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第13話「守るべきLife」

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【東都大学附属病院とある病室】


包帯を巻いた1人の少年がベッドの上で起き上がり、何度も机を叩いて苛立っている。

「なんで俺がこんな目にッ!あ~クソ!」

彼は2日前に神奈川で起こったメモリスの事件の被害者であり、メモリスを出した少年を虐めていた少年グループのリーダーだった。自分の腕と脚に巻かれた包帯を見つめるたび舌打ちをする。この怪我が完治すると少年は学校にまた通えるようになるが元の学校生活は送れないだろう。なぜなら、教師と親そして全校生徒にもイジメをしていた事がSNSなどのメディアによってバレてしまっているからだ。

「アイツのせいだ....アイツのせいで俺の人生......!」

「悩んでいるようですね?」

「あ?」

少年が声がするほうを振り返ると骸骨の姿をした怪人が1人、少年の顔を見つめていた。

「ワァァァァァアア!!」

少年は目の前にいる異形に怯え驚き、ナースコールをしようとするが骸骨の怪人はその手を優しく触れて静止させる。

「おっと落ち着いてください。私は貴方を救いに来た死神です。」

「はっ....はぁはぁ.....は?」

骸骨の怪人はどこからか一つのメモリカセットを取り出した。

「そっそれって.......」

「ご存じですね。残念ですが....貴方には幸せな未来は来ません。ですが他人の今を壊すことはできます。みんな仲良く巻き込んで不幸になりましょう。」

骸骨の怪人は甘く少年の耳元で囁く。それを聞いた少年は少しずつ笑みを浮かべる。破滅への片道切符だと分かっていたが、少年は胸が高鳴っていくのを感じた。骸骨の怪人からメモリカセットを受け取り、すぐに頭に当てる。すると頭からフィルムが大量に出て人の形を形成していく。

「ギぃぁアしュガァァ!!」

白い体から何本もの触手がウニョウニョと動く。

「イカのメモリスですか.....これはまた面白い。」

「すげぇ化け物だ!よし暴れてこい!!」

「いいえ暴れるのは「貴方」ですよ。」

「はぁ?どういう事だよ!」

骸骨の怪人は少年が持っている白いメモリカセットを奪うとイカのメモリスの額に当てる。ドンっという音と共にイカのメモリスの額が光り始めた。骸骨のメモリスは次に少年の額にメモリカセットをドンっと押しつけた。

ドックン!

「ぁああぁぁあぁぁぁぁぁあぁぁぁぁあぁぁああああ!!?!?!?」

心臓の鼓動が徐々に速くなっていく。身体が熱い。イカのメモリスの身体が再びフィルムに戻り少年の身体へと巻きついていく。数秒で繭のような形状になり次の瞬間、中から先ほどのイカのメモリスとは違う姿をしたメモリスが現れた。

「なっナンダこれ......俺ノ姿が!?」

メモリスが自分の顔や手を何度も触り、近くにあった鏡で姿を確認する。隣にいた骸骨のメモリスはパチパチと拍手をした。

「おめでとう君は人間がメモリスを吸収した存在「メモリスト」になったんだ。これで君は私とお揃いだ。」

「すげぇすげえすゲェスげェ!!力が溢れてくる!ケガも治ッてる!暴れタクテ仕方ネェ!?!うァァァァァァァァァァァアア!!」

少年だったイカのメモリストは身体中から生えた触手を使い部屋の壁や物を壊していく。骸骨の怪人はニヤニヤと不敵な笑みを浮かべ、どこかへと消えてしまった。

「まずハこの病院だ!ココにいる奴ら全員不幸ニしてヤル!」

イカのメモリストは病室のドアを破壊する。廊下にいた患者や看護師がドアが破壊された衝撃に驚いたのも束の間、病室から出てきたイカのメモリストに恐怖し怯え叫び始める。

「キャァァァァァァアア!!」

「なっなんだコイツ!!?」

「たっ助けてくれー!!」

逃げ惑う人々を見てイカのメモリストは笑いが止まらない。

「ぁつハあはハハはハハ!!!そうだもっト泣け!サケべ!俺は弱いヤツが怯えテル姿が一番好キだぜ!」

バン!!

「あ?」

銃声が鳴り響き1発の弾丸がイカのメモリストの肩に命中し肩から煙を上げる。銃を構えているのは車椅子に乗った進助だった。

「なんでメモリスがここに!!クソ!やっぱり旧式のレーテガンじゃかすり傷にしかならないか!」

「痛えなオイ!!」

イカのメモリスは怒り身体の触手を進助めがけて数本伸ばす。進助は逃げようとするが車椅子が思ったように動かない。

「クッ!」

「危ない!!」



エヴォークスマッシュ!!!



