1 / 1
努力の理由
しおりを挟む
「努力の理由」
必死になって理由を探していた。理由さえ見つかれば努力できると信じていた。そう思っていた。だが上手くは行かなかった。原因は明確には分からなかった。理由が理由でなかったのか、自分は理由だけでは努力できない人間だったのか。
もしも原因が前者なら理由は探すものではないと痛いほど実感したことになる。理由を見つけること自体になんの意味もなかったことになる。後者が原因なら、やはり理由を模索することには何の意味もなかったことになる。それがあってさえ努力できないなら、探す意味さえなくなってくる。
結果的に僕にとって理由を探すというのはただの時間の無駄だったにすぎない。自分の精神安定剤を求めていたにすぎない。ただ心の拠り所無しで突き進むのが、自分にとって勝手に無理だと思っていたからにすぎない。
夢のような本気の理由を探して見つけるのが不可能なら。そして、こじつけのような虚偽の理由には何の意味もないと知ったなら。僕は周りを見渡しながら、まっすぐに突き進んでいくしかない。
突き進む前に、立ち止まって何かを探しても見つかるものは単調だ。たとえそれが自分にとって守りたいと思える存在でも、それが少しでも目指したいと思える存在でも、変わらない景色の中で見つけたものは自分を変えてくれることはない。せいぜいその一時の目標にすぎない。
だから結局は心を鬼にして努力するしかない。前に進むことによって新しい景色を見る中で、偶然にでも真の理由を見つけるより他にない。大半の人は意識的にかつ瞬間的に真の理由を見つけることはできない。自分も同じだ。日々生活する中で時間をかけて育てていくしかない。
「育てる」とはすなわち物事を知ることである。簡単に言えば経験値である。それがどんな経験でも構わない。物事とは楽しい経験や得をする経験だけをさすのではない。悲しい経験や辛い経験でもそれを育てることは可能であり、むしろそんな経験からこそ夢というものは生み出されるものである。
それは時間をかけてでしか手に入らず、一般的に高校生活の前半までで手に入れておくべきものである。ぼんやりで確信に変わっていなくとも、さらに確信に近づけるべく育てていけばいい。その夢さえ手に入っていない者には、育てることはできず理由にもならない。つまり瞬間的に志を強めることはかなり難しいことなのである。
ならば、高校生活の前半までに手に入れられなかった者はどうするべきなのか。努力をするより他にない。その過程で育てて見つけるしかない。
だが、理由のない努力というものは人の心を簡単に折ることができる。理由のない努力というものは人を試す一種の試練であり、いかに自分が誘惑に負けないか、見えない未来に向かって進む向上心があるかを試す場となる。
そこで足を踏み外せば、自分には理由がないと努力できないんだと思い込み、知らず知らずのうちに変わらない景色の中で理由を探そうとする。そして、こじつけで自分なりの理由を見つけたと勘違いしわずかな時間だけそれに依存する。そして少し経って気づくのだ。これは理由になっていないと。
自分はそれが恋愛にあると信じていた。勘違いをしていたのだ。それが恋愛にあると勘違いをすることによって、自分は一人の人間を傷つけてしまった。こじつけで作り上げた恋愛という理由は、一人の人間の視野を狭め、時間を削らせ、挙げ句の果てにその人への想いが薄れていると実感する。最悪な、恋愛しているフリというものだ。たった少しでもLINEが返ってこないだけで、その人を疑い不安になった自分こそがその原因だった。
そんな幻想は長くは続かない。目を覚ますと、そんな幻想に酔いしれるより他にない自分だけが残る。そこで一人の人間をもっと傷つけることを承知のうえで、割り切って別れを告げることが本当に良いことなのか。僕にはそれができなかった。利用するためだけのこじつけの好意さえ逸らすことはできなかった。それどころかその幻想にのめり込んでいった。
幸いだったのは、自分が幻想だと知ったうえでのめり込んだことと、その人の好意が自分に向けられることがなかったことだ。その短期間の依存から抜け出すことができるなら、それも構わない。が自分はそうではなかったのだ。短期間の依存にさえ、立ち直れず惜しさを感じる人も多いはずだ。理由になっていないと分かっていても戻れない。特に他の人が絡む場合は戻ることは困難を極める。
結局は誘惑のタネを一つ撒いたまま、理由のない努力をすることになる。難易度は間違いなく上がる。
理由のない努力をすると決めたなら、途中で理由を探そうとするのはやめるべきなのである。無理に理由をつくるということは、時に自分の行く手を阻み、時に他の人間を傷つけることになり得る。
理由のない努力は誘惑や幻想から目を背け、壁をつくることこそが重要である。いかに誘惑や幻想に負けずに自分の意志を貫けるかの試練である。
結論、無理に理由を探すことは自分の視野を狭め、誘惑に引きずり込む一種の罠のようなものである。理由のない努力を道を踏み外さずに完遂することこそ、理由を見つけられなかった者がすべき正しい行動なのである。
必死になって理由を探していた。理由さえ見つかれば努力できると信じていた。そう思っていた。だが上手くは行かなかった。原因は明確には分からなかった。理由が理由でなかったのか、自分は理由だけでは努力できない人間だったのか。
もしも原因が前者なら理由は探すものではないと痛いほど実感したことになる。理由を見つけること自体になんの意味もなかったことになる。後者が原因なら、やはり理由を模索することには何の意味もなかったことになる。それがあってさえ努力できないなら、探す意味さえなくなってくる。
結果的に僕にとって理由を探すというのはただの時間の無駄だったにすぎない。自分の精神安定剤を求めていたにすぎない。ただ心の拠り所無しで突き進むのが、自分にとって勝手に無理だと思っていたからにすぎない。
夢のような本気の理由を探して見つけるのが不可能なら。そして、こじつけのような虚偽の理由には何の意味もないと知ったなら。僕は周りを見渡しながら、まっすぐに突き進んでいくしかない。
