この恋に殉ずる

冷暖房完備

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お仕事ちゅ

No.6 大人の恋

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賑やかな店内とは裏腹に静まり返る個室。
その空気を壊したのは妊婦の佳世さん。
「智恵子が結婚 許してもらうために どれだけ頑張ってるか分かってると思ってたけどね」
神谷さんもキレた。
「だから、さっさと子供作っちまえって言ったんだよ。二人がクソ真面目なのは分かってるけど、順番とか気にする時代じゃないでしょ?」
並木さんは、ふるふると首を横にふる。
そんな姿に佳世さんが唸る。
「携帯かせ。呼び出して説教してやる!!あと何ヵ月が待てないんだクソ野郎って言ってやる!!」
「……て」
「そだそだ。ついでに今夜、子作りしちゃえ」
「やめて やめて」
と困ったように並木さんが言う。
「二人とも、ありがとう。でも違うの……」
俯きながら、並木さんがポツリポツリと話し出す。
「すぐにでも結婚したい あの人を10年も待たせたの。優しさに甘えてワガママ放題で振り回したツケがきたのよ」
「だとしてもさ…」
「皆に姫なんて呼ばれて、いい気になってた。なんだかんだ言いながらアタシのワガママ聞いてくれる彼に甘えてた。だから愛想を尽かされちゃったのよ」
並木さんの肩を夏世さんが抱く。
「それで?諦めるの?」
夏世さんの言葉に並木さんが首をふる。
「諦める諦めないって問題じゃないけど、プロジェクトが成功したら一度 会いに行こうとは思ってるよ。ちゃんと終わらせないとアタシも先には進めないからね」
並木さんは儚げに笑う。
「…聞き分けいいのも考えもんだな」
「泣いてすがる方がカッコ悪いわよ」
「泣いてすがりたかったんだ?」
「………。もう この話は おしまい!!さぁ次は神楽ちゃんの彼氏の話だよ~」

ええ!?この流れで そんなの無理です~(泣)

涙目で訴えると三人は苦笑いして他の話題にしてくれた。










「すいませ~んお勘定お願いします。あと、代行 呼んでもらってイイですか?」
夏世さんがテキパキと仕切る。
ベロベロで抱き合うように眠る並木さんと神谷さん。
それを ちらりと一瞥して、
「飛山さん悪いけど、智恵子こんなんだからアタシが寮まで送るわね」
「え?で、でも悪いです」
「終電ないから言うこと聞きな」
「あ、はい」

こ、怖~(泣)
でも、意外と面倒見はいいんだよね。
口の悪いのさえなきゃ、いい人なのに(泣)

プルル、プルル
「もしもし、ついた?いつもの席だから迎えに来て」
佳世さんが電話を切る。
どうやら旦那さまが着いたようだ。
「お客様~。代行さん来ました~」
「ジャストタイミングだな」
そう言うと、酔っぱらいの頭を叩く。
「おら!帰るぞ!!」



ぐでんぐでんだった二人は、代行さんがイケメンだった事もあり、シラフか!?てなくらいピンシャンして帰っていった。
「えと、飛山さんだっけ?ゴメンね巻き込んじゃって」
人の良さそうなイケメン(確かに工場長には似てない!!)の旦那さまが謝る。
「い、いえ!!こちらこそ、奢ってもらっちゃって すいせん」
「ガキが遠慮しないの。ほら乗って。とっとと帰ろう」
「あ、はい!!よろしくお願いします!!」
「ちゃんと起こしてあげるから着くまで寝ててイイからね」

旦那さま優しいな~(泣)







んで、特に共通の話題もないので寝たふりなんぞしてみる。
「しっかし、今日は特にスゴかったね。飲みすぎだろ、あの二人」
「仕方ない。智恵子がフラれたらしいからな」
「はぁ!?そんな話 聞いてないけど?」
「なに?あんたに言ってないの?」
「元々 相談とかするタイプじゃないからね」
「でも友達でしょ?」
「俺としては友達のつもりだけどね~」

佳世さんの旦那さまと並木さんの彼氏さんは友達なのか……。

「最近は お互い忙しくて会ってなかったからね。ただ、去年 会ったときは変わった様子もなかったけどな」
「それ正月くらいじゃなかった?雰囲気おかしくなったのは夏くらいからだって言ってたわ。」
「まぁ今度 飲む時にでも聞いてみるよ」
旦那さまが深い溜め息を一つ つく。
「しっかし今さらどうしたんだろうね、セイジは……」







え……………。
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