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星空の誓い 編

第73話 獣の狩り(挿絵有り)

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オリオンの街を出て北東の方角へと進む見えてくるこの山の木々達は紅葉によって美しく赤く染まっていた。ここはこの地域に住む人々にとっては大切な場所。秋は栗やキノコが美味しい季節なので人々はこの山目掛けてやってくる。この山に遠足気分で楽しそうにやってきた奴らがいた。

数十名の冒険者達がカゴを持った状態でガヤガヤと楽しそうにやって広場に集まっている。するとそのうちの2人が前に出た。1人は背中に剣を背負った赤髪の冒険者、もう1人は高身長でロボットの状態で顔に紫色の液晶画面がついている冒険者。2人が前に出ると一言大声でこう言った。


「「せーーーの.......秋の食材狩りじゃぁぁあぁぁ!!」」

「「「「いぇぇえぇぇぇぇえぇぇぇぇぇ!!!!!!」」」

2人がそう言った瞬間に他の冒険者達が騒ぎ始めた。これはこの2人の「秋らしいことがしたい」という思いつきで急遽決まったギルドジェネシスとギルドファンタジーモールの合同企画なのである。

「さて!今日はみんなでキノコ狩りだよー!」

「各チームで分かれてこの山を探索してキノコや柿や栗などの美味しい食べ物を集めて今日の夕食パーティーのおかずにしましょう!」

周りの冒険者達の会話が楽しそうな聞こえてくる。

「私サンマ食べたいなー」

「サンマって海のお魚じゃない?」

「確かあっちの方に渓流があったからアユなら釣れるかもよ?」

みんな楽しそうだ。その様子を見て2人はニコニコとしている。そして数十分後には注意事項などの長い説明が終わり各チームに分かれて行動を始めた。

「ねぇメガネくんこのキノコは食べられるの?」

サナが木の根元に生えた絵の具を混ぜたようなカラフルなキノコを指さす。それを見て青髪の冒険者のメガネくん事ロードがパンフレットをペラペラとめくり確認する。

「あ、それ毒キノコです。隣のやつは食べれますよ」

「そうなのか.......可愛い色しているのに残念......」

「それにしても便利ですね。ファンタジーモールが作ったそのパンフレット」

「さすが食材なども多く取り扱っているファンタジーモールですね。食材に詳しい.......」

「見て!おすすめのレシピも載ってるよ。キノコたくさんの鮭のホイル蒸し......じゅるり....明日は夕食はこれで決まりだねメガネくん!リオくん!」

「「はは.....そうですねサナさん」」

3人は楽しそうにキノコや栗をとってはカゴに入れていく。





一方その頃他のチームでは5人組の冒険者の男女がキノコや栗を探している。

「見てみて!こんなにたくさんあったよ!」

「おぉすげぇじゃねぇか!.......それにしても寒くねぇか?」

1人の男が両腕をクロスさせ手でさすっている。どうやら寒いようだ。

「そりゃあんた半袖短パンなんて温度調節機能バグった小学生の男子みたいな格好してるからだよ.......」

「でっでも......確かに寒いよ.......来る前はもっと温かったもん....」

小さな少女も寒そうにしている。すると彼らの背後から誰か視線を感じた。一瞬の寒気と共に一斉に振り返る。そこにいたのは大きな紫色の瞳を持つ白銀の狼、狼が歩くと共に落ち葉が敷かれた地面がパキパキと凍っていた。狼の周りには吹雪が降っている。

「うっうわぁぁぁあぁぁぁあ!!!!」

「アオォォォォォオォン!!!」

5人が一斉に叫んだ瞬間に白銀の狼は飛びかかった。





「うわーすごいよリオくん!綺麗な川だよ!」

彼らが秋の食材を探して歩いていたら渓流まで来てしまった。水がとても綺麗だが流れが少し激しい気がする。誤って入ってしまったらきっと溺れて流されてしまうだろう。

「サファイアもくればよかったのにね~」

「しょうがないよスララには指名の依頼がよく来るんだから!この間なんて隣国に住むお嬢様のボディーガードとかやってたもん!」

「結構いろんな仕事やってるんですよね」

3人が話していると渓流の近くの大岩に座って釣りをしているよく見かける2人の姿があった。

「あ!ハンドさんとテンさん!」

「あ!リオくん達じゃんやっほーー!!」

ハンドさんが立ち上がって3人に向かって手を振っている。顔に取り付けられている紫の液晶画面には笑顔の絵文字が表示されていた。

「社長、集中してください。まだノルマの半分も達成していません。」

「あ、そうだね!」

「じゃあ俺たちもここで少し休憩にしましょうか」

「そうだね!よしそろそろお昼だしお弁当タイムだ!」

3人がお弁当を取り出し仲良く食べているその時だ。釣りをしているファンタジーモールの2人の右腕につけられた白いデバイスから音が流れ始めた。これは誰かから電話がきた時の音だ。2人は一斉にその電話に出た。

