異世界に転生しました?

冷暖房完備

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本編

No.4 少女が仲間に加わった

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「ダメよ!!」
平凡男子の提案に真紀子さんが叫ぶ。
「なんで?」
不思議そうに平凡男子が問う。
「そ、それは……」
言い淀む真紀子。
 
ユーナって名前に何かあるのかな?
てか、私 普通に名前あるけどね!!
声が出ないことは分かってるので 抗わないけど、後で紙に書いて渡そうと思う。
 
「とにかくダメなものはダメ!!ユーナは絶対ダメ!!」
ヒステリックに泣き叫ぶ真紀子さんに困り、私の名前は保留になった。
 
いや、名前あるからね!!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
『勇者一行は迷子の少女を保護し、彼女を親元に届けるために隣町へと歩を進めるのであった』
 
て、いやいや!!
ここ!!
ここが私の町だよ!!
 
安定の体ブロック中だけど心の中で叫ぶ。
「どう見ても この町の子でしょ」
真紀子さんが呆れたように言う。
『そ、そこは分かりませんよ!?』
狼狽える天使は何もかも知ってそうだ。
「早く魔王を倒して家に返してあげないとね……」
やや疲れたように平凡男子が言う。
「すやすや」
漆黒の少年は安眠中……。
『隣町には今日中には着きます』
少年の天使がはりきって話す。
「ハイヤーで一時間だからね」
そりゃ着くわと真紀子さんが言う。
『向こうに着いたら装備を揃えて、中ボス、エリアボスを倒した後、もう一人の仲間と合流する予定です』
「んじゃ百貨店 寄って何着か欲しいわね。駅前のホテルに泊まるから予約いれといてよ」
『は、はい』
 
……勇者一行、だよね?
これじゃあワガママ姫と下僕一行だ。
 
助手席で大人しく座りながら思う。
世界を救う正義の味方にしてはダークな印象を拭えないけど、負ける気はしなかった。
自分の立ち位置さえ間違わなければモンスターに終われて逃げ回ることもないし、食と住は保証されるみたい。
とりあえず早く魔王を倒してもらうことだけ祈っておこう。
「ユウも寝てていいよ。着いたら起こしてあげるから」
「は、はい。ありがとう、ございます」
平凡男子が声をかけてくると一気に車内に殺意が充満する。
慌てて寝た振りをしたのでセーフだと思う。
少しして私たちが寝静まったころ(寝てないけどね)真紀子さんが動く。
「ね、ねえ。元樹、なんで あの名前にしようとしたの?」
「ユーナ?」
「……それ」
その名前を彼が呼ぶことを ことのほか嫌みたいで一気に不機嫌になる。
「んん」
漆黒の少年が その心地よさに身動いだ。
こいつが起きると面倒なので真紀子さんは起こさないように気を取りなおす。
「その名前に何かあるの?」
「……ない、かな。なんでって聞かれると困るよ。なんとなく思いついただけだから」
平凡男子が困ったように笑う。
「そ、そう」
「まぁユウは、ユウの方が気に入ってるみたいだし問題ないよね?」
真紀子さんの不機嫌の理由は分からないが、この件は これで終わりにしようと平凡男子が言った。
 
私は、どっちも興味ないけどね。
なんせホントの名前ありますから!!
 
ただ設定上、紙に書くのダメみたいで名乗れないけどね……。
 
小さくため息をつく。
『真紀子さま。そろそろ隣町へ着いたようです』
天使が楽しそうに振り替える。
「さぁ鬼が出るか蛇が出るか……」
真紀子さんは真っ赤に塗られた唇を一舐めした。
 
 
 
 
 
 
 
「こ、これは何?」
思わず声に出た。
「ほんのちょっとの距離で ここまで変わるものなのか?」
平凡男子も息を飲む。
「別に、一緒」
さして興味なさ気な漆黒の少年。
「やっと、異世界って感じがしてきたわね」
なぜか やる気を出す真紀子さん。
個々の感想は置いといて、目の前に広がる異端の世界に立ち止まっていた。
「ぴぎゃー」
「ぐるるる」
鳴き声?奇声?を発する人らしきモノ。
魔物と呼ぶに相応しい異形のモンスター。
 
あのゲームで街をクリアしたら、戦う相手が人間から人形モンスターになるんだ。
 
他人事のような感想が頭に浮かぶ。
『これは想像以上ですね!!』
『皆さん、武器を持ってください!!魔物の射程距離に入りますと自動的に戦いが始まります』
嬉々として話し出す天使たち。
「まじか……」
「腕、が、なる」
「え~。お洋服 買いたかったのに~」
各々 準備に取りかかる中、平凡男子の手のひらから温かな光が射し、それを私の頭に乗せてきた。
そこから包み込むように光が私を取り巻く。
「保護魔法をかけた。ユウが止まってる間は魔物には気づかれないから、危ないと思ったら動かず俺たちの助けを待ってね」
「は、はい」
 
わぁ、ありがたい!!
平凡男子とか言ってゴメンね!!
 
「ありがとう。…げ、元樹お兄さん」
「うん」
くすぐったそうに笑うと、真紀子さんへと歩いて行く。
「真紀子、どうする?」
「とりあえず歩いてみましょう。魔物を倒していけば そのうち中ボスに出会うでしょ?」
にっこり笑って真紀子さんが手を上げる。
「恵、出番よ」
「ん」
「期待してるわ」
その一言に恵が微笑む。
この世のものとは思えない神々しいほどの美貌で……。
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