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第19話「新・宿・危・機」

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ブルンブルン!!

ライトニングチェイサーに乗ったユーアが新宿の道路を駆ける。ルナは飛ばされないようにライトニングチェイサーに必死に捕まっていた。

「もう少し遅くできない!?」

「無理だよー!早くユキタカさんと合流しないといけないから!」

普段なら何台も車が走っている街の道路も今はユーアしか走っていない。人が行き交う交差点には一般人の代わりにゴーストが呼び出した黒い怪人達が街を徘徊していた。

「倒した方がいいよね!」

ユーアは片手をハンドルから離し、波流から渡されたレーテガンを取り出す。走行しながら前方にいる黒い怪人を狙って撃っていく。

バン!!バン!!

銃口から放たれたエネルギー弾は怪人達の頭を貫通する。ヨロヨロとよろめきながら撃たれた怪人は倒れ、黒い霧となって消えていった。

「ナイスエイムだユーア!」

「数が多いね......だったら!」

ユーアはホルダーから赤いメモリカセットを取り出しレーテガンに装填する。銃口部分に赤いオーラが集まりユーアは弾丸を空中に向かって撃ち放つ。


ホーク!レーテブラスト!!

バァァァン!!!

ドガァァァァアン!!!!

空中に放たれたエネルギー弾は上空で分散し、鳥のような形となり徘徊する数体の黒い怪人を追尾し、怪人の身体に着弾すると同時に爆発した。

「よし!」

「おいユーア!前ちゃんと見ろ!」

「え?わ!!」

ユーアが前を見ると目の前には瓦礫があり、このままではぶつかってしまう。ユーアがブレーキをかけようとしたその瞬間だ。

「え、」

瓦礫が数メートルまで宙に浮かんでいったのだ。ユーアが乗ったライトニングチェイサーはそのまま走り続ける。

「ええぇぇ!?」

「へへ....良かったなユーア!その瓦礫に鉄が含まれてて!」

「その声、如月さん!!」

声がする方へ一瞬顔を向けると如月が破壊された車のボンネットに乗って、まるでアラジンの魔法の絨毯のように宙を浮かんで移動していた。

「そんなこともできるんですか!?」

「鉄が含まれてたら浮かべれるし動かせる!私がそれに乗っていても関係なしだ!!なぁユキタカとアカネ見てないか?」

「見てません!私も探してるところです!」

「そうか......あぁクソ、通信機が使いもんにならねぇ!」

「如月さん!でも波流さんはユキタカさんと通信できてましたよ!」

ユーアは共に行動をしていた波流が如月が耳につけているものと同じ通信機を使ってユキタカと通信していたことを思い出す。それを聞いて如月は考えるような表情をすると「あ、」と言って上昇し始めた。

「どこに行くんですか!?」

「敵に電波を妨害してる奴がいるかもしれない!探してくるからユーアは走って避難ができていない奴を探せ!人の命が最優先だ!」

「はい!」










【東京・新宿駅付近】

「おりゃ!!」

バァァン!

新宿駅付近で黒い怪人達を相手にアカネは戦闘をしている。怪人達を得意の肉弾戦とドラゴンの能力で爽快に蹴散らしていった。

「強いね!!うち来ない?」

共に行動していた埼玉支部長の茶髪のオールバックの男、矢場も自身の能力を使い召喚した巨大な拳で黒い怪人達を一掃して行く。 

「結構です!」

「だよねー!って危ない!」

バキン!!バーーーン!!

アカネの背後から襲い掛かってきた黒い怪人を巨大な手を使い蚊のように両方の手のひらで潰す。彼の能力は「手」、黒い数メートルある手のひらを2つ召喚することができ、手の動きは自身の両手と同じ動きを再現する。

「ありがとうございます!」

「よし!そろそろ援軍が来る頃だろうし、ここは俺に任せて君は如月さんや高嶺さんがいるところへ!」

「はい!」

アカネは自身の能力で炎の翼を背中に生やし飛んでいく。手を振って見送る矢場と同じように大きな黒い手も同じように手を振る。矢場は辺りにいる十数体の黒い怪人に視線を移動した。

「早く来ないかなー援軍......よし気合い入れて頑張りますか!」

矢場が右の拳を強く握る。それと同時に宙に浮いている大きな黒い右の拳が同じように強く握り、矢場の動きと連動して黒い怪人に向かって拳を振り下ろした。



ドガァァァァァアン!!!!



「ししょー!どこですかー!!!」

アカネは炎の翼を動かしながら新宿を飛び回る。しかし如月は一向に見つからない。少し離れた場所で爆破されモクモクと黒い煙が立つビルを見つけた。


「このままじゃ新宿が瓦礫の山だぜ!......ん、なんだアイツ?」


下を見渡すと歌舞伎町の通りに何かを見つけ急降下する。そこには2メートルくらいの高さの頭から導火線が生えた黒い着ぐるみのようなやつがとことこ歩いていた。


「はぁ....ハァ.....クインのヤつめ.....ひとづか....いやメモリス扱いが相変わラズ酷いんだから........オイラもう疲れチャったよ.......どこかにベンチないかな?」

「おい何やってる。」

「えっ......わ!わワ!レーテ!」

(まずい!レーテのヤツに見つカッチまった!どうする!ドウする!でっでも落ち着けオイら!頑張ればバレないハず!)