「もしもしこちらテンです」

「うん......うん.....分かった」

「それでは彼らをすぐに広場に設置した救護テントに.....はい」

「うん、すぐに他のみんなにその事を伝えて....一斉メール送信の方法は覚えてる?じゃあ大丈夫だね」

「じゃあ通話を切るね」

「切ります」

ピッ

「何かあったんですか?」

「ギルドの仲間がモンスターに襲われました.....幸い怪我は軽症で済みましたが.......私は救護テントに向かおうと思います」

「そうですか.......」

その時だ。リオの隣にいたサナがリオの腕を指でツンツンした。

「どうしたんですかサナさん?」

「なんか......川が凍っていってない?」

「え、」

パキバキパキ............

上流の方から徐々に水面が凍っていく。凍った水面から冷気のようなものが発せられていた。上流からゆっくりと何かがやってくる。大きな紫色の瞳を持つ白銀の狼だ。うなりながらこちらを睨んでいる。

「あっあれは......確か....フェ!」

リオがその名を口に出そうとした瞬間メガネくんことロードはリオの口を手で塞いだ。

「もごもご!ぷは!何するのメガネくん!」

「リオ先輩その言葉はハンドさんの前ではタブーです!」

メガネくんことロードは知っている。あの言葉を聞いた瞬間にハンドが暴走してしまう事を..........

「あれ絶対フェンリルだ!!!!」

サナが大声でそう言った。もうその場にいた全員の耳に絶対入ってしまうような音量でだ。

「「あ、」」

「え?」

「フェン.......リル?」

ハンドの顔に付けられた紫色の液晶から色が失われていく。彼の封印されていた記憶が鮮明に蘇っていった。この世界に来て初めて襲われた記憶......顔面をフェンリルの大きな爪でぐっちゃぐっちゃに切り刻まれてしまった記憶が...........脳内を駆け巡る。


「アッアァァァァァァァァアァァァァァァァァァア!!!!」

ハンドが叫んだ瞬間に爆風が巻き起こり地面に紫色の魔法陣が浮かび上がり上へと上がっていく。魔法陣を潜った彼の身体は普段着ているスーツからロボットのようなゴツゴツしいアーマーへと変わった。

「ウッウゥウウ!!」

ハンドは右腕で自分の顔面を思いっきり掴み紫色の液晶をマスクを剥ぐようにレールに沿って後頭部へと移動させる。ウィーンガチャンプシュー!と音を立てるとハンドの本来の顔が露わになった。

「まずい事になりました.......」

「はっハンドさんどうしたんですか?」

「ガルルルッ!!」

ハンドは両腕に取り付けられた大きな3枚刃の爪を研ぐとこちらに向かって獣のように走り出した。

「リオ先輩危ない!」

プロミネンスドラゴン!

「チェンジ!」

リオがそう言うと赤い魔法陣から機械のドラゴンを出現しハンドの攻撃をその大きな翼で防いだ瞬間に装甲へと変化しリオに装着されていく。

炎竜解放!!
プロミネンスドラゴォォォン!!!

「きたー!リオくんのプロミネンスドラゴン!」

「リオ先輩またきます!」

「ガルルルル!!!」

正気がハンドが変身したリオに向かって攻撃を放つ為に接近していた。このままでは彼の攻撃をモロに受けてしまう。

「ハンドさんごめんなさい!」


そう言ってリオはハンドの顔面を思いっきりぶん殴った。鈍い音を立ててハンドの身体は思いっきり吹っ飛ばされていく。

ゴギグドガァァア!!!

「「...........えぇぇえぶん殴ったーーーー!?!?!」」





おまけコーナー
10月31日のハロウィンで描いたイバラちゃん


そして11月19日に第1話を投稿予定のサファイアちゃんが主人公の長編小説の表紙に描いたイラストです。

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