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第8話「Wに乗せて/無実の証明」
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「ではまず事件の内容について説明します!」
「「はーい」」
ユイアはホワイトボードに貼られた数枚の写真を教師が使うような棒で指しながら解説を始める。残りの2人と千秋さんは飲み物を飲みながらそれを眺めていた。
「事件が発覚したのは今朝!朝練のために顧問の先生が部室を鍵を使って開けてみるとそこには変わり果てたラケットの姿が!」
ユイアが棒で指した写真には持ち手が折られ、ネットの部分がハサミで何本も切られた緑色のラケットが写っていた。
「そんな人が殺されたみたいな言い方しなくても.......これ、アサヒが撮ってきたの?」
「うん!この事件に関わってそうな人の写真と現場の写真とか~あと購買のおばちゃんとか?」
「なんで購買のおばちゃん.......」
ホワイトボードには笑顔でピースをする購買のおばちゃんの写真が貼られている。その横には学校の校内マップが大きく貼られておりユイアは次にその紙を棒で指した。
「私達の学校の運動部の部室は校舎とは別の建物にあって.......」
「一階は運動部が使う道具を置く部屋と体育科の先生達の部屋、二階がサッカー部とかテニス部やバスケ部、3階は陸上部とか卓球部の部室だね。」
運動部のアサヒがどの階にどの部活があるかを説明する。それを聴きながらホワイトボードを眺めていたヒビキは運動部の部室がある建物の見取り図には階段の部分に黒い点がボールペンで描かれているのを見つけた。
「なにあの黒い点?」
「ユイアに頼まれて描いたんだよー防犯カメラの位置。ほら、去年隣町の高校でイジメが起きて生徒が自殺しちゃった事件あったじゃん?なんか市の対策で今年度から防犯カメラがつけられるようになったの。上の階に上がるための2つの階段にそれぞれついてるの。」
「そして右階段に設置された防犯カメラに午後10時と10時10分に佐々木先輩が階段を上がっていく姿と下っていく姿が次の日の午前5時55分に部活の顧問の照岡先生が部室に上がっていく姿が撮られてたって感じ。」
「防犯カメラの感じやっぱり佐々木先輩がやったんじゃ..........」
「確かに今の証拠だけだとそうなっちゃう。だから私達で無実の証拠を探すの!まずは明日学校に行って部室を調査だ!」
ユイアとアサヒは腕を上げ「おーー!!」と叫ぶがヒビキはそんな2人をただ眺めるだけだった。そして3人の推理は数時間に及んだが何も進展せず気づけば午後8時になっていた。
「そろそろ店閉めるから貴方達はそろそろ帰りなさーい」
「もうこんな時間.........」
3人は店を出ると暗くなった住宅街の中、歩いて駅の方まで向かった。途中で2人とは家が逆方向にあるアサヒが先に帰ってしまい2人だけの帰り道になってしまう。
「ねぇユイア」
「うん?」
「私、最初はちょっと面白半分でこの事件の推理してたけど.....やっぱりこういうのは先生とか大人に任せた方がいいんじゃないのかな?私達この事件に関係ないし佐々木先輩達のことよく知らないし........」
ユイアはその言葉を聞いた瞬間に足を止めた。
「自分には関係ない、他人だから、それをヒーローが言っちゃダメなの。」
ユイアはそう言うとスマホの画面をつけ時間を確認すると帰る方向とは逆の方向に歩き始めた。
「ちょっとついてきて。この時間だとたぶんやってるから.......」
ヒビキは黙ってユイアの後をついていった。10分ほど歩き、着いた場所は大きな運動公園だった。その公園に入るとすぐにユイアは自販機でスポーツドリンクを購入し公園の奥の方に向かった。
バン!バン!
