Quirky!

リヒト

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学校は終業式をもって年末年始休みに入ったが、3年は毎日午前中に課外セミナーがあるので、実質休みになるのはまだ先だ。

セミナーは基本的に参加自由だから、家で自分のペースで勉強がしたいって奴は別に出なくてもいいんだが、俺は残り少ない高校生活を仲間と過ごしたいところもあって来ている。

ハスミも来ているみたいだな。


今日はクリスマスイブ。

3年前、俺にとっての初恋?が消えた日な訳で、あれからこの時期にはなんとなく沈んだ気持ちになりがちだった。

でも今年はハスミに聞いてもらったお陰か、あのモヤモヤした亡霊のようなものはすっかり成仏してくれたようで、俺の心は晴れている。

あの2人、今はどうしてるかな…… なんて考えると、ちょっと胸の辺りがキュッとなるけど。


晴れてる心の内側とは対照的に、外は今朝方からシーズン初め特有の水っぽい雪が降っている。

『今夜はホワイトクリスマスになりそうです!』なんて天気予報士は嬉しそうに伝えていたが、全くもって嬉しくない。

こんなびしょびしょ雪じゃ橋の下の土の地面はぬかるんで、壁当てに行けなくなる。

あの場所が雪に覆われたら、ハスミが水辺の生き物を観察に行くこともなくなるだろうしな。


セミナーを終えた帰り際、3年教室のある4階から階段を降りたところで1、2年の女子に取り囲まれた俺は、そこで身動きが取れなくなった。

受験生にはクリスマスなんてイベント事は関係無いと思っていたから、完全に油断していた———お陰で、仲間達からは置いて行かれてしまった。

 クソッ、あいつら俺を見捨てやがって…… 久しぶりにみんなで中心街へ繰り出すのが楽しみなのは分かるけど、助けを呼んでも誰一人振り返りもしないとか、酷いと思わないか?

気の遣い方が、完璧に間違っている。


プレゼント攻撃から辛々逃れて誰も居なくなった靴箱の前で増えてしまった荷物を前に溜め息を吐いていると、旧校舎の方からハスミがやって来た。

セミナーが終わってから、持ち帰りの荷物を取りに部室に行っていたらしい。

左手と膝で肩に掛けた校章入りのサブバッグを支えた状態で、器用に片足ずつ校内履きを脱いでかろうじて届く高さの靴箱に入れると、取り出した黒いローファーをペン!ってコンクリートの床に放り投げ、横向きに転がってる履き口をタイツの足先で探りながら突っ込み、こちらを見てニヤリと笑う。


「ふふ。アイドル並みのモテようですなぁ」


ニヤニヤしながら言われて、何故か後ろめたいような気持ちになる。

どこまで見られていたんだ。

まるっきり塩対応も出来ずにそれぞれに対して一応の礼は言いつつ貰う理由もないプレゼントを断る為にまるで罪人であるかのように頭を下げて平謝りに謝り、写真撮影をやめてほしい旨や連絡先の交換だけはどうやっても出来ないことを告げ、その後でSNSやらないのを何故か責められて、結局プレゼントを手に手に押し付けられて、最後は弁慶の立ち往生みたいになっていた。

ああいうとき、いつも以上に上手く言葉が出て来なくなってしまって、サラッと躱せないんだよな……。


「見てたんなら助けてくれよ」


「何故。どうして。どうやって」


だよな。

別におまえには、俺のこと助ける義理なんか無いもんな。

…… ふん。


「なんだかんだ嬉しいもんでしょ、恋する乙女達に囲まれてキャーキャー言われちゃったりなんかしたらさぁ」


「…………。」


いいやげんなりだ。

疲れるだけだぞ、あんなの。

大体、あれは恋ではないだろ。

恋ってのはもっと…… あくまで俺の浅い経験から想像出来る範疇のものでしかないが、遠くから見つめてるだけで切なくて苦しくて泣けるくらいの…… ハスミが言うには、心身共に影響が出るくらい切実なもんなんだろう?

