俺の人生とはいえない。俺は神様の道具でもなければおもちゃでもないんだ。
どうせこんな魔物がいるような危険な世界に飛ばされたんだ、これから生きて行くためには強くならなければいけない。
だったら別に今弱くても強くなればいい。自分自身の力で生き抜くために、強くなるために、死にものぐるいでまた一から頑張ればいいだけだ。
一年半前に弱いままでいたくないから始めた筋トレと通信武術は毎日続けられたんだ。俺は自分自身の力で弱かった自分を変えたんだ。
やってやる。
今はまだただの雑魚かもしれないけど、いつかこの世界で最も強くなってやる。
どうせ、これから暫くは日本に帰れないだろうしな。そもそもずっと帰れない可能性だってある。
だったら開き直ろう。
俺は今日からこの世界で、新たにゼロからの人生を始めるんだ。
如月零。いや、この世界ではただのレイとして生きていこう........。
.................よし、そうと決まればまずは生き残るために今やれることをしよう。
まずは先程取得したスキルの一つ、召喚魔法を使って仲間を増やすことからだ。
「俺に力を貸してくれ!サモン・レッサーウルフ!!!サモン・レッサースネーク!!!!」
俺が声高々に呪文を叫び、詠唱し終えると、目の前の地面に直径数十センチ大の魔法陣が二つ出現し、数秒してその魔法陣からそれぞれ一体ずつ、光輝きながら召喚獣が出現した。
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