奥の方に向かうにつれ球を打ち返すような音がし始め、次第に大きくなっていく。着いた場所はテニスの練習スペースでそこにはたった1人で壁に向かってテニスの練習をする佐々木の姿があった。
「佐々木先輩、5年間ずっとここで部活が終わった後も練習してるんだって。」
「5年間.......」
「すごいよねこうやって努力できる人って。」
ヒビキはそう呟くユイアの横顔を眺めていた。夜風がユイアの金色の髪をたなびかせ月の光がピンク色の瞳に反射して輝いて見えた。その瞬間、ヒビキはユイアと出会ったあの日を思い出す。
中学2年生の時、私は1人空き教室でギターの練習をしていた。季節は冬だったからか日が沈むのが早く暗くなった空に星が見え始めていた。
「なんでいつも同じところでミスしちゃうんだろ.......よしもう一回!次こそは失敗しない!」
もう一度練習をしようとタブレットでTAB譜を見ていたら突然使っていた空き教室のドアが開いた。見回りの先生が来たと思い、教室の入り口の方を振り返ると金髪のサイドテールの女子生徒がレジ袋を持って立っていた。胸元についた赤い名札には日代という文字が彫られている。私も同じ赤い名札だから同学年だ。
「こんばんはー電気つけないでタブレット見てたら目が悪くなっちゃうよ?」
「見回りの先生にバレないようにするために暗くしてるの、本当は家でも練習したいんだけど夜に練習すると怒られちゃうからさ......っていうか......だれ?」
「私は3組の日代唯愛!貴方の隣のクラスなんだけど......知ってる?」
「名前だけは聞いたことがあるよ。」
確か今月の期末試験で学年1位になった子の名前だった気がする。入学した時から学年1位をキープしていたクラスの頭いい男子が初めて2位になって泣き叫んでいたのを思い出した。そんな人が私に何の用だろう?
「で、何しに来たの?」
私がそう質問すると彼女はレジ袋から紙パックの飲み物を手渡してきた。温かいホットココアが冷たくなった私の手を少しずつ温める。
「ココア?」
「私、少し前から貴方が1人で残って空き教室でギターの練習してたの知ってたんだ~だから差し入れ持ってきたの!」
初めてだった。誰かにこうして差し入れをもらうのは、そして何より誰かに認知されていたことが凄く嬉しかった。
「あっありがとう......でも....貰えないよ。私ギター下手だし、何回やってもミスをして先輩達にいつも迷惑かけてばっかりで......」
こんな私が貰っちゃダメなんだ。こういうのは上手な人が貰うものなんだ。私はホットココアを彼女に返そうとするが受け取ってくれない。すると彼女はこう言った。
「私は......ギターが上手な人に渡しにきたわけじゃないよ?」
「え、」
「私はこうやって1人残って少しでも上手くなろうと努力する貴方に差し入れを渡したくて来たの。だからこれを受け取って貰わないと困る!......あっ!もっもしかしてココア嫌いだった!?」
「......うんうん、好きだよ......ありがとう。」
私は少し泣きそうになってしまった。この人は良い人なんだと思った。私は彼女から貰ったココアをストローで飲みながら彼女と話していると「あ!」と言って突然立ち上がった。
「そうだ!忘れてた!」
「どうしたの?」
「私と友達になってください!えーっと、あと名前教えてください!」
彼女は突然そう言うと深くお辞儀して手を伸ばしてきた。
「それ......告白みたいになってるし......ふふっ......友達って宣言してなるものだっけ?」
私はまるで異性に告白するような姿をする彼女の姿を見て申し訳ないが少し笑ってしまった。
「え!?ダメだったかな......」
私はすぐに彼女が伸ばした手を握った。
「うんうん......友達になろう、私の名前は桜渡 響輝(サワタリ ヒビキ)よろしくね。」
「やったー!よろしくねヒビキ!」
これが私とユイアの出会い。
2人で数分ほど1人で練習する佐々木の姿を見ているとこちらに気づいたのかベンチに置いたタオルで汗を拭きながら2人に近づいてきた。
「お疲れ様です佐々木先輩!これ差し入れです!」
そう言ってユイアは佐々木にスポーツドリンクを手渡した。
「ありがとう。ちょうど喉が乾いた頃だったんだ。」