あの女子共がそこまで本気で俺のことを好いてくれてるとも思えないし…… まぁ本気で来られるのもそれはそれで困るから、断ったことですぐに興味を失ってくれたら幸いだ。

早いとこつまらないヤツだってことに気付いて、とっとと忘れてくれるに越したことは無い。

現に、女と関わったらロクなことがないのは証明済みだ。

仲間にはハブられるし…… あいつらには明日、相応の制裁を加えるつもりでは居るが。


「クリスマスだから、何かにかこつけて騒ぎたいだけだろ…… バカだな、芸能人でもないタダの高校生なんか追いかけても実入りが無いのに」


「えー、そんなことないと思うけどなぁ。

芸能人じゃないからこそワンチャン狙えると思ってるんだよ。

魅力的だと思ってもらえるなら光栄でしょうよ」


「…… ワンチャンもネコチャンもないんだよ」


「何それ、オヤジ臭っ!」


「何とでも言え」


そうだよ、ああいう輩にとっては理由や対象なんか何でもいいんだよ、何かをダシにして盛り上がれるなら。

どうせ数年経てば、あの中の誰も俺のことなんか覚えてないぞ。

あいつらの一時の高揚感の為にHPとMPを削られる俺の身にもなってみろ…… なんて切り返す気力も無く、ハァ~、と溜め息を吐く俺を見て、ハスミがアハハハ!って笑う。

笑ってるハスミを見てたら、また更に深い溜め息が出てしまう。


外に出たら、辺りはすっかり冬の景色になっていた。

鉛色の空。モノクロームの樹々。

落ちてくるものも、霙から霰に、そして本格的な牡丹雪に変わっている。

刻々と変わる雪の性状から今俺がいつか聞いた演歌の歌詞を思い浮かべていると知ったら、こいつまた『オヤジ臭っ!』って笑いそうだな。


ハスミは肩に担いだバッグがよほど重たいのか、歩き始めからもう息を切らし気味だ。

心なしかふらついてるのは、足元の雪のせいだけではなさそう。


持ってやろうか?

多分俺ならそこまで苦労しない重さだろ。


とは思うけど、他人に自分の荷物を持たせるのなんか申し訳なく思えて絶対嫌なヤツ(俺だ)も居るからなーなんて考えたら、申し出ることを迷ってしまう。

チラチラ窺いながら、なんとなく寄って歩く。


「あ、心配ご無用。

私、こう見えて力持ちだし、体力には自信あるから」


うっ…… 先回りして断られてしまった。

でもそうまで言われると、おまえより絶対的に力持ちで体力のあるヤツが力を貸さないってのもな。


「どれ、貸してみろ」


「いい。大丈っ、夫⁈」


あ、ほら、そんなこと言って早速雪溜まりに足取られてるじゃないか。

こんな日に真面目に学校指定のローファーなんか履いて来るから…… 俺のはレザーのハイカットだからいいけど…… こういう降り始めのシャーベット状が一番滑るだろ、あの釣り用長靴でも履いて来りゃいいのに。


「いいから寄越せよ」


「いや、いいってば!」


通りすがりの傘をさしたお婆さんが、立ち止まって訝しげに振り返って見ているのが目に入る。

俺、人相悪いし、女の子とこんな言い合いしてたら引ったくりか何かに間違えられそう。


「だぁっ、もう…… さっさと寄越せ!」


ハスミに触れてしまわないよう、上からバッグを取り上げる。

って、うわ、重っ⁈

なん…… っだコレ、何入ってんだよ?


それでも重い物を持つと、咄嗟にどの筋肉に重点を置いて負荷を掛けよう?とか考えてしまう俺は、脳筋に分類されるんだろう。

最近思うように出来ていないから、筋トレがてら持たせてもらおうじゃないか。


それにしてもこのバッグ、ファスナー裂けるんじゃないかってくらい何かがみっちり詰まっていて、クソ重たい。

よくこんなもん担いでたな、そんな小さくて細っこいくせに。


「中、何だ?ダンベルか?インゴットか何か詰まってんのか」


んなバカな!って笑いながらハスミが中身について答える。


「方々に貸してた本が今日になって一気に返って来たんだよ!」


酷い奴らだな。

年が明けたらいよいよ受験が始まるから今の内に色々精算して置きたいのは分かるが、いっぺんに返された方の身にもなってみろよ。


「こんなの持ってたらなー、…… おまえ、ますます背ぇ縮むぞ」


「失礼な!

まだ軟骨が擦り減ったり圧迫骨折するような歳ではないよ!

ピッチピチの18歳ですからー!」


「えっ俺まだ17……」


「はぁっ⁈まさかの早生まれ⁈」


「うん。3月。の、末の方」


「私より半年も後に生まれてるのに…… 何食べたらそんな大きくなるんだ!」


「何って普通に…… 80無いし」


「十二分でしょうが!

…… くっそぉ~、余ってるなら5センチ、いや10センチくらい私にくれ!寄越せ!」


「余ってはいない。どうせならもっと欲しいくらいだ。

そう言うおまえは何食べてそんなチ…… 小さいんだ」


「あっ、今“チビ”って言った⁉︎」


「いや…… 」


失言しかけたのを否定しながらも、食い気味に反応したときの顔が可笑しくてちょっと笑ってしまいそうになるのを、横を向いて誤魔化す。


「ぬぬぅ、鼻で笑ったな!

