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第25話「新・宿・鎮・火」
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【東京・新宿駅付近】
「怪人たちが線路の上にもいるぞ!.......あのまま電車が轢いたりしてくれないかな?」
「電車は全部止まってるよ!早く残りを倒さないと会社勤めの人達が帰れなくなっちゃう!」
雨に濡れながらユイアとアカネは新宿駅に到着した。見渡す限り人の姿はなくゴーストが作り出した黒い怪人が徘徊をしているだけだ。アカネはニッと笑うと近くにいた黒い怪人に向かって走り出す。
「うおりゃー!!」
「待ってアカネ!」
アカネは黒い怪人と戦闘を始める。黒い怪人はアカネの攻撃を数発食らったあと自身の身体からナイフを生成し反撃を始めた。アカネはナイフを簡単に避けながら余裕そうな表情を浮かべる。
「そんなもんか......よ......うっ!」
頭が痛い。アカネは攻撃を避けながら頭をおさえ始めた。視界がぼやけて目の前にいる黒い怪人が何重にも見えるようになっていく。
(真空状態にいた影響か?それとも疲労か?頭がいてぇ......めまいがする。)
「アカネ!」
アカネの異常に気づいたユイアはすぐにドライバーを取り出して腰に巻き付ける。アカネの元に駆けつけながらピンク色のメモリカセットを装填しホイールを回転させた。
3!2!1!
「変身!」
ヒーローアップ!You are HERO!!
ユイアの身体にピンク色のアーマーが装着され複眼がピンク色に点灯していく。変身した瞬間にアカネが戦っていた黒い怪人に向かって飛び蹴りをした。
「ハァ!!」
ドォーン!バァァァアン!!!
「アカネ!」
「平気だ.......さっさとコイツら倒しながら一般人と隊員が待機してる場所まで行くぞ!」
「うん!」
仲間が倒されたことに反応して辺りを徘徊しているだけだった黒い怪人達が一斉にユーアとアカネの方にやってきた。30体以上はいる。アカネは指をポキポキと鳴らし深呼吸をするとストレッチのような動き始めた。
「報告より多いんじゃねぇか?」
「うん、すごい数の敵!......テンション上がってきたー!」
「あぁ、燃えてきたぜ!」
そう言ってユーアとアカネは黒い怪人達に向かって走り出した。
「「うぉぉおぉぉぉぉぉぉぉおぉぉ!!!!」」
【東京・新宿駅付近のビル】
ビルの屋上で蜘蛛のメモリスとハンターは交戦をしていた。蜘蛛のメモリスは蜘蛛の糸を腕から出し、足止めしようとするがハンターは爪を使い切り裂いていく。
「ナかナかやるな!コッチも本気ダシタクなってきたぜ!」
蜘蛛のメモリスは楽しそうな笑みを浮かべると背中から4本の長い蜘蛛の脚が生やした。その4本の脚を巧みに使い、ハンターを攻撃していく。
「クッ!」
「アップ・ストローク・スティング!!」
背中から生えた4本の脚を1つに集めて一本の歪んだ長い脚を作り出した。作り出した瞬間にハンターの身体に勢いよく突き刺す。ハンターの黒い胸部アーマーにヒビが入り、内部のケーブルが切れたのかビリビリと電流が走り出した。
「?」
「グッ!」
蜘蛛のメモリスは首を傾げながらもさらに深く鋭い脚を突き刺した。
(肉を刺しタ感触ガシナイ......)
普通ならこれほど深く突き刺したら中にいる人間の身体に刺さった感触がするはずだ。しかしその感触はなく血も流れてこない。
「離セ!」
ハンターは自身に刺さった一本の長い脚を力強く握りしめて無理やり引き抜き、目の前に立つ蜘蛛のメモリスを蹴り飛ばした。蹴り飛ばされた蜘蛛のメモリスは倒れそうになるが背中から生えた脚を4本の脚に戻して上手く着地する。すぐにハンターの方を向くと先ほど自分がハンターの胸部に空けた穴がなくなっていることに気づいた。ハンターは腕を振り上げ、蜘蛛のメモリスに向かって走り出す。
「ハァァ!!!」
ズバァァァ!!
