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流星祭 編
第18話 俺達の城
しおりを挟む「人間、俺の城から立ち去れ。」
人型のカマキリが天井に張り付きながら僕達を睨み続ける。
両手に持った鎌でギリギリと音を立てていた。
今まで味わった恐怖とはまた違う恐怖だ。
「先に名を名乗っておこう。俺の名はギルバ・リノ.......ここの城の主人だ。」
(これがリオ先輩達が言っていたギガモンスター........。)
「一応聞いておこう。俺の城になんのようだ?」
「ぼっ僕達はクエストで忘れ物を取りに来ただけです!貴方達に危害を加えるつもりはありません!」
ハンドさんがそう言うとギルバというモンスターは少し考え事をするポーズをすると、天井に張り付くのを止め、入り口の方へと向かった。
「ついてこい.......お前達が探している物に心当たりがある。」
「.......え?」
地下2階 ゾロ 対 リビュエ
「そういえば貴方はあの鎧のような姿にはならないのですか?」
レイピアで攻撃しながらの突然の質問。コイツはそれほど余裕を持っているという事なのだろうか。
「私は.......あの姿が嫌いなんだ。」
あの姿になると自分が自分じゃなくなるような感じがして私は嫌いなんだ..........。だから私の人のままの姿で敵を倒す!
「ハァ!」
ジャキーン!
刀で攻撃するも全部レイピアで防がれてしまう。
「まだだ!」
思い出せ........私はずっと鍛錬を続けて来たじゃないか。レイピアを使うジャンヌとは何度も戦ってきたはず。ほとんど変わらないだろ?
いや今の私には少しブレが生じている。刀を持つ手が震えるのを感じる。
毒の影響か?いや違う恐怖心だ。
心の中に少しでも恐怖心があれば人間はそれに支配されてしまう。
人という生き物は脆くて弱い......それを愛おしいという人もいる。
だから強くなったんだろ?
「どうされましたか?」
心配そうな声で私に尋ねるリビュエ。モンスターに心配されるほど弱くなんてないさ。
「続けよう.......ふー.....これより!「二刀流」へと移行する!」
カチャッ
刀を両手で強く握ると刀の刀身が紫色に光始める、この技はいざという時にしか使わない本気の技だ。一つを二つに割るようなイメージで.......。
「ハァッ!!!..........戦刀「紫電」.....双刀の構え!」
一つの刀が双つに割れし時........
紫電の風が吹き荒れ、闇を切り裂き続ける!!
私の両手には二本の刀が握られており両方共、紫色の刀身が輝き続けていた。それにしても二刀流にするたびに鳴るこの音はなんなんだ?
「二刀流ですか......いいですね。やっとそちらも本気を出してくれましたか。」
「あぁ、待たせてしまって悪かったな。」
シュン!
今までよりはるかに速いスピードで攻撃してくるリビュエ。本気と本気のぶつかり合いというのはこういう事なのだろうか。
カキン!カキン!カキン!
グサッ!
「残念だったな、それは壁だ。」
「えぇ、分かっていますとも!!」
ここから先は技を使っていこう。デバイスで入力しなくても私は技を使える。
サンダー!ウィンド!斬撃!!
刀の刀身の周りに紫色の風が吹き荒れる。これを勢いよくリビュエに叩きつける!
「紫電一線!風車!!」
ズバァァァァ!!
私の斬撃はリビュエの細い腕を一本切り落とし、その瞬間に強い風が吹き荒れ始めた。風の影響で本棚や机が倒れ始める。
「私の腕を切り落としたのは貴方が初めてですよ。」
どうやらまだ余裕のようだ。コイツは腕が元々4本あった。蜂だからだろうか。全く痛がろうとしない。
するとリビュエは倒れている本棚や机に目を向ける。
「大変だ.......旦那様に叱られる。うん?あれは..........まずいぞ。」
慌てたような表情で本棚へと走り出す。何かあるっていうのか?
ガタガタガタガタ!
本棚が動き始める。まるでそこだけ地震が起きているようだった。次の瞬間には本棚に日々が割れバラバラになってしまう。
「間に合わなかったか.......。」
本棚がバラバラになった事によって本が床に散らばり一冊の本が宙に浮く。ページがパラパラとめくられ、あるページになると止まりそのページとページの間に挟まれていた「しおり」が赤く光る。
「あれはしおり?......違う、あれはアビリティーカード?」
「アイツが復活する。」
赤く光り輝いたアビリティーカードから1匹の人型のモンスターが飛び出す。何が起こっているんだ?
