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第13話「守るべきLife」
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東都大学附属病院にかる一つの病室に1人の少年がいた。彼は何度も机を叩き苛立っている。
「なんで俺がこんな目にッ!あ~クソ!」
彼は2日前に神奈川で起こったメモリスの事件の被害者でありメモリスを出した少年を虐めていたグループのリーダーだった。自分の腕と脚に巻かれた包帯を見つめるたび舌打ちをする。この怪我が治ったら少年は学校に通えるが元の学校生活は送れない。教師と親そして全校生徒にもイジメをしていた事がバレてしまっているからだ。
「アイツのせいだ....アイツのせいで俺の人生.......!」
「悩んでいるようですね?」
「あ?」
声がした方に振り返ると骸骨の姿をした怪人が1人立っていた。
「ワァァァァァアア!!」
少年は目の前にいる異形に怯え驚きナースコールをしようとするが骸骨の怪人はその手を静止させる。
「おっと落ち着いてください。私は貴方を救いに来た死神です。」
「はっはぁはぁ.....は?」
骸骨の怪人は腰から一つのメモリカセットを取り出した。
「そっそれって.......」
「ご存じですね。残念ですが貴方には幸せな未来は来ません。ですが他人の今を壊すことはできます。みんな仲良く巻き込んで不幸になりましょう。」
骸骨の怪人は甘く少年の耳元で囁く。それを聞いた少年は少しずつ笑みになる。胸が高鳴っていくのを感じた。少年は骸骨の怪人からメモリカセットを受け取り頭に当てる。すると頭からフィルムが大量に出て人の形を形成していく。
「ギぃぁアしュガァァ!!」
白い体から何本もの触手がウニョウニョと動く。
「イカのメモリスですか.....これはまた面白い。」
「すげぇ化け物だ!よし暴れてこい!!」
「いいえ暴れるのは貴方ですよ。」
「どういう事だよ!」
骸骨の怪人は少年が持っている白いメモリカセットを奪うとイカのメモリスの額に当てる。ドンっという音と共にイカのメモリスの額が光り始めた。骸骨のメモリスは次に少年の額にメモリカセットをドンっと押しつけた。
ドックン!
「ぁああぁぁあぁぁぁぁぁあぁぁぁぁあぁぁああああ!!?!?!?」
イカのメモリスの身体が再びフィルムに戻り少年の身体へと巻きついていく。数秒で繭のような形状になり次の瞬間、中から先ほどのイカのメモリスとは違う姿をしたメモリスが現れた。
「なっナンダこれ......俺ノ姿が!?」
メモリスが自分の顔や手を何度も触り近くにあった鏡で姿を確認する。隣にいた骸骨のメモリスはパチパチと拍手をした。
「おめでとう君は人間がメモリスを吸収した存在「メモリスト」になったんだ。これで君は私とお揃いだ。」
「すげぇすげえすゲェスげェ!!力が溢れてくる!ケガも治ッてる!暴れタクテ仕方ネェ!?!うァァァァァァァァァァァアア!!」
少年だったイカのメモリストは身体中から生えた触手を使い部屋の壁や物を壊していく。骸骨の怪人はニヤニヤしながらどこかへと消えてしまった。
「まずハこの病院だ!ココにいる奴ら全員不幸ニしてヤル!」
イカのメモリストは病室のドアを破壊する。廊下にいた患者や看護師が衝撃に驚くと病室から出てきたイカのメモリストに恐怖し怯え叫ぶ。
「キャァァァァァァアア!!」
「なっなんだコイツ!!?」
「助けてー!!」
逃げ惑う人々を見てイカのメモリストは笑いが止まらない。
「ぁつハあはハハはハハ!!!そうだもっト泣け!サケべ!俺は弱いヤツが怯えテル姿が一番好キだぜ!」
バン!!
「あ?」
銃声が鳴り響き1発の弾丸がイカのメモリストの肩に命中する。銃を構えているのは進助だった。
「なんでメモリスがここに!!クソ!やっぱり旧式のレーテガンじゃかすり傷にしかならないか!」
「痛えなオイ!!」
イカのメモリスは怒り身体の触手を進助めがけて数本伸ばす。進助は逃げようとするが車椅子が思ったように動かない。
「クッ!」
「危ない!!」
エヴォークスマッシュ!!!