爪を使ってハンターは攻撃をする。それを背中から生えた脚を使い蜘蛛のメモリスは防いだ。
「危ナ!......どうイウコとだ、中身ガナイのか?」
「アァソウダ、ハンターニ中身ハナイ!」
「そんなノアリかよ?」
「答エテヤッタンダ、コッチノ質問ニモ答エロ!メモリスノ目的ハナンダ!!」
「目的?ソフィアはデフィニス様復活だとか言ってるケド、俺は興味ナイネ!」
「デフィニス様?」
バァン!!
「!?!」
「ナイス!今だ!」
発砲音が聞こえ、ハンターの足元から煙が上がる。どこからか狙撃されていると考えたハンターはすぐに身を隠せる場所へと向かった。その間に蜘蛛のメモリスは糸を発射してビルからビルへと伝ってどこかへ逃げてしまう。
「待テ!」
バァン!
追いかけようと立ち上がった瞬間に再び発砲音が鳴り響いた。
(仲間ガイタノカ、一体ドコカラ?)
辺りを見渡すもここよりも高いビルばかり、どこにも狙撃をできるような場所はなく狙撃手の姿は見つからない。数分後、ハンターはビルの屋上から新宿の街を見下ろした。新宿駅の方を見ると黒い怪人達と戦うピンクのヒーローの姿を見つけた。
「アレハ、ユイア.......ヨシ。」
ハンターはユーアから渡された忍者のメモリカセットをホルダーから取り出して野球のピッチャーのように構えると思いっきり屋上から投げ飛ばした。
「届クダロ!」
投げ飛ばした後に柵を掴みメモリカセットが落ちていく姿を見下ろした。次第にメモリカセットは小さくなっていきユーアの頭にぶつかった。
ゴン!
「痛い!!」
「ヒット!」
ユーアは頭を擦りながら何が当たったのか探し始めた。近くの街頭の下に黄緑色のメモリカセットが落ちているのを見つけた。
「あ!メモリカセット!」
ユーアはすぐに駆け寄ってメモリカセットを拾い上げた。見上げてどこから投げられたのかキョロキョロと探し始めるが見つからない、というより見えない。
「ハンターが落としたのかな?危ないなー......でも返してくれてありがとう!」
「おい!何やってるユーア!」
「ごめんごめん!よぉーしここから上げてくよ!」
ユーアはそう言うとピンク色のメモリカセットをドライバーから抜き取り、変身を解除するとホルダーから取り出したオレンジ色のメモリカセットと入れ替えて装填した。装填した瞬間にユイアの背後に画面が出現し画面の中からオレンジと銀色の大きなアーマーがロボットアームを振り下ろして画面を叩き割り飛び出してきた。
「借りますね、如月さん......」
ユイアはドライバーのホイールを3回回転させる。
3!
2!
1!
「変身!」
オレンジ色のアーマーがバラバラになる。ユイアの身体が黒色のスーツに覆われ、各部位がゴツゴツと大きくなっていきユイアの女子高生のスラっとした体型から筋肉質な男性的な体型へと変化していった。オレンジ色のアーマーが各部位に装着されていく。右腕にはロケットの形状した武装、左腕には大きなロボットのようなアームが装着された。
プシュー!
蒸気のような煙を背中のジェットパックの排出口から上げ、最後に頭部が上から装着される。装着した瞬間に黒い複眼が青色に点灯していった。
ヒーローアップ!!
宇宙まで届け!轟け鉄拳!アイアン!!You are HERO!!
「ゴツいアーマーきたーーーーーーー!!」
ドンドン!