おのれ…… チビと謗られ続ける者の辛さも知らずに。

椎間板よ縮め!ほ~ら縮め!」


後ろに回って背中のリュックに体重を掛けてしがみつかれて、ちょっとよろける。


「やめろ」


俺がおまえの上に転んだらシャレになんないからホントやめろ、潰れるぞ。


それでも戯れられていると思うと、顔が緩むのを感じる。 


こいつ、もしかして照れてるのか。

変にはしゃいでる感じなの、面白いな。


ちょっとグイグイいってみるのも、悪くないのかも知れないと思う。



しかしいざハスミの家が近付いてくると、途端にまた気まずくなる。


何だろう、この感じ。

この前帰るときにも、こんな雰囲気になったな……。


「これ積もるよね」


「空、暗くなってきたもんな」


近所の爺さん婆さんみたいに当たり障りの無い内容の会話が、ぎこちない。


雪はいつしか風をはらみ吹雪になっていて、ハスミの頭も雪が積もって白くなっている。

払ってやろうかとも思うが、勝手に頭に触れられるのはいくら善意であっても嫌なんじゃないかと思うと、手が出せない。


もうちょっと話していたい…… でも、こんな風雪の中では立ち話も出来ない。

晴れてたところで、俺にはこいつの面白がりそうな話題のストックも無いんだけどな。

こういう時に引き出しのない俺って、ほんとつまんないヤツ…… あ、そうだ。


「パンコ、元気か?」


お、俺は何故急にペットのご機嫌伺いを?

数日前に見たばっかなんだ、元気に決まってるだろ。


「う、うん…… 元気…… だよ?」


ほら、ハスミも戸惑ってる。

俺よ、今日はもう大人しく帰ろうぜ、明日も学校で会えるんだから…… ゆっくり2人きりで話すことは出来ないかも知れないけど……。


「見てってもいい?」


あぁっ、俺の口ってば勝手に何を……⁈

馬鹿バカ、図々しいにも程がある。迷惑だろ急に。

ハスミの方から『寄ってって』って言ってくれるならまだしも……、


「あ、うん。どうぞ、」


意外な程あっさりOKしてくるりと背を向けたハスミに続いて、戸惑いながら玄関を入る。

断ってくれたら良かったのにな…… なんて、自分から言い出しておいて矛盾した気持ちを抱えている俺は、風防室で雪に濡れたマウンテンパーカーを脱ぎながら、横目に自分で頭の雪を払っているハスミを見て反省しきりだ。


何を焦っているんだ?

雪だから?イブだから?

落ち着けよ、あと数日で休みに入るからって、もう会えなくなる訳でもないのに。

卒業までは、まだ時間があるだろ。


心中猛省しながら部屋に通されると、入った瞬間にあの甘い匂いがして、更に落ち着かなくなる。


なんなんだこの…… 堪らなく良い匂い。

これ、目一杯深呼吸してみても良いかな?


スーッと吸い込んでいるところへ後ろから話し掛けられて、息が止まる。


「荷物、そこでいいよ。

ありがとう。重かったでしょ」


「…………。」


ハスミが着替えてくると言って出て行き、部屋に一人になると、止めていた息をフーッと吐き出して、その後で途方に暮れる。


自分から上がり込んどいてなぁ…… あぁ、やっぱ俺にはグイグイは向いてない、柄じゃないのに無茶すんなっつーの。

会話のネタ、会話のネタ……、

うーん、やはりここはおまえに頼るしか。


四つん這いになってケージの中の茶色の毛玉に熱い視線を送るが、当のパンコは俺には全く反応せず、猫がするみたいに身体の下に脚を隠して丸くなり、長い両耳を伏せたまま半眼開きでじっとしている。


なんだこいつ、目を開けたままで寝てるのか?

おーい…… 起きろ、頼むから起きてくれ。

おまえが居てくれないと、どうにも間がもたないんだよ。

…… ったく、何だって昼日中から寝てるんだ。いい気なもんだな。


「ウサギは薄明薄暮性だからね」


すぐ上でハスミの声がして、ビクッとして四つん這いで伏せたまま固まる。

雪で濡れたタイツを先に脱いできたらしく、制服のスカートの下の裸足の小さな足が俺のすぐ脇をペタペタ通り過ぎて行き、机の脇に置かれたファンヒーターのスイッチを入れて戻って来たかと思ったら、不意に視界がタオルで覆われる。


「頭、濡れてるよ。

…… フード被れば良かったのに」


「あ、うん、いや……」


俺だけフード被る訳にいかないだろ、おまえが雪被ってるのに。


黙っている俺を部屋に残してハスミが部屋を出て行くと、何か良い匂いのするタオルの下で顔を押さえる。


あー、ビビったぁ!

生足晒して、あんな近くに立つなよな!


「…… ったくよぉ…… ハクメイハクボセイって何なんだよおまえよぉ…… 」


ドキドキを紛らすように俺がボヤいているのが聞こえてたらしく、廊下の方、部屋のすぐ外から声がする。


「昼行性でも夜行性でもない時間に活動する動物の性質のことー。

パンコも朝方と夕方は活発だけどー、昼は大体そんな感じだよー。

多分今扉開けてあげても、出て来る気なーい」


「あ、…… あーそう」


ちょっとだけ声を張って返事をしながら、胸を抑える。


あいつ、戸を開けたままって無防備過ぎやしないか?