進助の眼の前に突然ユーアが現れ、イカのメモリストが伸ばした触手を回し蹴りで弾き返す。触手はすぐにイカのメモリストへと引っ込んでいった。

「大丈夫ですか進助さん!」

「ナイスタイミングだぞ後輩!」

「痛ぇ!クソが!!」

イカのメモリストは触手を器用に動かし窓を叩き割ると吸盤を使って壁をよじ登り外へ逃げた。ユーアはすぐに追いかけようと腰につけたホルダーから赤いメモリカセットを取り出そうとしたその時だ。


「ユウ?ユウ!ねぇ返事して!!」



声がする方へ振り返ると母親が子供に何度も泣きながら声をかけていた。男の子は腹部から出血しており変身ヒーローが描かれた白いTシャツは赤く滲んでいた。先ほどのメモリスが暴れた際に割れたガラスが刺さってしまったのだろう。すぐに看護師と宝条先生が駆けつけた。

「まずい、これは内臓に届いている。すぐに手術をしなければ.......ストレッチャーを!!必ず救うぞ!」

「はい!!」

「ユウ!ユウ!」

「...........」

その様子を見ていたユーアは拳を強く握り締めた。仮面のせいで彼女の表情は読み取れないが動作一つ一つで感情が読み取れる。

「後輩!これを使え、君がここに来る事を予想してルナ?っていうやつから預かっていた。」

進助は腰のポケットから黄緑色のメモリカセットをユーアに手渡した。

「ありがとうございます。....あのメモリス止めてきます。」

ユーアはお礼を言うと赤いメモリカセットをセットしてホイールを3回回し鷹のヒーローの姿に変身するとイカのメモリストを追いかけ、割られた窓から飛んでいった。飛んでいく姿を見送った進助はスマホを取り出す。


「こちら詩島、東都大学附属病院にて事件発生。.......いやあれはメモリスじゃない。メモリストだ。すぐに応援を頼む。」


ピッ

「..........」







飛行するユーアはすぐに屋上で人々を触手を使い攻撃をしようとするイカのメモリストを見つけ急降下し炎の球を撃つ。

バン!バン!バン!


「アッつ!!あ?これはヒーローさん今日はドウしたの?」

「貴方を止めに来た。メモリスだからって人の命を.....」

「ハッハハ!!俺は人間だゼ!」

「..........は?」

「俺はなメモリストっていう奴なんだよ!メモリスの力を使って暴れてる人間様だ!」

屋上に着地したユーアは赤いメモリカセットをドライバーから取り外し変身を解除する。メモリストの話はユキタカから聞いていた。メモリスの宿主が自身のメモリスを吸収して自由に力を使える存在だ。

「じゃあ余計分かんないよ。なんで同じ人間なのに人の命を何とも思わないで傷つけるの?」

「俺は人に傷つけラレタ、だから幸せそうに脳天気に生キル他人を傷つける!!俺にはその権利ガアル!ハッハハハハハ!!!」

「..........」

ユイアはこの時ユキタカから日頃言われている言葉を思い出していた。

「感情的になるな、冷静に判断しろ。」

隊長としてユキタカが言ったその言葉が何度も脳内で復唱される。


「大丈夫、まだ冷静に判断できる。」


ユイアはそう言いながら腰のホルダーにつけていた黄緑色の忍者のメモリカセットを取り出した。かなりの握力で握り締めているのか少しメモリカセットが揺れている。普段よりも強い勢いでドライバーに装填すると後ろに画面が現れ、画面の中から黄緑色の忍者の姿をしたヒーローが飛び出し屋上を飛び回り始めた。


ユイアはホイールを勢いよく回転させる。

3!

「大丈夫」

2!

「大丈夫...」

1!

「絶対、許さないから......変身」




ヒーローアップ!今宵は使命!参るは救命!シノビ!!




歌舞伎のような変身音とししおどしのようなBGMが鳴り響きユイアの身体に黄緑色のアーマーが装着されていく。

「なんだそのフザケた姿は!?」

「.......命を守るぜ」

ユーアはそう言うと手を開く。手のひらに風が集まり大きな手裏剣のような形を形成していく。それをイカのメモリストに向けて勢いよく投げ飛ばした。


シュッ!


投げられた手裏剣をイカのメモリストは余裕そうに触手で防ごうとするが一瞬で触手を切り落とされてしまう。


「ギャァァァァアア!!」


ユーアは次々と手裏剣を生成し投げ飛ばす。そしてどんどん触手を切り落としていく。切り落とされるたびにイカのメモリストは悲鳴をあげるがその声は決して今のユイアに届かない。

「いてぇ、いてぇよ.....なんてな!」

切れた触手の断面から新しい触手が再生される。全ての触手を一瞬で再生させるとユーアめがけて全ての触手を振り下ろす。

ドガァァァァアン!!!

「潰れたナ」

触手を上げるとそこには潰れたユーアの姿はなく一本の腰掛けるのにちょうどいい丸太が代わりに潰されていた。

「何ィ!?どこイッタ!」

目線を下に向けていたイカのメモリストは上空から音が聞こえることに気づき、上を見上げる。そこには十数人に分身したユーアが大きな手裏剣を構えイカのメモリストを囲んでいた。


「あっああア.......」

「「「「「ハッ!!!!!!!」」」」」


十数人のユーアが一斉に大きな手裏剣を投げ飛ばし全ての触手を切り落とすとユーアの分身達はドロン!という音を立て煙になって消えてしまった。イカのメモリストはすぐに再生をしようとする。

「コンテニューなんてさせない!これで終わりだ!!!」

ユーアはホイールを勢いよく3回回転させる。右足に緑色の風のようなオーラを纏いイカのメモリストに向かって蹴りを放つ。



「やめロぉぉぉぉおお!!!」



「ハァァァアァァァァアア!!!」



シノビ!エヴォークスマッシュ!!!


