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僧侶 編
No.1 お約束の展開……ではない?
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朝 目覚めると、いつもの虚無感に襲われる。
抱きしめたいのに空回る この両腕は、確かに誰かを包み込んでいたはずなのに……。
両手を掲げ、空を掴むように握りこむ。
誰か、いたんだ……。
誰か……。
胸に開いた大きな穴を塞ぐように我が身を抱きしめた。
「おはよ~。元樹!!」
ぐいっと胸を押し付けるように幼馴染みの真紀子が腕を絡ませてくる。
「ああ、おはよう」
それを さり気なく外しながら微笑む。
「もう願書は出した?良かったら一緒に行かない?」
特に気にする様子もなく、また僕の腕に絡む。
やれやれ。
男女の垣根のない時期から僕たちは こんな感じだったから仕方ないのかも知れない。
でも来年には大学生になる二人が恋人でもないのに この距離感は おかしい。
やんわりと忠告したこともあったけど、今も こうやって絡んでくる。
困った妹みたいな感じだな。
まぁ実際は同い年なんだが、そのくらい真紀子は少し子供っぽい。
中学の時なんか、ちょっと女子と話したくらいで泣きながら家まで抗議にきたことがあった。
大好きな幼馴染みを取られるようで嫌なんじゃないと、母親が言っていたのを思い出す。
親同士の仲の良さに水を刺したらいけないと放置したのが まずかったのか、真紀子は どんどんエスカレートしていき、同じ高校に進学した時には すでに僕たちは将来を約束しあった恋人同士って事になってた。
幸か不幸か、僕に好きな人ができなかったから良かったけど、どこかで ちゃんと線を引かないと後々まずいことになるんじゃないか?と最近は思っている。
僕も真紀子も子供じゃないんだから……。
そうは思っていても真紀子の性格を考えると、それは なかなか難しいことのようにも思える。
思い込みが激しすぎる傾向があるうえに被害者意識も限りなく高い。
上手に話さないと、僕だけじゃなく真紀子本人も壊れてしまいそうな危うさがある。
いっそ本当に付き合ってもイイんじゃないか?とも思ったことがあるが、どうやっても そんな風には思えなくて実行には移せなかった。
だって、胸が苦しくなるんだ……。
誰かを思って心が泣くんだ。
それは悲鳴にも似た心の叫びで、なのに目覚めると何一つ思い出せない。
「元樹?聞いてる?」
「ん?ああ、聞いてるよ」
「良かったぁ」
にっこりと微笑む真紀子の耳元でトパーズのピアスが光っていた。
抱きしめたいのに空回る この両腕は、確かに誰かを包み込んでいたはずなのに……。
両手を掲げ、空を掴むように握りこむ。
誰か、いたんだ……。
誰か……。
胸に開いた大きな穴を塞ぐように我が身を抱きしめた。
「おはよ~。元樹!!」
ぐいっと胸を押し付けるように幼馴染みの真紀子が腕を絡ませてくる。
「ああ、おはよう」
それを さり気なく外しながら微笑む。
「もう願書は出した?良かったら一緒に行かない?」
特に気にする様子もなく、また僕の腕に絡む。
やれやれ。
男女の垣根のない時期から僕たちは こんな感じだったから仕方ないのかも知れない。
でも来年には大学生になる二人が恋人でもないのに この距離感は おかしい。
やんわりと忠告したこともあったけど、今も こうやって絡んでくる。
困った妹みたいな感じだな。
まぁ実際は同い年なんだが、そのくらい真紀子は少し子供っぽい。
中学の時なんか、ちょっと女子と話したくらいで泣きながら家まで抗議にきたことがあった。
大好きな幼馴染みを取られるようで嫌なんじゃないと、母親が言っていたのを思い出す。
親同士の仲の良さに水を刺したらいけないと放置したのが まずかったのか、真紀子は どんどんエスカレートしていき、同じ高校に進学した時には すでに僕たちは将来を約束しあった恋人同士って事になってた。
幸か不幸か、僕に好きな人ができなかったから良かったけど、どこかで ちゃんと線を引かないと後々まずいことになるんじゃないか?と最近は思っている。
僕も真紀子も子供じゃないんだから……。
そうは思っていても真紀子の性格を考えると、それは なかなか難しいことのようにも思える。
思い込みが激しすぎる傾向があるうえに被害者意識も限りなく高い。
上手に話さないと、僕だけじゃなく真紀子本人も壊れてしまいそうな危うさがある。
いっそ本当に付き合ってもイイんじゃないか?とも思ったことがあるが、どうやっても そんな風には思えなくて実行には移せなかった。
だって、胸が苦しくなるんだ……。
誰かを思って心が泣くんだ。
それは悲鳴にも似た心の叫びで、なのに目覚めると何一つ思い出せない。
「元樹?聞いてる?」
「ん?ああ、聞いてるよ」
「良かったぁ」
にっこりと微笑む真紀子の耳元でトパーズのピアスが光っていた。
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