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78.実は海鼠(なまこ)も食べたいよぉ・・・

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 物価の上昇がもたらす食生活の寂しさを語ろうかと思ったんですが、これって元々高級食材じゃなえぇか。でも、昔はかなり安く食べられたような気がするんですが・・・

★★★

 初めて食べた人を褒めてあげたい物と言えば、たこ雲丹うに、そして海鼠なまこかな。それぞれに癖が、特に見た目のインパクトが凄くて食べようとは思わないですよね。ただ、それ位お腹が空いてて切羽詰まってたんでしょうかねぇ。縄文時代には河豚ふぐを食べた形跡も発見されてるんですって。危ないですよね素人がしかも『毒』って言う概念すらなかったんでしょうからひょっとしたらお亡くなりになった方もおられたんじゃないかって想像してしまいます。

 で、海鼠って皆さん食べます?先週に引き続いて青森のお話に無いってしまって恐縮なんですが、青森では結構頻繁に食べるんですよ。と言っても高級中華料理に出て来るような蒸したり煮たりって言う手の込んだ料理では無くて酢のものが主流でこれまた日本酒のつまみにまぁ、めちゃめちゃよく合うのですよ。海鼠を酢で絞め、きゅうりや大葉なんかとの野菜と和えて頂くんですが、コリコリとした食感がなんとも心地よくて、味には意外と癖が無くてとっても美味しいんですが、やっぱりここ10年単位で頂いた事無いんですよね。

 何故か?その理由は極めて単純、高いんですよ海鼠って。私の物価に対する意識がズレてるだけなのかも知れませんが、子供の頃は日常茶飯事食べてた物が今や高級食材で私の現在の収入では太刀打ち出来ないくらいの値段になっちゃってる物が物凄く増えてるんですよね。

 たとえば『筋子すじこ』朝の定番メニューだった筈なのに今や1パック2本入り位でで500円以上するし、夕食に出れば無限に食べてた『はたはた』は一匹100円から300円位。これは私が子供の頃、一籠100円位でしたからとんでもない価格上昇ですよね。特に旬の頃に見かける子持ちの物なんてその倍くらいしますもの。そして海鼠はどんなに小さくても500円位しますものね。そんな物に手が出る筈も無くただ指をくわえて見詰めるのみで思わず目頭が熱くなったりしますものね。私ってばホントに貧乏って・・・

 でも、海鼠に関しては食べない理由がもう一つあって、それは調理出来ない。レシピがどうこうと言う訳でなくて調理が出来ない。簡単に調理補法を上げるとナマコの両端にある硬い部分を切り落とし裏返して縦に切り込みを入れ、内蔵を取り出し、流水で洗ってボウルに入れて塩をふりかけ、手でよく揉みこみ、2分程かけて表面のぬめりを取り、流水で洗い流し縦半分に切り、薄切りにして完成なんだそうですが、これって結構難しくないですか?海鼠って表面がぬるんとしてるでしょ、その辺を考慮すると私の技術力で勝負すると指を2、3箇所切りました程度の負傷で済むとは思えないのですよね。

 だったら調理済の物を買えばいいじゃんって言われるかも知れませんが皆さん近所のスーパーのお総菜コーナーで海鼠の酢の物って売ってます?無いですよね。いや、青森のスーパーなら並んでいるのかも知れませんがここは埼玉、海は無い!!必然的に魚介系のお惣菜は焼き魚や牡蠣フライ、鮮魚コーナーでお刺身が並んでいる程度でこういうマニアックな物は置かれていない訳ですよ。ここは埼玉、何故か埼玉、AIにさいたま市から一番近い海までの距離は?と尋ねたら『さいたま市から一番近い海は、慶珍塚通り沿いにある海のみちです。車で11分、3.3kmの距離です』と答が返ってくる位、本物の海とは縁の無い県なのですよ。

 海鼠の酢の物つまみに日本酒をじっくり呑みたいなぁ・・・当分無理な願いなのかも知れません。
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