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第10話「Wに乗せて/切り札はいつも」

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「避難完了致しました。」

「容疑者は捕まえたか?」

「いえ!現場から逃亡したようで現在捜索中です!」

レーテの隊員達の誘導によって学校内に残っていた教師やヒビキ達は学校から少し離れた安全な場所まで避難をする事ができた。学校の方を見るとグラウンドの方から爆風と激しい爆発音がここからでも聞こえてくる。


ドガァァァァアン!!!


「ユイア達大丈夫かな.......」

「うん....」

2人がユイアの心配をしているとそこにルナが飛んでやってきた。手には水色のメモリカセットを持っている。

「おーいお前らー!」

「あ、えーっとルナ....だよね?」

「ユイアのマスコットキャラ!」

「誰がアイツのマスコットだ!!ちょうどアイツに頼まれてたメモリカセットの調整が終わったから渡したいんだが.......この軽い体じゃあんな爆風に巻き込まれたら吹っ飛んじまう。」

「だっ....だったら私達が渡しに行くよ!」

ヒビキがそう提案するがルナは全力で首を振る。

「一般人を巻き込めるかよ!」

「親友が命かけて戦ってるのに安全な場所でただじっとしてるだけなんてできないよ!」

「お願いルナ!」

2人は何度も頭下げる。それを見たルナは頭をかきながら嫌そうな顔をするが水色のカセットをヒビキに手渡した。

「あーもうしらねぇ!勝手に行ってこい!その代わりに危ないから投げて渡せ!渡したらすぐ戻ってこいよ!」

「「ありがとうルナ!!!」」



【校内・グラウンドにて】

学校の方ではユキタカとユーアがヘビのメモリスと交戦をしていた。人のような形をしていたメモリスは徐々に姿を変え、数分で体長50メートルを超える巨体のヘビの化け物になってしまっていた。

「なんかこのメモリス大きくなってないですか!?」

「このままでは被害が広がってしまう。」

「うん、校舎や住宅街には絶対近づけさせない!」

ユーアはドライバーからピンク色のメモリカセットを取り外し、腰のホルダーから取り出した赤いメモリカセットと入れ替えドライバーに装填しホイールを回転させる。

3!
2!
1!

ヒーローアップ!


赤き熱風!掴む明日!ホーク!!You are HERO!!


ヒーローフォームの装甲が外れ、新たに赤色のホークフォームの装甲が体に装着された。背中から生えた赤い翼を使い天高く舞い上がると炎の球を次々と巨大化したヘビのメモリスにぶつけていく。

ドン!ドンドンドン!

「シャァあぁあァアァァア!!!」

効果はあったがヘビのメモリスは興奮し先ほどよりも凶暴になってしまった。そして次の瞬間、頭部を地面の中へと水の中に入るように潜っていった。

「ヤツが潜った瞬間、地面が液状になったぞ!」

「地面の中を水の中みたいに潜れるの!?もしかしてただのヘビじゃなくてウミヘビ!?!」

「日代!後ろだ!」

ユキタカがユーアに向かってそう言い放った瞬間に後ろの地面から首を出したウミヘビのメモリスが首を使いユーアを弾き飛ばす。

ドォォォオン!!!

「ぐあッ!」

弾き飛ばされたユーアはグラウンドに強く叩きつけられてしまった。

「大丈夫か日代!」

「大丈夫......です.....たぶん!」

ユーアは腕を押さえながらなんとか立ち上がる。すると後ろの方から誰かが走って来る音がして振り返るとヒビキとアサヒの姿があった。

「「ユイア!!!」」

「2人とも.......なんで!」

「これ!」

ヒビキが右手に持っていた水色のメモリカセットをユーアにめがけて思いっきり投げる。そして飛んできたメモリカセットをユーアはすぐにキャッチした。

「これって.....サメのメモリカセット.......なんで2人が!?!」

2人の方を見ると息切れをしながらニッと笑い親指を立てサムズアップをする。

「2人とも....届けてくれてありがとう!!よーーーしテンション上がってきたぜ!」

「「ユーア!!やっちゃえー!!」」

ユーアはドライバーに装填していた赤いメモリカセットを取り外し、腰のホルダーに戻すと手に持っていた水色のメモリカセットを装填した。すると後ろに画面が出現し画面の中から水色と青色の2人のヒーローが飛び出してきた。

「うわ!2人いる!?」

ユーアはドライバーのホイールを3回回転させる。

3!
2!
1!

ヒーローアップ!

竜巻が巻き起こり周囲の物を巻き上げながら2人のヒーローはバラバラにそれぞれが右半身と左半身に装着され最後に顔が装着された。


双頭が巻き起こす!切り裂く!シャーク!!You are HERO!!