俺はもう…… あっちで着替えてるって思うだけでもドキドキしてんのに。


しばらくして戻って来たハスミは、マグカップを2つ持っていて、一つを俺に手渡すと、自分はあちあちって言いながらすぐに口を付ける。


「麦茶でおk?」


「あ?おぅ…… サンキュ」


お湯で淹れた麦茶か。冷たくないのは初めてだな。

すごく香ばしくて甘味を強く感じる。

俺は別に寒くはないが、心遣いがホッと沁みる。


見れば、タオルを首に掛けたハスミの髪は、俺より長い分、解けた雪でびしょびしょに濡れている。


「頭、乾かさなくていいのか?」


頬や鼻先や手足の先が赤くなっていて、冷え切っているのが分かる。

楽なのは分かるけど、半袖のTシャツで寒くない?

まぁ俺も、家だとそんな感じだけど。


「えっ?あぁ…… んじゃ、ちょいと失礼」


躊躇なくくるりと俺に背を向けて、ファンヒーターの温風で頭を逆さまにして乾かし始めるハスミ。


こいつ、こういうとこ、ほんっと女子っぽくないな。


なんて思ったのも一瞬のこと。

狭い部屋の中、部屋着にしてるらしい3本線のジャージの尻が俺のすぐ目の前に突き出される形になり、目のやり場に困る。

まん丸くて綺麗な形の、柔らかそうなお尻。

ジャージがピッタリと張り付いて、中に穿いてる下着の線が浮き出して見えている。

野球部の野郎共のデカくてゴツいケツとは全然違う、何というか…… 女の子のお尻だ。

半袖のTシャツの袖口から出てる二の腕もぷるぷる揺れて柔らかそう…… つーか裾入れてないから、こっちから腹ん中見えてんだけど…… うっ、今チラッと見えた青いのは、もしかしなくてもブ…… ラジャー⁉︎


やり場に困った割には、チラ見どころかガン見してしまっていることに気付いて慌てて目を逸らし、肌色の残像を振り払う。


「な、なぁ。…… 家の人は?」


「家の…… 人?」


ぴょこんと起き上がって正座の姿勢で俺に向き直るハスミ。

ボサボサになってる髪を手櫛でささっと整えながら、どう説明しようか考えているようで、んー、と瞬きながら目をくるりと回す。


「親は大分前に離婚してて、どっちも居ないよ。

お母さんは元々◯◯大の準教授やってて、同じ大学の教授と再婚して子ども居る…… しばらく会ってないな。

お父さんは今□□大の教授やってるからあっちに住んでて、籍は入れてないけど一緒に暮らしてる若い女の人が居る。子どもは居ない模様。

私を育ててくれたのは、お爺ちゃんとお婆ちゃん。

お婆ちゃんは高校入る前に亡くなって、その後お爺ちゃん脳梗塞で動けなくなって、今老人ホーム」


「…… □□大って、東京か」


「うん」


「じゃ、おまえ、この家に一人で居るのか?」


「んー、△△大の院にお兄ちゃんが居るよ。

研究忙しいみたいで…… 最近は彼女の家に泊まり込んでてほとんど帰って来ないけど」


市内には居るんだな。

でもそれは、“一人”って言うと思うぞ……。


ハスミは、ファンヒーターの上にマグカップを置き、ベッドに背を向けて胡座かいてる俺の横に膝を抱えて体育座りをしている。

そうやってると、小さな身体が余計に小さく見えるな。

一人で留守番している子どもみたいだ。


「お父さんもお兄ちゃんも、私のこと、心配じゃないのかな。 

悪いことするかも知れないのに」


悪いこと?…… するって、おまえがか?

どっちかって言ったら、“される”かも知れない心配の方が大きくないか?

だって…… こんなチビっこくてか弱い女の子なんか簡単に……、

って、あ。

俺か?こいつに悪いことするかもな奴。

俺な。あーそうか、俺だわ。誰もいないとこに上がり込んでな。

…… しないようにしないとだな。


「離婚するくらいなら結婚なんかしなきゃいいし、面倒見る気ないなら子ども作らなきゃいいのにね。…… 思わない?」


「…………。」


なんて返せばいいのか分からず黙りこくっている俺の方は見ずに、ハスミは膝を抱えたまま背後のベッドに頭を預けて、はぁっ、と天井を仰ぐ。


「男の人が浮気するのってー、オスが出来るだけ沢山自分の子孫を遺したい本能から来てる、って言われてるよね。

対してメスは、出来るだけ優秀な遺伝子を遺したい本能があるから、基本的にガード堅い筈なんだよ。

子は遺したいけど、命賭けて産むんだから、誰の子でも良い訳じゃない。

相手は吟味したいし、たとえ想う相手が振り向いてくれたとしても、自分だけを見てくれてるって確信がなければ結婚なんかしたくない。

だから女の人の浮気は、自分だけを想ってもらえない寂しさが原因になってることが多いんだと思うんだけど、…… ウチの場合は更に自分にとって有益なオスを探してのことのような」