佐々木は少し微笑むとスポーツドリンクの蓋を開けて飲み始めた。するとヒビキは彼に質問をした。
「なんで自主練をしてるんですか?」
「もちろんアイツに追いつくためさ。」
「アイツ......園崎先輩のことですか?」
「あぁ、アイツは......祐星は俺と違って天才だからな。テニスじゃなくてもなんでもできちまうんだ。一緒にテニスをするたびにどんどん実力の差っていうのを実感する。だからアイツの横に立って一緒にテニスするためには人の何倍も努力しなきゃいけないんだ。本当はそろそろ受験勉強に専念しないといけないんだけどなー!」
佐々木はそう言って笑うとユイアから貰ったスポーツドリンクを飲み干した。
「.........」
「それにアイツとやってきたこの数年間をこんな形で終わらせたくないんだ......。」
「佐々木先輩、実は聞きたいことがあるんです。」
「どうした?」
「昨晩、なんで部室に戻ったんですか?」
ユイアはそう質問すると佐々木はバッグからスマホを取り出した。
「これを取りに行ったんだ。昨日の夜も今日みたいに部活が終わったあとにこの公園で練習しようと思ったんだけどトイレで普段着ているトレーニングウェアに着替えた時にスマホを忘れたことに気づいて部室に急いで戻ったんだ。」
「だから防犯カメラに映った先輩の姿は学校の制服じゃなかったわけだ。」
「でもどうやって部室に入ったんですか?運動部の部室の鍵は一階にある体育科の先生達の部屋にあるはずですよ?」
「部室のドアの横に窓があるの分かるか?」
「はい」
「あの窓開いてたんだよ。1年が片づけの時は高確率で窓閉めるのを忘れるんだ。その日もちょうど1年が片づけだったから開いてると思って行ったら予想通り開いてたからその窓を開けて内側からドアの鍵を開けて入ったってわけ。」
「なるほどーじゃあ真犯人も窓を開けて内側から鍵を開けた可能性があるっと......」
するとヒビキは何か思い詰めた表情をするがすぐに何かに気づいた顔になってスカートのポケットからスマホを取り出した。
「どうしたのヒビキ?」
「いや.....なんか佐々木先輩の言葉に引っ掛かって.....アサヒが送ってくれた部室の写真.......あ!これだ!」
ヒビキは自分のスマホの画面を2人に見せた。部室の中の写真だ。その写真の部室の窓は鍵が閉まっている。
「あ、鍵閉まってるな、でも誰かが鍵を閉めたんじゃないのか?」
「先輩、この写真は第一発見者の照岡先生が壊れたラケットを見つけた瞬間に「これは事件だー!」と言ってすぐに現場の状況証拠として撮った写真を私達の友達が貰ったものです。」
「確かにあの先生、刑事ドラマとか好きだけど......」
「ユイア、つまり先輩が部室に行った午後10時の時点で開いていたはずの窓が次の日の午前5時55分に第一発見者が来るまでの間に何者かによって閉められていた、ってことになるんじゃないのかな?でもこれだけじゃ無実の証拠として弱い......よね。」
「いや......これでも十分な証拠だよ!よーーし明日は本格的に調査開始だー!」
「「おー!!」」
2人は笑顔で腕を上げる。
「ははっ......お前ら楽しそうだな。」
「「はーい」」
ユイアはホワイトボードに貼られた数枚の写真を教師が使うような棒で指しながら解説を始める。残りの2人と千秋さんは飲み物を飲みながらそれを眺めていた。
「事件が発覚したのは今朝!朝練のために顧問の先生が部室を鍵を使って開けてみるとそこには変わり果てたラケットの姿が!」
ユイアが棒で指した写真には持ち手が折られ、ネットの部分がハサミで何本も切られた緑色のラケットが写っていた。
「そんな人が殺されたみたいな言い方しなくても.......これ、アサヒが撮ってきたの?」
「うん!この事件に関わってそうな人の写真と現場の写真とか~あと購買のおばちゃんとか?」
「なんで購買のおばちゃん.......」
ホワイトボードには笑顔でピースをする購買のおばちゃんの写真が貼られている。その横には学校の校内マップが大きく貼られておりユイアは次にその紙を棒で指した。
「私達の学校の運動部の部室は校舎とは別の建物にあって.......」
「一階は運動部が使う道具を置く部屋と体育科の先生達の部屋、二階がサッカー部とかテニス部やバスケ部、3階は陸上部とか卓球部の部室だね。」
