君を思ひて月を見る

冷暖房完備

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閑話

月を思ふ

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少し広めのバルコニーから外へ出る。
目の前には のどかなスイスの街並みが並ぶ。
 
この景色も見納めだな……。
 
何回か形ばかりの出張を繰り返し、来年には部長の椅子が待っている……予定だった。
「ふっ」
自嘲ぎみに笑い、タバコに火をつけた。
見上げれば柔らかく けぶる月。
ポケットから、薄汚れて もう絵柄すら確認しづらくなったガチガチの消しゴムを取り出す。
 
こんなもの、後生大事に持ち歩いてます、なんて言ったら歴代の恋人たちは裸足で逃げ出すな…。
 
能天気に そんなことを思うと腹の底から笑いだしたくなって、タバコを2、3度 吹かせてからバルコニーを後にした。
 
 
 
 
 
 
 
 
まだ笑える、そう思いながら……
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