この恋に殉ずる

冷暖房完備

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接近ちゅ

No.10 新垣さんの過去

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少し坂を降りた所に浅瀬がある。
その横のベンチに座ると、言いにくそうに夏樹が話し出した。
「たっつんには、なるべく新垣さん知ってる人は誘うなって言ってあったんだけどね…」
ほんと爪が甘いわ~って項垂れる。
「何の話?」
「あんたには、新垣さんの口から直接聞いた方がイイと思ってたから黙ってたんだけど」

…それは、前に仕事場に遊びに来てくれた時の話かな?

「やっぱり何かあったんだ」
新垣さんが雰囲気おかしくなるような理由が…。
「新垣さんはね、たっつんと同じ施設にいたんだって」
「…!!」





辰吉さんには、親はいない。
小さい時に交通事故で亡くなったとかで、親戚をたらい回しにされたあげく施設に入ったと聞いたことがある。
「じゃ、じゃあ、新垣さんも…?」
「て事になるね」
辰吉さんの周りには色んな人が集まってくる。。
その中には施設で一緒に育ったメンバーも当然いる。
きっと隆さんと彩音さんもそうなのだ。
「職場の皆はその事を知らないから言わないでほしいって言われたのよ」
「そ、うなんだ…」

私は、たとえそれを聞いても言わないのにな…。
そこまでの信頼は私にはないらしい。

「夏樹、ゴメンね。言ったらダメなこと言わせて…」
「いや!!正確にはアタシが悪い。神楽と新垣さんの休みカブってる時にバーベキューしようって、いらん世話焼いたからさ…」

…だから新垣さんがいたんだね。

「夏樹のせいじゃないよ。いつも ありがとね」
浅瀬に視線をうつす。
もしかしたら、新垣さんは懐かしい顔ぶれを見て再会を喜んでいるかもしれない。

そんな中で私の存在はネックだろうな…。



日が傾き、バーベキュー大会は そのまま花火大会になった。
運転手以外のメンバーはビール片手に花火をクルクル回して遊んでいる。
私は何となく その場に入る気になれず、昼間と同じベンチに腰かけていた。
「…幽霊かと思った」
そう言って新垣さんが横に座った。
「……」
なんて言ってイイのか悩む。
そんな私の態度から察したのか、新垣さんが大きく息を吐く。
「別に気にするなよ。俺は特に気にしてないから」
いい大人だしなと付け加えて笑った。
「私、誰にも言いませんから」
「別に言ってもいいぞ?そのくらいで統率力が落ちるような仕事はしてないからな」
「絶対、誰にも言いませんから!!」
そう叫ぶと、私はトイレに駆け込んだ。

信用されてないのが悲しかった。
そこまで新垣さんの心に入っていけてない自分が悔しかった。
でも仕方ないことだ。
私は10歳も年下の高校生なんだから。



それでも…信じてほしかった。
そう思うと涙が出た…。
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