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最終話
しおりを挟む「残るはルークだけね」
私はルークを見下ろす。
「くそっ……。よくも仲間を……」
「仲間? それならあなたにとって私は仲間だった?」
「それは……」
「答えられないわよね。あなたにとって私はその程度の存在だったのよ。だから私を殺すことに何の躊躇もなかったのよね?」
「ち、ちがっ……。あれは……」
「言い訳は結構よ。どうせあなたの言葉に耳を傾ける気なんてないから」
最後の復讐はルークの男のプライドをズタズタにしてやる。
その方法は、私との一騎打ち。
今まで散々無能だと思っていた女に全力で挑み、そして無様に敗北する。
命乞いをしようが、頭を下げて許しを乞おうがどうでも良い。
ルークの死は免れることはない。
私は重力魔法を解除し、ルークの拘束を解く。
「な、何のつもりだ」
「一騎打ちよ。全力で私にかかってきなさい。もし勝てたら逃がしてあげる」
「くそっ……。逃げ道はないようだな」
ルークは腰にある剣を鞘から抜く。
そして両手で剣を持って構えた。
「ちなみに言っておくけど、私はあなたの仲間に対してたくさんの高位魔法を発動させたことで魔力は残り僅かよ。一応ハンデみたいなものね」
もちろん嘘である。
魔力は未だ半分も減っていない。
圧倒的な差をルークに見せつけるのだ。
「はっ、そりゃ有難いな。なら遠慮なく行かせてもらう。いくぞ、カグラ!」
ルークはセシリアではなく、カグラと戦うつもりのようだ。
どのような心変わりかは分からないが、私にとってはどうでもいいことだ。
私も全力で相手をしてあげよう。
「おらああああ!!!」
瞬時に間合いを詰めてきたルークが私に剣を振り下ろす。
振り下ろされた剣を私は回避する。
それを見越したルークがすぐさま私に向かって剣を振ってくる。
ルークにとって一撃目は囮。
本当の狙いはこの二撃目だろう。
しかし、私はこの二撃目すら予測している。
「甘いわよ」
私は瞬間移動によってルークの真後ろへと移動する。
そして炎槍を発動させる。
「甘いのはお前だ!!!」
ルークは私の瞬間移動を予測していたかのように、炎槍の発動と同時に振り返り、剣を構え間合いを詰めてきた。
「ぐっ……まだまだあああ!!!」
炎槍がルークの腹部に直撃する。
しかし、そんなことはお構いなしに私に剣を振り下ろしてきた。
「ふふ。その根性は認めるわ。でも……それでも私には届かない」
私は雷魔法で造った雷剣でルークの剣を受け止める。
「ぐああああああああ!!!」
この雷剣は触れたものに高電圧が流れる。
その結果、ルークの剣が接触したことによりルーク自身に電気が流れた。
「惜しかったわね。自分の身を犠牲にして向かってくる気概だけは素晴らしかった」
「はあ、はあ……。カグラはこんなにも強かったんだな。何故、今までこの力を隠していたのか不思議で仕方がない」
「それは教えるつもりはないと伝えたはずよ」
「そうか。カグラのことを知ることもなく、俺は死ぬのか……」
「そうね」
「カグラ、謝るつもりはない。今までのこと全部」
「そうね。どうせ許すつもりもないから無駄だけどね」
「いや、そういうことじゃない」
「……どういうことかしら?」
ルークが清々しい顔で否定してきた。
一体どういうことだろう。
私に対しての謝罪の気持ちが最後まで芽生えなかった?
それとももうすぐ死ぬから諦めた?
