4 / 14
プロローグ
4
しおりを挟む夜の闇の中、商売柄もあってあまりに眠れぬもんだから、
少しだけ蝋燭をつけて、また吸い始めた煙草に火をつける。
そういえばこの可愛い折り紙の鶴も早く燃やしてしまわなければならない。
禿にやれば喜びそうだと思ったけれども、やはりどうしても手放せなかった。
あんまりかわいいもんだから、ちょっと意地悪がしてみたくなって、
掌の上で煙管で突っついて転がしてやった。
赤い鶴の内側になんだかちょっとだけ黒色が見えた気がした。
何かあるのかと気になってちょっと可哀想だが紙を解いていく。
内側に何か書いてあるようだ。
火を近づけて照らして見ると、
「あなたが好きだ」
と書いてある。
手が震える。
こんな単純な言葉なのに、どんな睦言より恋文より胸が苦しくなった。
若い彼の気持ちがその一言に青臭く溢れてくるようだ。
まさかまさか、他の男の元へ行く前夜にこんな気持ちになるなんて。
太夫は小さく声を上げてカラカラと笑って、鶴をそっと火にくべた。
少しずつ灰になる鶴に気落ちした心もとても晴れやかになる。
鼻が少しつまって目元がちょびっと暖かい。
冷えるはずの頬も鶴のおかげで熱くて痒い。
何を自分は迷っていたのか、全て思い通りにならぬなら最期位自由に生きてやろう。
少しだけ蝋燭をつけて、また吸い始めた煙草に火をつける。
そういえばこの可愛い折り紙の鶴も早く燃やしてしまわなければならない。
禿にやれば喜びそうだと思ったけれども、やはりどうしても手放せなかった。
あんまりかわいいもんだから、ちょっと意地悪がしてみたくなって、
掌の上で煙管で突っついて転がしてやった。
赤い鶴の内側になんだかちょっとだけ黒色が見えた気がした。
何かあるのかと気になってちょっと可哀想だが紙を解いていく。
内側に何か書いてあるようだ。
火を近づけて照らして見ると、
「あなたが好きだ」
と書いてある。
手が震える。
こんな単純な言葉なのに、どんな睦言より恋文より胸が苦しくなった。
若い彼の気持ちがその一言に青臭く溢れてくるようだ。
まさかまさか、他の男の元へ行く前夜にこんな気持ちになるなんて。
太夫は小さく声を上げてカラカラと笑って、鶴をそっと火にくべた。
少しずつ灰になる鶴に気落ちした心もとても晴れやかになる。
鼻が少しつまって目元がちょびっと暖かい。
冷えるはずの頬も鶴のおかげで熱くて痒い。
何を自分は迷っていたのか、全て思い通りにならぬなら最期位自由に生きてやろう。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説


妻を蔑ろにしていた結果。
下菊みこと
恋愛
愚かな夫が自業自得で後悔するだけ。妻は結果に満足しています。
主人公は愛人を囲っていた。愛人曰く妻は彼女に嫌がらせをしているらしい。そんな性悪な妻が、屋敷の最上階から身投げしようとしていると報告されて急いで妻のもとへ行く。
小説家になろう様でも投稿しています。
(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)
青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。
だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。
けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。
「なぜですか?」
「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」
イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの?
これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない)
因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。

忙しい男
菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。
「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」
「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」
すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。
※ハッピーエンドです
かなりやきもきさせてしまうと思います。
どうか温かい目でみてやってくださいね。
※本編完結しました(2019/07/15)
スピンオフ &番外編
【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19)
改稿 (2020/01/01)
本編のみカクヨムさんでも公開しました。
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる