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第一章
始まりの日(3)
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「勇くんファイトー!」
勇の2回戦が始まっていた。
ゲームは5セットで3セット取った方の勝利となる。現在試合は2ー1で勇が優勢となっていた。通常テニスでは1点取ると15点、2点は30点、3点目は40点と分かりにくい採点方式だか、中学ではわかりやすく4点先に取れば1セット先取となる。因みに3点対3点になると続けて2点を取らなければセットカウントが取れない。最低でも5対3にならなければセットカウントが取れないのだ。
「勇くん!あと1点だよーっ!ガンバって!」
光からの声援が続いているが、中々あと1点が取れない。
「ハァ、ハァ…。クソッ!何で後1点が取れねぇんだ!」
側から見れば簡単だ。サービスもレシーブも全く同じように打ち、コースも変わらない。相手にとっても同様の打球が続けば対応はしやすい。緩急も打球コースも変わらなければいくらでも対応方法はあるのだ。それに気づかない勇が脳筋なだけで…。
「このサービスで決めてやる…!!」
力一杯にラケットを振り、サービスショットを打つ。
スパンッッッ、バシュッ。
「アウト!」
サービスショットエリア内からわずかに外れ、アウトとなる。
「クソッ!」
続いてセカンドサービスを打とうとボールを上に投げた際に足に何か動物の毛が触れたような擽ったさが走った。
「うおっ!?」
一応ラケットは振るが、芯にはあたらずラケットの先にボールがが掠るように当たる。
カシュッッ
ボールの下に掠るように当たった事で、逆回転となったボールがフワフワと相手のサービスエリアの中へゆっくりと吸い込まれていく。ネットに当たって落ちるかと思われる程、ネットギリギリを越え相手コートに落ちる。
今まで力任せで来ていたサービスショットが、ふわふわとゆっくり来た事により、相手も反応出来ず走り出し1歩目が遅くなった。ただ打球がゆっくりになった事で対応出来るだけの猶予はまだあった。ただ、逆回転でネット際に入った事で、バウンドしたボールがネットに引き寄せられる角度となり、レシーブを打ち返す事はできずここで試合終了となった。
ピピーッッッ!
「試合終了!!火雷勇選手の勝利です!!」
審判が手を上げ、試合終了を告げた。
「……エッ?マジで?……オレ、勝った、のか…?」
「キャーッ!!勇くんが勝ったわよー!」
偶々入ったサービスで勝ちを拾った勇は自分の勝利に困惑し、光は両手を上げて喜んでいた。
「まさか…、マグレで勝つとは…。情け無い…。」
「でも~、運も実力のうちって言いますし~。勝てたんですからぁ、一緒に喜んであげましょうよ~!楓ちゃん!」
楓は額に手を当て目を瞑り顎を上げ、茜は胸の前で祈るように手を組み試合の感想を告げる。
「まぁ、これで3人共2回戦突破となりましたね」
「うん!また楽しく試合できるねっ!」
翔と蓮は問題無く2人共3-0のストレートで既に2回戦を突破していた。
「でも翔?勇の最後のサービスショットを打つ時に勇の足下を凄い速さで何か通り過ぎなかった?」
「……いえ、何も気づかなかったですが?蓮はまた何か見えたんですか?」
「うん。何か犬くらいの大きさなんだけど…。白っぽい何かが物凄い速さで通り過ぎたんだ!」
「ハァ…。昔からですが、蓮が何か見るたびに良くない事が起きるんですよね…。何もなければいいのですが…。」
翔が溜め息を吐き、髪をかき上げながら物思いに耽る。
「イヤ、そんなに毎回悪いことは起きてないよ…?さっきのは悪い感じは無かったし…。寧ろ小さい頃に見た妖精?みたいなキレイな感じだったよ?」
蓮が翔へ弁解していると光から声がかかった。
「蓮くん、また何か見えたの?いいな~、私も見てみたい!!」
「イヤ、小さい頃はちゃんと見えてたけど、今はなんとなくしか見えてないよ?…それに偶に変な感じのもいるし…。」
「でも、蓮くんだけ見えるなんてズルいじゃない?私も妖精とか見てみたいの!!」
「蓮く~ん?また何か見えたんですか~?」
「何?それは本当か蓮。それはカワイイやつか?モフモフしてたか?なぁ?どうなんだっ?蓮!!」
そこに茜と楓が加わり、騒しくなる。今は楓が蓮の肩を激しく揺すり蓮の頭が前後にカッコンカッコンしていた。
「ちょっ!?ちょっと!!落ち着いて?アガガガガガッ!」
「オマエら、ウルトラミラクルスーパーサービスで勝ったオレを置いて何やってんだ?」
相手選手と試合後の握手を終えて勇が誇らしげに声をかける。その声にやっと楓が手を止め勇へ言い放つ。
「脳筋ゴリラが…。何だそのダッサいネーミングは!ただのミスショットが偶々決まったマグレじゃないか!恥ずかしくないのか?」
勇が怒りで顔を赤くする。
「ぐぬぬぬぬ……!!」
「まぁまぁ、試合に勝てたんだからいいじゃない。運も実力のうちってさっき茜も言ってたわよ?おめでとう、勇くん!」
その言葉に怒りが抜け、赤みが引いてきた。
「サンキュ!!楓ももう少し光を見習って欲しいぜ。全く!」
「とりあえず、3人とも。2回戦突破おめでとう!!これでベスト16ね?次勝てば地区予選突破よ?ガンバってね!!」
3人に向け明るい笑顔で光が応援の意を込める。3人共頷き、互いに目を合わせ次の試合へ想いを馳せる。