「日代唯愛!まとめてタイマン張らせてもらうぜ!」
両腕を上げ、胸をどんどんと叩くと右腕を前に突き出した。その姿を見てアカネは力が抜けたように笑うと誰かを思い出しまた笑う。
「なんだよそれ......へへ、でも嫌いじゃねぇぞそういうの。」
「よぉーしいくぜー!!」
ユーアは両腕のアーマーで次々と黒い怪人達をラリアットして倒していく。遠くにいる敵は如月の能力を使って辺りに散らばる瓦礫や破壊された車の部品を集めて弾丸のように投げ飛ばしていった。
「どうしたユーア!最初から本気だな!」
「当たり前だよ!だってこのフォームには制限時間があるんだもん!」
「は?制限時間!?」
ユーアの姿になったユイアはユーアの複眼を通して外の景色を見ている。その際にVRゴーグルの画面のように視界にはレーテ本部から送られてくる付近の地形情報、隊員達の位置情報、自身の身体とアーマーの損傷状況などが映し出されている。そんななかアイアンフォームに変身してから今まで見たことない制限時間の画面が映り始めた。制限時間は10分だ。
「10分しかこの姿にはなれないの!」
「10分?それなら余裕だろ!」
「うん......2人なら余裕だよね!」
この時、ユイアは気づいていた。制限時間は10分にリセットされているが自分は先ほどのキラーとの戦闘でアイアンフォームに変身しており5分以上は戦っていること。自身の体力も限界に近づいてきていること。この姿はかなりの重装甲で今のユイアは100kg以上のウェイトを身に纏って戦っているようなものだ。
「ハァ......ハァ......一気に決めるよ!!」
ユーアはドライバーのホイールを3回回転させた。回転させていくとオレンジ色の電流が各アーマーに流れていきオレンジ色のオーラを纏っていく。
「アカネ!敵を一箇所に集めて!」
「任せとけ!」
アカネは背中にドラゴンの炎の羽を生やし空を飛ぶと地上を見下ろして黒い怪人の位置を把握する。
「ドラゴンの空気を!風を操る力で!巻き起こせ竜巻!!」
アカネの前に大きな竜巻が巻き起こり黒い怪人達を次々と掃除機のように吸い上げてその場にいた黒い怪人達を一箇所に集めた。
「今だユーア!」
「ありがとう!」
アイアンフォームの背中のジェットパックが展開、変形しアンカーのように地面に突き刺す。同時に両肩にキャノンが装着されエネルギーを溜め始めた。ユーアは両腕を突き出すと右腕のロケットの先端と左腕のロボットアームのパーツが展開し同じようにエネルギーを溜め始める。
「一斉発射!!」
ユーアはレバーを握り、引き金を引く。引いた瞬間に両肩と両腕のキャノンから青いビームが発射され両脚に取り付いているランチャーからもミサイルが飛び出す。高温の青いビームによって雨粒が蒸発して水蒸気の煙が上がっていった。
アイアン!エヴォークスマッシュ!!
ドガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアアン!!!!!!
激しい爆発を起こし全ての黒い怪人を吹き飛ばしていく。爆発よって発生した黒い煙がなくなった時には黒い怪人達の姿はどこにもなかった。
「一掃だなユイア。」
「疲れたぁぁ」
ユーアはドライバーからメモリカセットを取り出し変身を解除するとその場に倒れてしまう。着ぐるみを着た後のように汗で服も髪も濡れている。
「すっげぇ汗だな。アタシ、タオル持ってないぞ?」
「いつもはこんなにかかないんだけどね......でも......あははは、雨が冷たくて涼しい。」
「あぁ、そうだな。」
2人は黒い雨雲を見つめた。
「いつ止むかな、この雨。」
「止むよ、止まない雨はないしこの雲の向こう側には綺麗な青空が広がってるはずだよ。」
「もう夕方だから夕焼けだと思うけど......そうだな、アタシも雨よりも青空の方が好きだぜ。」
「あはははっ......一緒だ。」
こうして新宿に訪れた災いの炎は鎮火された。