父親の浮気が離婚の原因か。

でもその後母親も浮気したんなら…… どっちもどっちだな。

つーか、しっかりしてるとは言えこんな年頃の女の子を…… しかも今は受験を控えた大事な時期なのに一人で放って置くなんて、何考えてるんだ、こいつの親は。

…… いや、考えてないんだな、多分。

それぞれに、自分のことしか。


「まぁ私実はお父さんの子じゃない説あるから、どっちの浮気が先だったのか、分からないんだけどね。

ハハ、私にもあの人達の血が流れてるって思うと、私も将来、結婚失敗しそうで怖いな。

あそこまで好き勝手に成れるとは思わないけど…… 自分は浮気しなくても、相手はどうだか分からないし。ね」


くるりとこちらに顔を向けて笑って見せてる、ハスミの黒目がちな目に、俺の困惑した顔が映る。


…… それは…… いよいよ何て言っていいか分からないな。


よっ、とハスミが背中をもたれた姿勢から起き上がって麦茶を取り、一口飲んで、カップをガラステーブルの上に置く。

2つ並んだカップを見つめて、ふうー、と溜め息を吐く。


「『家族』って、何なんだろうねー」


「…… 何なんだろうな」


気の利いた言葉も思い付かずに、オウム返しの相槌を打つ。

話のネタに困ったとは言え、家族のことなんか聞いてしまって、良かったのか悪かったのか。


思うと同時に、何だか既視感を覚える。

ずっと前にも、こんな風にお互いの身の上を語り合ったことがあったような。


そうだ…… 田舎の夏の夕暮れ、川岸の石に腰掛けて、膝を抱えて俺の隣りに居た、名前も知らないあいつ。

あの時『親が離婚したんだ』って言ってたな。

俺ん家は離婚はしてないにしても親が別々に暮らしてたから、何となく気持ちが分かるような気がして頷いてたけど、今思うと全然違う。

分かってなかった…… 自分のことを一番に想ってもらえない子どもの悲しみを。


俺は、少なくとも、親父には愛されてると思う。

金を掛けて貰ってること以上に、何よりそう感じるのは、忙しいのに俺の為には自分の時間を削ってくれてるところだ。

厳しいとこもあるけど、俺のことを思ってごく当たり前のことを当たり前に教えてくれているのが分かるから、黙って言うことを聞く気になる。

母さんも…… どういう事情があったかは分からないが、離れていても、俺のことは愛してくれていたと思う。

物心ついた時から亡くなる前までなかなか会うことは無かったし、行事や参観日なんかにも来てくれることは無かったが、亡くなる2ヶ月前まではずっと文通をしていた。

あの頃の母さんとのやり取りは、俺にとって一生の宝物だ。


親父は再婚はしていないし、今に至るも女の陰すら無い。

もしかしたら2人は、子どもだった俺には分からない形でお互いを想い合っていたのかも知れないな。

…… なんて、今更ながら両親の愛情に恵まれていた自分の幸せを思う。


黙って想いに沈んでいたハスミが口を開く。


「そりゃあさ、家族にも色んな形があっていいと思うんだ。

いつまでも一緒に居られるものでもないし、離れて暮らしても良いと思う、お互い納得してるなら。

ただ……大変なこともあったかも知れないけど、一緒に居て幸せな時間があったことを忘れちゃダメだよね。

離れたら終わりとか、別れたからって最初から無かったことにしちゃうのは…… 」


抱えた膝に顎を乗せ、ふうっ、と溜め息を吐く。


「その人を愛した自分まで、消し去ってしまうことになる」


どこか遠くを見ているような表情。

真っ黒な瞳が映しているのは、家族との幸せだった頃の思い出か。


「確かに辛いけどさ…… 一度は想い合った相手から、もう想ってもらえなくなるのは。

でもね、愛した人のことを否定しちゃうと、その人を愛した自分のことも否定してしまうことになると思う。

自分への愛も失うことになるよね。

求めれば失うことになるし、失ったらまた他に求めたくなる。

そんな繰り返しで、満たされることはあるのかな……」


別離した両親のことを言ってるんだろうか。

それとも……?