運動部のアサヒがどの階にどの部活があるかを説明する。それを聴きながらホワイトボードを眺めていたヒビキは運動部の部室がある建物の見取り図には階段の部分に黒い点がボールペンで描かれているのを見つけた。
「なにあの黒い点?」
「ユイアに頼まれて描いたんだよー防犯カメラの位置。ほら、去年隣町の高校でイジメが起きて生徒が自殺しちゃった事件あったじゃん?なんか市の対策で今年度から防犯カメラがつけられるようになったの。上の階に上がるための2つの階段にそれぞれついてるの。」
「そして右階段に設置された防犯カメラに午後10時と10時10分に佐々木先輩が階段を上がっていく姿と下っていく姿が次の日の午前5時55分に部活の顧問の照岡先生が部室に上がっていく姿が撮られてたって感じ。」
「防犯カメラの感じやっぱり佐々木先輩がやったんじゃ..........」
「確かに今の証拠だけだとそうなっちゃう。だから私達で無実の証拠を探すの!まずは明日学校に行って部室を調査だ!」
ユイアとアサヒは腕を上げ「おーー!!」と叫ぶがヒビキはそんな2人をただ眺めるだけだった。そして3人の推理は数時間に及んだが何も進展せず気づけば午後8時になっていた。
「そろそろ店閉めるから貴方達はそろそろ帰りなさーい」
「もうこんな時間.........」
3人は店を出ると暗くなった住宅街の中、歩いて駅の方まで向かった。途中で2人とは家が逆方向にあるアサヒが先に帰ってしまい2人だけの帰り道になってしまう。
「ねぇユイア」
「うん?」
「私、最初はちょっと面白半分でこの事件の推理してたけど.....やっぱりこういうのは先生とか大人に任せた方がいいんじゃないのかな?私達この事件に関係ないし佐々木先輩達のことよく知らないし........」
ユイアはその言葉を聞いた瞬間に足を止めた。
「自分には関係ない、他人だから、それをヒーローが言っちゃダメなの。」
ユイアはそう言うとスマホの画面をつけ時間を確認すると帰る方向とは逆の方向に歩き始めた。
「ちょっとついてきて。この時間だとたぶんやってるから.......」
ヒビキは黙ってユイアの後をついていった。10分ほど歩き、着いた場所は大きな運動公園だった。その公園に入るとすぐにユイアは自販機でスポーツドリンクを購入し公園の奥の方に向かった。
バン!バン!
奥の方に向かうにつれ球を打ち返すような音がし始め、次第に大きくなっていく。着いた場所はテニスの練習スペースでそこにはたった1人で壁に向かってテニスの練習をする佐々木の姿があった。
「佐々木先輩、5年間ずっとここで部活が終わった後も練習してるんだって。」
「5年間.......」
「すごいよねこうやって努力できる人って。」
ヒビキはそう呟くユイアの横顔を眺めていた。夜風がユイアの金色の髪をたなびかせ月の光がピンク色の瞳に反射して輝いて見えた。その瞬間、ヒビキはユイアと出会ったあの日を思い出す。
中学2年生の時、私は1人空き教室でギターの練習をしていた。季節は冬だったからか日が沈むのが早く暗くなった空に星が見え始めていた。
「なんでいつも同じところでミスしちゃうんだろ.......よしもう一回!次こそは失敗しない!」
もう一度練習をしようとタブレットでTAB譜を見ていたら突然使っていた空き教室のドアが開いた。見回りの先生が来たと思い、教室の入り口の方を振り返ると金髪のサイドテールの女子生徒がレジ袋を持って立っていた。胸元についた赤い名札には日代という文字が彫られている。私も同じ赤い名札だから同学年だ。
「こんばんはー電気つけないでタブレット見てたら目が悪くなっちゃうよ?」
「見回りの先生にバレないようにするために暗くしてるの、本当は家でも練習したいんだけど夜に練習すると怒られちゃうからさ......っていうか......だれ?」
「私は3組の日代唯愛!貴方の隣のクラスなんだけど......知ってる?」
「名前だけは聞いたことがあるよ。」
確か今月の期末試験で学年1位になった子の名前だった気がする。入学した時から学年1位をキープしていたクラスの頭いい男子が初めて2位になって泣き叫んでいたのを思い出した。そんな人が私に何の用だろう?
