この恋に殉ずる

冷暖房完備

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並木 智恵子 目線

No.2 再会

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この年になると色んなことが上手になってくなぁと思う。
ちょっとのことじゃ涙なんて出やしない。
 
ホットワイン片手に そんなことを思う。
 
お一人様も板についてきたし、このまま一生 結婚できないかもなぁぁ。
 
自虐的に笑って、またワインを飲む。
あれから何年たったんだろう。
征二は、劣化の目立ちやすい濃い顔立ちのわりにイイ年の取り方をしてた。
あの穏やかそうな雰囲気は、きっと神楽ちゃんの おかげなんだろうなぁと想像がつく。
 
あの子にあって、アタシになかったもの。
 
それが なんなのか、いくら考えても分からない。
分からないし、きっと考えるだけ無駄なこと。

答えが出ようが出まいが過去も未来も変わらないんだから……。

「トナリ、いいですか?」
ふいに現実に引き戻された。
ここは寮でも実家でもなく お一人様ご用達、イタリアン レストランのカウンター席。
しかも お洒落女子の隠れ家風。
「珍しいとこで会いますね」
アタシが愛想笑いを向けると爽やかな笑顔が返ってきた。
「チエコがミエタカラ ハイッタです」
店内ほぼ女子の空間で名実ともに異邦人が笑う。
カタコトとはいえ日本語を話す彼はタイで競合相手だった会社の御曹司だ。
 
名前は、え~~と……。
 
「ミカエルさん、でしたっけ?」
「ジョージです」
 
あ、やべ。一文字も あってない。
 
ジョージは、微妙な空気をスルーしたのか隣に座る。
「さっき、ニホンにツキマシタ。まさかチエコにアエルなんてキセキ!!」
少しオーバーアクションで話し出す。
「よく覚えてましたね、もう何年も前に会っただけなのに」
「ビジンはワスレナイ」
 
あ~はいはい。
 
さすが異国の男は 口が上手い。
しかもジョージは物語から出てきたような王子さまフェイス。
モデルのような長身と洗練された仕草。
普通に女がコロッと着いてっちゃうだろうと思われる。
「チエコ、こんなヨルにヒトリ?」
「こんなって。仕事帰りの遅めのディナーなだけよ?」
「そ~いうイミではナクテ、クリスマス シーズンにオクサンがコンナとこにイタラ、ダンナサンしんぱい」
 
旦那さん……。
 
「オレからトッタしごと、ケッコンするためダッタいってた」
「ああ……」
 
面倒くさいなぁ。
 こんな日に その話をするなんて どんな拷問よ。
 
「色々あったのよ……」
と濁す。
「イロイロ?」
と濁されてくれない。
「結婚は、してない。だから心配されない。以上!!」
これ以上 聞くなと言外に含ませる。
くいっとワインを煽ると席をたつ。
「帰るわ。ごゆっくり」
伝票を持って立ちあがる。
「マッテ」
その手を捕まれた。
 
 
 
 
 
「ボクとケッコンしてくダサい」
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