温まり始めた室内に、重たい空気が流れる。

でも、大切な想いってのは、重いものだよな。

こういう話、嫌がる奴も居るけど、俺は別に嫌ではない…… し、むしろハスミから話してくれるなら望むところだ。聞かせて欲しい。

こいつは一人で抱えて来た荷物の中身を、今、俺に見せてくれてるんだ…… 多分、俺にだけ。

話をするに足る相手だと認めてくれるなら、ありがたい話じゃないか。


「恋は…… 愛とはきっと、違うよね」


「…………?」


違うんだろうか。

そんなこと、考えたことも無かったから……。


急に振られたテーマに対しては経験も思考の蓄積もない俺には何も言えず、ただ黙ってハスミの言葉に耳を傾ける。


「変わらないものが愛。

変わりゆくものが、恋。

な、気がする。

どちらにも共通してるのは、相手が誰でもいい訳じゃないってとこ。

対象が特定の人物に限定されるものだから、厄介なんだよね」


「…… うん……だな 」


確かに、そこが一番厄介なところかも。

誰でもいいなら苦労はしない。

親は、家庭環境は、選べないから子どもが苦労するんだよな。

恋愛対象は選べるけど、相手も自分を選んでくれるとは限らないから、想いが成就することは難しくて…… 厄介だ。


「不思議だよね…… どうしてなんだろ。

この人がいい、この人じゃなきゃダメだ!って思い込んじゃうの。

その人だけは、特別なんだよね。

んで、その人にとって、自分だけは“特別”って思われたい。

その点に於いては全く同じだから、愛とか憧れと見分けが付きにくいけど、ふとしたときに『あ、これは恋だ』って感じる瞬間がある。

この人が私だけを見ていてくれたらいいのに、って……独占したくなってしまうんだ」


ふうん。そんな風に誰かを想ったこと、あるんだな。


普段そんな様子を見せることがないハスミの、意外にも普通に女子な部分に、軽く驚きを覚える。


やっぱりさっきのは自分の話なのかな。

まあこいつも18歳の女の子な訳で、そんな気持ちを抱いたことの一度や二度はあるんだろう。

変なヤツではあるけど、年頃から考えたら驚くことではない。

当たり前のことなんだよな。


思うと同時に、湧き上がるモヤモヤした気持ち。


誰に対してそんな想いを?

つーか…… 俺だけか?モヤモヤしてんの。

俺のあの長ったらしくて下手くそな思い出話を聞いて『恋』と断定したおまえには、こういう気持ち、湧かなかったのか?

平気なんだな、俺にそんな話を振って来たり、俺が女に囲まれてるの見てからかってきたとこ見ると。

…… なんか…… なんでだか、悔しい。


「…… おまえの“特別”の基準て何だよ?」


「そんなの、エッチしたいって思うか思わないかでしょ」


「⁈」


でしょ、って言われても。


直球過ぎる回答がイヒョー過ぎてちょっと引いてる俺には気付かず、ハスミが付け加える。


「だって私、好きな人以外としたいって思わないもん」


好きな人…… だと?

現在進行形で言ってるよな?コレ。

誰だよそいつ。おまえがしたいって思うヤツ。

居るのか?ほんとに?

実在するヤツか?そいつ。

次元の違うヤツとか、アイドルとかじゃなくて?

って、何必死で生身の相手の存在否定しようとしてんだ、俺。


「…… それが普通なんじゃないか?」


「ふうん。アキくんて、男の子のクセに理性的なんだね」


「…………。」


いやいやどういう意味だよ。

おまえ、男を何だと思ってるんだ。

つーか、そんなこと言うからには、おまえは理性的じゃない男を知ってるってことなのか?

『私も恋とかよく分からないんだけどね』っていうあの発言は、未経験からの未知を意味したものではなく、経験した上での感想なのか……?

気になる。

うぅ、ものすごく気になるぞ。


「でも…… 私のことだけを好きになってくれる人なら、誰だっていいかなぁ、とも思うんだよね。

私、好きな人に合わせて無理矢理自分を変えようとしたり、実際より良く見せたいとは思わないんだ。

そんなの、モチベーションが保てなくなるのが目に見えてるから。

絶対途中で面倒になって、その人を好きでいることにも段々疲れてきて、最終的に嫌いになっちゃうかも。

そう考えると、ありのままの私を見てAll good!って思って貰えるなら、誰でもいい気がしてくるんだよなぁ。

私を心から好きになってくれる相手なら、元々感性の合う人なんだと思うし、それなら多分、私も好きになっていけると思うから。

そういう人となら、どこまでも深く繋がってみたいって思う。

あ、誰彼構わずという訳ではないんだよ。

広く浅くじゃなくて、特定の人との関係を深く追求したい、って意味で」


それは…… 元々好きじゃなくても自分だけを求めてくれる人なら、誰でもいいからエッチしてみたいってことか?

そんなの認めないぞ、断固として阻止する。

男ならまだしも、女の子がそんなこと考えるのは危険が危ない。

おまえが誰かとエッチなことしてるのなんか想像もしたく……、って、あ、そういうこと言ってる訳じゃないのか。

でもな、それだとおまえがさっき言ってたみたいな“求め続けて結局満たされない”ってことになりやしないか?