「本当に、何も起きなければいいですが…。」
若干1名は、別の不安も胸にいだきながら…。
勇の2回戦が始まっていた。
ゲームは5セットで3セット取った方の勝利となる。現在試合は2ー1で勇が優勢となっていた。通常テニスでは1点取ると15点、2点は30点、3点目は40点と分かりにくい採点方式だか、中学ではわかりやすく4点先に取れば1セット先取となる。因みに3点対3点になると続けて2点を取らなければセットカウントが取れない。最低でも5対3にならなければセットカウントが取れないのだ。
「勇くん!あと1点だよーっ!ガンバって!」
光からの声援が続いているが、中々あと1点が取れない。
「ハァ、ハァ…。クソッ!何で後1点が取れねぇんだ!」
側から見れば簡単だ。サービスもレシーブも全く同じように打ち、コースも変わらない。相手にとっても同様の打球が続けば対応はしやすい。緩急も打球コースも変わらなければいくらでも対応方法はあるのだ。それに気づかない勇が脳筋なだけで…。
「このサービスで決めてやる…!!」
力一杯にラケットを振り、サービスショットを打つ。
スパンッッッ、バシュッ。
「アウト!」
サービスショットエリア内からわずかに外れ、アウトとなる。
「クソッ!」
続いてセカンドサービスを打とうとボールを上に投げた際に足に何か動物の毛が触れたような擽ったさが走った。
「うおっ!?」
一応ラケットは振るが、芯にはあたらずラケットの先にボールがが掠るように当たる。
カシュッッ
ボールの下に掠るように当たった事で、逆回転となったボールがフワフワと相手のサービスエリアの中へゆっくりと吸い込まれていく。ネットに当たって落ちるかと思われる程、ネットギリギリを越え相手コートに落ちる。
今まで力任せで来ていたサービスショットが、ふわふわとゆっくり来た事により、相手も反応出来ず走り出し1歩目が遅くなった。ただ打球がゆっくりになった事で対応出来るだけの猶予はまだあった。ただ、逆回転でネット際に入った事で、バウンドしたボールがネットに引き寄せられる角度となり、レシーブを打ち返す事はできずここで試合終了となった。
ピピーッッッ!
「試合終了!!火雷勇選手の勝利です!!」
審判が手を上げ、試合終了を告げた。
「……エッ?マジで?……オレ、勝った、のか…?」
「キャーッ!!勇くんが勝ったわよー!」
偶々入ったサービスで勝ちを拾った勇は自分の勝利に困惑し、光は両手を上げて喜んでいた。
「まさか…、マグレで勝つとは…。情け無い…。」
「でも~、運も実力のうちって言いますし~。勝てたんですからぁ、一緒に喜んであげましょうよ~!楓ちゃん!」
楓は額に手を当て目を瞑り顎を上げ、茜は胸の前で祈るように手を組み試合の感想を告げる。
「まぁ、これで3人共2回戦突破となりましたね」
「うん!また楽しく試合できるねっ!」
翔と蓮は問題無く2人共3-0のストレートで既に2回戦を突破していた。
「でも翔?勇の最後のサービスショットを打つ時に勇の足下を凄い速さで何か通り過ぎなかった?」
「……いえ、何も気づかなかったですが?蓮はまた何か見えたんですか?」
「うん。何か犬くらいの大きさなんだけど…。白っぽい何かが物凄い速さで通り過ぎたんだ!」
「ハァ…。昔からですが、蓮が何か見るたびに良くない事が起きるんですよね…。何もなければいいのですが…。」
翔が溜め息を吐き、髪をかき上げながら物思いに耽る。
「イヤ、そんなに毎回悪いことは起きてないよ…?さっきのは悪い感じは無かったし…。寧ろ小さい頃に見た妖精?みたいなキレイな感じだったよ?」
蓮が翔へ弁解していると光から声がかかった。
「蓮くん、また何か見えたの?いいな~、私も見てみたい!!」
「イヤ、小さい頃はちゃんと見えてたけど、今はなんとなくしか見えてないよ?…それに偶に変な感じのもいるし…。」
「でも、蓮くんだけ見えるなんてズルいじゃない?私も妖精とか見てみたいの!!」
「蓮く~ん?また何か見えたんですか~?」
「何?それは本当か蓮。それはカワイイやつか?モフモフしてたか?なぁ?どうなんだっ?蓮!!」
そこに茜と楓が加わり、騒しくなる。今は楓が蓮の肩を激しく揺すり蓮の頭が前後にカッコンカッコンしていた。
「ちょっ!?ちょっと!!落ち着いて?アガガガガガッ!」
「オマエら、ウルトラミラクルスーパーサービスで勝ったオレを置いて何やってんだ?」
相手選手と試合後の握手を終えて勇が誇らしげに声をかける。その声にやっと楓が手を止め勇へ言い放つ。
「脳筋ゴリラが…。何だそのダッサいネーミングは!ただのミスショットが偶々決まったマグレじゃないか!恥ずかしくないのか?」
勇が怒りで顔を赤くする。
「ぐぬぬぬぬ……!!」
「まぁまぁ、試合に勝てたんだからいいじゃない。運も実力のうちってさっき茜も言ってたわよ?おめでとう、勇くん!」
その言葉に怒りが抜け、赤みが引いてきた。
「サンキュ!!楓ももう少し光を見習って欲しいぜ。全く!」
「とりあえず、3人とも。2回戦突破おめでとう!!これでベスト16ね?次勝てば地区予選突破よ?ガンバってね!!」
3人に向け明るい笑顔で光が応援の意を込める。3人共頷き、互いに目を合わせ次の試合へ想いを馳せる。
「本当に、何も起きなければいいですが…。」
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