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灼熱の太陽 編

第43話 信じる

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エルフの森に来てから何日が経っただろうか.......俺は相変わらずエレアさんに修行をつけてもらってる。

「そうじゃない!こうだ!」

「こうですか!」

「違う!こうだ!」

「こうですか!」

「あぁ!そうだ!」

こういう感じのものを繰り返している。時々、エレアさんと手合わせしてもらっているけど一度も勝てたか事がない。そして今日も...........。

バタッ!!

「いてて..........。」

「まだまだだな!........もうすぐ昼か。」

そう言うとエレアさんは剣を鞘に戻すと俺の方を向いた。

「行くぞ.......急がなければいけないからな。」

「はっはい!!」

俺はすぐに立ち上がりエレアさんと一緒に「ある場所」に向かって走り出した。あの場所は早く行かないと人で溢れてしまう!急がなければ!








10分後

カランコロン♪

ドアを開くとドアに取り付けられた鈴が綺麗な音色を響かせる。この場所と言ったらこの音だ。開くと同時にいい匂いが俺達の鼻の奥に一瞬で到達する。

この匂いだけで幸せになれる気がした。

「いらっしゃいませー♪るるのベーカリーへようこそ~♪ただいまより1日200個限定のフルーツカスタードクリームパンを販売いたします♪」

奥の方から金髪ショートのエルフのお姉さんが笑顔でクリームパンをトレーに乗せてやってくる。

2人「やったー!!」


フルーツカスタードクリームパン.......それは厳しい修行の中での唯一の癒し!

エルフの森の美味しい空気と眩しい太陽で育った小麦とフルーツ達を使用しておりカスタードクリームも朝採れたてのエルフの森にしか生息しない高級なニワトリ「清水コッコ」の卵で作られている!

フルーツの組み合わせはその日によって異なり、その味はその日しか食べる事ができない!まさにフルーツバスケット!






5分後

「ありがとうございましたぁ~♪」

カランコロン♪

「いや、まさか俺達の分だけじゃなくてみんなの分も帰るなんて...........。」

「あぁ、これは奇跡だ。今日はきっと運がいい!」

「そうですね!」

俺達の手にはフルーツカスタードクリームパンが4個入った箱が2つ握られていた。

もちろん俺はサナさんとメガネ君とサファイアの分!エレアさんは幼馴染2人とジャッジメントさんの分!

いつもだったらあんなに並ぶのに今日は本当についている........。



「それじゃ実食!」

2人「いただまーす!!」

ぱくっ

一口食べると口中に広がる甘味とフルーツの少しの酸味がベストマッチ!これは........これは!!

2人「極だ.......!!」

2人「あ。」

発言が被ってしまった。








一方その頃 エルフの森の外では

ガサゴソ.......。

「ここだねエルフの森♪」

フードを被った青髪の青年が笑みで森を見つめる。彼がエルフの森に入ろうとしたその時だ。

ビリビリ!!

「いたっ...........ふーーんあの子バリアを張っているんだね。」

そう言うと彼はさらに笑みを浮かべる。

「つまりそれほど大事なものがあるって事か......じゃあそれが壊れたら彼はどんな顔をするんだろう?楽しみだなぁぁ.......。」

彼は3歩ほど後ろに下がるとポケットから一枚のカードを取り出し杖にかざす。

「ここは君に任せた方がいいかな?」

杖にかざすと同時にそこから漆黒の渦が生まれ、そこから誰かが飛び出した。

「................。」

\\ノワールドラゴン//

「おはようノワ君♪元気♪」

「なんだモーゼか.....俺をなんで呼び出した?」

「この先にいるエルフ達をできるだけたくさん殺してきて欲しいんだ♪お願い。」

モーゼがそう言うと漆黒の渦から飛び出した1匹の真っ黒な竜のようなモンスターは笑いながらこう答えた。

「あぁいいぜ!ちょうど暴れたくって仕方なかったんだ!」

黒い竜のモンスターは深く息を吸う。


「俺がカードに閉じ込められている10年の間にだいぶこの世界の匂いも変わったな。」

「そう?僕には分からないけど。」

「錆びた鉄に血が飛び散った匂いだ.......俺の大好きな匂いだぜ......。」


ジャキーン!!