やめろ、やめとけ、流されて後悔することになっては…… とか、そういえばおまえにそんなこと言える立場じゃないんだよな、俺……。


「…… 男の子達ってよく、モテたい!って言うじゃない?

それって結局は、色んなメスと交尾してあちこちに自分の遺伝子を遺したい、って本能…… オスには浮気が本能として意識下に組み込まれてるからなんだよ。

まぁ、人間の社会では道義的に認められることではないから、思うだけで実行には移さないのが普通だけど、…… 思うだけなら罪にはならないからね」


いや、思うことから始まるんだぞ、行動は。

ゴジラ松井の座右の銘を知らないか?

あぁ、でもそれ言ったら俺も、あれこれイケナイコトを思ってしまってるから…… ヤバいな、顔に出てないと良いけど。


「俺は…… モテたいと思ったことは無いな」


こんなこと言うと、仲間からは『あーあーこれだからモテるヤツは!』とか『勿体無い、俺なら片っ端から付き合っちゃうけどなー』とか言われるんだが、全然知らない女子から好きですとか付き合ってとか言われたら、実際困るぞ?

『迷惑ですか?』って、悪いけど…… 迷惑なんだよな。

俺は平穏に暮らしていたいのに、それが元でトラブったことが何度かあったから、本気で思ってることだ。

大体、俺のこと良く知らないクセに、何をもってして好きです!だなんて自信満々に言い切れるんだ?

見知らぬ女から好意を抱かれることには恐怖すら覚える。

だから、モテたいとは思わない。

誰でもいい訳じゃないから、困るんだ。


「ふぅん。同じ男性でも、モテ欲求には個体差があるということかな」


「…………。」


納得いってないような不満気な様子に、なんか軽蔑された気分になる。

男にも色々あってだな、なんて弁明したくなるが、何故女と付き合った経験の無い俺が全男性代表みたいに偉そうなことを?って思うと、烏滸がましい気がして口には出来ない。


もしかしてハスミ、俺が女子に囲まれてたの見て何か勘違いしてないか?

俺は潔白だ、好きでもない女とは付き合うどころかメッセージのやり取りをしたことも無い。

彼女居ない歴=年齢だし童貞なのは胸張って言えることじゃないのかも知れないけど…… 何なら証明してくれるヤツだって居るぞ。

って、何を俺は廉潔アピールしようとしてるんだ?

別にハスミは俺のことを“浮気者”だって言ってる訳じゃないのに。


ハスミの言葉一つひとつに考えを巡らせる。

色々思うことはあるけど、やっぱり口には出せない。

…… 喋れば喋るほど言い訳みたいになりそうだし、差し出がましいことを言って煙たがられるのもな。


「憧れっていうのも恋に似てると思うけど…… また別物だと思うんだよね。

相手は傍に居なくても、その人のことを想うだけで幸せな気持ちになれる。

言ってみればただの自己満足なのかもだけど、その人の存在に救われて、その人を想う気持ちに支えられる。

そういうことって、ない?」


「…… うん…… それはある…… な」


俺にとっては、プロ野球選手がその例だ。

その人の活躍に胸を躍らせたり、不調や怪我に悩む姿に共感したり、復調してまた試合に出て来られたところを見て感激したり。

活躍出来ないまま引退しても、裏でしてきた並々ならぬ努力は想像が付くし気持ちが分かるから、その発言や行動を追いたくなる。

一方通行だとしても、その人のプライベートも含めて、勝手に応援したくなるんだよな。

応援することで、俺自身も頑張ろう、って気になる。


身近なところでは、あの人がそうだ。

プロには行かず、家業を継いで仕事しながら俺達に野球を教えてくれてた、あの人。

敬愛というか…… 尊敬してるし、ダメな部分も引っくるめて好きだなぁと思う。

だから、プライベートでも、どうか幸せになって欲しいと願っている。

それには、あいつとは幸せになれることがあるのかなぁ、って心配が付き纏うけど。


「この前アキくんが言ってた女の子もさ、叔父さんへの想いが支えになってると思うんだよね。

叔父さんの方も、その子を想うことで支えられてると思うし。

互いの存在が支えになってるから、相手に何か求めることも無い。

ただ、そこに居てくれるだけでいい。

そういうのって、愛だと思うんだよなー。

見返りを求めない点では憧れに似てると思うけど、一緒に暮らしていてそういう関係を保っているなら、恋人なんかよりもずっと深い心の結びつきを感じる。

…… 家族みたいな…… そう、愛、だよね」


家族。

愛、か。

最強だな。

だからか、俺があの2人を見ていて、敗北感みたいなものに打ちのめされたのは。

俺とは違う次元で…… もっと、ずっと深いところで繋がり合ってる感じがした。

肉体的な繋がりはないとは思うが、あんなの、どうやったって敵わない。

それがあの、“負けた”って想いの正体で…… それぞれに対して求めるものばかりだった俺が経験した、失恋っていうものだったんだな。


というかおまえ、俺のした話を、そんなに真剣に受け止めて深く考えてくれてたんだ?

