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18 再会
しおりを挟むアナスタシアの妊娠が発覚した翌週、母は兄と一緒に領地へ訪れた。
随分細くなってしまった母にアナスタシアがそっと抱きつくと、母は優しく抱きしめ返してくれた。
久しぶりに目にした母は痩せていて、心配をかけてしまったのだと思うと、アナスタシアは涙ぐむ。
「会えて嬉しいわ……」
「私もです。お母様……」
母はポロポロと涙を流し、二年ぶりの再会を分かち合う。
「レジナルドから聞いたわ……子供が、いるのね?」
「はい……」
「悪阻は酷いの?」
「時々ですが、吐き気と目眩がして……」
アナスタシアが弱々しく微笑むと、母はアナスタシアによく似た美しい顔を歪めた。
「無理しないで……。アナスタシア、あなたの父はもうあなたに帰ってくるなと言っているわ。帰ってきたら追い出せと」
「はい、分かっています」
「だから、ここに住むといいわ」
「え?」
「ここは王都から離れている田舎の領地よ。領地民も少ないし、人が来ることは滅多にないわ。自然も多いし、子供が自由に暮らすにはうってつけの場所よ」
母は優しく微笑み、アナスタシアの手を握る。兄もうんうんと納得するように頷く。
「しかしお爺様にご迷惑では……」
「迷惑ではない。ずっとここで暮らせばいい」
静かに三人を見守っていた祖父は、アナスタシアにニコリと笑いかける。
「愛する妻も旅立ち、この屋敷で一人は寂しいものだ。人数は多い方がいい」
「お爺様……」
「アナスタシア、頼れる時は頼れ。一人で無理はするなと言っただろう?」
それに同調するように兄も優しい眼差しをアナスタシアに向けた。
「はい、ありがとうございます……」
アナスタシアは、家族の優しさに自然と笑みがこぼれた。
その後、離れていた分たくさん話をしたが、母は父に内緒で来ているようで、アナスタシアと会話が終わると全てを祖父に託し、すぐに帰っていった。
アナスタシアは部屋で兄と二人になると、母に貰ったデヴィッドからの手紙を開封した。デヴィッドは公爵家へ何通も手紙を送っているようだ。
手紙にはアナスタシアを心配する文字が並べられていて、会いたいと綴られていた。
アナスタシアも友人と会いたかったが、もうアナスタシアは一人の体ではない。
(この子のことは絶対にバレないようにしないと……)
アナスタシアはデヴィッドに心配しないでほしい、元気だという内容の手紙を兄に渡した。
「ここから送ると万が一の可能性があります。お兄様が公爵家から配送してくださいますか?」
「分かった、任せておけ」
アナスタシアはもうデヴィッドには会えないだろう。
友人に会えないのを心寂しく思いながらも、子供を守るために決意した。
異国の何処かで、デヴィッドが笑っていて幸せだったらそれでいい。
アナスタシアはそう、思っていた。
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燃えるような赤い髪の男は、いつものように笑いながらアナスタシアの目の前に現れた。
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