進助の眼の前にユーアが現れイカのメモリストが伸ばした触手を回し蹴りで弾き返す。触手はすぐに引っ込んでいった。
「大丈夫ですか進助さん!」
「ナイスタイミングだぞ後輩!」
「痛ぇ!クソが!!」
イカのメモリストは触手を器用に動かし窓を叩き割って吸盤を使って壁をよじ登り外へ逃げた。ユーアはすぐに追いかけようと腰につけたホルダーから赤いメモリカセットを取り出そうとしたその時だ。
「ユウ?ユウ!ねぇ返事して!!」
声がするほうを振り返ると子供を何度も泣きながら声をかけていた。男の子は腹部から出血しており変身ヒーローが描かれた白いTシャツは赤く滲んでいた。先ほどのメモリスが暴れた時に割れたガラスが刺さってしまったのだろう。すぐに看護師と宝条先生が駆けつけた。
「まずい、これは内臓に届いている。すぐに手術をしなければ.......ストレッチャーを!!必ず救う!」
「はい!!」
「ユウ!ユウ!」
「...........」
その様子を見ていたユーアは拳を強く握った。仮面で彼女が今どんな表情をしているのか分からないが予想はつく。
「後輩!これを使え、君がここに来る事を予想してルナ?っていうやつから預かっていた。」
進助は腰のポケットから黄緑色のメモリカセットをユーアに手渡した。
「ありがとうございます。あのメモリス止めてきます。」
ユーアはお礼を言うと赤いメモリカセットをセットしてホイールを3回回し鷹のヒーローの姿に変身するとイカのメモリストを追いかけ割られた窓から飛んでいった。飛んでいった姿を見送った進助はスマホを取り出す。
「こちら詩島、東都大学附属病院にて事件発生。.......いやあれはメモリスじゃない。メモリストだ。すぐに応援を頼む。」
ピッ
「..........」
飛行をしているユーアはすぐに屋上にいたイカのメモリストを見つけ急降下し炎の球を撃つ。
バン!バン!バン!
「アッつ!!あ?これはヒーローさん今日はドウしたの?」
「貴方を止めに来た。メモリスだからって人の命を.....」
「ハッハハ!!俺は人間だゼ!」
「..........は?」
「俺はなメモリストっていう奴なんだよ!メモリスの力を使って暴れてる人間だ!」
屋上に着地したユーアは赤いメモリカセットをドライバーから取り外し変身を解除する。メモリストの話はユキタカから聞いていた。メモリスの宿主が自身のメモリスを吸収して自由に力を使える存在だ。
「じゃあ余計分かんないよ。なんで同じ人間なのに人の命を何とも思わないで傷つけるの?」
「俺は人に傷つけラレタ、だから幸せそうに脳天気に生キル他人を傷つける!!俺にはその権利ガアル!ハッハハハハハ!!!」
「..........」
ユイアはこの時ユキタカから日頃言われている言葉を思い出していた。「感情的になるな、冷静に判断しろ。」隊長としてのユキタカの言葉が何度も脳内復唱される。
「大丈夫、まだ冷静に判断できる。」
ユイアはそう言いながら腰のホルダーにつけていた黄緑色の忍者のメモリカセットを取り出した。かなりの握力で握り締めている。普段よりも強い勢いでドライバーにセットする。後ろに画面が現れ画面の中から黄緑色の忍者の姿をしたヒーローが飛び出し屋上を飛び回り始めた。
ユイアはホイールを回転させる。
3!
「大丈夫」
2!
「大丈夫...」
1!
「絶対許さないから......変身」
ヒーローアップ!今宵は使命!参るは救命!シノビ!!
