見えない「愛情」と「幸せ」を求めて。

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外の世界を知りたいだけなのに。

3(記憶)

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高校生になってすぐのこと。

「ねえ、君なんていう名前なの?」

中学の頃の知り合いもほとんどおらず、気まずそうに本を読んでいた俺に、突如として話しかけてきた人。

それが、楓との出会いだった。

「え、えっと···とうざき、かなでっていいます···」

「すごい格好いい名前だね!俺は楓っていうんだ!よろしく、奏!」

初対面でもすごく親しく話しかけてくれたのが、個人的にはびっくりして。

中学校ではそんなに目立つような性格でもなくて、尚且つ容姿も普通だったから、どうして俺に話しかけてきたのかがわからなかったけど。

「うん···よろしく!楓くん!」

「楓でいいよ。呼び捨ての方が気が楽だし。」

周りにはこちらを見ながら興奮気味にヒソヒソと話す女子がたくさんいた。




昼休み。楓と、自己紹介のように、お互い好きな事や苦手なことについて話していると。


(う···楓、こう見るとめっちゃ綺麗な顔で···スラッとしてて···モテ要素完全に制覇してるんじゃないか···?)

「ん?どうした、奏。」

「あっ、いや···すごいイケメン···だなって···」

「あぁ、中学校でもよく言われたよ。ここに入ってきてすぐ、いろんな人からかっこいいかっこいいって言われたんだよね。」

「いや、すげーかっこいいと思うけど···」

「そう?」

少し真剣な顔になった楓は続けてこう言った。

「奏も、すごい綺麗で、可愛い顔だよ?」

俺達の間で少しの沈黙が流れる。

「え···そうかな···?そんなこと、言われたことないんだけど···」

楓はふふっと笑って俺の頬に手を当てる。

「ううん、すっごく可愛いよ。」

周囲の視線が一気に俺達に集まる。楓はそんなこと気にしていなかったようだけど。

「ちょっと、からかわないでよ!」

「え?本気だけど。それに奏、顔真っ赤にして、どうしちゃったの?」

「だーかーら!もぅ······」

「ごめんごめん。ちょっと楽しくなっちゃって。」

俺達を見てキャーキャーと騒ぐ女子たち。
うわー、俺もあんなのしてみてーわ、と嘆くように言う男子たち。

「うう···恥ずかしい···」











そこから、俺の記憶は、楓に監禁されるまで、ぽっかりと穴が空いたように無くなっている。





この空白の時間に、何があったのだろうか。知りたいだけなのに、その話をすると、楓にうまく流されてしまう。


楓に監禁されて、もうかなりの時間が経った。

いつしか外の景色も、親も、クラスメイトも、記憶すらも、俺の脳内から消えかけていた。

でも、楓の顔だけは鮮明に思い出せるのだ。


目隠しを常にされ続けているはずなのに。

それが嫌で、俺は逃げ出したんだ。

外の世界はどうなっているのか。知り合いや親は何をしているのか。この隠され続けた目で、見てみたかっただけなのに。




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