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「ここがアラン帝国……王都とはまた違う賑わいがあるなー」
アラン帝国は騎士の国と言われており、色んな地域から剣士や剣聖のギフトを持つ者が集まるという。
その為か、武具等の戦いに関する道具を売る店が王都より多い。
「さて、ローランを見つけないと!!」
見つける方法だけど……とにかく色んな人に聞く!! これしかない!!
手紙では訓練場付近で暮らしていると書いてあったから、その周囲で聞き込みをすれば大丈夫だろう。騎士らしき人を見つけたら特に最高。
なので、あっさり見つかるだろうと思っていたのだが……
「ローラン? あいつなら遠征に行ったきりだぞ。後二、三日は帰らないんじゃないか」
「えー!!」
酒場で騎士らしき人がいたので話を聞いた所、ローランがそもそもいない事が判明。
まだ待たないといけないんだ……残念。
でも、騎士の人が気を利かせてくれて、私が会いたがっていると伝えてくれるらしい。
帝国について知る時間が出来たし、色々な所を周って過ごしますか。
そして三日後。
「なぁ、嬢ちゃん……俺と遊ぼうぜ」
「やめてください。私は人を探しているんで」
「それって今すぐじゃなくてもいいよなぁ? なぁ?」
例の酒場でご飯を食べていると、素行の悪い騎士に絡まれてしまった。
元々、王都で貴族としての作法を身に付けていた私は、振る舞い等が帝国では浮いているらしい。
だから声をかけられる事も多く、その度に対処していたのだが……今回はしつこい。
「こっちこいよ……なぁ!!」
「いたっ!! や、めて……!!」
まさか力づくで私を連れて行こうとするなんて。
このままじゃ、私……!!
店の主人や周りの人も彼の行動を許せず、近づこうとしたのだが、
「やめろ」
「は……っ!?」
それよりも先に、騎士の首元に一人の男性の声と共に剣が突き立てられた。
「てめぇ、こんな事してただで済むと……」
「俺の事はどうでもいい。だがリゼに手を出そうと言うのなら……殺すぞ」
「ひいっ!? ゆ、ゆるしてくれぇ!!」
男性から発せられる殺気に私含めて萎縮する。
冗談で発した言葉じゃない。本気でやろうとしている。
余りの恐ろしさに騎士は私の腕を離し、そのままどこかへ消えていった。
「……やっと会えた。リゼ、久しぶり」
「……ローラン?」
殺気を収めた男性。
見違えた姿。背は私以上に高く、しっかりとした身体付き。
顔や腕には謎の黒いあざが。
だけど、頼りがいのある雰囲気は変わっていない。
「ローラン……っ!!」
五年間、ずっと会いたかった彼に私は抱きついた。
「わざわざ会いに来てくれたのか……ありがとう」
ローランには私がここにいる理由を手紙で伝えていない。
まだ成功していないし、余計な期待をさせたくなかったから。
「ううん、それもあるんだけどね……」
私は今までの事をローランに全て話した。
アラン帝国は騎士の国と言われており、色んな地域から剣士や剣聖のギフトを持つ者が集まるという。
その為か、武具等の戦いに関する道具を売る店が王都より多い。
「さて、ローランを見つけないと!!」
見つける方法だけど……とにかく色んな人に聞く!! これしかない!!
手紙では訓練場付近で暮らしていると書いてあったから、その周囲で聞き込みをすれば大丈夫だろう。騎士らしき人を見つけたら特に最高。
なので、あっさり見つかるだろうと思っていたのだが……
「ローラン? あいつなら遠征に行ったきりだぞ。後二、三日は帰らないんじゃないか」
「えー!!」
酒場で騎士らしき人がいたので話を聞いた所、ローランがそもそもいない事が判明。
まだ待たないといけないんだ……残念。
でも、騎士の人が気を利かせてくれて、私が会いたがっていると伝えてくれるらしい。
帝国について知る時間が出来たし、色々な所を周って過ごしますか。
そして三日後。
「なぁ、嬢ちゃん……俺と遊ぼうぜ」
「やめてください。私は人を探しているんで」
「それって今すぐじゃなくてもいいよなぁ? なぁ?」
例の酒場でご飯を食べていると、素行の悪い騎士に絡まれてしまった。
元々、王都で貴族としての作法を身に付けていた私は、振る舞い等が帝国では浮いているらしい。
だから声をかけられる事も多く、その度に対処していたのだが……今回はしつこい。
「こっちこいよ……なぁ!!」
「いたっ!! や、めて……!!」
まさか力づくで私を連れて行こうとするなんて。
このままじゃ、私……!!
店の主人や周りの人も彼の行動を許せず、近づこうとしたのだが、
「やめろ」
「は……っ!?」
それよりも先に、騎士の首元に一人の男性の声と共に剣が突き立てられた。
「てめぇ、こんな事してただで済むと……」
「俺の事はどうでもいい。だがリゼに手を出そうと言うのなら……殺すぞ」
「ひいっ!? ゆ、ゆるしてくれぇ!!」
男性から発せられる殺気に私含めて萎縮する。
冗談で発した言葉じゃない。本気でやろうとしている。
余りの恐ろしさに騎士は私の腕を離し、そのままどこかへ消えていった。
「……やっと会えた。リゼ、久しぶり」
「……ローラン?」
殺気を収めた男性。
見違えた姿。背は私以上に高く、しっかりとした身体付き。
顔や腕には謎の黒いあざが。
だけど、頼りがいのある雰囲気は変わっていない。
「ローラン……っ!!」
五年間、ずっと会いたかった彼に私は抱きついた。
「わざわざ会いに来てくれたのか……ありがとう」
ローランには私がここにいる理由を手紙で伝えていない。
まだ成功していないし、余計な期待をさせたくなかったから。
「ううん、それもあるんだけどね……」
私は今までの事をローランに全て話した。
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