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プロローグ
遥(仮)絶望する。
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「エジュリアル王国 第一王子であるフライツ・ア・エジュリアルはワトソン王国 第一王女ミレイユ・デ・ワトソンとの婚約を この場をもって解消いたします!!」
高らかに宣言をする、その姿さえ凛々しく美しいなんて なんて皮肉なのでしょう。
エジュリアル王国と我がワトソン王国は先祖代々 友好を結んできた仲ではあるが、血が濃くなることを恐れ王族同士の婚姻は何代かに一度と決められていた。
そしてワタクシ達は久方ぶりに王族間での婚約者となった。
そんな名誉ある立場にワタクシは もちろんフライツ様も誇りに思っていたはずなのに……。
一方的な婚約破棄なんて……。
こんな簡易的な所見の間で両国王陛下が立ち会いの元とはいえ行っていい行為ではない。
ワタクシは愛しいフライツ様に厳しい視線を向ける。
「貴族の婚姻は平民のそれとは訳が違います。フライツ様は、いえエジュリアル王国は、それを理解した上での…」
「エジュリアル国王も同意している」
ワタクシの言葉をさえぎるようにフライツ様が言った。
その不躾な行為に眉をひそめる。
ワタクシの愛したフライツ様は、このような方だったかしら……。
「ミレイユよ。これはワトソン王国 国王であるワシも承諾済みだ」
そう告げるお父様の横でエジュリアル国王が厳しい眼差しで頷く。
え……?
「い、ま…なんと?」
「まことに残念だが二人の婚約解消は両国の国王の同意の元に成立しておる。ゆえに これは事後報告であり、そなたに もの申す権利はない」
「お父様っ!?」
「……そなた、エマニュエル公爵令嬢に何をしたか覚えておるか?」
お父様の探るような口調に心臓が凍る。
「な、なんのことでしょうか?」
ワタクシの言葉に深い ため息をつく。
「もうよい。分からぬのなら後で ゆっくり話して聞かせる。用は済んだ。さがりなさい」
「お父様っ!!」
「さがれと言っておる!!」
聞いたことのない恫喝に言葉を失う。
近衛兵に抱えられるように退室させられ、侍女に引き渡された。
まるで罪人のように………。
のちに あの公爵令嬢とフライツ様が婚姻を結んだと風の噂で聞いたのは、王族ゆかりの修道院の小さな談話室だった。
何が いけなかったのだろう。
ワタクシはただ愛しいフライツ様に いやらしく近づく公爵令嬢を たしなめただけ。
立場や道理を話して聞かせただけ……。
お母様や乳母、執事たちから教えられた貴族としての 振る舞いや作法を教え説いてやっただけだ。
悔しい、口惜しい。
ワタクシの何が いけなかったと言うのだろう……。
毎夜まくらを濡らす涙は止まることを知らず、絶望の淵から這い上がることは できない。
軋んでゆく体、霞んでゆく視界、朽ちてゆく心……。
強い光に目が眩んだ瞬間、ワタクシは簡素なベッドの横で幼子の姿に なっていた。
高らかに宣言をする、その姿さえ凛々しく美しいなんて なんて皮肉なのでしょう。
エジュリアル王国と我がワトソン王国は先祖代々 友好を結んできた仲ではあるが、血が濃くなることを恐れ王族同士の婚姻は何代かに一度と決められていた。
そしてワタクシ達は久方ぶりに王族間での婚約者となった。
そんな名誉ある立場にワタクシは もちろんフライツ様も誇りに思っていたはずなのに……。
一方的な婚約破棄なんて……。
こんな簡易的な所見の間で両国王陛下が立ち会いの元とはいえ行っていい行為ではない。
ワタクシは愛しいフライツ様に厳しい視線を向ける。
「貴族の婚姻は平民のそれとは訳が違います。フライツ様は、いえエジュリアル王国は、それを理解した上での…」
「エジュリアル国王も同意している」
ワタクシの言葉をさえぎるようにフライツ様が言った。
その不躾な行為に眉をひそめる。
ワタクシの愛したフライツ様は、このような方だったかしら……。
「ミレイユよ。これはワトソン王国 国王であるワシも承諾済みだ」
そう告げるお父様の横でエジュリアル国王が厳しい眼差しで頷く。
え……?
「い、ま…なんと?」
「まことに残念だが二人の婚約解消は両国の国王の同意の元に成立しておる。ゆえに これは事後報告であり、そなたに もの申す権利はない」
「お父様っ!?」
「……そなた、エマニュエル公爵令嬢に何をしたか覚えておるか?」
お父様の探るような口調に心臓が凍る。
「な、なんのことでしょうか?」
ワタクシの言葉に深い ため息をつく。
「もうよい。分からぬのなら後で ゆっくり話して聞かせる。用は済んだ。さがりなさい」
「お父様っ!!」
「さがれと言っておる!!」
聞いたことのない恫喝に言葉を失う。
近衛兵に抱えられるように退室させられ、侍女に引き渡された。
まるで罪人のように………。
のちに あの公爵令嬢とフライツ様が婚姻を結んだと風の噂で聞いたのは、王族ゆかりの修道院の小さな談話室だった。
何が いけなかったのだろう。
ワタクシはただ愛しいフライツ様に いやらしく近づく公爵令嬢を たしなめただけ。
立場や道理を話して聞かせただけ……。
お母様や乳母、執事たちから教えられた貴族としての 振る舞いや作法を教え説いてやっただけだ。
悔しい、口惜しい。
ワタクシの何が いけなかったと言うのだろう……。
毎夜まくらを濡らす涙は止まることを知らず、絶望の淵から這い上がることは できない。
軋んでゆく体、霞んでゆく視界、朽ちてゆく心……。
強い光に目が眩んだ瞬間、ワタクシは簡素なベッドの横で幼子の姿に なっていた。
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