見えない「愛情」と「幸せ」を求めて。

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秘密

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······俺がまだ楓と仲良くなってすぐのことの記憶だ。


「······楓、?何見てるの?」

「あぁ、この本?これ花の種類とか、生態とか詳しいことが書いてある図鑑だよ。」

「へぇ~、いっしょに見してよ」

「いいよ。」


楓の膝の上に座る。後ろから楓の吐息がかかってくすぐったいけど、体温が伝わってきて暖かくて気持ちいい。

「···うぁ···こんなに詳しく載ってるんだ···」

「うん。俺園芸委員でしょ?こういうことは知っといた方が役立つかなーと思って。」

「凄いなぁ······」

俺はパラパラとページをめくっていく。

「······あ!この花綺麗だね!なんていう花なのかな···」

「それはテッセン。白くて綺麗だよね···学校にもあるよ。」


不意に耳元で囁かれる。


「···奏の心みたい。綺麗で、純粋なとことか。」


瞬間、俺の身体はビクッと跳ね、急激に顔が赤くなる。

「て、!ちょっと、!」

「ん、なぁに。どうした、?」


まるでさっき何もしなかったように振る舞うから、

「急にそんなこと言わないでよ···はずかしいんだから···」

「え?俺何か言った?」

「もう、!だから!からかわないでよ、!」


むっと頬を膨らませて睨んでいると、

「ごめんね。つい面白くて。」

「···むぅ···」



そんなにちゃんと謝られるとこっちが困る。


「······しょんぼりしちゃった···おーい、奏。」


後ろからトントンと肩を叩かれる。けど、俺は振り向かない。


「ふーん。奏が無視するならこっちも何もしなーい。」


そう言って、楓は俺を膝に乗せたまま図鑑を見だした。


少しの間、沈黙が続いて、我慢できなくなった俺は、

「···楓。」

「ん?どうしたの。」

「······」

俺は黙ったまま楓に抱きついた。何でかはわからないけど、多分寂しくなっからだと思う。

「···本当に···。甘えん坊さんなんだから。」

「······わるかったな」

「ううん、全然いいんだよ。可愛いから。」


「可愛い」という言葉が自分に掛けられているのだと気づき、赤らめた顔を楓の胸にぐりぐりと押し付ける。

「はずかしぃ···」


もちろん、教室の中だから、クラスのみんなから見られている。

キャーキャーと騒ぐ女子も居れば、少し苛つきを交えた表情の奴らもいる。


ここからだったかな。


×××が始まったのは。







ーーーーーーーーーー



ある日の放課後。


楓といっしょに帰る予定だったのだが、体調が悪く、保健室で休んでいたとき。


「······奏くん、先生少し用事があるから居なくなるね。元気になったら帰ってもいいから。それじゃ。」

「はい···わかりました···」


ガラガラと閉まる扉の音を聞きながら、保健室のベッドに横たわる。

「うぅ···」


楓は多分、いつもの待ち合わせ場所で待っているだろう。どうやって保健室に居ることを伝えればいいのかな···


がらがらっ


扉の開く音。

(え···先生帰ってきたのかな···?)


恐る恐る体を起こし、扉の方を向くと、そこには一人の女子がいた。








































    
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