歌舞伎のような変身音とししおどしのような音が鳴り響きユイアの身体に黄緑色のアーマーが装着されていく。
「なんだそのフザケた姿は!?」
「.......命を守るぜ」
ユーアはそう言うと手を開く。するとそこに風が集まり手裏剣の形を形成する。それをイカのメモリストに向けて勢いよく投げ飛ばす。
シュッ!
投げられた手裏剣をイカのメモリストは触手で防ごうとするが一瞬に触手を切り落とされてしまう。
「ギャァァァァアア!!」
ユーアは次々と手裏剣を生成し投げ飛ばす。そしてどんどん触手を切り落としていく。切り落とされるたびにイカのメモリストは悲鳴をあげるがその声は決してユイアに届かない。
「いてぇ.....なんてな!」
切れた触手の断面から新しい触手が再生される。全ての触手を一瞬で再生させるとユーアめがけて全ての触手を振り下ろす。
ドガァァァァアン!!!
「潰れたナ」
触手を上げるとそこには潰れたユーアの姿はなく一本の腰掛けるのにちょうどいい丸太が代わりに潰されていた。
「何ィ!?どこイッタ!」
目線を下に向けていたイカのメモリストは上を見上げる。そこには十数人に分身したユーアが大きな手裏剣を構えイカのメモリストを囲んでいた。
「あっああア.......」
「「「「「ハッ!!!!!!!」」」」」
十数人のユーアが一斉に大きな手裏剣を投げ飛ばし全ての触手を切り落とすと本体だけが残り他の分身達はドロン!という音を立て煙になって消えてしまった。イカのメモリストはすぐに再生をしようとする。
「コンテニューなんてさせない!これで終わりだ!!!」
ユーアはホイールを3回回転させる。右足に緑色の風のようなオーラを纏いイカのメモリストに向かって蹴りを放つ。
「やめロぉぉぉぉおお!!!」
「ハァァァアァァァァアア!!!」
シノビ!エヴォークスマッシュ!!!
ドガァァアァァァァァァァァァアァン!!!!!!!
イカのメモリストは爆散し屋上には倒れた少年の姿があった。気を失っているが怪我をしている様子はない。ユーアは着地すると少年の元へ歩き始めた。
「!!」
ユーアは後ろからの攻撃に気づき瞬時に右に避けた。後ろを振り向くと骸骨の怪人の姿があった。
「ゴースト........」
「おや?覚えていてくれたのですか?嬉しいですね~」
「貴方がこの子をたぶらかしたの?」
「言い方悪いですね。助言と言ってほしい。」
ゴーストは少年の元まで近づき少年が握っていた白いイカのメモリカセットを奪い取った。少年は目を覚ましゴーストの脚を掴む。
「おい....待てよ....俺を救ってくれよ.....頼むよ..な?」
「ふっ、ゴミが私に触らないでください。」
ゴーストは少年の腕を蹴り少年の怪我した方の腕を何度も踏みつけた。その様子を見たユーアはすぐに走り出しゴーストめがけて蹴りを入れようとするがゴーストは霧となって消えてしまう。
「当たりませんよ。そんな攻撃。」
声がする方へ振り返るとベンチにゴーストは座っていた。
「メモリストは役に立ちませんでしたがこのメモリカセットには使い道がある。有意義に使わせていただきますよ。」
ゴーストはそう言うと姿を完全に消してしまった。
数分後レーテの隊員達が到着し少年は身柄を拘束させられた。幸い被害は病院内だけだったが軽傷者が7名、重傷者が1名。ユイアはすぐにあの子供がどうなったのか心配になり手術室の方へ向かった。ユイアが着いた時にはちょうど手術が終わったのか宝条先生と子供の母親が話していた。
「無事手術は成功しました。」
「先生ありがとうございます!!」
母親は泣きながら何度もお辞儀する。
「いえ、では僕はこれで。」
「待ってください!」
宝条先生は立ち去ろうとするが母親はそれを止める。
「宝条先生......ですよね?」
「えぇそうですが」
「私の事覚えていますか?」
「............まさか君はあの時の!」
その母親はかつて助けることができなかった少年の妹だった。かなり成長しているがどこか面影が残っており顔を数秒見つめただけですぐに分かった。
