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2 解放
しおりを挟むガーネット•ブグリオーニは美しく、所作も完璧で誰もが欲しがる伯爵令嬢だった。そんなガーネットを無理矢理婚約にこじつけたのが公爵家の令息、アベール・グリフィスだった。
なのに。
「おいブス!不貞腐れたような顔してんなよ。余計ブスに見えるぞ!」
「俺はお前が嫌いだが、お前の家のために仕方なく結婚してやるんだよ」
ガーネットに会う度ブス呼ばわりし、嫌いだと言うアベール。
初めの頃は大きな瞳を揺らし泣きそうになっていたが、泣くと余計ブスと言われるので我慢した。
見た目がカッコよくてもこんな人が婚約者なんて嫌だった。
家のために我慢しなきゃ、と自分に言い聞かせていた。
何度会っても態度が変わらないアベールに、ガーネットは徐々に慣れてきたのかしだいに無の感情になった。何も感じない。私は何も傷つかない。暗示のように自分に言い聞かせる。そうすると楽になった。
そんな月日に救世主が現れた。
マリア・ロビンソン子爵令嬢。
彼女には感謝しかない。
彼女はアベールの恋人だと噂される程、二人は常に一緒に過ごしていた。二人は相思相愛で、ガーネットとアベールは近々婚約破棄するだろうと噂もたっていた。
その噂通り、ようやく婚約破棄できた。
ガーネットは家に帰り、嬉しさに泣いた。
両親には謝られたが、ガーネットは両親のせいだとは思わなかった。
高位貴族に逆らえるわけないし、アベールの暴言は話していなかったから。私が我慢すればすむと思っていた。
だが今回アベールが子爵令嬢と恋仲になった噂が広がり、両親が動いてくれたのだ。
「これで、私は自由……」
ポロポロと勝手に流れる涙を拭いもせず、ベッドに横になったまま目を瞑る。
アベールとは嫌な思い出しかない。忘れよう。
もうお互い関わることはないだろう。
その日ガーネットは久しぶりにぐっすり眠れた。
だが翌日、アベールから手紙と花が届いたときには言葉を失った。
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