背中からでた2本の尾びれのようなマフラーが風にたなびく。ウミヘビのメモリスは口から勢いよくユーアめがけて水を吐き出すが両腕から生えた鋭利なヒレで真っ二つに切り裂いた。切り裂かれた水の塊が夕立のように降り注ぐ。

「シャァあぁアァアぁあァあアァア!!」

ウミヘビのメモリスは再び地面の中へと潜っていく。

「また地面に潜ったぞ!」

「私が引きずり出してきます!ユキタカさんは出た瞬間にコレを使って切ってください!」

ユーアは腰につけたホルダーから赤いメモリカセットを取り外し、ユキタカに渡すとウミヘビのメモリスと同じように地面の中に潜っていった。

ドバン!

「お前も潜れるのか......」

潜った地面の中はメモリスの影響で水中のようになっているが暗く何も見えない。まるで光の届かない深海のようだ。しかし、シャークフォームの微弱な電気を感じ取る能力で水中でも敵の位置を把握することができるようになり、すぐにメモリスの位置を特定した。

「いた!」

ユーアはホイールを3回回転させると勢いよく泳ぎ始める。次の瞬間、水中で渦が発生し巨体のメモリスが渦に飲み込まれてしまう。ユーアは泳ぎながらその渦に上手く乗ると渦と共に回転をしながらヒレを使いメモリスを切り裂いていく。そして渦の外へ飛び出すと腕に装着されているヒレの装甲が外れ両足に装着される。

「いくぜ!ハァァアアアアア!!!!」


シャーク!エヴォークスマッシュ!!


両足を突き出しメモリスに向かって勢いよくキックをする。そしてその勢いで地上へと飛び出してしまったメモリスが最初に見たのは全エネルギーを刀身に纏った剣を構えるユキタカの姿だった。

「今ですユキタカさん!」

「任せろ!!」

刀にはユーアから渡された赤いメモリカセットが装填されており、赤い炎を纏った刀身を飛び出したメモリスにめがけて振る。


鷹の熱風!一心斬り!!!


大きな炎の斬撃は巨大なメモリスの身体を真っ二つに切り裂きメモリスの叫び声と共に激しい爆風が空中で巻き起こった。



ドガァァァアァァァァァァァアアアァァアァアァァン!!!!!!



「やったー倒した!!」

「よくやったぞ日だ....」


ユキタカがユーアに近づこうとしたその時だ。



「ヒビキ!!!!」



アサヒの悲鳴に近いような大きな声がして、すぐに2人は振り返る。そこにはヒビキを人質にとった容疑者の成海の姿があった。右腕でヒビキの首を押さえつけ左手にはカッターナイフを持っている。

「動かないで!!!これ以上近づくとこの子の首をカッターナイフで切る!」

「やめ.....て......先生.....苦しい....」

「先生....」


「先生....やめてください。これ以上罪を増やさないでください、お願いします.....ヒビキを離してください!」

「うるさいうるさい!!!これ以上罪を増やさないでください?私の弟を殺したアイツらは罪に問われずのうのうと生きてたのよ!?私から家族を幸せを奪ったアイツらは!!だったら他の奴らから私も幸せを奪ってやる!」

「ダメですよ.....そんなことをしたら他の人も先生と同じように考えるようになっちゃって結局誰も幸せになれなくなる!!お願いしますヒビキを離してください。お願いします。」

この時ユイアは震えた声で仮面の下で涙を流して成海に訴えたが、ユイアの言葉や表情は彼女に決して届かなかった。


「1人も2人も変わらないわよ!!ここでこの子も道連れに!!」


「オイ」

「誰!」

成海が振り返るとそこには黒い狼のようなアーマーを装着した何者かが立っていた。体には緑色のラインが入っており緑色の複眼が彼女を見つめ、次の瞬間に彼女の左腕を強く掴みカッターナイフを落とさせ思いっきり身体に蹴りを入れた。

「ぐっ!!」

「面倒ゴトヲ増ヤスンジャナイ」

成海を人質にしていたヒビキを突き放しそれをアサヒが抱き寄せた。

「ヒビキ!」

「黒い....ヒーロー......?」

その姿を見たユキタカが睨みつけ、刀を構える。

「ゆっユキタカさん?」

「ハンターだ。」

「ハンター?」

「俺達がメモリスと交戦をしていると突如現れ、メモリスを倒すと共に俺達から押収したメモリカセットを奪って逃走する正体不明の存在「ハンター」!俺達レーテの敵だ!」

「ズイブンナ言ワレヨウダナ。ダガ用ハ済ンダ。」

男性なのか女性の声なのかも分からない合成した声でそう言うと成海が持っていたメモリカセットを奪った。

「ウミヘビカ....」

「待て!」

ハンターは右腕に装着した爪形状の武器のレバーを引く。引くと同時に3本の爪が引っ込み音楽が鳴り始め再びレバーを押すと緑色のオーラを纏った爪が飛び出した。


ハンティングエッジ!!!