「はぁ~あ~。俺様ふっかーつ!!」
そこから現れた人型のモンスターは赤いアーマーを見に纏い、肩からは灰色のマフラーをたなびかせていた。
まるで子供の頃見た日曜にするヒーロー番組の主役のヒーローのような姿だ。
「よぉー久しぶりだなリビュエ?10年ぶりか?見ない間に腕がなくなっちまったみたいだが、俺様を封印したバチが当たったんだぜ?」
「10年前に始末しておけばよかった。」
ズバッ!
リビュエは全速力でレイピアを刺すも、そこにはあのモンスターの姿はおらず横のソファーで横たわっていた。
「おいおい寝起きで本気の攻撃は酷すぎるぜ、あとなんか腕落ちた?俺様には遅すぎるくらいだぜ。」
「貴様.............!!」
あくびをしながら赤いモンスターは立ち上がる。
何が起こっているんだ。あの赤いモンスターはリビュエの仲間なのか?それにしては仲が悪すぎるような気がする。そもそもアイツはモンスターなのか?
「10年間も眠らせやがって!一体どんなスゲェ封印魔法を使ったんだ!」
「いや、ただお前をカードの姿にして読みかけていた本のページのしおり代わりにしただけだ。まぁ忘れていたがな」
「なっなんだと!俺様をしおり代わりに!!........ふん!久々のシャバだ。暴れさせてもらうぜ!このディルバ様がな!」
そう言うと赤いモンスターは足につけられているローラーシューズのようなタイヤを回し始める。
ブルン!ブルンブルン!!
「エンジン全開!!」
どこかで聞いた事があるような音を立てながら靴の後ろにある排気口から煙を出すと、そのまま猛スピードで消えてしまった。
「いやっはーーーー!!俺様全速力だぜ!」
「なんだったんだ.........。」
4階 Bグループ
あの鎌を持ったモンスターについて行くとたどり着いたのは4階のある部屋だった。他の部屋に比べてドアには金のバラの豪華な装飾が施されていた。
「ここは?」
「俺の寝室だ.......入れ。お前らが探している物は俺の机の中だ。」
ガチャ
キシキシと音を立てながらドアが開く。やっぱり古い建物なのだろうか。
ドアが開くととても綺麗な部屋が広がっていた。
壁にはたくさんの絵がかけられており、どれも同じ女性が笑っている。とても綺麗な笑顔だ。他にも花がたくさん飾られている。これが本当にこのカマキリのモンスターの寝室なのか。
「少し聞いてもいいですか?」
テンさんがモンスターに質問する。
「なんだ?」
「なんで「ベッドが二つ」あるんですか?」
確かに大きなベッドが二つ並んであった。モンスターだから大きいベッドが必要ってわけでもないだろう。
「その質問の答えはあとで教えてやる..........。」
そう言うと一つだけポツンっと置かれた机の方へ向かい引き出しを開け箱を取り出す。
「お前達が探している物はこれだろ?」
パカッ
箱を開けると綺麗な首飾りや指輪などの女性が身につける物がたくさん入っていた。
「そう!それです!僕が依頼主から見せてもらった絵のやつとそっくり!!」
「これが欲しいか?」
「はい!」
元気よくハンドさんが答えるとモンスターは箱を閉じ、引き出しへしまう。
「だったら俺が今から言う条件をやってみせろ」
「条件?」
「そうだ条件だ.....条件は「俺を殺してみろ」。」
そう言うと鎌を構えて僕たちに襲いかかる。鎌から放たれる斬撃が壁中に切り傷を作っていく。
「なんで!ただ返してくれるだけでいいのに!」
「そこのお前、答えを教えてやる。ベッドが二つあるのは俺と「妻」のベッドだ!」
ドクン!
心臓が大きく脈打ったのを感じた。妻?
「妻はな、一年前に病気で死んじまった........あの箱には妻が身につけていた物ばかりなんだよ。だからそう簡単にはやらねぇ!!」
大切な人の物?息がどんどんしにくくなってくる。まるでマラソンで走った後のような感覚だ。前にもこのような体験をした事がある。
「倒すしかないみたいですね!」
「ロードさん?どうしたんですか!すごい汗ですよ!!」
「はぁーはぁーはぁー..............。」
僕は動けないでいた。
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