Metal Blood World 〜ようこそ選ばれしプレイヤー達〜

風鈴ナツ

文字の大きさ
上 下
36 / 95
流星祭 編

第27話 拳落ちる

しおりを挟む
(最悪だ......身体がどんどんなくなっていく........。こんな冒険者に負けた...........あのお方から能力をいただいたのに?でも大丈夫、きっとまた助けてくれる。)

(君には失望したよ......)

(待ってください!お願いします!)

(冒険者に勝てなかった......僕の能力をあげたのにだよ?つまんなすぎでしょ、惨めに死んだらどう?)


「待って!待ってください!!」

顔だけになったミラレナが泣きながら叫んでいる。まだ生きているのか........でもだんだん顔が無くなってきている。きっともうすぐ死ぬだろう。

「死ぬ前にさらった人達がどこにいるか教えろ!」

俺は地上に着地すると瓦礫に紛れるように落ちているミラレナの頭に近づいていく。
その時だ...........。

「へーお前強いんだな.......。」

「はっ!」


後ろからの声に寒気がたった.......身体が重い......。
俺は後ろを振り返り剣を構える。するとそこには誰もいなかった.........。

「どこだ!」

「上だよ上.......。」

急いで上を見上げる!フードを被った男が殴ろうと落下するのが見えた。
避けろ!俺はディルバのスピードを利用して右へ避ける。

ドゴコゴゴゴゴゴゴコォォォオォ!!

男の拳が道にぶつかると同時に爆風を上げて俺は吹き飛ばされてしまった。

「くっ!!」

「すごいな!俺の攻撃を避けるだなんて!」

なんて力だ...........道が隕石が落下したかのように割れているのが見えた。ミラレナより確実に強い。モンスターか?

「言っておくが俺はモンスターではないぞ........それに人間じゃない。」


「モンスターでも人間でもないって言うんだったら何だって言うんだ!」

俺に質問に答えるようにフードを脱ぎ捨てる。







「俺の名は「神武」........「ラグル族」だ!!」

フードを脱いだ男の姿は赤髪の短髪.......身体中には変な模様が描かれていた。首からは勾玉のネックレスをぶら下げていた。

ラグル族?どこかで聞いた事がある名前だ。思い出せそうで思い出せない。
でもコイツはヤバイ.......それだけは分かる。



「さぁ闘おう!この命尽きるまで!」

まともに戦ったら殺される!逃げる事が大切だ!

「なんだあれ?あれもモンスターか?」

「え?」

神武の後ろから冒険者がやってくる。3人くらいの冒険者がロボットの姿で武器を構えながら近づいていく。

「何にせよ倒さないとな!報酬欲しいし!」

「おりゃー!!」

武器を振り回しながら神武に向かって走り出す。

「ダメです!逃げてください!」

「これは俺達の獲物だぁ!!」

「........弱いやつに興味はない、立ち去れ。」

神武はその3人の冒険者の方へ振り返り拳を握る、身体から赤いオーラが湧き出てきた。血管がどんどん浮き出てくる。
そして

「豪殺拳・建国........一撃ノ型ァァァァァア!!」

拳を向けた瞬間に先程よりも強い爆風が起こり、3人の冒険者は悲鳴を上げながら吹き飛ばされてしまった。真っ直ぐ.......ただ真っ直ぐに吹き飛ばされた。

数秒後にはどこかに当たる音がして静かになってしまう。





「これで邪魔者はいなくなった!闘おう!」

笑顔でそう語ると3人を吹き飛ばした時と同じ構えをする.....俺も吹き飛ばされるのか?..........思い出した、ラグル族.......オリオンの街に来た時にお爺さんから聞いたことがあった。

「この世界にあった文明を壊した.........謎の生命体達......「ラグル族」。」

「そうだ!よく知っているな!7000年前くらいの時の事だったか........あれは実に楽しかった!」

「..................。」

ラグル族.......思い出さなかった方が良かったような気がする。足が動かない!確か昔の人達が封印........倒したのではない封印したのだ。


「それじゃいくぞ..........」

神武から赤いオーラが湧き出てくる。まずい!でも動けない!

シャリンシャリン!

