Worlds of Fate〜世紀末の戦士は異世界に挑む!〜

宇宙星

文字の大きさ
上 下
5 / 24

第5話 意外な結果

しおりを挟む
ヴェルサンディに連れられて、実技に向けて広いフィールドに移動した。

俺は胸の中で高鳴る鼓動が止まらなかった。実技のルールはシンプルだ。隣の席の者と戦い、勝者が次の相手と対峙していく。倒れるか、ギブアップするまで。

俺の隣にはアロマ――俺より背の低い華奢な妖精の少女。戦う相手としては軽いと感じた。

準備は万端だ。最新の武器に身を包み、戦闘の経験は豊富だ。勝利を確信し、軽く片付けてやる。

それぞれの生徒がフィールドで向かい合う。俺とアロマもその中にある。アロマは目を合わせずに俯き、気まずそうにしている。

ピーーーッ!

笛が鳴った瞬間、戦場に一斉に火花が散る。アロマは蝶の羽をはばたかせ、空中に舞い上がった。

だが俺も、すぐに追いつける。足元の機動装置が火を吹き、アロマの目の前に一気に迫る。

ギチッ…

俺の手が彼女の細い首にかかり、勝利を確信した。

「観念しろ」

細いアロマの首を俺のゴツい腕で締め上げるように握った。ドクドク、とアロマの動脈が俺の手に伝わる。

アロマの桃色の瞳が揺れ、胸の谷間に汗が滴り落ちる。
アロマのスカートはめくれ、下からはピンクのパンティに包まれた形の良いヒップが丸見えになる。

「うぐ…」

「お前を痛めつける気はねぇんだ。」

「…シ…ンヤ…」

アロマは驚いたように桃色の大きな瞳を見開くと、その瞬間、俺の世界は真っ白に…包まれて…

桜だ。俺は桜の木の下に立っていたー
初めてみる景色。幻想的な桜並木に包まれて、桃色の花びらが、俺の周囲をひらひらと舞う。

暖かい。感じたことの無い優しい光が俺を包み、俺は深呼吸して目を閉じた。

そう、この時は、戦いのことなんてすっかり忘れちまっていたんだ。

__________


目が覚めると、俺は保健室のベッドに横たわっていた。隣にはアロマが、ボロボロの姿で眠っている。彼女の足には包帯が巻かれ、痛々しい姿が目に飛び込んできた。

「おい…なんだここは。起きろ」

「うーん……」

気だるそうにアロマは起きる。

アロマのその寝姿はとても無防備なもので、胸元ははだけて薄い桃色のブラジャーが見えている。スカートは捲り上られ、ツヤのある太ももが露わになっていた。

「何があったんだ」

アロマは気まずそうに微笑んで答えた。
「私が試合で貴方に幻術をかけたら、貴方はずっと眠っちゃってたから心配になって…授業が終わった後に保健室で起きるのを待ってたの」

「何だって?!俺がずっと寝ていただと?!」

シンヤは時計を見る。午後6時。授業が終わり、学生寮に戻る時間だ。

「どうしてお前はそんなにボロボロなんだ?」

「最後まで試合をしたからよ」

なんだと、状況がよくわからない。混乱する俺にアロマは静かに声をかける。

「良かった…目覚めて」

「それで、結果は?結果はどうなんだ?」

アロマは気を遣って何も言わない。

「結果はどうあれ、貴方のお友達が心配していたわよ。御免なさい。こんなに眠るとは思わなくて」

「お前が…幻術使いだとはな。これが異世界の奴らの力か」

俺はこの女に敗北しただけでなく、気遣われている事がどうにも気に食わない。

「…そろそろ寮に戻るわね」

「おい、ちょっと待てよ、術の仕組みを俺に教えろ」

「ええ。もちろん。なんでも教えるわね」

ーーガラガラ

そこにペガサスの翼を持つシリウスが現れる。白髪のショートヘアに冷たい青い瞳をしている。クラスの学力テストで一位を取っていた奴だ。

「アロマ、そんな者に構っていたのですか。全く…」
シリウスは俺を軽蔑するように見て言い放つ。

「シリウス、そんな事言わないで。私の幻術が招いた結果なのよ」

と言い足を引きずって保健室を出る。シリウスはアロマを支えながら2人で寮に戻ろうとする。俺もベッドから立ち上がり、同じ道を歩く。

その時、シリウスは俺を激しく睨みつけた。

「おい、言いたい事があるならハッキリ言えよ」

「私達は、貴方とは違うんです」

「はぁ!?ふざけんな!!」

見下すような態度に無性に腹が立った俺は、シリウスに掴みかかろうとする。

「これはアロマの慈悲です。貴方を先に眠らせる事で、貴方が後で袋叩きにされるのを回避させたのですよ。全く…人間は…」

つまり俺は慈悲をかけられた上に、負けたってことなのか…?

シンヤの心は、屈辱と混乱が渦巻いていた。

「俺が負けた?」

信じたくなかった。アロマの優しげな微笑み、そして彼女の力…一見弱々しく見えたあのふわふわした妖精が、俺をあっさり倒したのだ。それも、“慈悲”とやらをかけられた上で。

俺は戦いには慣れていた。軍隊で、地球で、幾度となく死線をくぐり抜けてきた。戦場では常に勝者であり、倒れるのはいつも相手だった。だが今、異世界で初めての実技で、俺は幻術の前に敗れ、無力さを感じた。

そして、シリウスの冷たい言葉。「人間は…」と言われるたびに、胸の奥にある劣等感が燃え上がる。

異世界の住人たちは俺たちとは異なる力を持っている。俺がどれだけ鍛え上げても、その力の前ではただの無力な”人間”に過ぎないのか?

悔しさが体中に広がる。アロマの優しさが、余計に俺を追い詰めるようだった。

俺は負けた――しかも、誰かに守られる形で。そんな屈辱に耐えられるわけがない。

「俺は…もっと強くならなきゃいけない…」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

世界中にダンジョンが出来た。何故か俺の部屋にも出来た。

阿吽
ファンタジー
 クリスマスの夜……それは突然出現した。世界中あらゆる観光地に『扉』が現れる。それは荘厳で魅惑的で威圧的で……様々な恩恵を齎したそれは、かのファンタジー要素に欠かせない【ダンジョン】であった! ※カクヨムにて先行投稿中

生まれる世界を間違えた俺は女神様に異世界召喚されました【リメイク版】

雪乃カナ
ファンタジー
世界が退屈でしかなかった1人の少年〝稗月倖真〟──彼は生まれつきチート級の身体能力と力を持っていた。だが同時に生まれた現代世界ではその力を持て余す退屈な日々を送っていた。  そんなある日いつものように孤児院の自室で起床し「退屈だな」と、呟いたその瞬間、突如現れた〝光の渦〟に吸い込まれてしまう!  気づくと辺りは白く光る見た事の無い部屋に!?  するとそこに女神アルテナが現れて「取り敢えず異世界で魔王を倒してきてもらえませんか♪」と頼まれる。  だが、異世界に着くと前途多難なことばかり、思わず「おい、アルテナ、聞いてないぞ!」と、叫びたくなるような事態も発覚したり──  でも、何はともあれ、女神様に異世界召喚されることになり、生まれた世界では持て余したチート級の力を使い、異世界へと魔王を倒しに行く主人公の、異世界ファンタジー物語!!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。 念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。 戦闘は生々しい表現も含みます。 のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。 また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり 一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。 また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や 無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという 事もございません。 また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

処理中です...