2人めがけてその爪を使い斬撃を放つ。それをユーアは腕のヒレでユキタカは刀で防ぐ事に成功し、ハンターがいた場所に向かって走り出すがもうすでにそこにはハンターの姿はなかった。

「逃したか....」

「ヒビキ!!」

ユイアは変身を解除すると、すぐに倒れたヒビキの元へ駆け出した。

「ユイ.....ア...ごめん....ね」

「謝らなくていいから!!!今救急車呼ぶから!!」

「私....ユイアの役に立ちたくて.....でもそれでユイアの迷惑かけちゃって....こんなの親友....失格だね......」

「そんな事ないよ!!ヒビキもアサヒも私にとって大切な親友!一緒にいてくれるだけで幸せなの!!」

ユイアは涙を流しながらヒビキの顔を見つめた。ユイアの目からこぼれ落ちた温かい涙がヒビキの頬に落ちる。そして数分後には救急車が到着し、ヒビキは病院に運ばれていった。






「安心しろ日代。念のために今日は病院に入院するが至って問題はないそうだ。」

「うっうぅ......」

「それに明日は休校になるそうだ。この事件の後処理は俺が全部やっておくから明日は見舞いにでも行ってこい。」

ユキタカがそう言うとユイアは泣きながらうなづいた。ユキタカはグラウンドを眺めていた。部活などで使用するコートやゴールなどは破壊され、使えない状況だが校舎などの建物は破壊されていない。

「お前のおかげで学校や近くの住宅街を守ることができた。」

「でも....大切な親友を助けられなかったです。あの時あのハンターっていう人が来なかったら私、何もできずにヒビキにもっと辛い想いさせてた。」

「...........」

ユイアは目からこぼれる涙を手で拭った。

「ヒビキとアサヒは私にとって大切な存在なんです。」






中学2年生の時この街におばあちゃんと一緒に引っ越して来た。最初はクラスの女子達が興味本位で話しかけてきていたけど、やっぱりどこか距離を感じていた。これって友達なのかなと疑問に思いながら学生生活を送っていると、放課後の空き教室で1人の女子生徒と出会った。

空き教室で1人ギターの練習をする女子生徒。決して上手くはないが最後まで残って1人練習する彼女の姿が輝いて見えた私はこう思った。

この子と友達になりたい。

話してみたい。どんな子なのかもっと知りたい。そして1ヶ月後、勇気を振り絞って声をかけてみることにした。まさかあんなに緊張するとは思わなかった。そしてヒビキの次にアサヒと友達になって気付けば親友になっていた。



これからもずっとにいたい。絶対に守りたい。そのためならなんでもする。



ユイアが心の中でそう決意すると1人の生徒がユイアのそばにやってきた。

「日代さん。」

「園崎先輩。」

園崎はすぐに頭を下げた。

「今日はありがとう。この事件を解決してくれて。」

「.........やっぱり園崎先輩は佐々木先輩が犯人じゃないって分かっていたんですね。」

「当たり前だ。翔太がそんな事をするやつじゃないって事は僕が一番知っている、でも僕がこの事を知らされた時には部員全員に翔太が犯人だという噂と証拠の防犯カメラの映像が出回っていた。彼が無実であるという証拠は僕1人で見つけ出すのは難しいと思った。」

「だから私達を頼った。」

「あぁ翔太から君に助けられた事を聞いてね。君なら....いや君達と言うべきかな。無実の証拠と真犯人を見つけてくれると思ってわざと人が集まる場所で、もめごとを起こしたんだ。巻き込んで本当に申し訳ない。」

再び園崎は深く頭を下げた。

「頭を上げてください。でもそのおかげでこの事件を解決する事ができました。」

「あぁ、そうだ。もし君が日代を頼らなければメモリスを倒せず被害者は増える一方だっただろう。」


「おーーーい祐星!!!帰ろうぜ!!」


園崎が振り返るとそこには手を振る佐々木の姿があった。

「翔太。」

「行ってあげてください。」

「.......うん、君達のおかげで大切な相棒....親友とまた隣に立てそうだよ。本当にありがとう!」

そう言うと彼は親友の元へ走り出した。その背中を見送ったユイアは空を眺めていた。空はもう暗く日が落ち一番星が輝いている。

「親友.......明日のお見舞い、ココアと何買って行こうかな。」












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