どこからか鈴の音が聞こえる。

「神武、そろそろ帰らないと怒られてしまう。」

声がする方をゆっくりと振り向くと路地裏から同じようなフードを纏った青髪で仮面を付けた青年が杖を持ちながら現れた。

「いい時なんだ!邪魔をしないでくれ!」

「僕はいいけどあの人はなんて言うかな?」

青髪のその発言に舌打ちをすると神武は構えをやめて路地裏の方へと歩き出す。

「........分かった、ひとまず帰るとしよう。そこの赤い冒険者、お前の顔は覚えたからな!またいつか会おう!」

そう言って消えてしまった。

「....................たっ助かった..........。」

バタン!


俺はその場で倒れてしまう、そのまま元の人間の姿に戻ってしまった。汗が止まらない。心臓の音も速い。

「リオ君!リオ君!大丈夫?」

「リオ先輩が倒れてる!急いで連れて行かないと!」

ぼやけている景色の中、見たことのある2人が見えた。

「メ.....ガネく......ん....サナさ......ん.......。」


そこで俺の意識は途切れてしまった。






気づけば朝になっていた。スズメの鳴く声がする。
ここはどこだろう?見覚えのある場所..........ここは俺の部屋?

懐かしい匂い、棚には漫画にゲームのカセット。ずっと使ってきた机に学校のカバンが置かれていた。そうだ今日は英語の小テストがあるんだ。俺は急いで支度をする。

時計を見ると朝8時だ。

「あぁ、もうどうして母さん達起こしてくれなかったの!」

制服に着替えると机の上に置いてあるバッグに教科書やノートを突っ込んで部屋のドアを開けようとする。

ガチャガチャ!

「あれ開かない?何で!」


無理矢理開けようとしてもドアが一向に開く気配を見せない。

「これじゃ学校に遅刻しちゃう!いや.......もうしかけてるけど......母さん!父さん!........あれ?」

妹の名前が出てこない?なんで?

「その先は出れませんよ」

「誰?」

振り返ると俺のベッドで綺麗な青髪の少女が座っていた。宝石のような綺麗な目で俺を見つめる。

「君は........確か.........。」

「今、思い出させてあげる。」

パチン

少女は指を鳴らした。

「はっ!思い出した!君は.....俺にカードの使い方を教えてくれた女の子!」

サナさん達と初めて出会ったあの森.......その時に見た夢の中に出てきた少女だ。でも少し身長が伸びてる?

「もうすぐ流星祭..........。」

「そうか......流星祭か......みんな楽しみにしている。」

俺がそう言うと青髪の少女は俺を見つめる。

「なんで?」

「え?」

「貴方はまだ.......流星祭の本当の意味を知らない。」

少女がそう言い終わると部屋がどんどん霧で溢れてくる。少女の姿が見えなくなってくる。前にもこんな事があった。

「待って!最後まで話を聞かせて!」

「貴方に蒼き流星の導きがあらん事を........。」

少女は消えてしまった。









おまけコーナー

神武に吹き飛ばされてしまった3人の冒険者は街を囲う壁にぶち当たりました。なんとか生きてるらしいです。

ミラレナはギガモンスターなので道にカードが落ちています。それをサナさんが拾いました。ミラレナは「鏡」のモンスターです。




神武 ラグル族の赤髪の男性のような容姿をしている。
首には勾玉のようなネックレスをつけており、足に巻いているミサンガにも勾玉が付いている。柔道の道着のような格好をしている。

元になったのは日本人の祖先達を導いた神武天皇






しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【本格ハードSF】人類は孤独ではなかった――タイタン探査が明らかにした新たな知性との邂逅

