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番外編
3 父の反省
しおりを挟む「こんな奴だったとは……」
ブグリオーニ伯爵が愛娘ガーネットの元婚約者を調査すると、ガーネットに対する暴言の数々が明らかになった。
グリフィス公爵は仕事の関係で会っていたが、寡黙な人ではあるが仕事が出来る人物だった。昔は剣大会で優勝したこともあると友人から聞いていたし、その息子ならさぞや優秀な男だろうと思っていたのに。
「何てことだ……」
下調べもせずに婚約者にしてしまうとは、私は馬鹿か?無能か?
無能な自分を責めるが、もう過去のことはどうにもならない。
ガーネットに謝っても許されることではないな……。
次の婚約者は下調べを念入りにしてから完璧な男に嫁がせよう。愛娘を安心して任せられるように。
そんな人物は高位貴族にしかいないだろう。
俺は子爵家の婿入りだから分かる。高位貴族は高位貴族にしかないマナーや勉強を受けているのだ。
ガーネットは我が妻に似てあんなに美しくて完璧なんだ。完璧な高位貴族に嫁がせなくてはならない。
大量に来た釣書を手に取り、下から下位貴族順に並べていく。
「あなた?」
「ああミリア!どうした?」
妻のことを考えていると、後ろからその愛する妻が声をかけてきた。
思わず頬が緩む。だがミリアは少し怒っているようだった。
「何ですか、その釣書は」
「何って、次の婚約者を決めようと思って整理してるんだ」
「次の婚約者はガーネットが決めます」
「たがこんなに釣書が来てるんだぞ?せめて伯爵以上じゃないと……」
「ガーネットが、決めます」
うう……妻の圧が強い。
「はい……でも
「でも、じゃありません。私たちは反省すべきです。私もあなたを信じてアベール令息を婚約者にしましたが、もっと精査してから婚約者にしたら良かったのです」
「反省はしてるよ……」
「ではガーネットが決めてもいいでしょう?」
「…………」
「あ、な、た?」
「はいっ!……いいです」
俺はガックリと肩を落とした。妻を見るとあのいつもの不敵な笑みでにっこりと笑っている。拒否できない笑みだ。
確かにガーネットには申し訳ないことをしてしまった。そうだな、妻の言う通りだ。婚約者を選んでもらって納得いかなかったら反対すればいいか。
妻はまだ笑っている。俺の考えていることが分かっているのか怖い。
「……悪かった」
「それはガーネットに言うべきです。私もですが」
「令息の処遇は王女殿下に手助けして頂いたんだろ?君は娘のためによくやってるよ」
俺もガーネットのために次の婚約者こそは!と思っていたが空回りか。また肩を落とす。
「反省しているのならいいです。そんなに気落ちしないで、もうガーネットの未来のことを考えましょう。今度こそ幸せになってもらいたいわ……私たちのように」
「君は幸せなのか?」
「ええ、もちろん」
俺は自分で言うのもなんだが、子爵家の出身だし、あまり優秀ではない。妻に助けてもらってばかりだ。
でも妻は俺がいいと、俺じゃないとダメだと言ってくれる。
妻を見ると、きょとんと小首を傾げている。
可愛い…俺も君じゃないとダメだ。
「俺も、毎日幸せだ」
「ふふ、知っていますよ」
妻はふわりと花が綻ぶように笑った。
いつもの笑みじゃない。
俺の前にだけ見せる、可憐な笑顔だ。
「愛してるよ」
「私もですよ」
妻の額にキスをすると、唇じゃないのですね。と拗ねられる。
歳をとってもいつまでも愛らしい妻。
今度こそ間違わないように、妻と娘を今以上に幸せにしようと誓った。
番外編も完結です。
ここまで読んでいただき、お付き合い下さいまして、ありがとうございました!!(>_<)
また何処かで皆様にお目にかかれますように。
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