終わりを願った者への鎮魂歌

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第二話 フードの男

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 意識が戻ると、俺は病室とは違う別の場所に立っていた。
 どうやら転移は成功したらしい。周りには木々が生い茂る場所に俺はいた。
 しかしあまりにも分の悪い賭けだった。てか確率が半分も無いのに普通送るか?あいつは多分神じゃない、てか例え神であっても認めない。
 それにまさかこんな場所に飛ばされるとも思ってもみなかった。
 絶対帰ったらぶん殴る!俺は静かに心に決めたのだった…
 だがそんなことを考えているとふとある事に気が付いた。

「そういえばどうやって帰ればいいんだ?」

 顔が真っ青になっていく。
 どうしよう…帰る手段を聞くのを忘れていた。
 一番大事じゃんそれ…例え目的を達成したとしても帰れない。
 俺は頭を横に振って心を落ち着かせた。
 とりあえず目的を達成しよう。
 帰る方法はその後でもいいだろう。どのみち手ぶらで帰るわけにもいかないのだから…
 仕方ないので辺りを散策することにした。
 歩けど歩けど見渡す限り木々が生い茂っている。
 ここは恐らく森の中なのだろうか?
 誰もいない。とにかく人がいる場所に出なくては!そう思いながら歩き回るのであったが…
 数時間後…
 とうとう日が傾き始め、辺りが暗くなり始めてしまった。
 結局誰とも出会えず一日目が終わりそうだったのだ。
 これは…野宿しかないなぁと思い、仕方がないので近くの木に目印をつけて拠点にしようと思ったところ、ある事に気づく。
 そもそも俺は今幽霊みたいなもんだから石を掴むこともできないんじゃないかと…
 恐る恐る落ちている石を掴もうとするとやはり手は石を掴んだ…掴んだ?
 なんと石を掴むことができてしまったのだ!
 つまり今の俺は霊体じゃないって事?あの神様が何かやったのか?どうゆう事なんだ?と脳が混乱する。
 だが今の俺には詳しいことは考えてもわからない…なので考えることをやめてとりあえずはこの状況に感謝することにした。
 そのまま石を拾い、木に適当に傷をつけて目印とした。
 よし。とりあえずはこの場所の近くを散策して何か食糧っぽいものと川があるか探すことにしたのだった。
 何もなかった。
 川も無ければ、食料もである。日は完全に落ちて森は暗く、とてもじゃないが現代人の俺では探索することは不可能であった。
 正直一人じゃ怖くて歩きたくない。
 仕方ないので狼の遠吠えが聞こえる中眠る事にしたのだった。
 翌朝日が昇り始め、腹の音を鳴らしながら俺は目覚めた。
 身体は全身筋肉痛みたいで痛く、喉はカラッカラ。おまけに腹が減って仕方がないとゆう満身創痍状態での起床だった。
 今日中に人か村を見つけらなければ、明日は探索するほどの気力があるのかわからない…
 現代人の俺には厳しい環境であった。
 俺は筋肉痛で痛くて仕方がない身体を無理やり起こし、軽く準備体操をしその場所を後にしたのだった。
 再び歩き始めて数時間後位によくわからないことが起こった。
 なんか透明な壁みたいなやつがあって前に進めなくなってしまったのだ。
 とりあえずノックする感覚で叩いてみるも少し歪むだけで何も変化がない。
 まいった今度は先に進めなくなってしまったのだ。
 つまり詰んでしまったのだ。
 進むには来た道を戻るかこの場所に留まるかの二択しかない…
 ここで第三の選択肢!壁を壊すなんてカッコいいもんが俺にできるわけもなく、とりあえず壁にもたれ掛かり休憩しながら考えることにしたのだった。
 しかし、そんな俺の前に黒い謎の獣みたいなものが地面から突然生えてきたのだ。
 何だこいつら…!
 さっきまではいなかったはずなのに突然地面から出てきやがった。
 獣たちはグルルルル…と威嚇しながらじりじりと間合いを詰めて来る。
 既に壁を背にしている俺には逃げ場所は無く、ただ獣に対して相対する事しかできなかった。
 脳で必死に逃げる方法を考えるもパニック状態で全く思いつかない…
 一匹の黒い獣が俺にめがけて飛びついて来た時、ふと言葉が脳裏に走った。

「伏せてろ!」

 突然黒い獣の後ろから何か黒っぽい物体が飛んできて飛び掛かってきた獣にぶっ刺さって壁にぶつかった。
 その黒い獣は黒い霧のようになって消えてしまった。
 前を見ると黒い獣達の集団の後ろには、フードをした人が立っていたのだ。
 フードをした者が前に歩み寄ると黒い獣達は道を開け、やがて力の差を感じたのか森の中へと消えて行ってしまった。
 フードをした者がそれを確認すると、地面に転がったままの投げた物体を拾っていた。
 それは剣だった。
 剣なんて初めて見たわ。漫画やアニメで見るようなものと同じ形をしていたので最初はわからなかったがよく見るとすぐに分かった。

「大丈夫だったか?」とフードをした人物が笑いながら話しかけてくる。

 よく見ると顔には仮面を着けていた。
 何か事情があるのかなと思ったが、とりあえずは助けてくれた礼をしないと…

「助けてくれてありがとうございます」と俺はお礼を言ったが、フードをした人物は「どういたしまして」とそう言うとその場を去ろうとしていた。

 俺は思わず「ちょっと待ってくれ」と言ってしまい、フードをした人物は足を止め、こちらに向き直る。

「助けてもらって図々しい頼みだけど俺も連れて行ってくれないか?」と俺が言うと
 フードをした人物は少し考え、やがて答えが出たらしくその答えを俺に返答した。

「わかった。この近くに村があるからそこまで一緒に行くとするか」

 そう笑いながら答えてくれた。
 なんか気さくな兄ちゃんっぽい人だった。
 俺はその返事に嬉しくなり、名前を教えた。

「俺の名前は本間 求。呼び方は本間でもいいし、求でも大丈夫」

「じゃあ求よろしくな!俺はゲラニウムだ」

 こうしてゲラニウムと共に村を目指して歩き始めたのだった。
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