黒い着ぐるみのようなやつはアカネの方を見ながら汗を流しとことこと後ろに下がった。

「おっオイラ!きっ着ぐるミだよ!!」

「嘘つけ!!」

「バレた!!なんで!?」

「あとお前!その見た目からして「爆弾」のメモリスだろ!」

「なんノメモリスなのかもバレた!?こっこれはマズい!ニゲろー!!!」

爆弾のメモリスは太い足を一生懸命動かしアカネから逃亡しようとする。アカネは羽を動かし後を追いかける。

「わー!ついてクルなー!メモリス愛護団体が怒ルゾー!」

「そんなのねぇよ!!お前を倒して爆発止めてやる!!」

「うっ!オイラまだ強くネェから30秒触れ続けタものしか爆発でキネェ!だから!」

爆弾のメモリスはアカネから逃げる最中、身体の大きなポケットから空き缶やタバコの吸い殻をアカネに向かって投げつけていった。

「ゴミ投げつけんな!!」

「ボン!」

「へ?」

ドガァァァァアァァァアン!!!!!!

爆弾のメモリスがボンと口にした瞬間にアカネ投げつけられたゴミが爆発を起こす。アカネは咄嗟に翼の羽を使い身体を守るが爆発を受けたせいで翼の形を保てなくなり地上に落下した。

ドン!!

「いて!」

「今ダニゲろ!!助けテクイン!!」

「おい!待て!」

アカネは爆弾のメモリスを追いかけるため、すぐに立ち上がると走り出す。アカネは両手を開き、炎の球を作り出すと爆弾のメモリスに向かって投げつけた。後ろを振り返った爆弾のメモリスは炎を見た瞬間、怯えた表情を浮かべ必死に避けた。

「うワ!やめろ!導火線ニ火がついたラドウしてクれるんだ!?」

「導火線?..........はぁーんそこがお前の弱点か.......じゃあ火をつけてやるぜ!」

「わぁアァ!やめロ!いいコトねぇゾ!」

ドガァァァァァアン!!!!

アカネはニヤリと笑みを浮かべ、大きな炎の球を作り出し爆弾のメモリスに向かって投げつけた。大きな炎の弾は導火線に直撃、頭の導火線に火がついてしまった爆弾のメモリスは急いで止めようとする。しかし、頭の導火線に手が届かず導火線が燃え尽きたと同時に激しく爆発した。

「よっしゃ!!」

「俺は忠告したハずだ......良いことないぞト。」

アカネが喜んだのも束の間、爆風の中から身長2メートルほどの黒いスレンダーなメモリスが現れた。腕が4本生え頭部はミサイルのような形をしており身体中にミサイルポッドのようなものが生えている。

「なんだ.....お前?」

「この人格ニなったら制御が効かない......まぁいい暴れるトするか。」

「!!」

ドガァァァァアン!!!

姿を変えた爆弾のメモリスはクラウチングスタートのポーズをとると同時に地面に触れた手足から爆発を起こし、爆破の勢いを利用してアカネとの距離を詰める。アカネは右腕を上げ目の前のアスファルトの道で壁を作り出す。爆弾のメモリスは壁に触れると同時に爆発を起こしその壁を破壊する。

(触れた瞬間に爆発させやがった!クソ......めんどくさいことをしちまった!!)

「爆発でバラバラになって死ヌのと殴られてボコボコにされて死ぬのドッちがいい?」

「それはこっちの質問だ!殴られてボコボコにされるってのはお前のことだぜ!!」

「そうか、まずはお前のお喋りな頭かラ爆発サセてやる。」

シュッ

ドガァァァァァァン!!!!

そう言うと爆弾のメモリスは4本の腕を前へ突き出す。突き出すと同時に空中で爆発が巻き起こる。爆発によって街灯が壊れ、周囲の建物のガラスが割れた。アカネの身体にもガラス片や小さな瓦礫が頭に刺さり額から血を流す。

「何も触ってねぇのに爆破できんのかよ!!」

「触れたさ、空気中にある水蒸気に触レ爆弾に変えタ。」

「なんでもありじゃねぇか!!!」

ドガァァァァァァン!!!ドガァァァァァアン!!!!

爆弾のメモリスは同じように4本の腕を突き出し爆発を起こす。起こすたびに同じように瓦礫がアカネの身体にぶつかり、深く突き刺さっていった。右脚が血を流しながら青くなっていく。レーテの白い隊員服が徐々に赤色の染まっていった。その間ずっと爆弾のメモリスはアカネとの距離を詰めていく。気づけば目の前まで来ていた。

「ドウだ死にたくなったか?希望なら爆発で痛みは一瞬ダ。」

「はぁ........はぁ.......」

(頭から血が止まらない。今から全速力で逃げるってのは無理そうだ......こんなんじゃ師匠に合わせる顔がない。だったら、)

「やってやる......」

「は?」

「命を賭けた一か八かの大勝負!やってやるよォッ!!」

アカネはそう叫ぶと息を大きく吸い、両腕を交差させ握った両手を勢いよく開いた。アカネを中心に音を立てながら何かが広がっていく。

「ナンのまァ......ァァッ!!」

(師匠には言ってない3つ目の力、一度練習の時に使って死にかけたからな.......でもこれならアイツは......!)