新宿の爆破テロにて一般人とレーテの隊員を含め、軽傷者54名、重傷者6名、レーテの隊員が1名死亡した。電車の運行停止、破壊されたビルや乗用車、営業停止された飲食店など被害額の合計を億を超えると予想されている。その数日後、如月琴子の葬式が行われ遺族と神奈川支部の隊員達、もちろんユイアとユキタカ、アカネも参列した。総勢800人以上の参列者、一時期はニュースやSNSで話題にもなったが時間が流れるにつれ話題に上がることは無くなっていき、多く人々は彼女のことを忘れていってしまった。
そして長い雨が上がり、蝉が鳴く暑い夏がやってきた。
【東京都内・レーテ本部】
「日代、こっちだ。」
新宿のテロから約1ヶ月が経とうとしたある日、ユキタカはユイアを呼びだした。長い廊下を歩いて2人はエレベーターに乗るとユキタカは地下のボタンを押す。
「ここって地下があるんですか?」
「このエレベーターだけ地下に行けるようになっている。お前に会わせたいやつがいるんだ。」
「会わせたいやつ?」
チーン
エレベーターの扉が開き、ユキタカとユイアは再び長い廊下を歩き始めた。いくつもの部屋があるがどれも使われていないようで誰もいない。ガラスの窓から中が見える理科室のような部屋もあるが明かりがついていない。しかし、一番奥の部屋だけドアの隙間から光が漏れていた。
「お前はルナが遠隔操縦だって話は本人から聞いているか?」
「ルナのことですか......もう立ち直らないといけな、遠隔操縦!?!え!遠隔操縦なんですか!?」
ユイアはめちゃくちゃ驚いた表情を見せる。
「あぁそうだ、この奥の部屋からマイクとリモコンを使って操作をしている。彼女はここの研究者でユーアドライバーを完成させた張本人だ。確か、お前と同じ高校生くらいの年齢だ。」
「ユーアドライバーを作った人......しかも!?!」
「高校生って言っても学校には通っていない。一年生の時に高校卒業認定試験合格しているらしい。」
「すごい、一気に情報が頭に流れてきた......パンクしそうです。」
「つまりだ、」
話している間に2人は一番奥の部屋に到着した。部屋の中から微かだが音がする。
「本人に会って話してこい。」
「......この向こう側にルナが......はい!」
ユイアは目の前の部屋のドアノブを握る。心臓が少しずつ早くなっていくのを感じた。緊張しているのかもしれない、だがそれよりもいつも隣にいたルナとまた会いたい。実際に会って話がしたいという気持ちの方が強かった。ユイアは息を整えてゆっくりとドアノブを回す。
ガチャ
「怪人たちが線路の上にもいるぞ!.......あのまま電車が轢いたりしてくれないかな?」
「電車は全部止まってるよ!早く残りを倒さないと会社勤めの人達が帰れなくなっちゃう!」
雨に濡れながらユイアとアカネは新宿駅に到着した。見渡す限り人の姿はなくゴーストが作り出した黒い怪人が徘徊をしているだけだ。アカネはニッと笑うと近くにいた黒い怪人に向かって走り出す。
「うおりゃー!!」
「待ってアカネ!」
アカネは黒い怪人と戦闘を始める。黒い怪人はアカネの攻撃を数発食らったあと自身の身体からナイフを生成し反撃を始めた。アカネはナイフを簡単に避けながら余裕そうな表情を浮かべる。
「そんなもんか......よ......うっ!」
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(真空状態にいた影響か?それとも疲労か?頭がいてぇ......めまいがする。)
「アカネ!」
アカネの異常に気づいたユイアはすぐにドライバーを取り出して腰に巻き付ける。アカネの元に駆けつけながらピンク色のメモリカセットを装填しホイールを回転させた。
3!2!1!
「変身!」
ヒーローアップ!You are HERO!!
ユイアの身体にピンク色のアーマーが装着され複眼がピンク色に点灯していく。変身した瞬間にアカネが戦っていた黒い怪人に向かって飛び蹴りをした。
「ハァ!!」
ドォーン!バァァァアン!!!