この顔はどのような意味があるのだろうか。
「カグラ。俺はお前に勝てない。ここで死ぬ」
「だからそう言っているじゃない」
「だから最期に言わせてくれ。どうしようもなかった俺に大切なことを気付かせてくれて、ありがとう」
そう言ってルークは私に向かって剣を振りかぶった。
私はルークの言ったことの意味を理解しようともせず、反撃するように雷剣でルークの胸を貫いた。
「がふっ……」
ルークの剣は私の肩へと触れたが、全く力が入っていなかった。
最後の一撃は私を傷付けるつもりはなかったのだと理解できた。
分からない。
ルークの最後の言葉の意味が。
何故こんなにも笑顔で倒れているのか。
どんな想いがあってこんな笑顔で死を迎えることができるのか。
今となってはルークの本当の想いなど分かるわけがない。
ルークはもうじき死ぬだろう。
胸を貫かれたことにより、呼吸も浅い。
この場で放置していれば勝手に死ぬ。
「これで終わりね……。なんか呆気なかったわ」
私は振り返り帰路へとつく。
また、勇者覚醒のために候補者とともに依頼を受ける日々に戻る。
次はルーク達のような者でなければいいと、切に願うばかりである。
「セシリア様。要件は済みましたでしょうか」
私の復讐を遠くから見守っていた騎士達が声を掛けてくる。
弱者のふりをしていた間は、この騎士達にはお世話になった。
「ええ。もう帰りましょう」
「かしこまりました。お供いたします」
私は騎士と共に瞬間移動にて王都まで帰還しようとする。
そして瞬間移動を行使しようとした、その瞬間の出来事だった。
「何!?」
突然後方から謎の光の柱が空に向かって立ち昇った。
「セシリア様、お逃げください!」
何が起こったのか分からず混乱する。
あの光の中にはルークがいるはず。
一体何が……?
光の柱は徐々に薄くなり、やがて完全に消滅した。
そして消滅した光の柱の中から現れたのは、ルークであった。
私が与えた傷も消え去り、防具に付着していた血すらも見当たらない。
「まさか……これが、勇者覚醒……?」
◇◆◇
あれから7年。
ルークを勇者として、私も勇者パーティーに加わりたくさんの困難に立ち向かいながらようやく魔王軍との戦争も終結した。
魔王は勇者のルークが聖剣で貫き、混沌の世界をルークが救った。
ルークは全世界の人々から讃えられ、元魔族領であった領地をブレイブ王国として興し、一国の王となった。
7年前は殺したいほど憎んでいたルークであったが、今ではそんな感情はない。
ルークは勇者覚醒からまるで人が変わったように、誰に対しても優しく弱者を守るために死力を尽くしていた。
まさか、勇者覚醒のきっかけが私自身になるとは思いもしなかったが。
しかし、よく考えてみれば私のあの時の復讐は勇者覚醒に至るのに必要な条件を満たしていたのだろう。
そして父がルークへの復讐を認めたのも最期の勇者覚醒への希望もあったのかもしれない。
まあ、今となってはそれを知ることもできないのだが。
そんなブレイブ王国の国王であるルークとの寝室でのこと。
私が長年疑問に思っていたことをルークに聞いてみた。
「ねえ、ルーク。覚えてる? あなたが勇者の覚醒を果たす前に私にありがとうって言ったわよね。あれってどういう意味だったの?」
「ああ、そんなこともあったな。あれは……何だっけな? あれからいろんな事がありすぎてもう忘れちまったよ」
「もう、絶対嘘じゃない。ルークが嘘をつく時に目を逸らす癖があるのは知ってるんだからね! ねえ、何でありがとうって言ったの?」
「だから忘れたって!」
何度聞いてもルークはあの時のことを教えてはくれなかった。
結局、私はあの時のルークの言葉の意味を知ることはできないようだ。
でも、それも良いのかもしれない。
だって、そんなことがどうでもいいくらい今の私は幸せだ。
いろいろな事があったけど、私にもかけがえのない大切なものができた。
「ルーク。今まで苦労した分、いっぱい幸せになろうね」
「ああ。まだまだ苦労することがあると思うけど、セシリアとなら乗り越えられるよ」
「私も、ルークとなら乗り越えられるって信じてるよ」
2人きりの寝室で互いに言葉を交わす。
ルークが私のお腹に手を添えながら、2人で幸せを噛み締めていた。
────────────────────────────────────
最後まで読んでいただきありがとうございました。
思い付きで書いたので設定は杜撰です。
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