アカネは目の前にいる爆弾のメモリスの腹を力を込めて勢いよく殴る。爆弾のメモリスはその瞬間にアカネの頭を強く掴み、爆発させようとするが爆発が起こらない。

(馬鹿ナ!!まさか!!正気かコイつは!?)

すぐにもう一発殴る。

ドガ!!

(火、土に続く三つ目の力「風」その力で周囲10メートルの空気を無くした。爆発ってのは空気がないと起きないんだろ?)

(この空間にハ水蒸気も酸素も何もナイ!爆発を起こセない!だがそんなコトをしたらコイツも死ぬゾ!?まずはココから離れる事を!!)

ガッ

ドォォン!!

逃げようとアカネの頭から手を離した爆弾のメモリスの肩をジャンプして掴み、アカネは頭をトンカチのように振って頭突きする。アカネがドラゴンのメモリスの力を纏った硬い頭で頭突きするたびに爆弾のメモリスの頭部が少しずつ潰れ凹んでいく。

(グハッ!)

(逃すかよ.......アタシの意識がなくなって死ぬ限界までテメェをぶちのめしてやる!!)

頭部が潰れた爆弾のメモリスがわずかな視界で見た景色。頭から血を流しながら蛇のような目で睨みつけ笑顔でこちらを見つめるアカネの姿、それはまさに弱者を喰らう竜のようだった。

(アッあぁ..........)

遠い遥か昔に見たドラゴンのメモリスの姿を思い出す。ようやく忘れることができたあの恐怖が再び襲い掛かる。もう動けない、逃げ出すこともできない、その間もアカネは殴る蹴るを繰り返す。アカネの身体や服に血のような液体が次々と付着していく。この時点でアカネが風の力を使用して真空状態にしてから2分が経とうとしていた。

ドガッ!!

アカネは今出せる全ての力を右腕の拳に集中させた。アカネの右腕に赤い龍の刺青のようなものが浮き上がる。

(これで止めだ......龍撃!!!)

ドガン!!!!

龍のようなオーラを纏った拳を爆弾のメモリスの腹に向かって放つ。その瞬間、爆弾のメモリスは数メートル先まで飛ばされてしまった。

アカネが風の力を使用してから4分がもうすぐ経とうとした瞬間、爆弾のメモリスは灰となり消滅した。消えた瞬間に震えた手を動かし風の能力を解除する。解除した瞬間に息を深く吸い込みその場に倒れた。

バタン!!

(宣言通り.......ボコボコにしてやりましたよ....師匠....)

アカネの意識はそこでなくなった。






 




どこかのビルの屋上から新宿の街をメモリスの幹部の1人であるゴーストは見下ろす。

「その調子ですよ皆さん......」

ゴーストはそう言うと身体から緑色の炎が溢れ出し、全身を覆った緑色の炎が消えると同時に元の人間の姿に戻った。

「へーーそれがお前の本当の姿か?」

「!!」

声がする方へすぐに振り返ると如月が隣のビルの屋上からフェンス越しに彼を見つめていた。如月は握っていた小さなアンテナとクラゲを混ぜたような姿をしたメモリスをゴーストが見えるように持ち上げた。

「こいつが通信を妨害していたらしいな.......よっ!」

「うゲ!」

そのメモリスを握り潰す。


「これで通信ができるようになったってわけだ。それにしてもアンタのその顔、どこかで見たことあるんだが......思い出せねぇ誰だっけ、まぁいいや帰って調べれば出てくるだろ。」

「私の正体を見られた以上、逃すわけがないのは分かっているはずですよ。神奈川支部長の如月さん。メモリカセットは「鉄」でしたっけ?」

男はメモリカセットを取り出し身体に押し当てる。その瞬間に緑色の炎を纏ったテープが飛び出し、男の全身を覆いゴーストの姿へと変化した。如月は隣のビルからゴーストがいるこちらのビルに飛び移る。

「へーよく知ってるな。」

「敵組織の情報はこちらに流れてきていますので。」

「なるほど、じゃあ内通者がいるのはほぼ確定だな。それに敵幹部の正体も分かったし今日はついてる。」

「私に出会った時点で運の尽きだと思いますよ。」

「......死神もどきが何言ってんだよ。」

ドガァァァァァァァァァァン!!!!

次の瞬間、ゴーストは緑色の炎の塊を作り出し屋上の床に投げつける。投げつけたと同時に爆発を起こした。崩れた床の上にいた2人は十数階建てのビルから落下していく。如月は能力で鉄が含まれた瓦礫を集め、自身の足場を作り出した。如月は空中に浮かび不敵な笑みを浮かべるゴーストに向かって拳を突き出す。

「神奈川支部長、如月琴子....タイマン張らせてもらうぞ!!」







































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