「はい。」
「本当にすまなかった!僕は幼い君にお兄さんの事で嘘をつき傷つけてしまった!」
宝条先生は深く頭を下げる。母親は泣きながら首を横に振る。
「謝らないでください。先生は悪くなんてありません。それに貴方は私の息子を救ってくれた。先生は本当の医者です。ありがとうございます。」
その言葉を聞いて宝条先生の瞳から涙が溢れ出る。彼女の言葉で何かから解放された気がした。泣いている2人を少し遠くから眺めていたユイアは少し微笑むと廊下を戻っていった。
「良かった。」
少年の身柄を確保したレーテの隊員達とユキタカが話していると後ろから車椅子に乗った進助がやってきた。
「お疲れ。」
「進助、大丈夫か?」
「あぁ俺は大丈夫だ。それより問題はどうしてメモリスの奴らにここに2日前の事件の関係者がいるって事がバレたのかだ。」
「この病院で入院していたことは警察と俺達レーテしか知らないはずだ。」
「俺が何を言いたいか分かるか?」
「.........考えたくない。」
「警察とレーテそのどちらかにメモリスと繋がっている内通者がいる。」
「この事は今回の集合会議で話そう。」
「集合会議って事は如月も来るのか?」
「そうだ、明日神奈川から来る予定だ。」
東京駅にて
「着いたー!!!」
改札を抜け赤いレンガの外装をした東京駅から茶髪ロングの体格の良い女性と赤髪ポニーテールの女子高生がキャリーケースを転がしながら出てきた。
「師匠本当に今日来て良かったんですか?大事な会議って明日なんですよね?」
「大丈夫大丈夫!今日も明日も変わんないし!今日は東京観光と行こうじゃねぇか!ハッハハハハハ!!」
体格の良い女性は大きな声で笑うと後ろをついていく赤髪ポニーテールの女子高生
方を振り返った。
「それに気になるだろ、ついに完成したお前のドライバー。」
体格の良い女性が笑みを浮かべながらそう言うと赤髪ポニーテールの女子高生は瞳をキラキラと輝かせ笑顔でうなずいた。
「はい!」
「なんで俺がこんな目にッ!あ~クソ!」
彼は2日前に神奈川で起こったメモリスの事件の被害者でありメモリスを出した少年を虐めていたグループのリーダーだった。自分の腕と脚に巻かれた包帯を見つめるたび舌打ちをする。この怪我が治ったら少年は学校に通えるが元の学校生活は送れない。教師と親そして全校生徒にもイジメをしていた事がバレてしまっているからだ。
「アイツのせいだ....アイツのせいで俺の人生.......!」
「悩んでいるようですね?」
「あ?」
声がした方に振り返ると骸骨の姿をした怪人が1人立っていた。
「ワァァァァァアア!!」
少年は目の前にいる異形に怯え驚きナースコールをしようとするが骸骨の怪人はその手を静止させる。
「おっと落ち着いてください。私は貴方を救いに来た死神です。」
「はっはぁはぁ.....は?」
骸骨の怪人は腰から一つのメモリカセットを取り出した。
「そっそれって.......」
「ご存じですね。残念ですが貴方には幸せな未来は来ません。ですが他人の今を壊すことはできます。みんな仲良く巻き込んで不幸になりましょう。」
骸骨の怪人は甘く少年の耳元で囁く。それを聞いた少年は少しずつ笑みになる。胸が高鳴っていくのを感じた。少年は骸骨の怪人からメモリカセットを受け取り頭に当てる。すると頭からフィルムが大量に出て人の形を形成していく。
「ギぃぁアしュガァァ!!」
白い体から何本もの触手がウニョウニョと動く。
「イカのメモリスですか.....これはまた面白い。」
「すげぇ化け物だ!よし暴れてこい!!」
「いいえ暴れるのは貴方ですよ。」
「どういう事だよ!」
骸骨の怪人は少年が持っている白いメモリカセットを奪うとイカのメモリスの額に当てる。ドンっという音と共にイカのメモリスの額が光り始めた。骸骨のメモリスは次に少年の額にメモリカセットをドンっと押しつけた。
ドックン!