どんな暴投も見事にキャッチして返してくれる力量は、多分おまえ自身が重いものを背負い慣れてるせいか。

小さい頃から、計らずもキツいメンタルトレーニングを積み重ねさせられて鍛えられて来た賜物なんだろうな。

そう思い当たると、一生懸命踏ん張って生きているこいつが、何だか頼もしくも、痛々しい。


色々考え込んでいる俺を見てどう受け取ったのか、ハスミが少し声のトーンを上げる。


「んでもさ。

2人のことを想う気持ちに、アキくん自身も支えられてきた部分があるんでしょ?」


「……うん……?」


「それはもう、愛だと思う。

だから、忘れちゃダメだよ。大好きな気持ち。

その人の幸せを願うことで幸せになれる自分を、大切にして。

そしたらきっと、今までより心が強く豊かになって…… もっと深い愛で満たされることに繋がってくと思うから。ね!」


語り終えたハスミが、すっかりぬるくなった麦茶の残りを一気に飲み干し、ふー、と息を吐いているのを視界の端に見ながら思う。


おまえ、結局自分が吐き出し切るより先に、俺を励ましてくれてるじゃないか。

普通なら、自分が一番不幸です!ってな具合に自棄になったり卑屈になったりしそうなもんなのにな。

頼る相手もなくて、単に生きてくのに精一杯で嘆き悲しんでいる暇が無かっただけなのかも知れないけど、前向きって言うかなんて言うか…… 強いんだな。

事実は事実として淡々と受け入れて、清濁併呑した上で自分らしく在ろうとする様は、正に出淤泥而不染。

そういうとこ、尊敬するわ。


「おまえってさ…… 」


「うん?」


「人生、何回目?」


「…… は?…… 」


キョトンとして真っ直ぐにこちらを見つめる、シマエナガ。

真ん丸の真っ黒な目。チマっとした鼻と口。

意味を測りかねているのか片方だけ眉を上げ、首を傾げるのを見ていると、自然と込み上げてくるものがある。

…… フッ。


「笑ったぁ……」


俺の顔を見たハスミの顔に、驚きが浮かぶ。

そして呼応するかのように段々笑みが広がっていったかと思うと、途中からシューっと湯気でも噴き出しそうなくらい赤くなる。

俺なんかに本音を語り過ぎたな、とでも思ったか?

急に恥ずかしくなったらしい。


「ね、ねぇパンちゃん聞いた?このヒト酷い!

まだ17だからって、私のこと年寄り扱いっ……」


普段からそうしているのだろう、ハスミが四つん這いで話し掛けながら迫るも、ケージの中のパンコは我関せずと広げた自分の股間に顔を突っ込んで…… え、何かモグモグ……?


「…… これ、ウンコ食ってる?」


「…… うん……」


「…… ふ、…… クッ……!」


笑いを堪えている俺を見て、ハスミが何故か焦りながら説明する。


「あ、あのね、これはね、ウサギには食糞っていう習性があってね!

消化の過程で排泄とは別に盲腸便っていうのを…… 腸内細菌に分解させたビタミン類とかの栄養分が多く含まれるウンコなんだけど……それをもう一度摂り込むことによって…… ってちょっと、アキくん聞いてる⁈」


「うん聞いてる……プフッ!」


その顔!

真っ赤になって困ってるみたいに眉が下がって……。

おまえ照れるとそういう顔するんだな、覚えたぞ。


「食糞しないと免疫力が低下しちゃって、だからこれはウサギが生きる上で必要不可欠な行為なのであって、……」


俺にマジマジと見られてることに気付いて、ハスミがピタリと喋るのを止める。

目と目が合う。

と、突然フシュ~っと空気が抜けたみたいに勢いを失い、ぺたんと床に座り込む。


「うーん。

これだけは習性とは言え見てて気持ちいいものじゃないんだな…… キミそれやった後しばらくお口がウンコくしゃいんだよぉ、パンちゃぁん……」


何だよ、そのギャップ。

オトナみたいな顔でクソ重たい話をしてたかと思えば、急にテレテレアセアセし出して。

照れ隠しにパンコに話し掛けたり、小難しい説明して紛らそうとしちゃったりなんかして。

おまえって、ほんっと……、


 「…… フッ、…… フフ」


「ウンコで笑い過ぎだから!」


「フフン…… ウンコ…… フフフフ」


「もう…… 一生笑ってろ!」


「アハハハハ!」


フフ、分かんないかな?

俺、ウンコで笑ってる訳じゃないんだけど。


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