ヒーローの定義〜女子高生が最高のヒーローになる物語〜

第2話「戦闘」

「ふザケた見タめしやガッて！！ぶッ潰スぞ！」

コウモリの怪物は羽を動かし空へ舞い上がるとユーアめがけて猛スピードで急降下した。

シュッ！

ドガァア！！！

ユーアは一瞬で避けコウモリの怪物は道路に叩きつけられた。その際に道路にヒビが入りクレーターのような形になってしまう。コウモリの怪物は痛そうに頭を抱えながら狙ったはずのユーアを探し始めた。

「どコ行っタ！？！」

キョロキョロ辺りを見渡し探すと少し離れたところにある街灯の下にユーアはいた。見つけた瞬間にコウモリの怪物は空気を吸いそれを超音波と共にユーアに向かって放つ。しかしそれも避けられてしまい、乗り捨てられていた車に当たり窓ガラスが全て割れた。

「なんデアタんねェんだ！？！」

「すっご～！脚が速くなってるしどのタイミングで攻撃が来るのかも分かる！これだったら戦える！」

ユーアが自分の装着しているアーマーを触ったりして興奮していると後ろからゆっくりと何かが迫ってきていることに猫の妖精？が気づいた。

「危ない！」

猫の妖精？がユーアに向かって叫ぶ。振り返るとそこには蜘蛛の怪物が背中から生えた4本の足を使って攻撃しようとしていた。それをとっさに避ける。

「チッ」

「危なかった～！ありがとう教えくれて！！」

ユーアは猫の妖精？に大きく手を振った。それを見て猫の妖精？がため息をつく。

「気をつけろ！集中してないと敵の殺意を察知できなくなる！」

「OK！ねぇ！蜘蛛の貴方はコウモリさんよりも強そうだね！」

「ふん、当タりマエだ。俺ハアイつよりも優レテいるからな。アイつはただのバッキングだ。」

「バッキング？」

蜘蛛の怪物はそう言うと4本の足を使ってユーアを連続攻撃する。それをなんとかユーアは避けるが数回攻撃が当たってしまい当たった箇所を手で押さえる。

「うっ！」

「まだマダイクゼ！」

バンバン！！

ユーアに向かってさらに連撃を加えようとしたその時だ。背中から生えた4本の足に銃弾のようなものが数発当たる。当たった箇所からはジューと焼ける音と煙が出ていた。蜘蛛の怪物とユーアが銃弾が放たれた方を向く。

「チッ追加でキヤがった......」

「だっ誰！？」

振り返るとそこには白い隊服を纏った人々が銃を構えている。

「メモリスを狙え！長官からの命令だ！援護をするぞ！」

「チッ....レーテの隊員達がきやがった」

猫の妖精？がやってきたレーテの隊員達を見て嫌そうな顔をする。

「仲間じゃないの？」

「あいにく私はレーテ所属だけどアイツらとは仲が悪いんだ。ユーア！アイツらよりも先にメモリスを倒すぞ！」

「え、あっうん！よーしテンション上がってきたー！！」

蜘蛛の怪物はどんどん大通りからやってくるレーテの隊員達を見るとすぐに腕から白く太い蜘蛛の糸を発射し、信号に巻き付けるとその場から立ち去ろうとする。その際に近くで暴れていたコウモリの怪物に声をかけた。

「オ前も逃げルゾ！2人でアノ数は不利ダ！」

「うるセェ！！俺はモット暴れルンだ！ストれす発散ダ！！」

「チッ...やっぱリ解放されテすぐのヤツは自制心が低くテ困るゼ.......モウいい！好きにしろ！」

そう言って糸を使って移動し夜の街へと消えてしまった。コウモリの怪物は気にせず思うがままに破壊を続ける。レーテの隊員達が銃などで応戦するが大きな羽などで防がれてしまいあまり効果がないようだ。

「全然効かないぞ！」

「隊長達は他の街に現れたメモリスと交戦中！今は私達でなんとか食い止めるの！」

「まずいな....意外とあのコウモリ野郎強いじゃねぇか。こりゃー野放しにしてたら厄介なことになりそうだ。おい！ユーア！」

焦った顔をしながら猫の妖精？は周りを見渡しユーアに向かって叫んだ。

「え！なに？」

「あのコウモリ野郎にトドメを刺すぞ！ドライバーの右側のホイールを回せ！ただし三回以上は回.....」

「分かった！うおーりゃー！！」

ユーアは勢いよくドライバーのホイールを回転させた。回転させるたびに火花が舞い散りユーアの全身のアーマーが展開しそこからビリビリとピンク色の雷のようなオーラを纏っていく。

