58 / 59
4章
155話 経営者ルカルドは歩き回る
しおりを挟む昼食を食べ終わり、少しだけ屋敷でまったりとした後、俺は自分が経営するルル商会へと足を運んでいた。
「「「「「ルカルド様! おはようございます!」」」」」
「みんなおはよう。今日も一日頑張ってね」
「「「「「はいっ‼︎」」」」」
毎回恒例となっている、その日に勤務している従業員達からの仰々しい挨拶を軽く受け流し、会長室に入ると、まずは昨日の売り上げをアテナに確認する。
「昨日の売り上げ金は、百四十万ベルでしたよ。もうこの商会も四年目だというのに、未だに売り上げ金が百万円を下回ることがないのですから、やはりマスターはさすがとしか言いようがないですね」
確かに商品を製っているのは俺だが、全てが俺のおかげというわけではない。
アテナを含めたルル商会の従業員みんなが俺に力を貸してくれているからこその結果だからね。
「アテナを含めた従業員のみんなが頑張ってくれてるおかげだと、俺は思うけどね」
「ふふっ、納得はできませんが、そう言っていただけるのはとても嬉しいですね。ありがとうございます、マスター」
「俺からすれば、納得してもらいたかったところだけどね。こちらこそ、いつも俺のサポートしてくれてありがとう、アテナ」
このやり取りももはや数えきれないほどしているのだが、やはり感謝の言葉を伝え伝えられるというのは、何度目でも嬉しいものだ。
とか言うと、お年寄りっぽい感じがあるが、俺ってまだ八歳なんだよなー。
前世とは比べものにならないほど充実した人生を送っているため、既に前世で生きた二十年よりも長く生きている気がする。
気がするだけで、半分も生きていないのだけどね。
その後、商品の補充を十分に行なった俺は、アテナや出勤している従業員達との談笑などをして一時間程度店に滞在し、次の目的地へと移動した。
足を運んだ場所は、これまた自分が経営しているルカルド温泉宿だ。
この温泉宿は、遡ること三年前。王都から帰ってきた後すぐに始めた事業で、ルル商会ほどお金を稼いではいないものの、ハイデル王国にある宿の中でもトップクラスの売り上げを記録している人気宿である。
この宿の最初期従業員である元孤児達は、痩せ細り栄養失調気味だった状態から見事に回復し、今では年相応に見えるようしっかりと成長していた。
「あー! ルカルド様! おはようございまーす!」
「「「「おはようございます!」」」」
「おはよう、みんな。今日も元気いっぱいで何よりだ」
三年経った今ではみんな十歳以上になり、みんな最低限度の一般常識も身につけている。
もはやどこでも生きていける人材であり、彼等が望むのなら温泉宿の従業員をやめて、自分の生きたい人生を歩むように背を押してあげてもいいと思っている。
中には、温泉宿の護衛を任せている二頭の龍王達から武術指導を受けている子もいるので、冒険者を勧めてみてもいいかもしれかいね。
というか、龍王が弟子とか普通に考えてやばいよね。まあ、そんな龍王よりも圧倒的に強い俺が言えたことではないのだけれど……
それを言っちゃあおしまいってやつだよ!
「ルカルド様、お疲れ様です」
「エイナもお疲れ様」
内心でくだらないことを考えていたら、温泉宿で働く者の中でも飛び抜けて優秀に育った孤児のお姉ちゃんこと、エイナが声をかけてきた。
初めて出会ってから三年経ったということもあり、気軽に呼び捨てもできる関係になっている。
……なんて言えば仲良くなったみたいに聞こえるが、俺とエイナの関係はあくまでただの上司と部下なのだけれどね。
今年で十四歳となり、来年成人を迎える彼女は、孤児達のお姉さんをしていたためか、年齢よりも大人びている印象が強い。というのが、他の人から見た評価なのだが……
温泉宿に俺が来れば、いつもすぐに俺の側に駆けつけて挨拶をしてくるエイナは、どこか忠犬にも似た印象を抱かせてくる。獣人として生まれていたのなら、きっと獣耳や獣尻尾をブンブンと振り回していたことだろう。
そんな親しみやすい彼女が現れたから、俺は何の気なしに、先ほど考えていたことを軽くだが、直接聞いてみた。
「エイナ。ここをやめたら、どんなことをしたい?」
「えぇっ⁉︎ わ、わたし、売られてしまうんですか⁉︎」
「……」
……予想の遥か斜め上の先をいった返事に、俺はたまらず絶句してしまうのだった。
11
お気に入りに追加
9,149
あなたにおすすめの小説
転生したらスキル転生って・・・!?
ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。
〜あれ?ここは何処?〜
転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。
神に同情された転生者物語
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。
すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。
悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが
倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、
どちらが良い?……ですか。」
「異世界転生で。」
即答。
転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。
なろうにも数話遅れてますが投稿しております。
誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。
自分でも見直しますが、ご協力お願いします。
感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。
お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)
いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。
---------
掲載は不定期になります。
追記
「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。
お知らせ
カクヨム様でも掲載中です。
転生させて貰ったけど…これやりたかった事…だっけ?
N
ファンタジー
目が覚めたら…目の前には白い球が、、
生まれる世界が間違っていたって⁇
自分が好きだった漫画の中のような世界に転生出来るって⁈
嬉しいけど…これは一旦落ち着いてチートを勝ち取って最高に楽しい人生勝ち組にならねば!!
そう意気込んで転生したものの、気がついたら………
大切な人生の相棒との出会いや沢山の人との出会い!
そして転生した本当の理由はいつ分かるのか…!!
ーーーーーーーーーーーーーー
※誤字・脱字多いかもしれません💦
(教えて頂けたらめっちゃ助かります…)
※自分自身が句読点・改行多めが好きなのでそうしています、読みにくかったらすみません
異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~
イノナかノかワズ
ファンタジー
助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。
*話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。
*他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。
*頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。
*無断転載、無断翻訳を禁止します。
小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。
カクヨムにても公開しています。
更新は不定期です。
間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜
舞桜
ファンタジー
初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎
って、何故こんなにハイテンションかと言うとただ今絶賛大パニック中だからです!
何故こうなった…
突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、
手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、
だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎
転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?
そして死亡する原因には不可解な点が…
様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、
目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“
そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪
*神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのかのんびりできるといいね!(希望的観測っw)
*投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい
*この作品は“小説家になろう“にも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。