この恋に殉ずる

冷暖房完備

文字の大きさ
上 下
50 / 76
ラブラブちゅ

No.9 恋敵は抹殺

しおりを挟む
「カツ丼 いっちょ~!!」
「はいよぉ」
夕飯時ラッシュ、厨房は てんてこ舞い!!
「おう神楽~、お前 今月までなんだって?」
「あ、おっちゃん いらっしゃい。そうなんだよ~来週の金曜日で終わり~」
「寂しくなるなぁ」
「そう言わずに食べに来てよ~。私も免許とったら時々来るから!!」
「やめてくれ!!高速が渋滞になる」
「おっちゃん、ゴハンおかわりナシね!!」
「おいおい。て、この やり取りも残りわずかかぁ、寂しくなるなぁ」
「新しく入ってきた子も若い子だし優しくしてやってね!!」
ちらりと厨房を見ると危なげな手つきで二人の新人がフライパンを振ってる。
「まぁここの飯は安くて旨いから来るわ来るけどな。ほれ」
ふいに何かが飛んできて反射的に受けとる。
「え?なに!?」
「就職祝いだよ。娘が選んだから変なもんじゃねぇぞ?」
「ええ!?もらえないよ~!!」
「つっかえされても困るから受けとれ」
がはははと笑いながらカウンターを離れていく おっちゃん。
「人気者ね~神楽ちゃん」
フライパン振りながらオバチャンズの面々が笑ってる。
私も苦笑いで返し、厨房の隅を見る。
今月までって言った日から少しずつ増えてく就職祝いのプレゼント。
お菓子や化粧品などなど。 
 
オバチャンズはもらっとけって言ってくれるけどイイのかな……。
 
お返しを考えたら家計簿が真っ赤になりそう……(泣)
 
 
 
 
 
 
 
ラッシュを終えて少し落ち着きを取り戻した時、いつも美味しいお菓子をくれるお兄ちゃんが入ってきた。
「あ、いらっしゃい!!」
「お、おう」
長距離の運転手らしく日に焼けた筋肉が繋ぎの作業着からも うかがえる。
 
が、筋肉そんな興味ないけどね。
 
「いつものでいい?」
「あ、うん」
オバチャンズに牛丼大盛りを頼む。
「どったの?元気ないね」
ここの客にしては珍しく20代のお兄ちゃんは、いつも元気なのに。
「風邪でもひいた?」
「あ、いや……辞めるんだって?」
「あ、うん。就職 決まったから」 
「そうみたいだね……。おめでとう」
「ありがとう」
 
なんか元気ないなぁぁ。
 
「そんな顔されたら心配で辞めれないわ~」
なんて おどけてみせる。
笑ってくれると思ってたのに じっと見つめられた。
 
え?ええ?
 
おろおろして振り替えるとオバチャンズがニヤニヤしながら こっちを見てた。
 
な、なに~!?(泣)
 
「神楽ちゃん!!」
「ふへっ!?」
急に手を握られて慌てて顔を戻すと真剣な顔の お兄ちゃんと目が合う。
「好きなんだ。付き合ってほしい」
「……………ええ!?」
思わず歌舞伎役者のように おののいた!!
 
ま、まじ!?そんな素振り一度もなかったですよね!?
てか私あなたの名前も知りませんけど~!?(泣)
 
「絶対 幸せする!!行きたいとこ全部 連れてくし欲しいもの全部 買ってやる!!」
 
え?えーーー!?
 
「あ、あの、私、付き合ってる人がいま、すから ごめ……」
「そんなの関係ない!!そいつと別れて俺と…!!」
 
ひええええええ!!
 
あまりの押しの強さにパニックになっていると掴まれた手の上に さらに一つ手が重なる。
「お客様、申し訳ございませんが手を離していただけますか?」
低い、低~い声で新垣さんが唸る。
瞬間、ビクッとなって お兄ちゃんが手を離す。
 
ほっとしたけど、新垣さん あなた いったい今どんな顔してるんですか?
私に背を向けてるから分からないけど遠くのお客さんまでビビってますよ~(泣)
 
「し、仕事中に悪かったよ。神楽ちゃん、後で ゆっくり話した……」
「お客様」
「ヒッ」
 
う、うわ~(泣)
お兄ちゃん、ヒッとか言ってるよ~(泣)
 
「時間外での個人的な接触も ご遠慮していただきたいです」
「は、はあ?あんたに そこまで言われる筋合いはねぇよ!!」
わ、わぁ(泣)これは私が ちゃんと断らないとケンカになってしまう~(泣)
「あ、あのっ!!」
新垣さんを押しのけて前に出ると強引に肩を掴まれた

 
え!?
 
「こいつは俺のなんで ちょっかいかけるの やめていただけますか?」







 
「「「えーーー!?」」」
フロア中ひっくり返るほどの声。
 
わ、わ~(泣)微妙にハモってますよ皆さ~ん(泣)
 
「ちょ、ちょっと待って?じゃあ神楽ちゃんが前に付き合ってるって言ってたのは……」
「俺ですね」
しれっと言う。
「「「えーーー!?」」」
 
 
 
メッチャ ハモってる~(泣)みんな仲いいな!!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

じれったい夜の残像

ペコかな
恋愛
キャリアウーマンの美咲は、日々の忙しさに追われながらも、 ふとした瞬間に孤独を感じることが増えていた。 そんな彼女の前に、昔の恋人であり今は経営者として成功している涼介が突然現れる。 再会した涼介は、冷たく離れていったかつての面影とは違い、成熟しながらも情熱的な姿勢で美咲に接する。 再燃する恋心と、互いに抱える過去の傷が交錯する中で、 美咲は「じれったい」感情に翻弄される。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす

まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。  彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。  しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。  彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。  他掌編七作品収録。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します 「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」  某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。 【収録作品】 ①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」 ②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」 ③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」 ④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」 ⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」 ⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」 ⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」 ⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

パパのお嫁さん

詩織
恋愛
幼い時に両親は離婚し、新しいお父さんは私の13歳上。 決して嫌いではないが、父として思えなくって。

処理中です...