「ぁああぁぁあぁぁぁぁぁあぁぁぁぁあぁぁああああ!!?!?!?」
イカのメモリスの身体が再びフィルムに戻り少年の身体へと巻きついていく。数秒で繭のような形状になり次の瞬間、中から先ほどのイカのメモリスとは違う姿をしたメモリスが現れた。
「なっナンダこれ......俺ノ姿が!?」
メモリスが自分の顔や手を何度も触り近くにあった鏡で姿を確認する。隣にいた骸骨のメモリスはパチパチと拍手をした。
「おめでとう君は人間がメモリスを吸収した存在「メモリスト」になったんだ。これで君は私とお揃いだ。」
「すげぇすげえすゲェスげェ!!力が溢れてくる!ケガも治ッてる!暴れタクテ仕方ネェ!?!うァァァァァァァァァァァアア!!」
少年だったイカのメモリストは身体中から生えた触手を使い部屋の壁や物を壊していく。骸骨の怪人はニヤニヤしながらどこかへと消えてしまった。
「まずハこの病院だ!ココにいる奴ら全員不幸ニしてヤル!」
イカのメモリストは病室のドアを破壊する。廊下にいた患者や看護師が衝撃に驚くと病室から出てきたイカのメモリストに恐怖し怯え叫ぶ。
「キャァァァァァァアア!!」
「なっなんだコイツ!!?」
「助けてー!!」
逃げ惑う人々を見てイカのメモリストは笑いが止まらない。
「ぁつハあはハハはハハ!!!そうだもっト泣け!サケべ!俺は弱いヤツが怯えテル姿が一番好キだぜ!」
バン!!
「あ?」
銃声が鳴り響き1発の弾丸がイカのメモリストの肩に命中する。銃を構えているのは進助だった。
「なんでメモリスがここに!!クソ!やっぱり旧式のレーテガンじゃかすり傷にしかならないか!」
「痛えなオイ!!」
イカのメモリスは怒り身体の触手を進助めがけて数本伸ばす。進助は逃げようとするが車椅子が思ったように動かない。
「クッ!」
「危ない!!」
エヴォークスマッシュ!!!
進助の眼の前にユーアが現れイカのメモリストが伸ばした触手を回し蹴りで弾き返す。触手はすぐに引っ込んでいった。
「大丈夫ですか進助さん!」
「ナイスタイミングだぞ後輩!」
「痛ぇ!クソが!!」
イカのメモリストは触手を器用に動かし窓を叩き割って吸盤を使って壁をよじ登り外へ逃げた。ユーアはすぐに追いかけようと腰につけたホルダーから赤いメモリカセットを取り出そうとしたその時だ。
「ユウ?ユウ!ねぇ返事して!!」
声がするほうを振り返ると子供を何度も泣きながら声をかけていた。男の子は腹部から出血しており変身ヒーローが描かれた白いTシャツは赤く滲んでいた。先ほどのメモリスが暴れた時に割れたガラスが刺さってしまったのだろう。すぐに看護師と宝条先生が駆けつけた。
「まずい、これは内臓に届いている。すぐに手術をしなければ.......ストレッチャーを!!必ず救う!」
「はい!!」
「ユウ!ユウ!」
「...........」
その様子を見ていたユーアは拳を強く握った。仮面で彼女が今どんな表情をしているのか分からないが予想はつく。
「後輩!これを使え、君がここに来る事を予想してルナ?っていうやつから預かっていた。」
進助は腰のポケットから黄緑色のメモリカセットをユーアに手渡した。
「ありがとうございます。あのメモリス止めてきます。」
ユーアはお礼を言うと赤いメモリカセットをセットしてホイールを3回回し鷹のヒーローの姿に変身するとイカのメモリストを追いかけ割られた窓から飛んでいった。飛んでいった姿を見送った進助はスマホを取り出す。
「こちら詩島、東都大学附属病院にて事件発生。.......いやあれはメモリスじゃない。メモリストだ。すぐに応援を頼む。」
ピッ
「..........」
飛行をしているユーアはすぐに屋上にいたイカのメモリストを見つけ急降下し炎の球を撃つ。
バン!バン!バン!
