リーティアの領地経営

優義

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第3章 初めての冬越え

第31話 レッスン

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 領主邸の大広間、そこで荘厳なワルツとそれに合わせたステップを踏む音と手拍子、声が響いていた。

 ワルツのリズムに、合わせて赤いドレスが川と共に流れる花のように動く。

「1 2 3 1 2 3 ターン! 足を入れ替えて」

「っ!______」

「領主様! そこは顔を殿方へ向けるのですよ!」

「は、はいっ」

 何をしてるかと言うとダンスのレッスン。私、社交界すら出たこともない貴族でダンスなんてこれっぽっちも出来やしない。せいぜい前世、それも保育園時代にフォークダンス踊った程度だ。

 だから基礎中の基礎、ワルツの練習をしているのだがかなり厳しい。
そして踊るときの決まりがかなり細かい、顔だけで無く指の向きすら注意される。

「___そこまで! 領主様の実力は把握しました。これからの授業予定は追って連絡させていただきます」

「は、はい」

 冒険者時代に使わなかった筋肉が悲鳴を上げていた、あとで筋肉痛に効く薬草を届けて貰わないと。

「お茶会のマナーは昔教えたのは全て出来ておりましたが、やはり領主としては及第点とはいきませんね。これから毎日4時の休憩時間はお茶会形式に致しますね」

 それって休憩時間じゃないじゃん、授業の時間じゃん。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「ふぅ~~」

「流石にお疲れになられますな」

 ジャックが紅茶を出してくれた。暖かくて良いね。

「元々私は一族の尻拭いでこっちに来てるんだ、社交界に出てる暇は無いって言いたい所だけどねぇ」

 社交界は仲良しこよしの集まりではない、お互いの腹を探り合うもう一つの戦場だ。お茶会も例に漏れず女たちが余所の家の情報を抜き取って実家や旦那の家に流すための戦場となっている。怖いもんだ。

「私のような物好きを招待する家はいないだろうし、居たとしてもアレクサンドラ領の利益目的、向こうが良い手土産ぐらい持って来ないと行く気にはならない」

「さようですな、そうそうその件でございますがこの前の失礼な連中をリスト化致しました。何か連絡があればそちらを参照ください、侍女たちにも伝えておきます」

「ありがとう」

 リストを見るとやっぱ子爵や男爵の低ランク貴族や豪商が多いな。完全にウチの薬草、商品目的だ。地位で文句は言わんが言い方ってもんがあるでしょうが。

「1番厄介なのはベナード侯爵家ですな」

「うわぁ、彼処からもか」

 ベナード侯爵家は帝国の剣と言わしめる騎士の名家。さらに私の大叔父、私の父方の祖父の弟、ロバート・アレクサンドラ・ベナードが婿入りしてる。
 大伯父自身も2代に渡り皇帝に仕え何十年もの間、将軍を務めた猛者だ。

帝国の軍にはそれ帝国の「剣」「杖」「盾」という名を背負った部門がある。それぞれ多くの貴族の次男三男が所属している。まぁ、口減らしらしいが。
 将軍はその3部門を取りまとめる存在であり、権力は退いた後も絶大だという。

「書いた本人は将軍の孫か........」

 これ元将軍も絡んでいると見るべきか、それとも孫が勝手に権力を傘にしているだけか。

「お帰り願いたいもんだ」

「しつこいようならこちらもそれ相応の対処を行いましょう」

「分かってる、名家ならそれなりの態度をしてして貰わないと」

 あー、もう。誰か止めて欲しいなぁ。
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