「すっごい！身体が一気に軽くなった！よーしいくぞー！」

「おい待て！」

そう言ってユーアはコウモリの怪物に向かって勢いよく走り出す。地面を蹴るたびにアスファルトが抉れていき30メートルほど距離があったはずなのに一瞬でコウモリの怪物の間合いに入った。

「ナニ！？」

「うおぉおぉぉおおおお！！！！」


ライトニングエヴォークスマッシュ！！！


間合いに入ったユーアは右の拳を強く握り上半身を使って勢いよくコウモリの怪物の腹を殴った。その際にユーアの拳はピンク色の稲妻を纏いコウモリの怪物の身体に触れた瞬間に激しい閃光のように輝きコウモリの怪物は数メートル先まで勢い吹き飛ばされた。

「グアぁあアアァァアァァアァァアあ！！」

ドガァァアァァァアァァァァアァァァアアアン！！！！

「イッタァァァアァァァァア！？！」

ユーアも殴った反動か1メートルほど後ろに飛ばされ倒れてしまう。吹き飛んだ後に殴った方の腕を見るとアーマーが少し破損しており腕は痺れるような強い痛みが筋肉に生じた。腕の震えが止まらない。

「人の話は....最後まで聞け！」

飛んでやってきた猫の妖精？はユーアの頭をペシペシと叩く。

「初めて変身したお前じゃライトニングは扱えないとは思ってた！だからエヴォークスマッシュを使用させようとしたのに....お前が勝手に何十回も回転させちまうから！」

再びペシペシと頭を叩き始める。

「ごっごめんって！」

「いいか！今のお前が回していいのは3回までだ！」

「うん！分かった！」

ユーアは殴った方の腕を押さえながら立ち上がり

(右腕はもう使えない。さっきの攻撃をくらって怯んでいる今がチャンス！立ち上がる前にアイツの近くまで行ってトドメを刺すにはッ！！)

ユーアはドライバーのホイールを3回回転させる。ユーアの両足のアーマーが展開し再びピンク色の雷のようなオーラをビリビリと音を立てながら纏っていく。次の瞬間にユーアは走り出す。雷のような速さでコウモリの怪物との距離を詰めていく。

「ウッ！俺ニ近づくな！！」

コウモリの怪物は威嚇するように叫びながら近くにあった大きな瓦礫を次々と投げつける。ユーアはそれを蹴りでどんどん破壊しながら距離を詰め、そしてコウモリの怪物との距離が近くなると数メートルほど飛び上がりヒーローの定番のキックポーズを構えた。足のアーマーからピンク色の電気を放ちながら勢いよくコウモリの怪物に向かって蹴りを放つ。

「うおおぉおぉぉぉぉおおぉぉおおおお！！！！」

「やめろォォオォオオオ！！！！！」



エヴォークスマッシュ！！！



シュン
ドォオォォォオオォォオォォォォオォォオオン！！！！

「ぐぁぁぁあアアぁアァァ！！」

ユーアの蹴りがコウモリの怪物の体にぶつかると同時に衝撃で道路に大きなヒビが入る。ユーアが着地した瞬間にコウモリの怪物は当たった箇所を中心に徐々に崩壊し始め爆発してしまった。爆発が収まるとコウモリが持っていたであろうカセットが道路の上に降ってきた。

「よっしゃーー！！！倒したーーー！！！」

「ほんとに....倒しやがった。なんの訓練もしてねぇさっきまでただの女子高生だったやつが....メモリスを倒しちまった。」

猫の妖精？は唖然としていた。まさか本当に倒してしまうとは思っていなかった。通常、適合者を見つけ次第レーテの隊員として入隊させ最低でも半年の訓練をし実戦へ投入するのが上層部の考えだ。当たり前だ、普通の一般人が未知の化け物と戦えるわけがないからだ。しかし彼女は初めての変身でメモリスを撃破した。アスリートでも漫画やアニメのキャラでもない、ただの女子高生がメモリスを撃破したのだ。

