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お付き合いちゅ
No.3 本気のデート
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徒歩の所要時間を考えて外に出ると、見慣れた青いスポーツカーが停まっていた。
「……」
階段を降りて近づくと、新垣さんが車の横で煙草を吸っていた。
「おはよ」
「…おはようございます」
「乗れよ」
「いえ、早く着いちゃうので…」
そう言いながらも動く事が出来ない。
「話があるから乗れ」
だめ押しされて、助手席のドアを開けた。
新垣さんも運転席に座ると、大きくため息をついた。
「正直な話、俺もこの状況をどうしたらイイのか分からん」
こちらを見ずにポツリと言った。
「ぶっちゃけ彼女一筋じゃない。浮気の一つや二つしてる。俺はそういう男だ」
浮気…。
見知ったら新垣さんの顔が知らない男の人のそれに見えてきた。
「けど、さすがに お前を弄ぶ事は出来ない。お前の事は俺なりに気にかけてたし可愛いと思ってるからな」
どうしたもんかと、また ため息をついた。
…軽くあしらおうと してると思ってた。
新垣さんは新垣さんなりに悩んでくれてたんだ。
もう、いいです。やめましょう。
そう言えたらイイ。
でも、せっかく手に入れたチャンスを手放す事は私には出来なかった。
「ワガママ言ってるのは分かってるんです。でも今日だけでイイからデートしたいです」
最後の思い出に ちゃんとしたデートをしたい。
「…わかった」
そう言うと、ゆっくり車を走らせた。
その日は心ここにあらずって感じで、ふわふわして 仕事にも身が入らなかった。
それでも馴れた仕事なので失敗したりする事はなかったけどオバチャンズが時々心配そうに こちらを見ていた気がする。
正真正銘の初めてのデート。
相手は大好きな新垣さん。
なのに、気分はどん底で泣きそうだ。
きっと私は間違ってる。
新垣さんを困らせている。
それでも、それでも この手を離せない。
きっと私は地獄に堕ちるだろう。
でも…。
黒地にヒマワリがプリントされたワンピースに着替えて、駐車場に向かう。
足取りは重い。
ほとんどの人が帰った駐車場には青いスポーツカーだけがポツンと停まっていた。
なんとなく近づきがたくて立ち止まった。
今、あの車に乗ってはいけない気がした。
乗ったら、後戻りできなくなりそうな予感がした。
知らず後ずさるとトンと何かにぶつかった。
「どうした?」
背中に温かな感触を受けて、見上げると優しく微笑む新垣さんがいた。
「行くぞ」
そう言うと、そっと私の肩を抱いた。
さとされるように歩を進めると、助手席のドアを開けてもらい腰をおろす。
不安げに見上げると、やはり微笑む新垣さんがいた。
そのまま運転席に座り、車を ゆっくり発進した。
車内に流れるのはFMラジオだ。
趣味丸出しのヘビメタは なりを潜め、流行りの曲が流れている。
私はどうしたらイイのか分からず、キュッと裾を掴んでいた。
「腹は?減ってるか?」
「い、いえ…」
「そうか」
新垣さんの声が優しいから、なんか調子が狂う。
私は顔を背けて、窓越しに運転する新垣さんを見ていた。
車は細い山道に入り、くねくねと登りながら頂上に着いた。
「降りるぞ」
そう言われて慌てて外に出る。
そんなアタシの肩を先程と同じように優しく抱き寄せて歩き出した。
駐車場には夜だというのに車が何台か停まっていた。
「まぁ、定番っちゃあ定番だけどな…」
そう言って苦笑いした。
な、なに?
階段を登ると視界いっぱいにキラキラとした夜景が飛び込んできた。
「わ、わ~!!」
何これ!!何これ~!!
初めて見る夜景に目を奪われていると、隣で満足げに新垣さんが笑った。
「百万ドルの夜景には程遠いけどな。初心者向けって事で許してくれ」
「そんな事ないです!!」
綺麗…。
もっと近くで見たくて、手すりを掴んで前のめりになる。
「あぶね~って」
新垣さんの声と同時に背中に温かさを感じた。
え…?
私の手の横に新垣さんの手が触れ、頭に新垣さんの顎が置かれた。
「調度イイ背丈だな」
「あ、頭の上で話さないでください。しょ、衝撃がダイレクトにきます」
「あははは。それはいいな。歌でも歌うかな~」
歌うんかいっ!!
と、いつもなら思わず突っ込みそうな新垣さんの呟き。
でもでも、なんか固まってしまう。
チラリと横を見れば同じように後ろから抱きしめられているカップルがいた。
カ、カップル~!!