「で、何しに来たの?」
私がそう質問すると彼女はレジ袋から紙パックの飲み物を手渡してきた。温かいホットココアが冷たくなった私の手を少しずつ温める。
「ココア?」
「私、少し前から貴方が1人で残って空き教室でギターの練習してたの知ってたんだ~だから差し入れ持ってきたの!」
初めてだった。誰かにこうして差し入れをもらうのは、そして何より誰かに認知されていたことが凄く嬉しかった。
「あっありがとう......でも....貰えないよ。私ギター下手だし、何回やってもミスをして先輩達にいつも迷惑かけてばっかりで......」
こんな私が貰っちゃダメなんだ。こういうのは上手な人が貰うものなんだ。私はホットココアを彼女に返そうとするが受け取ってくれない。すると彼女はこう言った。
「私は......ギターが上手な人に渡しにきたわけじゃないよ?」
「え、」
「私はこうやって1人残って少しでも上手くなろうと努力する貴方に差し入れを渡したくて来たの。だからこれを受け取って貰わないと困る!......あっ!もっもしかしてココア嫌いだった!?」
「......うんうん、好きだよ......ありがとう。」
私は少し泣きそうになってしまった。この人は良い人なんだと思った。私は彼女から貰ったココアをストローで飲みながら彼女と話していると「あ!」と言って突然立ち上がった。
「そうだ!忘れてた!」
「どうしたの?」
「私と友達になってください!えーっと、あと名前教えてください!」
彼女は突然そう言うと深くお辞儀して手を伸ばしてきた。
「それ......告白みたいになってるし......ふふっ......友達って宣言してなるものだっけ?」
私はまるで異性に告白するような姿をする彼女の姿を見て申し訳ないが少し笑ってしまった。
「え!?ダメだったかな......」
私はすぐに彼女が伸ばした手を握った。
「うんうん......友達になろう、私の名前は桜渡 響輝(サワタリ ヒビキ)よろしくね。」
「やったー!よろしくねヒビキ!」
これが私とユイアの出会い。
2人で数分ほど1人で練習する佐々木の姿を見ているとこちらに気づいたのかベンチに置いたタオルで汗を拭きながら2人に近づいてきた。
「お疲れ様です佐々木先輩!これ差し入れです!」
そう言ってユイアは佐々木にスポーツドリンクを手渡した。
「ありがとう。ちょうど喉が乾いた頃だったんだ。」
佐々木は少し微笑むとスポーツドリンクの蓋を開けて飲み始めた。するとヒビキは彼に質問をした。
「なんで自主練をしてるんですか?」
「もちろんアイツに追いつくためさ。」
「アイツ......園崎先輩のことですか?」
「あぁ、アイツは......祐星は俺と違って天才だからな。テニスじゃなくてもなんでもできちまうんだ。一緒にテニスをするたびにどんどん実力の差っていうのを実感する。だからアイツの横に立って一緒にテニスするためには人の何倍も努力しなきゃいけないんだ。本当はそろそろ受験勉強に専念しないといけないんだけどなー!」
佐々木はそう言って笑うとユイアから貰ったスポーツドリンクを飲み干した。
「.........」
「それにアイツとやってきたこの数年間をこんな形で終わらせたくないんだ......。」
「佐々木先輩、実は聞きたいことがあるんです。」
「どうした?」
「昨晩、なんで部室に戻ったんですか?」
ユイアはそう質問すると佐々木はバッグからスマホを取り出した。
「これを取りに行ったんだ。昨日の夜も今日みたいに部活が終わったあとにこの公園で練習しようと思ったんだけどトイレで普段着ているトレーニングウェアに着替えた時にスマホを忘れたことに気づいて部室に急いで戻ったんだ。」
「だから防犯カメラに映った先輩の姿は学校の制服じゃなかったわけだ。」
「でもどうやって部室に入ったんですか?運動部の部室の鍵は一階にある体育科の先生達の部屋にあるはずですよ?」
「部室のドアの横に窓があるの分かるか?」
「はい」
「あの窓開いてたんだよ。1年が片づけの時は高確率で窓閉めるのを忘れるんだ。その日もちょうど1年が片づけだったから開いてると思って行ったら予想通り開いてたからその窓を開けて内側からドアの鍵を開けて入ったってわけ。」
「なるほどーじゃあ真犯人も窓を開けて内側から鍵を開けた可能性があるっと......」
するとヒビキは何か思い詰めた表情をするがすぐに何かに気づいた顔になってスカートのポケットからスマホを取り出した。
「どうしたのヒビキ?」
「いや.....なんか佐々木先輩の言葉に引っ掛かって.....アサヒが送ってくれた部室の写真.......あ!これだ!」
ヒビキは自分のスマホの画面を2人に見せた。部室の中の写真だ。その写真の部室の窓は鍵が閉まっている。
「あ、鍵閉まってるな、でも誰かが鍵を閉めたんじゃないのか?」
「先輩、この写真は第一発見者の照岡先生が壊れたラケットを見つけた瞬間に「これは事件だー!」と言ってすぐに現場の状況証拠として撮った写真を私達の友達が貰ったものです。」
「確かにあの先生、刑事ドラマとか好きだけど......」
「ユイア、つまり先輩が部室に行った午後10時の時点で開いていたはずの窓が次の日の午前5時55分に第一発見者が来るまでの間に何者かによって閉められていた、ってことになるんじゃないのかな?でもこれだけじゃ無実の証拠として弱い......よね。」
「いや......これでも十分な証拠だよ!よーーし明日は本格的に調査開始だー!」
「「おー!!」」
2人は笑顔で腕を上げる。
「ははっ......お前ら楽しそうだな。」
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