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逃避行の準備を始めよう
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俺とちひろの父の話をしよう。
俺とちひろは正真正銘の兄弟だが、
あの女の子どもではない。
訳あって、あの女と過ごさないといけなくなった。
仮に血が繋がっていたら、間違いなく俺らは首を掻っ切っている。
もう本当にそれ程キライ。
つまり同じ父を持っていると考えて欲しい。
俺らの父親は体が弱い。
多分、半月に1回は貧血で倒れる程、体が弱かった。
あと、2日に1回は必ず立ちくらみをしていた。
顔は青白く、目元には濃い隈があって、常に苦しそうだった。
その上、自分より相手を優先にしてしまう性格だった。
子どもの俺たちから見ても、自分の事も後回しにしてしまう人だった。今思うと、よく医者になれたな。勉強してる時は大変だったろうな。
でも、父は常に微笑みを絶やさなかった。
口癖は「大丈夫」とか「気にしないで」だった。
皮肉なことに父は医者だった。
体調を崩すキッカケは過労が原因だった。後に知ったが、父は持病を患っていた。
4才の頃、
弟と父とで公園で遊んだ。俺は久しぶりに父さん遊ぶのがとても嬉しかったから、
公園中をちひろと走り回った。
調子に乗って父さんをあっちこっち連れ回した。
ちひろ「…兄さん! お父さんが…!」
父さんは意識を失っていた。目から涙が出ていて、
顔色は蝋人形のようだった。
父はすぐさま病院に運ばれた。
あまりにも突然過ぎて、混乱していた。
そんな状況で、この言葉は鮮明に覚えてる。
弟が気づいていなかったら、命がなかったと言われた。
俺のせいだ。
父さんは体が弱いと知っていたのに俺は無茶をさせた。
俺のせいなのに、
なんで
涙が出ないんだ。
最低だ。最低の子どもだ。
ちひろ「父さん…父さん…ッ!!
俺がもう少し早く気づけばよかった。父さん、ゴメン…。」
ちひろは涙ぐんで、眠っている父に何度も謝っていた。
なんで なんで どうして、何故お前が謝るんだ。
もし ちひろがいなかったら、
絶対に気がつかなかった。
きっと、いや間違いなく父さんを死なせてしまっていただろう。
英仁「…ちひろは悪くない。あの時、俺が 俺が公園に行こうって言わなきゃ…こんな事には…。」
ちひろは首を横に振る。
ちひろ「…兄さんも父さんも楽しみにしてたんだよ。だから兄さんは悪くない。」
親戚の人がお見舞いに来た時、声をかけられた。
「大丈夫だよ。」「君は悪くない。」
何故、誰も責めないんだ。怒らないんだ。
その方がどれだけ楽か。
ちひろの言葉で、俺は罪悪感に苛まれる。
退院した後も、
俺のワガママで苦しむと言うのなら、どっちにしろ俺は苦しんでいる。
それなら、もう俺は…
この日から俺は"理想の兄"として生きる事を決めた。
俺とちひろは正真正銘の兄弟だが、
あの女の子どもではない。
訳あって、あの女と過ごさないといけなくなった。
仮に血が繋がっていたら、間違いなく俺らは首を掻っ切っている。
もう本当にそれ程キライ。
つまり同じ父を持っていると考えて欲しい。
俺らの父親は体が弱い。
多分、半月に1回は貧血で倒れる程、体が弱かった。
あと、2日に1回は必ず立ちくらみをしていた。
顔は青白く、目元には濃い隈があって、常に苦しそうだった。
その上、自分より相手を優先にしてしまう性格だった。
子どもの俺たちから見ても、自分の事も後回しにしてしまう人だった。今思うと、よく医者になれたな。勉強してる時は大変だったろうな。
でも、父は常に微笑みを絶やさなかった。
口癖は「大丈夫」とか「気にしないで」だった。
皮肉なことに父は医者だった。
体調を崩すキッカケは過労が原因だった。後に知ったが、父は持病を患っていた。
4才の頃、
弟と父とで公園で遊んだ。俺は久しぶりに父さん遊ぶのがとても嬉しかったから、
公園中をちひろと走り回った。
調子に乗って父さんをあっちこっち連れ回した。
ちひろ「…兄さん! お父さんが…!」
父さんは意識を失っていた。目から涙が出ていて、
顔色は蝋人形のようだった。
父はすぐさま病院に運ばれた。
あまりにも突然過ぎて、混乱していた。
そんな状況で、この言葉は鮮明に覚えてる。
弟が気づいていなかったら、命がなかったと言われた。
俺のせいだ。
父さんは体が弱いと知っていたのに俺は無茶をさせた。
俺のせいなのに、
なんで
涙が出ないんだ。
最低だ。最低の子どもだ。
ちひろ「父さん…父さん…ッ!!
俺がもう少し早く気づけばよかった。父さん、ゴメン…。」
ちひろは涙ぐんで、眠っている父に何度も謝っていた。
なんで なんで どうして、何故お前が謝るんだ。
もし ちひろがいなかったら、
絶対に気がつかなかった。
きっと、いや間違いなく父さんを死なせてしまっていただろう。
英仁「…ちひろは悪くない。あの時、俺が 俺が公園に行こうって言わなきゃ…こんな事には…。」
ちひろは首を横に振る。
ちひろ「…兄さんも父さんも楽しみにしてたんだよ。だから兄さんは悪くない。」
親戚の人がお見舞いに来た時、声をかけられた。
「大丈夫だよ。」「君は悪くない。」
何故、誰も責めないんだ。怒らないんだ。
その方がどれだけ楽か。
ちひろの言葉で、俺は罪悪感に苛まれる。
退院した後も、
俺のワガママで苦しむと言うのなら、どっちにしろ俺は苦しんでいる。
それなら、もう俺は…
この日から俺は"理想の兄"として生きる事を決めた。
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