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第19話 バトルロイヤル⑧ 蝶々
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「よいしょっと…」
モモは木の枝に軽く身を預け、上空から広がる森をじっと見つめていた。彼女の鋭敏な聴覚はあらゆる音を拾い、木々のざわめき、遠くで飛び交う鳥の羽ばたき、風が枝葉をかすめる音に混じって、かすかな違和感を感じ取る。
何かがこの静寂を侵している――モモはその微かな変化に、全身の感覚を集中させていた。
「血の匂いなのだ…」
モモの鼻孔に微かに漂う鉄の香りが、緊張感をさらに高める。シンヤとユージーンの体臭もわずかに混じっていることに気付き、モモは眉を寄せた。
「二人とも、無事だといいのだ…」
ーーひらり
そのとき、森の鬱蒼とした暗がりの中に、薄紫色の光が揺らめいた。幻想的で美しい光の源は、アロマの蝶だった。蝶たちは、彼女の意思を受けてまるでモモを探すかのように森の中をひらひらと舞っている。
モモはその蝶が自分の近くに来たのを確認し、そっと指先で触れた。瞬間、蝶がほのかに明るく輝き、モモの無事をアロマへと伝えていった。
「モモ、無事なのね…よかった…」
遠く離れた場所で、その感触を受け取ったアロマは、胸の奥に溜まっていた不安が少しだけ和らぐのを感じた。しかし、彼女の心配はまだ消えてはいなかった。
特に、脆弱な人間であるシンヤのことが、彼女の頭から離れない。彼女はシンヤがこの世界で最も危険に晒されている存在だと感じていた。
「真っ先に襲われるかもしれない…」
アロマはその恐れを胸に、蝶を追いながら森の中を慎重に進み始めた。
「ひっ。ムカデ…蜘蛛~ッッ!!」
時折、アロマの足元に現れるムカデや蜘蛛に驚きつつも、半泣きになりながら、彼女はそれを振り払うように進んでいった。彼女の美しい顔には、深い不安と決意が入り混じっていた。
一方その頃、シンヤは横たわるユージーンに視線を向けていた。周囲には枝や大きな葉が敷かれ、簡易的なキャンプが作られていた。シンヤはその中にユージーンを隠すように寝かせ、心配そうな目を彼に向けた。
「……すまねえが、おれは行くぞ」
シンヤはユージーンに向かって低く言った。その声には決意と焦りが混じっていた。シンヤの心は、常に戦場での決断を迫られるように急いでいる。
安全な選択など存在しない場所で育った彼にとって、ここもまた同じだ。仲間を見捨てるつもりはないが、それでも行かなければならない。自分が動かなければ、全てが終わるかもしれないからだ。
「僕も…と言いたいところだけど、今の僕は足手まといだね…」
ユージーンは悔しそうに苦笑しながら答えた。傷を負った彼は、今やシンヤにとって守られる存在になってしまったことに、無力感を感じていた。
「そうだ。だから、お前はここに隠れてろ。授業が終わるまで動くなよ」
シンヤの声には、冷静な決断と仲間を思う気持ちが込められていた。
ーーひらり
その時、また蝶が現れた。薄紫色の光が瞬き、幻想的な蝶が彼らの周囲に舞い降りてきた。シンヤはすぐに警戒態勢を取った。
「アロマの蝶か…だが、何が起こるか分からねえ」
「大丈夫だよ、シンヤ。敵意は感じられない」
ユージーンは静かにその蝶に手を伸ばし、軽く触れた。
「おい、触んな!罠かもしれねえだろ」
シンヤは鋭い口調でユージーンを制したが、その目には、かつて仲間を失った時の痛みが浮かんでいた。シンヤは蝶を見つめながら、すぐに行動を起こすべきか、それとも様子を見るべきかを判断しようとしていた。だが、胸の奥には、一つの選択肢を間違えれば、シンヤを失いかねないという恐怖が燻っていた。
モモは木の枝に軽く身を預け、上空から広がる森をじっと見つめていた。彼女の鋭敏な聴覚はあらゆる音を拾い、木々のざわめき、遠くで飛び交う鳥の羽ばたき、風が枝葉をかすめる音に混じって、かすかな違和感を感じ取る。
何かがこの静寂を侵している――モモはその微かな変化に、全身の感覚を集中させていた。
「血の匂いなのだ…」
モモの鼻孔に微かに漂う鉄の香りが、緊張感をさらに高める。シンヤとユージーンの体臭もわずかに混じっていることに気付き、モモは眉を寄せた。
「二人とも、無事だといいのだ…」
ーーひらり
そのとき、森の鬱蒼とした暗がりの中に、薄紫色の光が揺らめいた。幻想的で美しい光の源は、アロマの蝶だった。蝶たちは、彼女の意思を受けてまるでモモを探すかのように森の中をひらひらと舞っている。
モモはその蝶が自分の近くに来たのを確認し、そっと指先で触れた。瞬間、蝶がほのかに明るく輝き、モモの無事をアロマへと伝えていった。
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遠く離れた場所で、その感触を受け取ったアロマは、胸の奥に溜まっていた不安が少しだけ和らぐのを感じた。しかし、彼女の心配はまだ消えてはいなかった。
特に、脆弱な人間であるシンヤのことが、彼女の頭から離れない。彼女はシンヤがこの世界で最も危険に晒されている存在だと感じていた。
「真っ先に襲われるかもしれない…」
アロマはその恐れを胸に、蝶を追いながら森の中を慎重に進み始めた。
「ひっ。ムカデ…蜘蛛~ッッ!!」
時折、アロマの足元に現れるムカデや蜘蛛に驚きつつも、半泣きになりながら、彼女はそれを振り払うように進んでいった。彼女の美しい顔には、深い不安と決意が入り混じっていた。
一方その頃、シンヤは横たわるユージーンに視線を向けていた。周囲には枝や大きな葉が敷かれ、簡易的なキャンプが作られていた。シンヤはその中にユージーンを隠すように寝かせ、心配そうな目を彼に向けた。
「……すまねえが、おれは行くぞ」
シンヤはユージーンに向かって低く言った。その声には決意と焦りが混じっていた。シンヤの心は、常に戦場での決断を迫られるように急いでいる。
安全な選択など存在しない場所で育った彼にとって、ここもまた同じだ。仲間を見捨てるつもりはないが、それでも行かなければならない。自分が動かなければ、全てが終わるかもしれないからだ。
「僕も…と言いたいところだけど、今の僕は足手まといだね…」
ユージーンは悔しそうに苦笑しながら答えた。傷を負った彼は、今やシンヤにとって守られる存在になってしまったことに、無力感を感じていた。
「そうだ。だから、お前はここに隠れてろ。授業が終わるまで動くなよ」
シンヤの声には、冷静な決断と仲間を思う気持ちが込められていた。
ーーひらり
その時、また蝶が現れた。薄紫色の光が瞬き、幻想的な蝶が彼らの周囲に舞い降りてきた。シンヤはすぐに警戒態勢を取った。
「アロマの蝶か…だが、何が起こるか分からねえ」
「大丈夫だよ、シンヤ。敵意は感じられない」
ユージーンは静かにその蝶に手を伸ばし、軽く触れた。
「おい、触んな!罠かもしれねえだろ」
シンヤは鋭い口調でユージーンを制したが、その目には、かつて仲間を失った時の痛みが浮かんでいた。シンヤは蝶を見つめながら、すぐに行動を起こすべきか、それとも様子を見るべきかを判断しようとしていた。だが、胸の奥には、一つの選択肢を間違えれば、シンヤを失いかねないという恐怖が燻っていた。
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