見えない「愛情」と「幸せ」を求めて。

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外の世界を知りたいだけなのに。

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「はぁっ、はあっ、」



久しぶりの外の世界は、寒くて、薄く日が差している。



長らく光を見ていなかったからか、普通の人には眩しく感じないほどの明るさも、俺には、直接懐中電灯の光を至近距離で見ているように眩しい。





吐く息は真っ白に染まり、裸足で走り続けた足は切り傷や擦り傷で見ることを拒絶するほど血塗れになっていた。




「はあっ···ぁ゛ぐっ、!」



足がもつれて転ぶ。受け身を取れず、派手に地面に身体を叩きつけた。



すぐに立ち上がろうとする。でも、不意に後ろから声が聞こえて、動きが止まる。



「あぁ···ここに居た。大丈夫?怪我してない?」


「···っ!」



安堵と僅かな焦りが混じったような声。だんだんと足音が近づいてくる。


「·········足、すごい怪我しちゃってるじゃん。なんでこんなになるまで走ってたの?」


「······だって、もう、···んぐっ、!?」


「ごめん、後でゆっくり聞かせて。ここは奏にとっては危ないから。」


そう言って俺を抱き寄せ、随分と綺麗に折られた布を取り出した。


布が俺の口と鼻を覆う。


なんだか、酷く甘い匂いがする。そう感じた時には、意識は薄れていた。



段々と前が見えなくなっていく。




「んぅ······」



「···おやすみ。辛かったね。」




いつまで、こんなことは続くのだろう。
















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