見えない「愛情」と「幸せ」を求めて。

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思い出せば、それは苦しく、辛くて。

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「大丈夫、!怖くないよ···!手握って、!」


差し出された楓の綺麗で大きな手をぎゅっと握り、目を瞑る。




「·········う゛っ、はぁ···」


「ふぅ······良かった。こうなるのは嫌だよ···?だから、忘れてよ···」


俺だって忘れられるなら忘れたい。

でも、そんな事言われても、鮮明に思い出した記憶が強烈すぎて、忘れることは不可能だ。

でも、肯定しておかないと、楓に嫌われる。

「うん······分かった···」



「うん、いい子。」と頭を軽く撫でられる。ぎこちないような気もしたけれど、気にならなかった。




でも、その日はこれから五回ほど記憶がフラッシュバックしてしまい、その度楓が駆けつけて、俺を慰めてくれた。



「うぅっ······もう忘れたいよ···助けて······」

「頑張って···俺は助けられない···ごめん。」



楓は悲痛な叫びを口にした。



頑張って忘れられるのだろうか。
 


殺されかけた記憶を。

死を覚悟したあの日を。

助けてと心の中で祈ったあの時を。



あんなの、忘れられるわけない。

今は一命を取り留め、楓に監禁されているけど、

辛く、悲しい生活ではない。

来世は幸せになれるのかな。


そんな淡い幻想を抱きながら、今日は過ぎていった。










次の日。

「ああ、今日は家に人が来るから······」

朝、楓が高校に行く前に俺にこんなこと言ったのは初めてだ。


準備が早くて、まだ家を出るまで一時間あるけど。



「えっ···何かすることとか···ある?」


「無いよ。いつも通り、そこで待ってて。声が聞こえるのが嫌なら、なにか用意するけど、いる?」


「いや、要らないけど···」


俺は誰が来るのかが気になる。
楓はモテるし人気者だけど、今まで人なんか呼んだことない。

まさかとは思うが、一応、聞いてみる。


「ねぇ、もしかしてだけどさ······恋人とかだったりする······?」

そう言うと、楓の纏う空気感が冷たくなった。


「······なんでそういう事言うの···?俺は奏をこの世で一番愛してるよ···?足りない···?」

「ちっ、!違う!今のはそういうわけじゃ···」

「違うよね。奏ならそう言ってくれると思ってた。···でも、ちょっと許せないなぁ······」


笑っているように見えるけど、目は笑ってなくて、その瞳の奥には何か深く傷ついたような感情が見える。


本気で地雷を踏んでしまったかもしれない。






















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