ドガァァアァァァァァァァァァアァン!!!!!!!



イカのメモリストは爆散し屋上には倒れた少年の姿があった。気を失っているが怪我をしている様子はない。ユーアは着地すると少年の元へ歩き始めた。

「!!」

ユーアは後ろからの攻撃に気づき瞬時に右に避けた。後ろを振り向くと骸骨の怪人の姿があった。

「ゴースト........」

「おや?覚えていてくれたのですか?嬉しいですね~」

「貴方がこの子をたぶらかしたの?」

「言い方が悪いですね。助言と言ってほしい。」

ゴーストは少年の元まで近寄ると少年が握っていた白いイカのメモリカセットを奪い取った。少年はまぶたを開き、震えた手でゴーストの脚を掴む。

「おい....待てよ....俺を救ってくれよ.....頼むよ..な?」

「ふっ、ゴミが私に触らないでください。」

ゴーストは少年の腕を蹴り、少年の怪我した方の腕を何度も踏みつけた。ユーアはすぐに走り出しゴーストめがけて蹴りを入れようとするがゴーストは霧となって消えてしまう。

「当たりませんよ。そんな攻撃。」

振り返るとベンチにゴーストは足を組んで座っていた。

「そのメモリストは役に立ちませんでしたがこのメモリカセットには使い道がある。有意義に使わせていただきますよ。」

ゴーストはそう言うとユーアに軽く手を振り、姿を完全に消してしまった。








数分後、レーテの隊員達が到着し少年は身柄を拘束させられた。幸い被害は病院内だけだったが軽傷者が7名、重傷者が1名。ユイアはすぐにあの子供がどうなったのか心配になり手術室の方へ向かった。ユイアが着いた時にはちょうど手術が終わったのか宝条先生と子供の母親が話していた。

「無事手術は成功しました。」

「先生ありがとうございます!!」

母親は泣きながら何度もお辞儀する。

「いえ、では僕はこれで。」

「待ってください!」

宝条先生は立ち去ろうとするが母親はそれを止める。

「宝条先生......ですよね?」

「えぇそうですが」

「私の事覚えていますか?」

「............まさか!」

その母親はかつて助けることができなかった少年の妹だった。かなり成長しているがどこか面影が残っており顔を数秒見つめただけですぐに分かった。

「はい。」

「本当にすまなかった!僕は幼い君にお兄さんの事で嘘をつき傷つけてしまった、私はそのことをずっと後悔していたんだ!」

宝条先生は深く頭を下げる。母親は泣きながら首を横に振る。

「謝らないでください。先生は悪くなんてありません。それに貴方は息子の命を救ってくれた。先生は本当の医者です。ありがとうございます。」

その言葉を聞いて宝条先生の瞳から涙が溢れ出る。彼女の言葉で自分を縛っていた何かから解放された気がした。泣いている2人を遠くから眺めていたユイアは少し微笑むと廊下を戻っていった。


「良かった。」






少年の身柄を確保したレーテの隊員達とユキタカが話していると後ろから車椅子に乗った進助がやってきた。

「お疲れ。」

「進助、大丈夫か?」

「あぁ俺は大丈夫だ。それより問題はどうしてメモリスの奴らにこの病院に2日前の事件の関係者がいるって事がバレたのかだ。」

「この病院で入院していたことは警察と俺達レーテしか知らないはずだ。」

「俺が何を言いたいか分かるか?」

「.........考えたくない。」

「警察とレーテそのどちらかにメモリスと繋がっている内通者がいる。」

「....この事は今回の集合会議で話そう。」

「集合会議って事は如月のやつも来るのか?」

「そうだ、明日神奈川から来る予定だ。」







【東京駅にて】

「着いたー!!!」

改札を抜け、赤いレンガの外装をした東京駅から茶色い長い髪の体格の良い女性と赤髪ポニーテールの女子高生がキャリーケースを転がしながら出てきた。

「師匠、本当に今日来て良かったんですか?大事な会議って明日なんですよね?」

体格の良い女性はスマホで近くの美味しいお店を検索し始める。」

「大丈夫大丈夫!今日も明日も変わんないし!今日は東京観光と行こうじゃねぇか!おっ!この近くにラーメン屋があるってよ!」

体格の良い女性は大きな声で笑うと後ろをついていく赤髪ポニーテールの女子高生
方を振り返りスマホの画面を見せる。そこにはユイアが巻いているユーアドライバーとは別の「赤色のドライバー」が映っていた。

「それに気になるだろ、やっと完成したお前の「ドライバー」のこと!」

体格の良い女性が笑みを浮かべながらそう言うと赤髪ポニーテールの女子高生は瞳をキラキラと輝かせ笑顔でうなずいた。

「はい!」









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