「アカネ!」
「平気だ.......さっさとコイツら倒しながら一般人と隊員が待機してる場所まで行くぞ!」
「うん!」
仲間が倒されたことに反応して辺りを徘徊しているだけだった黒い怪人達が一斉にユーアとアカネの方にやってきた。30体以上はいる。アカネは指をポキポキと鳴らし深呼吸をするとストレッチのような動き始めた。
「報告より多いんじゃねぇか?」
「うん、すごい数の敵!......テンション上がってきたー!」
「あぁ、燃えてきたぜ!」
そう言ってユーアとアカネは黒い怪人達に向かって走り出した。
「「うぉぉおぉぉぉぉぉぉぉおぉぉ!!!!」」
【東京・新宿駅付近のビル】
ビルの屋上で蜘蛛のメモリスとハンターは交戦をしていた。蜘蛛のメモリスは蜘蛛の糸を腕から出し、足止めしようとするがハンターは爪を使い切り裂いていく。
「ナかナかやるな!コッチも本気ダシタクなってきたぜ!」
蜘蛛のメモリスは楽しそうな笑みを浮かべると背中から4本の長い蜘蛛の脚が生やした。その4本の脚を巧みに使い、ハンターを攻撃していく。
「クッ!」
「アップ・ストローク・スティング!!」
背中から生えた4本の脚を1つに集めて一本の歪んだ長い脚を作り出した。作り出した瞬間にハンターの身体に勢いよく突き刺す。ハンターの黒い胸部アーマーにヒビが入り、内部のケーブルが切れたのかビリビリと電流が走り出した。
「?」
「グッ!」
蜘蛛のメモリスは首を傾げながらもさらに深く鋭い脚を突き刺した。
(肉を刺しタ感触ガシナイ......)
普通ならこれほど深く突き刺したら中にいる人間の身体に刺さった感触がするはずだ。しかしその感触はなく血も流れてこない。
「離セ!」
ハンターは自身に刺さった一本の長い脚を力強く握りしめて無理やり引き抜き、目の前に立つ蜘蛛のメモリスを蹴り飛ばした。蹴り飛ばされた蜘蛛のメモリスは倒れそうになるが背中から生えた脚を4本の脚に戻して上手く着地する。すぐにハンターの方を向くと先ほど自分がハンターの胸部に空けた穴がなくなっていることに気づいた。ハンターは腕を振り上げ、蜘蛛のメモリスに向かって走り出す。
「ハァァ!!!」
ズバァァァ!!
爪を使ってハンターは攻撃をする。それを背中から生えた脚を使い蜘蛛のメモリスは防いだ。
「危ナ!......どうイウコとだ、中身ガナイのか?」
「アァソウダ、ハンターニ中身ハナイ!」
「そんなノアリかよ?」
「答エテヤッタンダ、コッチノ質問ニモ答エロ!メモリスノ目的ハナンダ!!」
「目的?ソフィアはデフィニス様復活だとか言ってるケド、俺は興味ナイネ!」
「デフィニス様?」
バァン!!
「!?!」
「ナイス!今だ!」
発砲音が聞こえ、ハンターの足元から煙が上がる。どこからか狙撃されていると考えたハンターはすぐに身を隠せる場所へと向かった。その間に蜘蛛のメモリスは糸を発射してビルからビルへと伝ってどこかへ逃げてしまう。
「待テ!」
バァン!
追いかけようと立ち上がった瞬間に再び発砲音が鳴り響いた。
(仲間ガイタノカ、一体ドコカラ?)
辺りを見渡すもここよりも高いビルばかり、どこにも狙撃をできるような場所はなく狙撃手の姿は見つからない。数分後、ハンターはビルの屋上から新宿の街を見下ろした。新宿駅の方を見ると黒い怪人達と戦うピンクのヒーローの姿を見つけた。
「アレハ、ユイア.......ヨシ。」
ハンターはユーアから渡された忍者のメモリカセットをホルダーから取り出して野球のピッチャーのように構えると思いっきり屋上から投げ飛ばした。
「届クダロ!」
投げ飛ばした後に柵を掴みメモリカセットが落ちていく姿を見下ろした。次第にメモリカセットは小さくなっていきユーアの頭にぶつかった。
ゴン!