突き進む前に、立ち止まって何かを探しても見つかるものは単調だ。たとえそれが自分にとって守りたいと思える存在でも、それが少しでも目指したいと思える存在でも、変わらない景色の中で見つけたものは自分を変えてくれることはない。せいぜいその一時の目標にすぎない。
だから結局は心を鬼にして努力するしかない。前に進むことによって新しい景色を見る中で、偶然にでも真の理由を見つけるより他にない。大半の人は意識的にかつ瞬間的に真の理由を見つけることはできない。自分も同じだ。日々生活する中で時間をかけて育てていくしかない。
「育てる」とはすなわち物事を知ることである。簡単に言えば経験値である。それがどんな経験でも構わない。物事とは楽しい経験や得をする経験だけをさすのではない。悲しい経験や辛い経験でもそれを育てることは可能であり、むしろそんな経験からこそ夢というものは生み出されるものである。
それは時間をかけてでしか手に入らず、一般的に高校生活の前半までで手に入れておくべきものである。ぼんやりで確信に変わっていなくとも、さらに確信に近づけるべく育てていけばいい。その夢さえ手に入っていない者には、育てることはできず理由にもならない。つまり瞬間的に志を強めることはかなり難しいことなのである。
ならば、高校生活の前半までに手に入れられなかった者はどうするべきなのか。努力をするより他にない。その過程で育てて見つけるしかない。
だが、理由のない努力というものは人の心を簡単に折ることができる。理由のない努力というものは人を試す一種の試練であり、いかに自分が誘惑に負けないか、見えない未来に向かって進む向上心があるかを試す場となる。
そこで足を踏み外せば、自分には理由がないと努力できないんだと思い込み、知らず知らずのうちに変わらない景色の中で理由を探そうとする。そして、こじつけで自分なりの理由を見つけたと勘違いしわずかな時間だけそれに依存する。そして少し経って気づくのだ。これは理由になっていないと。
自分はそれが恋愛にあると信じていた。勘違いをしていたのだ。それが恋愛にあると勘違いをすることによって、自分は一人の人間を傷つけてしまった。こじつけで作り上げた恋愛という理由は、一人の人間の視野を狭め、時間を削らせ、挙げ句の果てにその人への想いが薄れていると実感する。最悪な、恋愛しているフリというものだ。たった少しでもLINEが返ってこないだけで、その人を疑い不安になった自分こそがその原因だった。
そんな幻想は長くは続かない。目を覚ますと、そんな幻想に酔いしれるより他にない自分だけが残る。そこで一人の人間をもっと傷つけることを承知のうえで、割り切って別れを告げることが本当に良いことなのか。僕にはそれができなかった。利用するためだけのこじつけの好意さえ逸らすことはできなかった。それどころかその幻想にのめり込んでいった。
幸いだったのは、自分が幻想だと知ったうえでのめり込んだことと、その人の好意が自分に向けられることがなかったことだ。その短期間の依存から抜け出すことができるなら、それも構わない。が自分はそうではなかったのだ。短期間の依存にさえ、立ち直れず惜しさを感じる人も多いはずだ。理由になっていないと分かっていても戻れない。特に他の人が絡む場合は戻ることは困難を極める。
結局は誘惑のタネを一つ撒いたまま、理由のない努力をすることになる。難易度は間違いなく上がる。
理由のない努力をすると決めたなら、途中で理由を探そうとするのはやめるべきなのである。無理に理由をつくるということは、時に自分の行く手を阻み、時に他の人間を傷つけることになり得る。
理由のない努力は誘惑や幻想から目を背け、壁をつくることこそが重要である。いかに誘惑や幻想に負けずに自分の意志を貫けるかの試練である。
結論、無理に理由を探すことは自分の視野を狭め、誘惑に引きずり込む一種の罠のようなものである。理由のない努力を道を踏み外さずに完遂することこそ、理由を見つけられなかった者がすべき正しい行動なのである。
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。


愛のゆくえ【完結】
春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした
ですが、告白した私にあなたは言いました
「妹にしか思えない」
私は幼馴染みと婚約しました
それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか?
☆12時30分より1時間更新
(6月1日0時30分 完結)
こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね?
……違う?
とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。
他社でも公開

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた
しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。
すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。
早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。
この案に王太子の返事は?
王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。

戦いに行ったはずの騎士様は、女騎士を連れて帰ってきました。
新野乃花(大舟)
恋愛
健気にカサルの帰りを待ち続けていた、彼の婚約者のルミア。しかし帰還の日にカサルの隣にいたのは、同じ騎士であるミーナだった。親し気な様子をアピールしてくるミーナに加え、カサルもまた満更でもないような様子を見せ、ついにカサルはルミアに婚約破棄を告げてしまう。これで騎士としての真実の愛を手にすることができたと豪語するカサルであったものの、彼はその後すぐにあるきっかけから今夜破棄を大きく後悔することとなり…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる