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111,必要スキルポイント1032。
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バードンさんの死から学ぶことは大きい。
なぜ私たちの侵入は未来予知できて、上空から降り注いだ《波動砲Lv.3》までは予知できなかったのか。
それにバードンさんは、私たちが侵入すると予知したため、寝室のベッドから移動したわけだけども。それによって《波動砲Lv.3》落下領域へと入ったのだ。
あのままベッドで『お楽しみですね』をしていれば、《波動砲Lv.3》落下領域に入ることはなかった。バナナの皮を迂回して、暴走馬車に轢かれたわけか。
つまり〈未来予知〉スキルは万能ではないどころか、時には足を引っ張るリスクもある。だが、それでも〈攻略不可能体〉たちのチートスキルに対抗していくためには、不可欠なスキルだろう。
では、バードンさんの人体素材をいただきましょう。魔改造鍬〈スーパーコンボ〉を手に取って、バードンさんの死体に近づく。
嫌な予感がした。もしや必要な素材パーツって、脳味噌じゃないよね? バードンさんの脳味噌はもう粉微塵で、どう足掻いても採取できる余地なしだけど?
しかし杞憂だった。〈スーパーコンボ〉を経由して理解するに、必要な人体素材は、ほう──そう来たの?
いや、これは杞憂なのかな? まだ分からないぞ。
とにかくバードンさんの死体付近を捜索。二個あるうちの片方だけでいいようだし。あった、あった。
眼球が。
千切れた視神経が、尻尾みたいな眼球(完全に眼窩から飛び出して転がっていたので、これが右眼か左眼かは不明。そしてまったく、どうでもいい)。
さっそくバードンさんの眼球を、〈スーパーコンボ〉に近づける。眼球素材が吸収され、〈スーパーコンボ〉の形状が少し変わる。鍬の先端付近に、一個の眼球が現れ、ぎょろぎょろと周囲を見だしたのだ。
蒸留酒にありついたサンディさんが、
「アリアちゃんの魔改造鍬──グロさが増したねぇ。これ、褒め言葉」
〈スーパーコンボ〉のスキルツリーを確認すると、新たに【予知領域】が生まれていた。はじめの未解放パネルは、まさしく求めていた〈未来予知〉スキル。
ただし──この〈未来予知〉スキルパネルを解放するためには、1032ものスキルポイントを必要としている。
いま手持ちのスキルポイントは、このまえほぼ使いきったので、52しか残っていない。
うーむ。これは、だいぶ武装Lv.を上げていく必要がありそうだね。
サンディさんが、まず酒瓶を置いてから、バードンさんの死体から〈神の槍〉を取り上げる。
「この〈神の槍〉は、本物ということだよね。だってさ、このバードンという人は、少なくとも〈神の槍〉でアリアちゃんを殺せる未来を予知したわけでしょ? でも、いまのアリアちゃんを殺せるって、相当なチートアイテムだよ」
「サンディさん、強化素材にしたらどうです?」
「え、いいの? アリアちゃんが強化素材として使わないで?」
「はい。私は、求めていたものを得ることができたので、ここはサンディさんも、己の〈魔統武器〉を強化しておいてください」
「分かったよ、アリアちゃん」
聖杖〈愛と抱擁〉に、〈神の槍〉を近づけるサンディさん。
小首を傾げて、
「視界に『〈神の槍〉を吸収してよいのか?』という確認が出てきたよ。YESにして──っと。わぁ、〈愛と抱擁〉の武装Lv.が825から1022になった。それに──【必殺領域】というものが、新たに出てきたんだけど?」
【必殺領域】? 〈神の槍〉を強化素材に使ったからかな。ちょっと惜しいことをしたかも。だけど、これでいいのだ。
「ところでサンディさん。ひとつお願いがあるんですけども──」
「お願い? いいよ、どんと来いだよ、アリアちゃーん」
ほろ酔いで、気が大きくなっているらしい。
「しばらくの間、バードン大神官に成りすましていてくれませんか?」
「……………………えー、このキモい男に? やだよぉ、やだよぉ。ちょっとワインセラー見てくる」
「はい」
ワインセラーを確認してきたサンディさんが、煩悶しながら戻ってきた。よほど立派なワインセラーだったようだ。
「バードン大神官に成りすますのは最低だけど、ここのワインセラーを好きにできるのは嬉しいかも。うーーーーん、しょうがないなぁ。アリアちゃんの頼みだもんね。だけど、3つ聞かせて。『なぜ?』、『どうやって?』、『私にどうして欲しいの?』」
「まず『どうやって?』に答えます。
私の手持ちスキルに《擬態Lv.1》があります。これはパーティ仲間にも使用できます。ただし、まだLv.1パネルに過ぎないので、擬態も万能ではありません。一応は、『他者から見た姿形』は変えることはできますがね。側近などを近づけぬようにすれば、数日は騙し通せるでしょう。
つづいて『なぜ?』と『サンディさんにどうして欲しいの』は、同じですね。偽アリエルという存在を、私は確認しておきたいんです。そのためには、偽の神託を受ける者が必要です。
サンディさんがバードン大神官に成りすまし、偽アリエルの神託を呼び込んで欲しいのです。私はその場に潜み、正体を暴けるかやってみたいと思います」
「ふーーーん。よし、やろうっ!」
さすがサンディさん。こんな無茶な頼みを聞いてくれるなんて。素面ではないけども。
「友情に乾杯ですね。あ、私はお水でいいです」
なぜ私たちの侵入は未来予知できて、上空から降り注いだ《波動砲Lv.3》までは予知できなかったのか。
それにバードンさんは、私たちが侵入すると予知したため、寝室のベッドから移動したわけだけども。それによって《波動砲Lv.3》落下領域へと入ったのだ。
あのままベッドで『お楽しみですね』をしていれば、《波動砲Lv.3》落下領域に入ることはなかった。バナナの皮を迂回して、暴走馬車に轢かれたわけか。
つまり〈未来予知〉スキルは万能ではないどころか、時には足を引っ張るリスクもある。だが、それでも〈攻略不可能体〉たちのチートスキルに対抗していくためには、不可欠なスキルだろう。
では、バードンさんの人体素材をいただきましょう。魔改造鍬〈スーパーコンボ〉を手に取って、バードンさんの死体に近づく。
嫌な予感がした。もしや必要な素材パーツって、脳味噌じゃないよね? バードンさんの脳味噌はもう粉微塵で、どう足掻いても採取できる余地なしだけど?
しかし杞憂だった。〈スーパーコンボ〉を経由して理解するに、必要な人体素材は、ほう──そう来たの?
いや、これは杞憂なのかな? まだ分からないぞ。
とにかくバードンさんの死体付近を捜索。二個あるうちの片方だけでいいようだし。あった、あった。
眼球が。
千切れた視神経が、尻尾みたいな眼球(完全に眼窩から飛び出して転がっていたので、これが右眼か左眼かは不明。そしてまったく、どうでもいい)。
さっそくバードンさんの眼球を、〈スーパーコンボ〉に近づける。眼球素材が吸収され、〈スーパーコンボ〉の形状が少し変わる。鍬の先端付近に、一個の眼球が現れ、ぎょろぎょろと周囲を見だしたのだ。
蒸留酒にありついたサンディさんが、
「アリアちゃんの魔改造鍬──グロさが増したねぇ。これ、褒め言葉」
〈スーパーコンボ〉のスキルツリーを確認すると、新たに【予知領域】が生まれていた。はじめの未解放パネルは、まさしく求めていた〈未来予知〉スキル。
ただし──この〈未来予知〉スキルパネルを解放するためには、1032ものスキルポイントを必要としている。
いま手持ちのスキルポイントは、このまえほぼ使いきったので、52しか残っていない。
うーむ。これは、だいぶ武装Lv.を上げていく必要がありそうだね。
サンディさんが、まず酒瓶を置いてから、バードンさんの死体から〈神の槍〉を取り上げる。
「この〈神の槍〉は、本物ということだよね。だってさ、このバードンという人は、少なくとも〈神の槍〉でアリアちゃんを殺せる未来を予知したわけでしょ? でも、いまのアリアちゃんを殺せるって、相当なチートアイテムだよ」
「サンディさん、強化素材にしたらどうです?」
「え、いいの? アリアちゃんが強化素材として使わないで?」
「はい。私は、求めていたものを得ることができたので、ここはサンディさんも、己の〈魔統武器〉を強化しておいてください」
「分かったよ、アリアちゃん」
聖杖〈愛と抱擁〉に、〈神の槍〉を近づけるサンディさん。
小首を傾げて、
「視界に『〈神の槍〉を吸収してよいのか?』という確認が出てきたよ。YESにして──っと。わぁ、〈愛と抱擁〉の武装Lv.が825から1022になった。それに──【必殺領域】というものが、新たに出てきたんだけど?」
【必殺領域】? 〈神の槍〉を強化素材に使ったからかな。ちょっと惜しいことをしたかも。だけど、これでいいのだ。
「ところでサンディさん。ひとつお願いがあるんですけども──」
「お願い? いいよ、どんと来いだよ、アリアちゃーん」
ほろ酔いで、気が大きくなっているらしい。
「しばらくの間、バードン大神官に成りすましていてくれませんか?」
「……………………えー、このキモい男に? やだよぉ、やだよぉ。ちょっとワインセラー見てくる」
「はい」
ワインセラーを確認してきたサンディさんが、煩悶しながら戻ってきた。よほど立派なワインセラーだったようだ。
「バードン大神官に成りすますのは最低だけど、ここのワインセラーを好きにできるのは嬉しいかも。うーーーーん、しょうがないなぁ。アリアちゃんの頼みだもんね。だけど、3つ聞かせて。『なぜ?』、『どうやって?』、『私にどうして欲しいの?』」
「まず『どうやって?』に答えます。
私の手持ちスキルに《擬態Lv.1》があります。これはパーティ仲間にも使用できます。ただし、まだLv.1パネルに過ぎないので、擬態も万能ではありません。一応は、『他者から見た姿形』は変えることはできますがね。側近などを近づけぬようにすれば、数日は騙し通せるでしょう。
つづいて『なぜ?』と『サンディさんにどうして欲しいの』は、同じですね。偽アリエルという存在を、私は確認しておきたいんです。そのためには、偽の神託を受ける者が必要です。
サンディさんがバードン大神官に成りすまし、偽アリエルの神託を呼び込んで欲しいのです。私はその場に潜み、正体を暴けるかやってみたいと思います」
「ふーーーん。よし、やろうっ!」
さすがサンディさん。こんな無茶な頼みを聞いてくれるなんて。素面ではないけども。
「友情に乾杯ですね。あ、私はお水でいいです」
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