わ、わ、私たちも他の人から見たらカップルに見えてしまうのかしら~(泣)
新垣さんの態度に不安を感じながらも トキメキを押さえきれないでいた。
「……」
階段を降りて近づくと、新垣さんが車の横で煙草を吸っていた。
「おはよ」
「…おはようございます」
「乗れよ」
「いえ、早く着いちゃうので…」
そう言いながらも動く事が出来ない。
「話があるから乗れ」
だめ押しされて、助手席のドアを開けた。
新垣さんも運転席に座ると、大きくため息をついた。
「正直な話、俺もこの状況をどうしたらイイのか分からん」
こちらを見ずにポツリと言った。
「ぶっちゃけ彼女一筋じゃない。浮気の一つや二つしてる。俺はそういう男だ」
浮気…。
見知ったら新垣さんの顔が知らない男の人のそれに見えてきた。
「けど、さすがに お前を弄ぶ事は出来ない。お前の事は俺なりに気にかけてたし可愛いと思ってるからな」
どうしたもんかと、また ため息をついた。
…軽くあしらおうと してると思ってた。
新垣さんは新垣さんなりに悩んでくれてたんだ。
もう、いいです。やめましょう。
そう言えたらイイ。
でも、せっかく手に入れたチャンスを手放す事は私には出来なかった。
「ワガママ言ってるのは分かってるんです。でも今日だけでイイからデートしたいです」
最後の思い出に ちゃんとしたデートをしたい。
「…わかった」
そう言うと、ゆっくり車を走らせた。
その日は心ここにあらずって感じで、ふわふわして 仕事にも身が入らなかった。
それでも馴れた仕事なので失敗したりする事はなかったけどオバチャンズが時々心配そうに こちらを見ていた気がする。
正真正銘の初めてのデート。
相手は大好きな新垣さん。
なのに、気分はどん底で泣きそうだ。
きっと私は間違ってる。
新垣さんを困らせている。
それでも、それでも この手を離せない。
きっと私は地獄に堕ちるだろう。
でも…。
黒地にヒマワリがプリントされたワンピースに着替えて、駐車場に向かう。
足取りは重い。
ほとんどの人が帰った駐車場には青いスポーツカーだけがポツンと停まっていた。
なんとなく近づきがたくて立ち止まった。
今、あの車に乗ってはいけない気がした。
乗ったら、後戻りできなくなりそうな予感がした。
知らず後ずさるとトンと何かにぶつかった。
「どうした?」
背中に温かな感触を受けて、見上げると優しく微笑む新垣さんがいた。
「行くぞ」
そう言うと、そっと私の肩を抱いた。
さとされるように歩を進めると、助手席のドアを開けてもらい腰をおろす。
不安げに見上げると、やはり微笑む新垣さんがいた。
そのまま運転席に座り、車を ゆっくり発進した。
車内に流れるのはFMラジオだ。
趣味丸出しのヘビメタは なりを潜め、流行りの曲が流れている。
私はどうしたらイイのか分からず、キュッと裾を掴んでいた。
「腹は?減ってるか?」
「い、いえ…」
「そうか」
新垣さんの声が優しいから、なんか調子が狂う。
私は顔を背けて、窓越しに運転する新垣さんを見ていた。
車は細い山道に入り、くねくねと登りながら頂上に着いた。
「降りるぞ」
そう言われて慌てて外に出る。
そんなアタシの肩を先程と同じように優しく抱き寄せて歩き出した。
駐車場には夜だというのに車が何台か停まっていた。
「まぁ、定番っちゃあ定番だけどな…」
そう言って苦笑いした。
な、なに?
階段を登ると視界いっぱいにキラキラとした夜景が飛び込んできた。
「わ、わ~!!」
何これ!!何これ~!!
初めて見る夜景に目を奪われていると、隣で満足げに新垣さんが笑った。
「百万ドルの夜景には程遠いけどな。初心者向けって事で許してくれ」
「そんな事ないです!!」
綺麗…。
もっと近くで見たくて、手すりを掴んで前のめりになる。
「あぶね~って」
新垣さんの声と同時に背中に温かさを感じた。
え…?
私の手の横に新垣さんの手が触れ、頭に新垣さんの顎が置かれた。
「調度イイ背丈だな」
「あ、頭の上で話さないでください。しょ、衝撃がダイレクトにきます」
「あははは。それはいいな。歌でも歌うかな~」
歌うんかいっ!!
と、いつもなら思わず突っ込みそうな新垣さんの呟き。
でもでも、なんか固まってしまう。
チラリと横を見れば同じように後ろから抱きしめられているカップルがいた。
カ、カップル~!!
わ、わ、私たちも他の人から見たらカップルに見えてしまうのかしら~(泣)
新垣さんの態度に不安を感じながらも トキメキを押さえきれないでいた。
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