異世界に転生しました?

冷暖房完備

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本編

No.12 アウトレットモールにて

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「本当に一人で大丈夫なの?」
元樹お兄ちゃんが もう一度 念を押すように聞いてきた。
「うん!!」
もうボスを倒した後だからモンスターに襲われる心配は ない。
さらに念のためちゃんと効果 絶大な保護魔法も かけてもらってる。
「大丈夫って言ってるんだから放っといて服 買いに行きましょうよ」
焦れた真紀子さんに引きずられるように元樹お兄ちゃんが席を離れた。
「危ないから絶対どこかに行ったらダメだぞ!!」
「はぁぁい」
エスカレーターに消えてく真紀子さん達に手を振って見送る。
「ふぅぅ」
知らず ため息が漏れる。
 
やっと一人になれた……。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
どのくらいボーーーとしてたんだろう。
本当に なぁんにも考えずにボーーーとしてた。
人間て、こういう時間も大切なんだなぁと身に染みて思う。
寝ている間に体の歪みを治すように、心の擦り切れた部分が修正されたような気がした。
 
まぁ、あくまで『気がした』だけだけどね。
 
アウトレットに着いてすぐ買ってもらった お茶のプルタブを外す。
 
ごくごく
 
「ふぅぅ」
数時間ぶりの お茶は喉の渇き以上に私を潤してくれた。
数時間……。
「あれから1日だって経ってないんだよねぇ」
ぽつりと呟く。
真紀子さん達と出会って この町にきた。
たった数時間の出来事。
この先、何時間、何日間なのか分からない時間をかけて旅をして魔王を倒す。
勇者である真紀子さん。
戦士である恵くん。
僧侶である元樹お兄ちゃん。
魔法使いである三ツ夫さん。
皆それぞれに役割がある。
 
なら私は?
私は何の役割があるんだろう。
 
仲間に出会うとレベルが上がるらしく、皆がレベルアップを実感している中、当然といえば当然なんだけど私には何の変化もない。
 
モブだからね。
 
じゃあなんで金魚の糞よろしく勇者一行に付いて回ってるのか?
まさか、魔王への生け贄?
 
て、シャレにならんわ!!
 
身震いして、そんな考えを頭から追い出す。
 
―――動くな、揺れる。
 
ふいに脳内に響く声にビックリして隣を見る。
 
―――なに驚いてんだよ。さっきから ずっと隣に居ただろ。
 
「え?あ、そう、なんです、か?」
挙動不審になりながら、隣に座る雑種の犬を凝視する。
『元樹様がユイ様一人では 危ないと申されまして、特に買い物に興味のない三ツ夫様が傍にお仕えする事になったのです』
三ツ夫さんの頭の上で彼の天使が説明してくれた。
「へ、へぇ。そ、それは ありがとうございま、す」
ペコリと頭をさげる。
 
げ、元樹お兄ちゃん!!
一人の方が まだマシでーーーす!!
 
状況が状況だったからか、あのビルで初めて見たときから三ツ夫さんは、なんだか ちょっと苦手。
生理的に受け付けない感じがしてしまう。
なので特に話すこともなく、微妙な空気が流れてゆく。
 
ね、寝たふりでもしよ……。
 
不自然にならない程度にウトウトして眠そうにアクビを繰り返して目を閉じた。
 
―――ガキは、よく寝るな。
 
『ですねぇ』
 
無事に寝てると思ってもらえたようでホッとする。
『しかし、思いの外 早く勇者様たちと合流できました』
 
―――保健所に連れて行かれてバタバタしたからなぁ。
 
『この国の野良犬 確保の早さには驚かされましたね』
 
―――だから前に犬の姿じゃ出歩けねぇって言ったんだよ。
 
『神様も せめて猫にしてくださったら良かったですのに……』
 
―――猫は嫌いだ。
 
二人?が くだらない会話をしてる。
聞いてると本当に寝てしまいそうだ。
 
―――しっかし、こいつも勇者もブスだな。
 
『ええ、本当に』
唐突に話題が変わる。
 
―――どうせならヨダレが出るくらいの美人に転生させてやりゃあ本人も ありがたかっただろうにな。
 
『勇者様も何か神様の反感をかったのかもしれませんね』
 
……その言い方だと三ツ夫さんは神様を怒らせたのかな。
 
二人?の会話は丸聞こえだが気づかれてはいない。
『……それでも勇者様の天使は可愛らしいかったですね』
 
―――ははは。お前の好みじゃねぇだろ。 
 
その やりとりにフランス人形のような真紀子さんの天使の姿を思い出す。
『そんなことは ありません!!あの可愛らしい顔が どんな風に歪むか気になるじゃないですか!!』
真っ赤な顔で力説する天使。
 
ゆ、歪む?
 
―――いっつも でっかいの相手にしてるしな。あのくらいだとサイズも合うし、いつも以上にイイだろうな。
 
『ですよね~!!ああ、一度お相手していただきたい!!』
二人?で下卑た笑いを浮かべる。
 
サイズ?お相手?
 
なにを言ってるのか意味が分からないが本能的に不快感が浮かぶ。
 
なんか……気持ち悪い。
 
この二人?には必要以上に近づかないようにしようと思った。
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