シャーロット
SF
土星の謎めいた衛星タイタン。その氷と液体メタンに覆われた湖の底で、独自の知性体「エリディアン」が進化を遂げていた。透き通った体を持つ彼らは、精緻な振動を通じてコミュニケーションを取り、環境を形作ることで「共鳴」という文化を育んできた。しかし、その平穏な世界に、人類の探査機が到着したことで大きな転機が訪れる。 探査機が発するリズミカルな振動はエリディアンたちの関心を引き、慎重なやり取りが始まる。これが、異なる文明同士の架け橋となる最初の一歩だった。「エンデュランスII号」の探査チームはエリディアンの振動信号を解読し、応答を送り返すことで対話を試みる。エリディアンたちは興味を抱きつつも警戒を続けながら、人類との画期的な知識交換を進める。 その後、人類は振動を光のパターンに変換できる「光の道具」をエリディアンに提供する。この装置は、彼らのコミュニケーション方法を再定義し、文化の可能性を飛躍的に拡大させるものだった。エリディアンたちはこの道具を受け入れ、新たな形でネットワークを調和させながら、光と振動の新しい次元を発見していく。 エリディアンがこうした革新を適応し、統合していく中で、人類はその変化を見守り、知識の共有がもたらす可能性の大きさに驚嘆する。同時に、彼らが自然現象を調和させる能力、たとえばタイタン地震を振動によって抑える力は、人類の理解を超えた生物学的・文化的な深みを示している。 この「ファーストコンタクト」の物語は、共存や進化、そして異なる知性体がもたらす無限の可能性を探るものだ。光と振動の共鳴が、2つの文明が未知へ挑む新たな時代の幕開けを象徴し、互いの好奇心と尊敬、希望に満ちた未来を切り開いていく。 -- プロモーション用の動画を作成しました。 オリジナルの画像をオリジナルの音楽で紹介しています。 https://www.youtube.com/watch?v=G_FW_nUXZiQ

スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。 パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。 車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。 ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!! 相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム! けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!! パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

なろう390000PV感謝! 遍歴の雇われ勇者は日々旅にして旅を住処とす

大森天呑
ファンタジー
〜 報酬は未定・リスクは不明? のんきな雇われ勇者は旅の日々を送る 〜 魔獣や魔物を討伐する専門のハンター『破邪』として遍歴修行の旅を続けていた青年、ライノ・クライスは、ある日ふたりの大精霊と出会った。 大精霊は、この世界を支える力の源泉であり、止まること無く世界を巡り続けている『魔力の奔流』が徐々に乱れつつあることを彼に教え、同時に、そのバランスを補正すべく『勇者』の役割を請け負うよう求める。 それも破邪の役目の延長と考え、気軽に『勇者の仕事』を引き受けたライノは、エルフの少女として顕現した大精霊の一人と共に魔力の乱れの原因を辿って旅を続けていくうちに、そこに思いも寄らぬ背景が潜んでいることに気づく・・・ ひょんなことから勇者になった青年の、ちょっと冒険っぽい旅の日々。 < 小説家になろう・カクヨム・エブリスタでも同名義、同タイトルで連載中です >

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

No One's Glory -もうひとりの物語-

はっくまん2XL
SF
異世界転生も転移もしない異世界物語……(. . `) よろしくお願い申し上げます 男は過眠症で日々の生活に空白を持っていた。 医師の診断では、睡眠無呼吸から来る睡眠障害とのことであったが、男には疑いがあった。 男は常に、同じ世界、同じ人物の夢を見ていたのだ。それも、非常に生々しく…… 手触り感すらあるその世界で、男は別人格として、「採掘師」という仕事を生業としていた。 採掘師とは、遺跡に眠るストレージから、マップや暗号鍵、設計図などの有用な情報を発掘し、マーケットに流す仕事である。 各地に点在する遺跡を巡り、時折マーケットのある都市、集落に訪れる生活の中で、時折感じる自身の中の他者の魂が幻でないと気づいた時、彼らの旅は混迷を増した…… 申し訳ございませんm(_ _)m 不定期投稿になります。 本業多忙のため、しばらく連載休止します。

ヒーローの定義〜女子高生が最高のヒーローになる物語〜

風鈴ナツ
SF
幼少期に東京大震災によって両親を失った16歳の女子高生、日代唯愛(ニチダイ・ユイア)はある日の学校の帰り道、バイト先へ向かう途中にアタッシュケースを持った小さな猫のマスコットの妖精?とぶつかってしまう。 そのアタッシュケースの中に入っていた変身ヒーローが腰に巻くようなベルトと1つのカセットを見た特撮ヒーローが好きなユイアはそのまま妖精?とアタッシュケースを持ってバイト先へ行くことにする。 この時のユイアはまだ知らない。このベルトはただのおもちゃではなく記憶の怪物「メモリス」達から人々を守る鍵となるものであり、この妖精?との偶然では片付けられないような出会いが彼女の運命を切り開き、未来を変えることを...... これは女子高生が最高のヒーローになる物語である。 【毎週月曜日・午後8時に投稿予定、投稿が遅れたり休載の場合X(旧Twitter)にてお知らせします】

処理中です...