「アッつ!!あ?これはヒーローさん今日はドウしたの?」
「貴方を止めに来た。メモリスだからって人の命を.....」
「ハッハハ!!俺は人間だゼ!」
「..........は?」
「俺はなメモリストっていう奴なんだよ!メモリスの力を使って暴れてる人間だ!」
屋上に着地したユーアは赤いメモリカセットをドライバーから取り外し変身を解除する。メモリストの話はユキタカから聞いていた。メモリスの宿主が自身のメモリスを吸収して自由に力を使える存在だ。
「じゃあ余計分かんないよ。なんで同じ人間なのに人の命を何とも思わないで傷つけるの?」
「俺は人に傷つけラレタ、だから幸せそうに脳天気に生キル他人を傷つける!!俺にはその権利ガアル!ハッハハハハハ!!!」
「..........」
ユイアはこの時ユキタカから日頃言われている言葉を思い出していた。「感情的になるな、冷静に判断しろ。」隊長としてのユキタカの言葉が何度も脳内復唱される。
「大丈夫、まだ冷静に判断できる。」
ユイアはそう言いながら腰のホルダーにつけていた黄緑色の忍者のメモリカセットを取り出した。かなりの握力で握り締めている。普段よりも強い勢いでドライバーにセットする。後ろに画面が現れ画面の中から黄緑色の忍者の姿をしたヒーローが飛び出し屋上を飛び回り始めた。
ユイアはホイールを回転させる。
3!
「大丈夫」
2!
「大丈夫...」
1!
「絶対許さないから......変身」
ヒーローアップ!今宵は使命!参るは救命!シノビ!!
歌舞伎のような変身音とししおどしのような音が鳴り響きユイアの身体に黄緑色のアーマーが装着されていく。
「なんだそのフザケた姿は!?」
「.......命を守るぜ」
ユーアはそう言うと手を開く。するとそこに風が集まり手裏剣の形を形成する。それをイカのメモリストに向けて勢いよく投げ飛ばす。
シュッ!
投げられた手裏剣をイカのメモリストは触手で防ごうとするが一瞬に触手を切り落とされてしまう。
「ギャァァァァアア!!」
ユーアは次々と手裏剣を生成し投げ飛ばす。そしてどんどん触手を切り落としていく。切り落とされるたびにイカのメモリストは悲鳴をあげるがその声は決してユイアに届かない。
「いてぇ.....なんてな!」
切れた触手の断面から新しい触手が再生される。全ての触手を一瞬で再生させるとユーアめがけて全ての触手を振り下ろす。
ドガァァァァアン!!!
「潰れたナ」
触手を上げるとそこには潰れたユーアの姿はなく一本の腰掛けるのにちょうどいい丸太が代わりに潰されていた。
「何ィ!?どこイッタ!」
目線を下に向けていたイカのメモリストは上を見上げる。そこには十数人に分身したユーアが大きな手裏剣を構えイカのメモリストを囲んでいた。
「あっああア.......」
「「「「「ハッ!!!!!!!」」」」」
十数人のユーアが一斉に大きな手裏剣を投げ飛ばし全ての触手を切り落とすと本体だけが残り他の分身達はドロン!という音を立て煙になって消えてしまった。イカのメモリストはすぐに再生をしようとする。
「コンテニューなんてさせない!これで終わりだ!!!」
ユーアはホイールを3回回転させる。右足に緑色の風のようなオーラを纏いイカのメモリストに向かって蹴りを放つ。
「やめロぉぉぉぉおお!!!」
「ハァァァアァァァァアア!!!」
シノビ!エヴォークスマッシュ!!!
ドガァァアァァァァァァァァァアァン!!!!!!!