真っ黒な剣を取り出すと笑いながら辺りの木を手あたり次第切り刻んでいく。

「それじゃ早速行っちゃおうノア君♪」

モーゼがエルフの森の方を杖で指し示すも黒い竜のモンスターは違う方向へ歩き始める。

「いや、もう少しだけ寄り道していく。準備運動は大切だろ?じゃあなモーゼ。」

彼はそのまま全く違う方向へと歩き始め、姿を消してしまった。

「.........ノア君は強いんだけど自由すぎるからなぁー、.........まぁいっか。僕も帰ろー。」

モーゼもそのまま帰ってしまう。








その日の夕方

「今日はここまでにしよう!」

空を見上げるとオレンジ色に染まっていた。あぁ、もうこんなに経ったのか。俺は剣を杖代わりにして足を生まれたての子鹿のように震えさせながら立ち上がった。

早く帰ってみんなにパンをお土産にして持って帰りたい。

「大丈夫か?」

「はっはい........ありがとうございました。」

「..........私もついていこう。」

俺と並走するようにエレアさんは横に立つ。

「まぁ初日よりはマシになった感じだな。スタミナも上がっているはずだ。」

「ありがとうございます........。」

「......昔の話をしていいか?」

「え?あっはい。」

エレアさんは歩きながら語り始めた。

「私は幼い頃に父と母を亡くしている。それからは親戚に育てられたのだが......親戚は私を捨てたんだ「災いの子」だって.........。」

「え?」

「そのあとはジャッジメント様が育ててくれた。でもな.....幼い頃の私の気持ちは沈んでいた。母と父を失い....親戚からも拒絶されたんだ、子供が体験してはいけない事だ。そんなある日....ジャッジメント様は「お守り」をくれたんだ。」

「お守り....ですか?」

俺が尋ねるとエレアさんは優しい笑顔で答えてくれた。

「この中に入っている。私の心の支えだったものだ。」

エレアさんは腰につけられたホルダーに触れる。そのホルダーに描かれている模様は違えど、俺達がカードを入れているホルダーにそっくりだった。

「着いたな。」

「え?ほんとだ........。」

気づけばジャッジメントさんの屋敷の門の前だった。確かに近かったけどこんなに早く着くとは思わなかった。

「ここまで話に付き合ってくれてありがとう......。最後にこれだけ言わせてくれ。」
 
「なんでしょうか?」

「仲間を信じろ.....大前提はそれだ。そして次に自分を信じろ。君は私が思うに素質はある.......きっといい剣士になれる。私の修行にここまでついて来てくれたのは君が初めてだ。仲間もきっと君を信じている。仲間が信じる自分を信じろ..........。」

「エレアさん........ありがとうございます!!」

「それじゃ.....また明日。明日はもっとキツいぞ?ついてこられるか?」

「はい!!」

俺が大声でそう答えると俺に笑顔を見せて、手を振りながら帰って行ってしまった。夕日に照らされている背中はとてもかっこよかった.......それだけは言える。





「ただいま帰りましたー!」

ひょこ

「おかえりリオ君!聞いて聞いて!ついに私のパワーアップアイテムが完成したんだよ!」

ドアを開けた瞬間にサナさんが楽しそうに壁からひょこっと顔を出した。

ひょこ

「完成したと言ってもまだ実際に使用してみないと分かりませんよ。」

サファイアもサナさんと同じように壁からひょこっと顔を出す。

ひょこ

「リオ先輩おかえりなさい。もうすぐ夕飯の時間ですね。」

メガネ君も壁からひょこっと顔を出す。え?なに.....流行ってるの?もしかして俺、流行に遅れちゃってる。

「あ、お土産があるけど食べる?」

3人にお土産が入った箱を見せると3人の目がキラキラと輝き始める。

3人「食べる!!!」




俺はサナさん達に箱を手渡すとソファーに腰をおろした。

「うわー!美味しそう!!」

「その中に3人分あるはずです、食べてください!美味しいですよ!」

「あれ?リオ君は食べないの?」

「3人分しか買ってないから........」

俺がソファーに座りながらそう返事するとサナさんは不思議そうた顔をする。

「え?4つあるよ?」

「え!?」

俺はすぐに立ち上がり箱を覗き込んだ。確かにそこには4つフルーツカスタードクリームパンがある。幻覚じゃない本当に4つある。

「リオ先輩....箱の中にお手紙がありますよ。」

メガネ君が箱の中にある手紙を見つけ俺に手渡す。手紙を開くとそこにはエレアと書かれていた。




リオへ

どうやら間違えて一つ多く買ってしまったようなんだ。お前もみんなが食べているなか自分だけ食べないのは寂しいだろう?今日はよく頑張った。ちょっとしたご褒美だ。

この間違って買ってしまったクリームパンを君が走っている間に箱の中に入れておく。みんなで食べるといい。

君の師より




「エレアさん.......ありがとうございます。」

俺は疲れているはずなのに笑顔になった。明日からもっと頑張ろう....自分を信じて。










おまけコーナー

エレアさんは、かなりの甘党。ブラックコーヒーが飲めない、アイスココアが好き。和食は嫌いではないが圧倒的に「パン派」

菓子パンが大好きで怒った時や不機嫌な時に菓子パンを渡せば機嫌は治る。








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