「痛い!!」
「ヒット!」
ユーアは頭を擦りながら何が当たったのか探し始めた。近くの街頭の下に黄緑色のメモリカセットが落ちているのを見つけた。
「あ!メモリカセット!」
ユーアはすぐに駆け寄ってメモリカセットを拾い上げた。見上げてどこから投げられたのかキョロキョロと探し始めるが見つからない、というより見えない。
「ハンターが落としたのかな?危ないなー......でも返してくれてありがとう!」
「おい!何やってるユーア!」
「ごめんごめん!よぉーしここから上げてくよ!」
ユーアはそう言うとピンク色のメモリカセットをドライバーから抜き取り、変身を解除するとホルダーから取り出したオレンジ色のメモリカセットと入れ替えて装填した。装填した瞬間にユイアの背後に画面が出現し画面の中からオレンジと銀色の大きなアーマーがロボットアームを振り下ろして画面を叩き割り飛び出してきた。
「借りますね、如月さん......」
ユイアはドライバーのホイールを3回回転させる。
3!
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1!
「変身!」
オレンジ色のアーマーがバラバラになる。ユイアの身体が黒色のスーツに覆われ、各部位がゴツゴツと大きくなっていきユイアの女子高生のスラっとした体型から筋肉質な男性的な体型へと変化していった。オレンジ色のアーマーが各部位に装着されていく。右腕にはロケットの形状した武装、左腕には大きなロボットのようなアームが装着された。
プシュー!
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ヒーローアップ!!
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「ゴツいアーマーきたーーーーーーー!!」
ドンドン!
「日代唯愛!まとめてタイマン張らせてもらうぜ!」
両腕を上げ、胸をどんどんと叩くと右腕を前に突き出した。その姿を見てアカネは力が抜けたように笑うと誰かを思い出しまた笑う。
「なんだよそれ......へへ、でも嫌いじゃねぇぞそういうの。」
「よぉーしいくぜー!!」
ユーアは両腕のアーマーで次々と黒い怪人達をラリアットして倒していく。遠くにいる敵は如月の能力を使って辺りに散らばる瓦礫や破壊された車の部品を集めて弾丸のように投げ飛ばしていった。
「どうしたユーア!最初から本気だな!」
「当たり前だよ!だってこのフォームには制限時間があるんだもん!」
「は?制限時間!?」
ユーアの姿になったユイアはユーアの複眼を通して外の景色を見ている。その際にVRゴーグルの画面のように視界にはレーテ本部から送られてくる付近の地形情報、隊員達の位置情報、自身の身体とアーマーの損傷状況などが映し出されている。そんななかアイアンフォームに変身してから今まで見たことない制限時間の画面が映り始めた。制限時間は10分だ。
「10分しかこの姿にはなれないの!」
「10分?それなら余裕だろ!」
「うん......2人なら余裕だよね!」
この時、ユイアは気づいていた。制限時間は10分にリセットされているが自分は先ほどのキラーとの戦闘でアイアンフォームに変身しており5分以上は戦っていること。自身の体力も限界に近づいてきていること。この姿はかなりの重装甲で今のユイアは100kg以上のウェイトを身に纏って戦っているようなものだ。
「ハァ......ハァ......一気に決めるよ!!」
ユーアはドライバーのホイールを3回回転させた。回転させていくとオレンジ色の電流が各アーマーに流れていきオレンジ色のオーラを纏っていく。
「アカネ!敵を一箇所に集めて!」
「任せとけ!」
アカネは背中にドラゴンの炎の羽を生やし空を飛ぶと地上を見下ろして黒い怪人の位置を把握する。
「ドラゴンの空気を!風を操る力で!巻き起こせ竜巻!!」
アカネの前に大きな竜巻が巻き起こり黒い怪人達を次々と掃除機のように吸い上げてその場にいた黒い怪人達を一箇所に集めた。
「今だユーア!」
「ありがとう!」
アイアンフォームの背中のジェットパックが展開、変形しアンカーのように地面に突き刺す。同時に両肩にキャノンが装着されエネルギーを溜め始めた。ユーアは両腕を突き出すと右腕のロケットの先端と左腕のロボットアームのパーツが展開し同じようにエネルギーを溜め始める。
「一斉発射!!」
ユーアはレバーを握り、引き金を引く。引いた瞬間に両肩と両腕のキャノンから青いビームが発射され両脚に取り付いているランチャーからもミサイルが飛び出す。高温の青いビームによって雨粒が蒸発して水蒸気の煙が上がっていった。
アイアン!エヴォークスマッシュ!!
ドガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアアン!!!!!!
激しい爆発を起こし全ての黒い怪人を吹き飛ばしていく。爆発よって発生した黒い煙がなくなった時には黒い怪人達の姿はどこにもなかった。
「一掃だなユイア。」
「疲れたぁぁ」
ユーアはドライバーからメモリカセットを取り出し変身を解除するとその場に倒れてしまう。着ぐるみを着た後のように汗で服も髪も濡れている。
「すっげぇ汗だな。アタシ、タオル持ってないぞ?」
「いつもはこんなにかかないんだけどね......でも......あははは、雨が冷たくて涼しい。」
「あぁ、そうだな。」
2人は黒い雨雲を見つめた。
「いつ止むかな、この雨。」
「止むよ、止まない雨はないしこの雲の向こう側には綺麗な青空が広がってるはずだよ。」
「もう夕方だから夕焼けだと思うけど......そうだな、アタシも雨よりも青空の方が好きだぜ。」
「あはははっ......一緒だ。」
こうして新宿に訪れた災いの炎は鎮火された。
新宿の爆破テロにて一般人とレーテの隊員を含め、軽傷者54名、重傷者6名、レーテの隊員が1名死亡した。電車の運行停止、破壊されたビルや乗用車、営業停止された飲食店など被害額の合計を億を超えると予想されている。その数日後、如月琴子の葬式が行われ遺族と神奈川支部の隊員達、もちろんユイアとユキタカ、アカネも参列した。総勢800人以上の参列者、一時期はニュースやSNSで話題にもなったが時間が流れるにつれ話題に上がることは無くなっていき、多く人々は彼女のことを忘れていってしまった。
そして長い雨が上がり、蝉が鳴く暑い夏がやってきた。
【東京都内・レーテ本部】
「日代、こっちだ。」
新宿のテロから約1ヶ月が経とうとしたある日、ユキタカはユイアを呼びだした。長い廊下を歩いて2人はエレベーターに乗るとユキタカは地下のボタンを押す。
「ここって地下があるんですか?」
「このエレベーターだけ地下に行けるようになっている。お前に会わせたいやつがいるんだ。」
「会わせたいやつ?」
チーン
エレベーターの扉が開き、ユキタカとユイアは再び長い廊下を歩き始めた。いくつもの部屋があるがどれも使われていないようで誰もいない。ガラスの窓から中が見える理科室のような部屋もあるが明かりがついていない。しかし、一番奥の部屋だけドアの隙間から光が漏れていた。
「お前はルナが遠隔操縦だって話は本人から聞いているか?」
「ルナのことですか......もう立ち直らないといけな、遠隔操縦!?!え!遠隔操縦なんですか!?」
ユイアはめちゃくちゃ驚いた表情を見せる。
「あぁそうだ、この奥の部屋からマイクとリモコンを使って操作をしている。彼女はここの研究者でユーアドライバーを完成させた張本人だ。確か、お前と同じ高校生くらいの年齢だ。」
「ユーアドライバーを作った人......しかも!?!」
「高校生って言っても学校には通っていない。一年生の時に高校卒業認定試験合格しているらしい。」
「すごい、一気に情報が頭に流れてきた......パンクしそうです。」
「つまりだ、」
話している間に2人は一番奥の部屋に到着した。部屋の中から微かだが音がする。
「本人に会って話してこい。」
「......この向こう側にルナが......はい!」
ユイアは目の前の部屋のドアノブを握る。心臓が少しずつ早くなっていくのを感じた。緊張しているのかもしれない、だがそれよりもいつも隣にいたルナとまた会いたい。実際に会って話がしたいという気持ちの方が強かった。ユイアは息を整えてゆっくりとドアノブを回す。
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https://note.com/adult_mukaiyuki/m/m05341b80803d
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