イカのメモリストは爆散し屋上には倒れた少年の姿があった。気を失っているが怪我をしている様子はない。ユーアは着地すると少年の元へ歩き始めた。
「!!」
ユーアは後ろからの攻撃に気づき瞬時に右に避けた。後ろを振り向くと骸骨の怪人の姿があった。
「ゴースト........」
「おや?覚えていてくれたのですか?嬉しいですね~」
「貴方がこの子をたぶらかしたの?」
「言い方悪いですね。助言と言ってほしい。」
ゴーストは少年の元まで近づき少年が握っていた白いイカのメモリカセットを奪い取った。少年は目を覚ましゴーストの脚を掴む。
「おい....待てよ....俺を救ってくれよ.....頼むよ..な?」
「ふっ、ゴミが私に触らないでください。」
ゴーストは少年の腕を蹴り少年の怪我した方の腕を何度も踏みつけた。その様子を見たユーアはすぐに走り出しゴーストめがけて蹴りを入れようとするがゴーストは霧となって消えてしまう。
「当たりませんよ。そんな攻撃。」
声がする方へ振り返るとベンチにゴーストは座っていた。
「メモリストは役に立ちませんでしたがこのメモリカセットには使い道がある。有意義に使わせていただきますよ。」
ゴーストはそう言うと姿を完全に消してしまった。
数分後レーテの隊員達が到着し少年は身柄を拘束させられた。幸い被害は病院内だけだったが軽傷者が7名、重傷者が1名。ユイアはすぐにあの子供がどうなったのか心配になり手術室の方へ向かった。ユイアが着いた時にはちょうど手術が終わったのか宝条先生と子供の母親が話していた。
「無事手術は成功しました。」
「先生ありがとうございます!!」
母親は泣きながら何度もお辞儀する。
「いえ、では僕はこれで。」
「待ってください!」
宝条先生は立ち去ろうとするが母親はそれを止める。
「宝条先生......ですよね?」
「えぇそうですが」
「私の事覚えていますか?」
「............まさか君はあの時の!」
その母親はかつて助けることができなかった少年の妹だった。かなり成長しているがどこか面影が残っており顔を数秒見つめただけですぐに分かった。
「はい。」
「本当にすまなかった!僕は幼い君にお兄さんの事で嘘をつき傷つけてしまった!」
宝条先生は深く頭を下げる。母親は泣きながら首を横に振る。
「謝らないでください。先生は悪くなんてありません。それに貴方は私の息子を救ってくれた。先生は本当の医者です。ありがとうございます。」
その言葉を聞いて宝条先生の瞳から涙が溢れ出る。彼女の言葉で何かから解放された気がした。泣いている2人を少し遠くから眺めていたユイアは少し微笑むと廊下を戻っていった。
「良かった。」
少年の身柄を確保したレーテの隊員達とユキタカが話していると後ろから車椅子に乗った進助がやってきた。
「お疲れ。」
「進助、大丈夫か?」
「あぁ俺は大丈夫だ。それより問題はどうしてメモリスの奴らにここに2日前の事件の関係者がいるって事がバレたのかだ。」
「この病院で入院していたことは警察と俺達レーテしか知らないはずだ。」
「俺が何を言いたいか分かるか?」
「.........考えたくない。」
「警察とレーテそのどちらかにメモリスと繋がっている内通者がいる。」
「この事は今回の集合会議で話そう。」
「集合会議って事は如月も来るのか?」
「そうだ、明日神奈川から来る予定だ。」
東京駅にて
「着いたー!!!」
改札を抜け赤いレンガの外装をした東京駅から茶髪ロングの体格の良い女性と赤髪ポニーテールの女子高生がキャリーケースを転がしながら出てきた。
「師匠本当に今日来て良かったんですか?大事な会議って明日なんですよね?」
「大丈夫大丈夫!今日も明日も変わんないし!今日は東京観光と行こうじゃねぇか!ハッハハハハハ!!」
体格の良い女性は大きな声で笑うと後ろをついていく赤髪ポニーテールの女子高生
方を振り返った。
「それに気になるだろ、ついに完成したお前のドライバー。」
体格の良い女性が笑みを浮かべながらそう言うと赤髪ポニーテールの女子高生は瞳をキラキラと輝かせ笑顔でうなずいた。
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