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本編
No.1 名もなき者
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カチッ。
まるでスイッチが入ったかのように突然 動きだす人の形をしたモンスター。
それは何かの きっかけで発動するゲームのシナリオみたいに不自然に物語が進んでゆく。
地獄絵図のように街が業火に晒されてゆく中、私は必死に物語の『境目』を探して走る!!
私には前世の記憶がある。
と言っても自分が どこの誰なのか、なんのために転生したのかまでは分からない。
ただ、今 目の前に繰り広げられているストーリー展開や街並みには覚えがあった。
これは昔、兄弟と一緒にやったクソゲー『異世界に転生しました?』だ。
神に出会ってチートをもらい、異世界に来たはずなのに そこは異世界でも なんでもなくて、自分の嫌いな人間を次々に殺害してゆくだけのストーリー。
しかも一度 死んだら やり直しもきかずゲームオーバー。
結局 私は、一度も自分の街から出れず放り出した。
まさか、そんなクソゲーの中に私がいるなんて……!!
奥歯を噛みしめながら、ただ走る。
走りながら、それでもゲームの主要キャラじゃなくて良かったと心底 思った。
しょせんモブである私は、このシナリオから外れた場所にさえ逃げられれば また何事もない『日常』というものに還れる。
気づいたのは自分が転生者だと分かってから半年ほど たった頃だ。
他のモブたちと逃げまどう中、あやまって落ちた池が『境目』だったのだ。
それから何度かシナリオに遭遇したが、半径2キロほどを越えれば『日常』に戻った。
それに気づいた時には歓喜と安堵と何か分からない感情から3日3晩 吐きながら泣いた。
とは言っても転生した私は小学生3年生の女の子だ。
いつ始まるかも分からないシナリオで いきなり2キロを全力で走るのは至難の技だ。
しかもその半径2キロというのも そのシナリオを発生させている『なにか』からの距離で それが最近 動いている『なにか』ではないかと推測している。
なぜなら、シナリオから抜けたはずの場所がまたシナリオの中に取り込まれるからだ。
せめて、20代くらいの男の人に転生させてほしかった。
そんなことを考えても現実は変わらない。
ハァハァと息があがり足がもつれるが『境目』を目指して走る。
おかしい。
考えたくない思いが頭をよぎる。
いつもなら、とっくに抜けている『境目』が今日は いくら走っても見つからない。
それどころか元凶に近づいているような気さえしてきた。
引き返す?
いや、それも危険な気がする。
どこに行けばイイのか分からないけど、走ることを やめたら待つのは『死』だけだということは痛いほど分かっていた。
無我夢中で走り回り、やっと見つけた路地裏にすべりこむと、濃厚な殺意に背筋が凍る。
「……まだ、いた」
「!!!」
漆黒の防具についた返り血が太陽に照らされて禍々しく光る。
幼さの残る少年の無表情に見つめる双眼は心などないかのように冷たい。
「鬼、ごっこ。おし、まい」
そう言うと、体より大きな両刃刀を ゆっくりと振り上げる。
あ、死ぬな。
やけの冷静に そんなことを思った。
まるでスイッチが入ったかのように突然 動きだす人の形をしたモンスター。
それは何かの きっかけで発動するゲームのシナリオみたいに不自然に物語が進んでゆく。
地獄絵図のように街が業火に晒されてゆく中、私は必死に物語の『境目』を探して走る!!
私には前世の記憶がある。
と言っても自分が どこの誰なのか、なんのために転生したのかまでは分からない。
ただ、今 目の前に繰り広げられているストーリー展開や街並みには覚えがあった。
これは昔、兄弟と一緒にやったクソゲー『異世界に転生しました?』だ。
神に出会ってチートをもらい、異世界に来たはずなのに そこは異世界でも なんでもなくて、自分の嫌いな人間を次々に殺害してゆくだけのストーリー。
しかも一度 死んだら やり直しもきかずゲームオーバー。
結局 私は、一度も自分の街から出れず放り出した。
まさか、そんなクソゲーの中に私がいるなんて……!!
奥歯を噛みしめながら、ただ走る。
走りながら、それでもゲームの主要キャラじゃなくて良かったと心底 思った。
しょせんモブである私は、このシナリオから外れた場所にさえ逃げられれば また何事もない『日常』というものに還れる。
気づいたのは自分が転生者だと分かってから半年ほど たった頃だ。
他のモブたちと逃げまどう中、あやまって落ちた池が『境目』だったのだ。
それから何度かシナリオに遭遇したが、半径2キロほどを越えれば『日常』に戻った。
それに気づいた時には歓喜と安堵と何か分からない感情から3日3晩 吐きながら泣いた。
とは言っても転生した私は小学生3年生の女の子だ。
いつ始まるかも分からないシナリオで いきなり2キロを全力で走るのは至難の技だ。
しかもその半径2キロというのも そのシナリオを発生させている『なにか』からの距離で それが最近 動いている『なにか』ではないかと推測している。
なぜなら、シナリオから抜けたはずの場所がまたシナリオの中に取り込まれるからだ。
せめて、20代くらいの男の人に転生させてほしかった。
そんなことを考えても現実は変わらない。
ハァハァと息があがり足がもつれるが『境目』を目指して走る。
おかしい。
考えたくない思いが頭をよぎる。
いつもなら、とっくに抜けている『境目』が今日は いくら走っても見つからない。
それどころか元凶に近づいているような気さえしてきた。
引き返す?
いや、それも危険な気がする。
どこに行けばイイのか分からないけど、走ることを やめたら待つのは『死』だけだということは痛いほど分かっていた。
無我夢中で走り回り、やっと見つけた路地裏にすべりこむと、濃厚な殺意に背筋が凍る。
「……まだ、いた」
「!!!」
漆黒の防具についた返り血が太陽に照らされて禍々しく光る。
幼さの残る少年の無表情に見つめる双眼は心などないかのように冷たい。
「鬼、ごっこ。おし、まい」
そう言うと、体より大きな両刃刀を ゆっくりと振り上げる。
あ、死ぬな。
やけの冷静に そんなことを思った。
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