「お前...なんなんだよ....」

猫の妖精？がドライバーからカセットを取り出しホイールを回転させ変身を解除したユイアに話しかける。擦り傷や額から少し血を流すユイアはニカッと笑いながらこう言った。

「ヒーロー！」

猫の妖精？とユイアの元にレーテの隊員達が近づいてくる。それに気づいた猫の妖精？はユイアの制服の袖を引っ張る。

「めんどくさい奴らが来た！逃げるぞ！！」

「え！？」

「まっ待ちなさい！！！」

猫の妖精？とユイアはレーテから逃げ出した。そして路地裏を通り逃げ切ることに成功しゆっくりと歩き始める。辺りはもう暗くなっており夜空には大きな月が出ていた。

「なぁ身体は痛むか？」

「右腕はものすごく痛いけど両足はちょっとだけ痛いかな。」

「そうか、それで済んでよかったな。」

「うん！次から覇気をつけるね！」

ユイアはニコニコしながら鼻歌を歌い夜道を猫の妖精？と歩いていた。猫の妖精？はユイアをじっと見つめる。

「お前、ほんとにいいのか？」

「え？なにが？」

「このままだとお前はメモリスと戦い続けることになる。今日よりも痛い思いをたくさんすることになるし今までの日常には戻れなくなるぞ？それでもいいのか？」

「私が戦って、たくさんの人の笑顔を守れるなら私は戦う事を選ぶよ。ずっとなりたかったんだ....子供の頃から観てた強くて優しい最高のヒーロー！だからこれから頑張る！よろしくね！相棒♪」

ユイアはツンツンと隣で浮かぶ猫の妖精？を触る。

「は！？相棒！？！何言ってんだよ私はただ適合者を探すのが仕事でその後のことはレーテのユキ.....」

「だって主人公を支えるマスコットキャラは必要だもん！そーだなー名前は......」

ユイアはキョロキョロと周りを見渡し夜空を見上げた。夜空には綺麗な満月が2人を照らしている。

「満月....ルナ.......ルナ！いい名前！」

「ルナ！？よりにもよってその名前かよ.....」

猫の妖精？はため息を吐くがユイアはキラキラと瞳を輝かせながら見つめ続けた。そしてすぐにユイアを向かってこう叫んだ。

「分かったよ！なればいいんだろ！相棒に！！」

「そうこなくっちゃ！」

ユイアはルナの小さな猫のふわふわな手を握る。最初は嫌そうだったルナの顔が少し微笑んでいるように見えた。これがユイアとルナの出会いであり2人の物語の始まり。これは「女子高生」が「最高のヒーロー」になる物語。

「ちみなにそのルナって名前は気に入ってないからな」

「えーー！可愛いじゃん！」

「私の相棒になるんだからもっとこう.....センスのある.....」










研究者Hの研究レポート1

私はレーテ所属の研究者のH
ユイアが使うドライバーを作ったのも私だ。ここではユーアや様々な事について解説したりまとめようと思う。

・メモリスとは？
メモリスは生物の脳の中に封印されている記憶の怪物。この存在は中南米で発見された石板と壁画の文字の解読によって判明した。発見当初は全ての人間の中に存在すると考えられていたがすぐにその仮説は正しくないことが判明した。脳の中にメモリスが封印されていない人間も存在する。猫からメモリスが解放されたという事例もある。未だにメモリスがなんなのか全ては判明していないが徐々に解明されていくのだろう。

・メモリカセットについて
石板と壁画に書かれていた文字を解読しメモリスを解放するデバイスを今の人間の技術を使い再現したものだ。メモリカセットをメモリスが脳に封印されている人間の頭に当てることによって解放することができる。その際にブランクのメモリカセットにはそのメモリスが持っている「記憶」を記録する。

・ユーアドライバーについて
ユイアのやつが勝手に名前をつけてしまったためこの名前になってしまった。このドライバーを腰に巻きメモリカセットをセットしホイールを3回、回転させる事によってアーマーが装着されユーアに変身する事が可能になる。まさか女子高生が適合者だとは思わなかった。もっとイケメン好青年みたいなやつが適合者だと考えてた。

・ユーア(ヒーローフォーム)
ユーアの基本フォーム
「ヒーロー」の記憶を記録したピンク色のメモリカセット「YOU ARE」を使って変身した姿でバランスの取れた姿と言えるだろう。バッタのような触覚があり集中することで相手の殺気を感知することが可能。脚力とパンチ力が高くこのフォームでしか使えない「ライトニングモード」がある。今のユイアではライトニングを使いこなせないが今後の成長によっては使えるようになると考えていいだろう。

・メモリカセット「爆音！バット！」
コウモリのメモリスが倒された際に落とした暗い紫色のメモリカセット。このメモリカセットにはコウモリの記憶が記録されているためユーアドライバーにセットすればその能力を使用できる。しかしその為には調整が必要だ。ちなみに倒されたメモリスは元の人間の脳へと戻っていき再び封印される。レーテの隊員によって回収された。